【五龍伝承歌・弐】丹波の援護

■シリーズシナリオ


担当:西川一純

対応レベル:11〜lv

難易度:難しい

成功報酬:12 G 30 C

参加人数:14人

サポート参加人数:7人

冒険期間:12月17日〜12月29日

リプレイ公開日:2006年12月20日

●オープニング

世に星の数ほど人がいて、それぞれに人生がある。
冒険者ギルドでは、今日も今日とて人々が交錯する―――

「さて、前回は無事、熱破さんと氷雨君の救出に成功したわけですが‥‥」
「敵の数は圧倒的、か。さしもの私も、洞窟を埋め尽くすほどの不死者相手では避けきれるものではない」
 冒険者ギルド、いつもの一角。
 これといった打開策が思いつかない二人は、揃って溜息をつく。
 京都冒険者ギルドの職員・西山一海と、京都の何でも屋・藁木屋錬術‥‥何かと悩み事が多い二人であった。
「で、結局どうするんです? こう、何十人も冒険者の方々を募って制圧に向うとか」
「‥‥依頼料がどれだけかかると思っているんだ君は。私やアルトも無限に金を持っているわけではないんだぞ」
「じゃあ、前回誰かが言ってたみたいに、山名豪斬様に救援をお願いするとか」
「それはもうやった。‥‥そういえば、そろそろ返事が来てもいいころだと思うが‥‥」
 と、その時である。
 藁木屋の相棒であるアルトノワール・ブランシュタッドと共に、珍しい組み合わせと言える人物が顔を出した。
「‥‥錬術、家にこいつがきたわよ。例の件の返事だって」
「やっほー! お久しぶりだね! 宵姫ちゃん惨上〜♪」
「流行ってるんですかその挨拶!?」
「どうでもいいだろう、そんなことは。それより、早速ご返事を伺いたい」
 丹波藩が誇る魔法戦士部隊、八卦衆の一人‥‥月の宵姫。
 すちゃらかな性格をしてはいるが、実力は確かである。
 その宵姫が、藁木屋たちに告げる。
「了承だって! 丹波藩からは武士団30人と、八卦衆の炎夜君、砂羅鎖ちゃんと、八輝将の真紅ちゃん、金兵衛君を助っ人に送り込むよ。もっとも、冒険者の人たちとは行動を共にせずに、さっさと風穴内に入って、道を切り開くことに専念するってことになるけどね♪」
「‥‥充分でしょ。丹波の魔法戦士が4人も集まれば、それこそごっそり減らせるわよ」
「炎夜さんと真紅さんを両方送ってくれるのが心憎いですね。あの二人が一番の適任ですから」
「でしょー。豪斬様はちゃんと考えてくれてるんだから♪ でも気をつけて欲しいんだけど、丹波藩から出した救援部隊は、絶対一緒に行動できないからそのつもりで。悪しからず♪」
「人数が多いと色々大変ですもんねぇ‥‥(しみじみ)」
「まぁ、色々とな(汗)。ではこちらも募集人数を増員といこう。一人頭の報酬額は減ってしまうが」
「なんだか追い風が吹いてきた感じですね! 人間の力を見せてやりましょう!」
「‥‥上手くいくといいけどね」
 風穴をめぐる戦い‥‥丹波藩主という強力な助力を得て、反撃に転じることが出来であろうか―――

●今回の参加者

 ea0020 月詠 葵(21歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea1442 琥龍 蒼羅(28歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea1661 ゼルス・ウィンディ(24歳・♂・志士・エルフ・フランク王国)
 ea2454 御堂 鼎(38歳・♀・武道家・人間・ジャパン)
 ea2614 八幡 伊佐治(35歳・♂・僧侶・人間・ジャパン)
 ea2765 ヴァージニア・レヴィン(21歳・♀・バード・エルフ・イギリス王国)
 ea3210 島津 影虎(32歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea5414 草薙 北斗(25歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea5480 水葉 さくら(25歳・♀・神聖騎士・人間・ジャパン)
 ea8087 楠木 麻(23歳・♀・僧兵・人間・ジャパン)
 ea8384 井伊 貴政(30歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 eb0487 七枷 伏姫(26歳・♀・侍・人間・ジャパン)
 eb1422 ベアータ・レジーネス(30歳・♂・ウィザード・人間・フランク王国)
 eb2099 ステラ・デュナミス(29歳・♀・志士・エルフ・イギリス王国)

