【五龍伝承歌・弐】地底城攻略戦!
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■シリーズシナリオ
担当:西川一純
対応レベル:11〜lv
難易度:やや難
成功報酬:9 G 92 C
参加人数:14人
サポート参加人数:9人
冒険期間:01月03日〜01月15日
リプレイ公開日:2007年01月07日
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●オープニング
世に星の数ほど人がいて、それぞれに人生がある。
冒険者ギルドでは、今日も今日とて人々が交錯する―――
「冒険者の方々に手伝ってもらい、大分作業も捗った。それによると、例の地底城は元々は人類側が作ったものらしい」
「城っていうより砦みたいなものだって聞きましたけど‥‥なんでまたあんな風穴の奥にそんなものを?」
「黄泉人に対抗するため、少しでも戦力を必要とした人類側は、隠し砦たる地底城で埴輪を量産し、事に当たろうとした。生物が戦っては、生気を吸われて殺されると敵の戦力になってしまうからね。しかし、敵も愚かではなく‥‥逆に埴輪を自分たちの戦力として使うべく、例の地底城へかなりの勢力を差し向けたそうだ」
「で、中にいた人たちは数に対抗できず戦死。埴輪もろとも敵の戦力になってしまった‥‥と」
「そういうことだろうな」
京都冒険者ギルド、いつもの一角。
京都の便利屋・藁木屋錬術と、冒険者ギルド職員・西山一海。
いつもの見慣れた二人である。
「そもそも天然の要害として作られた地底城だけに、敵に奪取されてしまうと攻略は困難。しかも作っていた埴輪まで敵に回られては形勢は悪化する一方だろう? よって人類側は、黄泉人の軍勢が奥へと進み、氷壁のある地点を越えて地底城で交戦している間に氷壁を作成。地底城ごと黄泉人軍を封印したのだそうだ」
「‥‥ちょっと待ってください。それって、地底城の中にいた人たちは完全に見殺しですよね!?」
「‥‥そういうことになる」
「いくら方法がないからって‥‥それじゃ、あんまりですよ‥‥!」
「時は聖徳太子の頃まで遡るらしいが‥‥その時の司令官も、辛い決断だったようだ。地底城に残し、見殺しにした人たちに申し訳ないと、自ら命を絶ったとか。しかしだ、この決断がなければ京都付近の歴史はまた変わっていたかも知れないからな‥‥一概に良い悪いは判断できんさ」
「‥‥それで、黄泉人側の残りの戦力はどれくらいなんでしょう?」
「脇道に逸れていた討ち漏らしを含めても、そんなに多くはないはずだ。一反妖怪と埴輪だけを気にすればいい程度だろう」
「程度って‥‥埴輪、どれくらいいるんですか?」
「記録では、少なくとも300体は作られたと書かれている」
「ぶっ! 無茶苦茶ですよ! また消耗戦ですか!?」
「いや、埴輪については氷雨君が何やら作戦があるらしい。『半分以上減らせると思うから、空飛んでるのと討ち漏らしの埴輪をお願い〜』だそうだが」
「一反妖怪の数は‥‥?」
「そちらは、前回の目撃証言で確定しているのが10匹。さらにいるかは不明だ。しかし、地底城にはもうこれ以上の戦力は残っていないはず。一反妖怪と埴輪を突破し、黄泉人を撃破してもらいたい」
「今回を最終決戦としたいですね‥‥地底城に散った方々のためにも」
「あぁ。それに、黄泉人をこのまま野放しにすることは断じてできないからな‥‥」
氷雨と共に紡ぐ伝承歌も、いよいよ終幕間近。
果たして、あなたがたが紡ぐ五龍伝承歌は、死者たちの鎮魂歌となりえるだろうか―――
●リプレイ本文
●舞え、戦舞
『謳え、伝承歌。
集え、龍の下に。
古き死者の慰めとなれ―――』
幾度の激戦を繰り返してきた、風穴での死闘。
響き渡るヴァージニア・レヴィン(ea2765)のメロディーの魔法が、一行の指揮を高めている。
『そぉれ〜! ごろごろごろ〜♪』
一人先行した氷雨‥‥水の龍、蛟。
襲い来る埴輪の大軍の中央付近まで一気に突撃し、その巨体と体重に任せてごろごろ転がった。
ここに配備されていた埴輪たちは素焼きの土で出来ているものが多く、衝撃には強いようだが圧力には脆い。
バキンバキンバキンと小気味のいい音が響き渡り、凄まじい勢いで埴輪たちが割れていくが、そこはそれ‥‥流石に300以上の埴輪とあれば、流石の氷雨も倒しきれるものではない。
