【京都勾玉怪盗記】第三勢力?

■シリーズシナリオ


担当:西川一純

対応レベル:10〜16lv

難易度:難しい

成功報酬:4 G 84 C

参加人数:8人

サポート参加人数:1人

冒険期間:08月19日〜08月24日

リプレイ公開日:2006年08月27日

●オープニング

世に星の数ほど人がいて、それぞれに人生がある。
冒険者ギルドでは、今日も今日とて人々が交錯する―――

「失礼する。一海君、依頼書を頼む」
「あ、はいはい。で、どのようなご依頼で?」
 とある日の京都冒険者ギルド。
 まだまだ夏真っ盛り‥‥セミの声をバックに、京都の便利屋、藁木屋錬術がやってきた。
 その友人であるギルド職員、西山一海は、汗を拭き拭き応対する。
「‥‥汗臭いわね。寄らないでくれる?」
「誰がですかっ! 藁木屋さんだって汗かいてるでしょう!?」
「‥‥錬術はいいの。汚くなんてないもの」
「うーがー! このバカップルー!」
「あー、頼むから止めてくれ。暑いからイライラする」
 藁木屋と一緒に入ってきた彼の相棒、アルトノワール・ブランシュタッドは、何故か汗一つかいていない。
 しれっと惚気て、つーんとそっぽを向く。
「最近、京都の名家で盗難事件が相次いでいるのは知っているかい?」
「えぇ、つい一週間前からくらいですよね。何でも、犯人は勾玉だけを奪い去っていくとか。他のものには一切手をつけず、家人に危害を加えたりもしない。分かっているのは、複数犯ということだけだとか」
「‥‥へぇ、流石に耳が早いわね。ただの暇人じゃなかったんだ」
「うーがー!! このギルドの盛況振りを見て、私が暇だと!? 暇だとおっしゃいますかぁぁぁっ!?」
「‥‥アルト、それ以上ふざけるとおやつ抜きだぞ」
「‥‥わかったわよ。黙ってるわよ」
「続けるぞ、一海君。まだ被害は3件だが、これからまだまだ増えると思っていいだろう。そこで、アルトに調べてもらい、勾玉を財産の一つとして持っている名家を帳簿に纏めてもらった」
「‥‥やっぱり、一晩でやってくれたんですか?」
「無茶を言うな。数日で、だよ」
「そ、そうですよね。しかし、それでも数十件あるんですけど‥‥」
「‥‥あ、その点は大丈夫。もう次に盗みに入られるところも調べてあるわよ」
 そう言って、アルトノワールは帳簿に書いてある家の名前を、ちょいちょいと2点指差す。
 家名の前に丸印がついているのが次に襲われるところだという。
「なんでここが次に襲われるってわかったんですか? 確実性は?」
「‥‥企業秘密。あなたが知る必要ないわ」
 ごごごごごごご! ←空気の重みが増した音
「と、とりあえず、確率は高い。アルトによると、この二件が同日、同じ時刻に盗みに入られるらしい。分散は痛いが、ここは2班に分かれてもらいたいところだね」
「‥‥そういえば、勾玉事件ですよね、これ。平良坂冷凍さんはどういう動きを?」
「動きも何も、彼は今回『狙われる側』だろう? 自分の手持ちの勾玉を奪われないようにするので手一杯だろうさ」
「藁木屋さんたちも勾玉持ってるんじゃ‥‥」
「‥‥私たちからそう簡単に物を盗れると思うの?」
「‥‥い、いえ‥‥(滝汗)」
 舞台は京都内。
 謎の怪盗集団の目的は? それを指揮する人物とは?
 勾玉をめぐる攻防戦は、新たな局面を迎える―――

●今回の参加者

 ea2144 三月 天音(30歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea2438 葉隠 紫辰(31歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea3167 鋼 蒼牙(30歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 ea5564 セイロム・デイバック(33歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea6526 御神楽 澄華(29歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea7029 蒼眞 龍之介(49歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea7871 バーク・ダンロック(51歳・♂・パラディン・ジャイアント・ビザンチン帝国)
 ea9275 昏倒 勇花(51歳・♂・パラディン候補生・ジャイアント・ジャパン)

●サポート参加者

佐上 瑞紀(ea2001

●リプレイ本文

●名家A
 京都中央部に居を構える、とある貴族の家。
 無闇に広いその屋敷が、今回狙われると言う名家の一つである。
 夜の帳の下りた京都‥‥普段はこの周辺も真っ暗になるのだが、ここ最近は勾玉泥棒対策のために篝火を絶やさない。
 ちなみに、こちらの家を担当しているのは‥‥。

三月天音(ea2144)
御神楽澄華(ea6526)
蒼眞龍之介(ea7029)
昏倒勇花(ea9275)