●サポート参加者

天城 月夜(ea0321)/ 天城 烈閃(ea0629)/ 小野 織部(ea8689)/ アウレリア・リュジィス(eb0573)/ ユナ・クランティ(eb2898)/ 玖耀 藍月(eb5510)/ 頴娃 文乃(eb6553

●リプレイ本文

●精鋭集結!
 幾度となく繰り返してきた、丹波藩某所の風穴内の探索。
 だが今回は、完全なる戦闘が主眼。
 なんと丹波藩主から送られた救援部隊も先んじて風穴に向かい、冒険者たちを援護してくれるという。
 挑むは、歴戦の勇者たち。

 ジャパン最強の浪人との呼び声もある美少年剣士、月詠葵(ea0020)。
 豊富な知識でクールに仲間を支える風の志士、琥龍蒼羅(ea1442)。
 風魔法の達人にしてパッと見女の子、ゼルス・ウィンディ(ea1661)。
 攻守にバランスの取れた戦闘力‥‥酒飲みは伊達じゃない。御堂鼎(ea2454)。
 お坊さんにしてナンパの達人、そして一行の回復役。八幡伊佐治(ea2614)。
 歌で士気をも高め、魔法で援護する月の歌い手‥‥ヴァージニア・レヴィン(ea2765)。
 地味なれど実力は確か。後始末ならお任せあれ。島津影虎(ea3210)。
 炎の龍の心も動かす無垢なる瞳。少年忍者、草薙北斗(ea5414)。
 その愛らしさは兄のために? さしずめ風穴に咲く光の華‥‥水葉さくら(ea5480)。
 ノリのいい性格ながら、その実力は実は八卦衆並み? 地の志士、楠木麻(ea8087)。
 料理を特技としながらも、関が原の勇者とまで呼ばれる人物‥‥井伊貴政(ea8384)。
 闘気剣の二刀流はまさに脅威。遠近に対応する技も持つ、七枷伏姫(eb0487)。
 風魔法の習得数なら随一。氷をも操り始めたウィザード、ベアータ・レジーネス(eb1422)。
 火と水‥‥相反する力を操るお色気お姉さん? ステラ・デュナミス(eb2099)。
 
 いくら減ったとはいえ、敵の数は明らかにこちらより上‥‥この14人で、量より質を証明出来るか?
 兎に角一行は、いつものように道中を急いで、一日でも速く風穴にたどり着く。
 すると、そろそろ撤収するのか、丹波藩の救援部隊の姿を風穴前で見つけた。
 八卦衆・八輝将の術士たちも、30人ほどの武士団もかなり疲弊しており、負傷している者も少なくない。
 が、そこで。
 よせばいいのに‥‥素直に労いの言葉や引継ぎの意を示せばいいのに。
 どうしてもボケずにはいられない人物が、14人の中に一人。
「ご苦労、我が精鋭たちよ!」
 本人は、グリフォンに摘んでいた回復薬をおすそ分けするつもりだったのだが、相手はそう思わなかったらしい。
 事の次第を全て見ていた八幡伊佐治(26)は、その時の様子をこう語る。
「楠木殿が吹き飛ばれるまでの時間? いや‥‥もう2、3秒かそこらで‥‥。
 うん、だから楠木殿に放たれた数々の魔法も‥‥うん、その2、3秒で詠唱したということになるかのー。
 ソウ。ぶっ飛ばされたんだ。
 いや‥‥一気に。
 こう‥‥一気にドカンて感じで‥‥。
 え?『殺されるかと思ったか?』って‥‥楠木殿が?
 思ったね。これ以上ないってくらいに。
 しょっちゅう顔を合わせてるワケだから、ネタ士・楠木麻の伝説は当然目にはしてるよ。
 しかし相手が八卦衆や八輝将となるとなァ‥‥鬼気迫るっていうか‥‥。
 マグナブローって言うんだっけ? あの魔法。
 坊主の僕が言うのもなんだけどね‥‥チョット憧れちゃうよな。色モノとして‥‥」
『‥‥いいけどさぁ。早く治してあげないと、あのお姉ちゃんホントに死んじゃうよ?』
 蛟である氷雨にまで同情される始末。
 楠木麻‥‥これもまた、個性であろうか―――