「そーれそれー、今回は僕も後始末に回りましょうか〜。料理はまな板の上だけでするものじゃありません〜」
「とは言っても、こいつらは主力どころでござるが‥‥。何はともあれ、双牙烈光剣、ご覧に入れるでござる!」
「ならばなお更頑張らなければいけないね。この剣とナイトの名に誓って地底城への道、切り開こう」
「うちの魂くれてやる! 業火の如く燃え盛りなっ! 派手にいこうか、派手にねぇ!」
「精一杯やりますです! 氷雨君のためにも‥‥ここで死んでしまった人たちのためにも!」
井伊貴政(ea8384)はバーストアタックでの金棒で。
七枷伏姫(eb0487)は二刀流のオーラソード(達人級)のソニックブームで。
ヒースクリフ・ムーア(ea0286)はオーラ魔法のセットとバーストアタックで。
御堂鼎(ea2454)はソウルセイバーとバーストアタックで。
そして月詠葵(ea0020)は後衛の護衛をしながら、忍者刀で埴輪を攻撃していた。
前衛を担当する面々が数を減らし、敵を押し止めている間に、後衛の面々も準備を万端にする。
「昔の人達はとても苦労して、あの埴輪達を作ったんでしょうけど、こうも簡単に壊されていくのを見てると‥‥いっそ清々しくて、何だか和みますね」
「らっしゃい! 今日の越後屋のお勧めはグラビティーキャノンの連射ですよ! お値段はなんとタダぁ!」
ゼルス・ウィンディ(ea1661)はライトニングトラップを展開、後衛に近づく埴輪を虱潰しに。
楠木麻(ea8087)は、今回は越後屋店員にコスプレしての出撃である。
「ところで楠木さん。その弄りづらい格好はともかくとして、例のゴーレムとやらはどうなさったのですか?」
「弄りづらいってなんですか!? 知ってるでしょう、重い上に足が遅いから村に置いてきたんですっ!」
「いえいえ、ネタの後始末をと思いまして」
「ありがたいようなありがたくないようなーっ!?」
島津影虎(ea3210)は完全なる後衛の直衛役であるため、こんなこともできたりする。
埴輪を足でひきつけ、前衛もしくは氷雨が気付いて倒してくれるのを待つ役だ。
「みんな、気をつけて! 一反妖怪のご登場よ!」
ヴァージニアが歌を中断し、注意を呼びかける。
見れば、ひらひらとやたら長い布切れのようなものの集団が‥‥!
「おー、よくよく見ると長いなぁ。一反って、イギリスの単位にすると約33メートルだっけか?」
「そのようですね。鳥目のハスターには残念ながら待機してもらって‥‥ファイヤーコントロールのスクロール、こんな時くらい役に立ってもらいましょう」
地味にダメージが蓄積する前衛を回復させている八幡伊佐治(ea2614)は、一反妖怪の長さにちょっと驚く。
イメージの問題はさておいて、弱点である炎での攻撃を開始するベアータ・レジーネス(eb1422)。
たいまつから発生させた炎は、威力が低いながらも一反妖怪にしっかりダメージを与える‥‥!
「悪の手先となり地底に溢れる埴輪はボクたちの脅威! 可哀想だけど一掃しなくちゃいけないんだ! そしてその邪魔をさせないために‥‥僕たちで、一反妖怪を撃破だねっ♪」
「長いということは、それだけ被弾の可能性が上がるということでもある。ライトニングソードでもいけるな」
「く、鎖‥‥分銅‥‥! ライトニングアーマーで‥‥直接の、火じゃ‥‥なくても‥‥!」
とかく厄介なのは、飛行する上に火以外の魔法に耐性があるという一反妖怪。
しかし、予めその弱点、対処法を研究しておけば、集った14名の冒険者にとっては敵ではない。
草薙北斗(ea5414)がFブルームで上空に行き、一反妖怪を高速微塵隠れで地面へと叩きつける。
Fブルームが壊れないかちょっと心配な戦法ではあるが、思ったより効果はあるらしい。
落ちてきたところを琥龍蒼羅(ea1442)のライトニングソードで斬りつけるが、やはり一瞬しか接触しないのが災いしてかあまり効果が無く、琥龍は瞬時の判断で仏剣「不動明王」に装備をチェンジ。
一方、水葉さくら(ea5480)のライトニングアーマーつきの鎖分銅のように、長時間電撃に晒す攻撃は有効なようだ。
電気そのものは効かずとも、電気の高熱で一反妖怪自身が発火するからである。
『おっとぉ。ぺらぺらで噛み甲斐がないけど、みんなの邪魔はさせないよ〜!』
でかい氷雨は、この風穴内なら充分一反妖怪に噛み付ける。
埴輪に、一反妖怪に‥‥ヒトである一行と力を合わせ、その力を振るう!