 以上の4名である。
「しかし、勾玉は天地八聖珠ではないようじゃのう。警備する意欲も湧かぬと言うものじゃ‥‥」
「え? 実物を見ずに、話を聞いただけで偽者と分かったのですか?」
「ああ。色云々以前に、勾玉に文字が刻まれていないと言う時点で、天地八聖珠ではありえないだろう」
「こう言ったら不謹慎かもしれないけれど、これで勾玉を気にしないで戦えるわね‥‥。後は犯人を捕まえることに全力を注げばいいんだもの。悪いことばかりではないわ‥‥」
 そう、三月と御神楽が事前に交渉した結果、屋敷内での警備の可否や勾玉の特徴などを聞き出せたのだ。
 結局、庭なら可、緊急時は踏み込み可という約束はもらったが‥‥家人はあまりいい顔をしていない。
 つまりは、胡散臭がられているのだ。
 藁木屋の紹介状など差し出したら、返って逆効果であった可能性が高い。
「‥‥あら? 何かあったのかしら」
「どうかされたか、昏倒殿」
「何か騒がしいのよ‥‥聞こえない?」
 ふと、昏倒が屋敷の反対方向で上がった叫び声に気が付いた。
 屋敷の警備に付いてから、2日目のことである。
「来たようじゃの! 急ぐのじゃ!」
「承知いたしました! 刃に込めるは誇り、瞳に込めるは意志‥‥いざ、参ります!」
 4人はすぐにその方向へ向かい‥‥丁度、屋敷から出てきた4人組の黒装束を発見した!
「‥‥違うな。彼らでは‥‥元堕天狗党の面々ではない‥‥!」
「同感ね‥‥。あの身のこなし‥‥忍者だわね‥‥」
 その、物音を立てない忍び歩き。
 身体はおろか顔さえも黒装束でくまなく隠し、素顔を一切悟らせないようにする前準備。
 そして何より、その鋭い眼光‥‥まさにプロのものだ。
「どうやら当てが外れて逃げるところのようじゃな。じゃが、このままでは返さん!」
 三月の言葉に、黒装束たちは一瞬目配せをし、即刻逃走に入る!
「と、当然と言えば当然ですか! しかし!」
 こちらもその程度のことは予測済み。
 特に御神楽は『侵入しやすい場所』のあたりをつけておいたため、どの場所からならどう逃げるという予測がしやすい。
 すぐさま他の3人に指示を出し、蒼眞には龍牙(ソニックブーム)、三月にはファイヤーボム(高速初級)で攻撃してもらう!
「しかし、よいのかのぅ‥‥火事になったりせんじゃろうか」
「大丈夫です、この辺りには燃えるようなものがありません!」
「あたしは突貫あるのみね。おほほ、乙女の抱擁をお受けなさい!」
「昏倒殿、ご油断めされぬよう」
 冒険者一行が後ろを取らせたままでは脅威になると判断したのか、黒装束たちはくるりと反転した。
 そこに昏倒と御神楽が切り込み、接近戦に持ち込む!
 しかし!
「たっ!? 竜巻の術‥‥!」
「痛た‥‥珠のお肌に傷が付いちゃうわ‥‥!」
 なんと黒装束のうち、二人が高速詠唱で竜巻の術を発動し、昏倒と御神楽を吹き飛ばす。
「前を見るのじゃ! 大ガマの術も使われておるぞ!」
「いかん! 援護する!」
 残りの二人は高速詠唱で大ガマの術を使い、合計で二匹の大ガマが出現!
 内一匹は蒼眞がソニックブームで攻撃、怯ませた。
 が、もう一匹の方は不意と言うこともあり、昏倒を殴り飛ばした!
 そして4人の戦列が大いに乱れたことを確認した黒装束たちは、素早く壁に鉤縄を投げ、手際よく逃げ出してしまう。
「くっ、ま、待ちなさい!」
「ダメよ御神楽さん! この大ガマをなんとかしないと、屋敷に被害が出るわ!」
「おのれ‥‥まんまと逃げれたのう。こうなればこいつらでウサ晴らしじゃ」
「相手は忍‥‥松岡殿と関係があると言うわけでもあるまい。何が起こっていると言うのだ‥‥」
 術者の力量次第だが、大ガマだけなら大したことは無い。
 体勢を立て直した4人は、すぐさまこれの排除に当たる。
 昏倒が近距離で時間を稼ぎ、引きずり倒し‥‥蒼眞が遠距離で切り裂く。
 その間に御神楽はバーニングソードを発動‥‥その大剣、野太刀「大包平」で燕返しを慣行。
 一気に瀕死状態まで持っていく様は、まるで炎の化身である。
「ほれ、止めじゃ」
 ふらふら状態の大ガマに近づき、高速ファイヤートラップで息の根を止める。
 後ろで見ていた家人たちから拍手が起きたのは、その直後であった―――

●名家B
 さて、こちらは名家B。
 京都南部に位置し、代々武士の家系であるという。
 事情を説明したら、あっさりと話を信じ、協力を喜んでくれた。
 こちらの担当は、

葉隠紫辰(ea2438)
鋼蒼牙(ea3167)
セイロム・デイバック(ea5564)
バーク・ダンロック(ea7871)