●本題に戻って
「はぁぁっ! ふぅ‥‥前に比べると段違いに楽なのです♪」
「はぁ、これで楽なんですかー。僕にはこれでも結構な数に見えますけどね〜」
「うわー、でもあれだよね。地面に散乱する黒焦げの死体って言うのは、あんまりきもちのいいもんじゃないよね(汗)」
「丹波藩の魔法戦士部隊って凄いのねぇ。相性もあるでしょうけど、4人でこれだもの」
「武士団を連れているとはいえ‥‥これで16人勢ぞろいしたらどうなるか、恐ろしい限りでござる」
 月詠、井伊、草薙、ステラ、七枷。
 風穴内を進む一行は、勿論不死者と遭遇した。
 が、それは前回と比べれば酷く散漫で、この14人にかかればあっという間に切り伏せられてしまう。
 どうやら丹波の救援部隊はメインの道しか掃除しなかったらしく、どうやらこの不死者たちは脇道に入り、うろうろしていた連中が大通りにでてきたものらしかった。
「いけるな。伊佐治、脇道にまだ不死者はいそうか?」
「んー‥‥いや、今のところいないな。少なくとも効果の範囲ではの」
「そうね‥‥嫌な感じもしないし、多分このまま進んで大丈夫じゃないかしら」
「余力のあるうちに、最も数の集まっているところを潰しにかかりましょう」
 琥龍、八幡、ヴァージニア、ゼルス。
 ファイヤーボムの熱のせいか、苔もすっかり焦げて乾ききっている風穴は、想像以上に動きやすかった。
 やはり、濡れているとか苔があるとかは、移動や戦闘に多分の影響を与えていた模様。
 それに加え、今回は戦闘力のあるメンバーが4人も増えているので、ちまちま出くわす敵など妨げにならなかった。
「それにしても、これだけの不死者、どこから湧いて出てくるものなんでしょうね?」
「あ、あの‥‥氷壁で、封印されていた‥‥ということは、かなり‥‥昔から、あの奥にいたのでは‥‥?」
「ふむ‥‥なるほど。もしかしたらここは、かなり昔からある古戦場なのかもしれませんね」
「志士ダーキャノン(グラビティーキャノン)! うぅ、ボクはボケてるつもりはないのに‥‥(泣)」
「自覚症状がないってのは致命的だねぇ。まぁいいさ、氷雨! 今度こそうちたちの力を見せようじゃないか!」
『おー! もうぶつけないようにするよー!』
 ベアータ、水葉、島津、楠木、御堂、氷雨。
 丹波の救援部隊がどれだけ数を減らしたのか分からないが、もしかしたら前回で大半を減らしていたのかもしれない。
 御堂が氷雨の頭に乗り、薙刀で器用に大立ち回りを行うのも成功し、一行のテンションも上がる。
 途中、八幡の提案した組み合わせでローテーションをし、野営もしたが、現れた不死者の迎撃も楽々であった。
 惜しむらくは、脇道をベアータのアイスコフィンで塞げなかったこと。
 いや、塞ぐこと自体は出来たのだが‥‥進んで2日までの地帯では気温が0度以下ではないらしく、時間が経てば1日も保たず溶けてしまうであろうとの見解がステラから出たからだ。
 兎に角、目指すは氷壁。そしてその奥。
 敵の黄泉人の戦力‥‥まさか、これだけで終了というわけではあるまい。
「ちなみに麻お姉ちゃん。技の名前間違ってると思うのですよ」
「ほぉう。聞きましょう、月詠君」
「うや‥‥『志士ダーキャノン』じゃなくて『志士ダーフェスティバル』が正解かと♪」
「あっはっは。で、二撃目は『志士ダーカーニバル』ですか?」
「みゅ♪ これで麻お姉ちゃんもますます人気者なのですよ♪」
「志士ダー‥‥落ちる意味でのすとーん」
「うぉーるほーるなのですかぁぁぁぁぁっ!?」
 蝶・エレガントな仮面をつけた楠木の明日はどっちだ―――