『葵くん、乗って! 右の方からぺらぺらが来るよ〜!』
「はいです! 氷雨君、いきますよー! 天剣‥‥瞬牙!(シュライク+ブラインド)」
氷雨の頭に乗り、上空の一反妖怪を切り裂く月詠。
「シャドウバインディング! 駄目よ氷雨君、後ろにも気を配らないと!」
『ありがと、ヴァージニアお姉ちゃん♪』
高速魔法で、一反妖怪の突撃から氷雨を救うヴァージニア。
「サーバトー。サーバトー。たーっぷり・さーばとー」
『伊佐治お兄ちゃん、『さばと』ってなにー?』
「はっはっは、氷雨、覚えておくといい。サバトとはこういう火遊びのことだぞー」
妙な歌を歌いながらファイヤーコントロールのスクロールを使い、氷雨に嘘を教える八幡。
「氷雨に妙なことを吹き込むんじゃないよ、まったく! あとで呑みながら教えてやるから、今は集中しな!」
『はーい、鼎おば‥‥』
「あん?」
『‥‥鼎お姉ちゃん(汗)』
「よし」
ある意味誰よりも恐い御堂。
『さくらちゃん、危ないー!』
「わ‥‥す、凄い‥‥です‥‥。は、埴輪を‥‥5匹も、まとめて‥‥なぎ倒し‥‥ちゃいました‥‥」
上空に専念していた水葉。
島津や月詠の援護が間に合わないと判断した氷雨は、尻尾による薙ぎ払いであっという間に埴輪を蹴散らす。
特に、氷雨が名前と顔を一致させている5人とは、よい連携が取れている。
ただ単に長い付き合いだから‥‥と言うわけでは決してないだろう。
そして、ついに‥‥!
「これで最後だ! 井伊君!」
「はいはい〜、了解ですよ〜。ね、島津さん〜」
「勿論です。これで終わりといたしましょう」
3人が砕いたのが最後の埴輪。
「ちょろちょろと鬱陶しい。ストームで壁に磔にしてやる」
「効かずとも、怯ませることはできるござるよ!」
「同じく! 空じゃコケないんで、弾き飛ばすだけですけどね!(泣)」
「そして、磔になる場所にライトニングトラップを発動。罠は最後に、ささやかに‥‥ですよ」
「まだ動くようですね。炎の追撃もお忘れなく」
「とっどめー♪ 爆・龍・拳! なんちゃって♪」
そして、魔法使い組が集中砲火で黙らせた一反妖怪を最後に、付近で一行以外に動くものがいなくなった。
『勝ったー! よーし、あとは黄泉人とかいうのだけだよー!』
残るは、地底城内の黄泉人だけ。
一行は頷きあい、砦の内部へと突入した―――
●伝承歌、ピリオド
「‥‥動く物の気配がないね。どうやら本当に戦力は残っていなさそうか」
「しかし、酷い有様だな。外見では分からなかったが、内部は朽ち果てている」
「か、考えてみれば何百年も前の建物な上、お手入れしてないだろうからね〜」
ヒースクリフ、琥龍、草薙。
敵に襲われることもなく、一行は砦の奥へと進む。
途中見つけた武器庫にあった武具は完全に錆付いており、少し力を入れただけでポッキリ折れるほど。
この分では書庫などがあったとしても、虫食いやら経年劣化で使い物になるものはあるまい。
戦闘が終わった後のトレジャーハントは期待できそうになかった。
「静かに。どうやら大将の間のようでござる」
「いよいよ決戦ですね〜。黄泉人さんっていうのは、どんな人なんでしょう〜」
「はっ、人となりなんてこの際関係ないね。うちたちはケリをつけるだけさ」
「過激な発言だけどその通りじゃのー。正直、ここまで来て許しちゃおけん」
七枷、井伊、御堂、八幡。
開けた場所の奥に上座‥‥そしてそこには、胡坐をかいてどっかりと座っている人影が‥‥!