 以上の4人。
「またも勾玉が引き寄せる縁、か。平良坂冷凍だけでも手を焼くと言うのに、此度は如何な輩が介入してくるのか‥‥」
「うーむ、勾玉泥棒なぁ‥‥。勾玉しか盗まないとはまた奇特な」
「何にせよ、鋼さんのおかげで屋敷内の警備も出来たんですから上等ですよ。バークさんもいかがですか?」
「うっせーや。俺が屋敷内に入れないの知ってんだろ?」
 この家の家人と同じく侍である鋼の嘆願は、その礼節も相まって非常に喜ばれた。
 待遇良く屋敷内に招かれ、現在は勾玉が置いてある部屋の隣で警備中だ。
 ちなみにバークはというと、その体重と装備の重さで床が抜けては困ると言われ、すぐそこの庭で待機中。
 加えて言うなら、葉隠も屋根の上で辺りの監視だ。
 縁側にお茶だけは出してもらっているが、手をつけてはいない。
「バーク殿、何か見えるか? 怪しい影などは‥‥」
「いんや、なんにも。静かなもんだぜ」
 屋敷の警備について二日目‥‥夜もふけてきた。今日もハズレかと思っていた、その時。
「しっ。静かに‥‥」
 鋼が人差し指を口元にやり、3人を制す。
 隣の部屋に、突然人の気配がする。
 数は4人‥‥明らかに家人ではない。
 好機と見た鋼は、他の3人にジェスチャーでそれを伝え‥‥一気に隣の部屋へと踏み込んだ!
「そいつを盗まれるわけにはいかないぜ!」
「不埒な行い、ここで終わりにしていただきます!」
 がたんと襖を開けると、黒装束に身を包んだ4人の賊。
 すでに確認が終ったのか、勾玉の入っていた箱をセイロム目掛けて投げつけ、離脱を計る!
「っ! こ、これは‥‥違います、例の勾玉じゃありません!」
 実物を見たことがあるセイロムは瞬時にそれを判断、追撃に加わる。
 庭ではすでに、黒装束たちとバークたちがにらみ合っていた。
「同業か‥‥相手に取って不足無し‥‥! 汝ら、後ろ暗き謀無くんば、名を名乗れ‥‥!」
「おいおい、お前さんが逆の立場なら名乗るか? 相手が忍者じゃ、口はわらねぇと思うぜ」
 黒装束たちは庭を駆け抜けて脱出しようとしていたらしいが、バークが立ちはだかってそれを阻止した。
 すぐにセイロムも追いつき、挟み撃ちのような形で賊と対峙する。
「しかし、お前らが怪盗か? 俺の顔に見覚えはないか? どうして勾玉を狙う? 聞かせちゃくれねぇか?」
 バークのその台詞に、黒装束たちは目配せすらしない。
 つまり、『知らない』もしくは『知っていてもいなくても関係ない』という意思の現れ。
 彼らはプロなのだ‥‥仕事に私情は挟まないというのだろう。
 その証拠に、黒装束たちがバークに向かって走り出す!
「問答無用か? 仕方ねぇ、いくぜっ!」
 広い庭という場所は、バークにとって戦いやすい場所。
 高速オーラアルファー(専門)を発動し、黒装束たちを吹っ飛ばす!
「よし! オーラショットで続く!」
 高速詠唱も使える鋼は、すでにオーラエリベイションを発動済み。
 あとはオーラショットで攻撃していけば、回避は高くとも防御の薄い忍者などすぐに捉えられる。
 ‥‥と、思ったのだが。
 ボン、と爆発音がして、オーラショットが空振りに終る。
 高速微塵隠れ‥‥狙った黒装束は、すでに視界の端のほうへ逃れていた。
「ちぃっ‥‥! やつら、機動力を重視した斥候型の忍か!」
 追おうと思っても追いつけるものではない。
 目の前に残った3人も、いつ微塵隠れで逃げ出すか分かったものではないのだ。
「くっ! 時間を稼げれば‥‥!」
 葉隠とセイロムが斬りかかるも、その瞬間に対象とは別の黒装束が高速春花の術を使用、葉隠を睡眠状態に陥れる。
 抵抗に成功したセイロムであったが、斬りかかった相手が突然煙と共に掻き消える。
 どうやら微塵隠れではないようだが、その姿は知覚出来ない。
「こっ、こいつら! 葉隠さん、起きてくれ!」
 高速オーラショット初級で葉隠をたたき起こす鋼。
 残る黒装束は二人‥‥!
「くっ‥‥すまん、助かる‥‥!」
「くそっ、どうすんだ! もう一回オーラアルファー撃っても、今度は逃げられちまうかも知れないぜ!」
 そして、時間もかけていられない。
 何故なら、相手は高速詠唱で様々な忍術を扱うのだ‥‥人が集まれば集まるほど、混乱に乗じることは容易いだろう。
 そうこうしているうちに、黒装束たちは揃って大ガマの術を発動する。
 それを後方のセイロム、前方の葉隠たちにけしかけ、自分たちは二手に分かれて行動する!
「野郎っ! 嫌な置き土産残しやがって!」
「放っておけないこっちの事情を上手く突かれた! 仕方ない、こいつらを撃破するのが先だ!」
 鋼の指揮で、大ガマを処理する4人。勿論、終るころには黒装束の姿は見えなくなっている。
 謎の忍者集団が京都の名家を襲ったのは、同じ夜のことであった―――