●氷壁、その奥に
「あらあら‥‥流石に氷壁の辺りには結構な数が配置されてるわね。ざっと50体くらいかしら?」
「ここは私たちにお任せを。纏まっている相手は魔法使いの餌食です」
「そうね。せっかく魔力を温存しておいたんだから、どーんとアイスブリザードいっちゃおうかしら♪」
 氷壁のちょっと手前に到着した一行は、ヴァージニアの声で敵の集団がいることを察知。
 しかし、50体といってもこちらには魔法の使い手が何人もいる。
「ゼルス、威力は多少抑えろ。トルネードで天井を崩しては元も子もないからな」
「じゃあまず僕が突っ込んで、連中をこっちに引き寄せるよ! 撃つときに合図を貰えれば、微塵隠れで逃げるから!」
「では拙者がオーラソードの二刀流とソニックブームで援護するでござる」
 話が決まれば後は簡単であった。
 単身突っ込んだ草薙を襲おうとした不死者たちは、哀れステラ・ゼルス・琥龍の範囲魔法であっという間になぎ倒される。
 範囲に収まらなかった者や、まだ動く者は‥‥。
「後始末はお任せを。纏まっていなければどうということはありませんからね」
「ちょっと興ざめですね〜。もっと大変かと思ってたんですけど〜。でもまぁ、楽なら楽でいいんですけどね〜」
「ん、まったくだ。坊主の出番が少ないというのはいいことじゃよ」
 井伊の言う、楽、というのは語弊がある。
 この実力の冒険者が14人も集まっていて、しかも敵が大分散らされたからこそである。
 前回のように、2体倒す間に5体から攻撃されるような状況では、いくらなんでも楽とは言えまい。
「さて‥‥これで氷壁付近までの制圧は完了したといっていいでしょう。どうします? 氷壁ですが、穴を小さくしたほうがいいでしょうか?」
「いんや、ここまで敵を張り倒しゃ、出入り口を小さくしても一緒さね。まとめて進入できなくなる分こっちに不利さ」
「よ、余力は‥‥充分、ですよ‥‥ね。い、一度‥‥地底城というのを‥‥見て、みたい‥‥です」
「お、いいですね! 扇扇大佐の姿を拝めるかもしれません!」
「(麻お姉ちゃん、すっかりノリのほうになってるのです♪)でも、扇扇‥‥じゃなかった、黄泉人がちょっかいかけてこないのは変ですね? 数で圧倒できるとタカを括っていたのでしょうか?」
『なんだっていいよ! このまま一気にやっつけちゃおー!』
 真偽の程は分からない。
 そして一行が氷壁の奥に足を踏み入れたとき、見た物は‥‥城と言うより砦のような建物と‥‥!
「い、一反‥‥妖、怪‥‥が、たくさん‥‥!?」
「は、埴輪の大軍も、いるわね‥‥」
「もぅ‥‥ここまできて拠点防衛!? いい加減にして欲しいわね‥‥!」
 対策無しに戦うのは前回の二の舞と判断した一行は、素早く撤収を決めた。
 城を守る最後の守護者‥‥それが、この二種の妖怪―――