「黄泉人とお見受けします! この風穴での決着‥‥今こそつけさせていただきますです!」
「お、お兄様‥‥見ていて、ください。こ、この黄泉人さんを‥‥倒して、温泉をっ‥‥!」
「ちょっとちょっとさくらちゃん。目的が違うから。ね?」
「ふむ。楠木さんとはまた違ったボケっぷり‥‥研究の価値がありそうです」
「ボクはいつだって真面目ですってば!? っていうか、みんなどうして水葉さんの時は寛容なんですかぁぁぁっ!?」
「ふふふ‥‥なんて言うんでしょう。はっきり言うなら、人徳でしょうか」
「うーがー!」
「シリアスに決めさせてくださいなのですー!?」
月詠、水葉、ヴァージニア、ベアータ、楠木、ゼルス。
最初の月詠が作った緊迫感は、ものの数秒も保たず瓦解する。
相手は、アンデッドの大群を操っていた、敵の総大将なのに。
が、そんな圧倒的な隙を見せているのに、黄泉人は胡坐をかいたまま動かない。加えて言うならこちらを見もしない。
ふと気付けば、島津がとてとてと無警戒で黄泉人に近寄ったところだった。
「‥‥死んでいますね。というか、これは普通の仏様のように思われますが」
『えぇっ!?』
一行が声を上げた瞬間、どこからか声が響いてくる‥‥!
『クックック‥‥褒めてやろう、人間ども!』
『外!? っていうか上だよ!』
氷雨の言葉に、一行が移動すると‥‥そこには、空中にぷかぷかと浮かぶ黄泉人の姿が‥‥!
『まさかあの不死者軍団と埴輪たちをも突破してくるとはな‥‥しかも、そんなわずかな数で。蛟が加勢しているとはいえ驚いたぞ! しかし、ツメが甘い。そういうところは何百年経っても変わらんな!』
「リ、リトルフライ‥‥の、魔法‥‥です‥‥!」
「野郎っ! どっかに隠れてて、隙を見て逃げ出す算段してたのかい!」
『何とでも言うがいい。しかし、あのお方からお預かりした軍勢を失ったこの恨み‥‥決して忘れはせんぞ! この丹波の地‥‥必ず焦土と化してくれる! 再び軍備を整えてな! ッハッハッハッ‥‥!』
「あ、あいつ逃げちゃうよ! 氷雨君、追えない!?」
『む、無理ー! 砦の中、障害物が多くて機敏には動けないよー!』
結局、黄泉人は氷壁に開いた穴を抜け、逃げおおしてしまった。
勿論追撃しようと試みたのだが、黄泉人が予め何か細工をしておいたらしく、彼が通り過ぎた直後に天井が崩れ、氷壁の出入口を塞いでしまったのである。
幸い、瓦礫の量は生き埋めになるような規模ではなかったので、なんとか一行も脱出できたわけだが。
『逃がしちゃった‥‥。でも、これでこの風穴が悪いことに使われることもないよね。みんな、お疲れ様ー♪』
そう、何はともあれ勝ったのだ。
圧倒的な数の差を跳ね除け、地底城も奪還。
黄泉人を野に放ったのは痛いが、一先ず風穴をめぐる伝承歌は終わりを告げたのである。
ヴァージニア主導で村への報告も済ませ、近隣の村の氷雨への信頼度も更に上がったことだろう。
今は、これでいい。
村人たちの不安も取り除かれ、危機も去ったのだから。
そして人々は語り継ぐ。
水の龍と戦士たちが織り成した、風穴での伝説を―――
●???
「なるほど‥‥五行龍、か。私が封じられた後に丹波のあちこちに封印された龍‥‥。ククク‥‥面白い。こやつらを戦力に組み込めれば、倒された軍勢など比較にならん。あのお方へのよい土産となろう。聞けば丹波は混沌とした情勢と聞く‥‥漬け込むのも容易かろう‥‥!」