【五龍伝承歌・肆】決着の行方
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■シリーズシナリオ
担当:西川一純
対応レベル:11〜lv
難易度:難しい
成功報酬:9 G 95 C
参加人数:10人
サポート参加人数:1人
冒険期間:08月28日〜09月03日
リプレイ公開日:2007年09月03日
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●オープニング
世に星の数ほど人がいて、それぞれに人生がある。
冒険者ギルドでは、今日も今日とて人々が交錯する―――
「弱ったな」
「よ、弱りましたね‥‥」
「弱りましたねぇ」
とある日の京都冒険者ギルド。
その一角にて、頭を捻る見慣れた3人組がいた。
ギルド職員の西山一海と、京都の何でも屋の藁木屋錬術&アルトノワール・ブランシュタッドである。
彼等は架橋を迎えている五行龍・芭陸に関する依頼について、あーでもないこーでもないと話し合っているのだ。
「とにかく、条件が悪すぎるんですよ。足を取られる骨の山に、長時間吸い続けると命が危険な瘴気が充満する地下空間。そこで黄泉将軍と牛鬼と戦えというのは、飛んで火に入る夏の虫になれっていうのも同じでしょう」
「しかし、我等人間は虫ではない。火に飛び込まないよう思慮することができる」
「で、でも、錬術‥‥この場合、飛び込まざるを得ないんだけど‥‥その場合は‥‥?」
「むぅ‥‥火に飛び込んでも熱くない手を考えるしかあるまい」
「無茶な。瘴気に慣れろとでも言うんですか(汗)」
何度も同じ話題を繰り返しているが、よいアイディアは中々出てこない。
三人寄れば文殊の知恵と言うが、知恵を出した途端他の二人から穴を指摘されてしまう。
一手足りずお互い責めあぐねている現状を打破すべく、知恵だけでも協力できればと思ってはいるのだが‥‥。
「見方を変えてみよう。十七夜は、何故あの場所にずっと留まっていると思う?」
「新たな力‥‥っていうのを、手に入れるため‥‥?」
「それもあるだろう。傷はもう癒えたろうからね。だが、格段に有利とはいえあそこは逃げ場が無い。芭陸という精霊と凄腕冒険者が何度も足を運んできている以上、早々に引き払っていてもなんら不思議は無い」
「もしくは、あの教会には簡易根の国以外にも重要な何かがある、と?」
「断言はできないがね。まだ調べていない教会の地上部分‥‥地下への穴へ降りずに奥に向った部分に何かある可能性も充分ある。まぁ、調べている余裕があるかどうかは別問題だが」
「な、何か‥‥手を、打ってくる‥‥かな‥‥?」
「打つさ。こちらを出し抜き得る何かをな」
とはいえ、打ってくる手が分からないのでは対処の仕様が無い。
ただ挑むだけでは消耗が激しく、敵に有利なだけ。
どうにかそれを打破できるアイディアは無いものか‥‥?
「じゃあ、出来る出来ないは別として、こんなのどう? っていうアイディアをとりあえず全部参加者さんにお伝えしませんか? 実行するかしないかは皆さんに一任して」
「そ、そうしましょう」
「ふむ‥‥依存は無い」
というわけで、藁木屋たち3人からの提案は以下の通り。
1・牛鬼だけを集中攻撃し、速攻で撃破する。瘴気や十七夜の存在はとりあえず我慢。
2・逆に十七夜だけを集中攻撃し、牛鬼と瘴気は我慢。
3・芭陸+他の五行龍に協力を頼み、精霊力を放出してもらって瘴気を中和してもらいながら戦う。
4・芭陸+他の五行龍に協力を頼み、瘴気は我慢しながら普通に戦う。
5・教会地上部分の奥を調べ、状況を打破しうる何かがないか探す。
6・教会の地下へ通じる穴・通路などを全てアイスコフィンで封印する。(ただしそのうち溶けると思われる)
「これくらいですかね。勿論、冒険者の皆さんがもっといい手を思いついてくれるかも知れませんけれど」
「私たちに出来るのは、勝利を願うことだけか‥‥」
因縁ある黄泉将軍、十七夜。
薄至異認の森での決着の時は近いと、誰もが感じているだろう。
また逃げられてしまうのか‥‥それとも、今度こそ討ち取れるか。
最終局面に突入した、芭陸を巡る伝承歌の結末や如何に―――
●リプレイ本文
●一秒でも速く
「破っ!」
草薙北斗(ea5414)が気合一閃、マグナソードで彫刻を叩き割る。
正六角形になっている教会の各頂点には、石膏のような材質の、人のドクロを模して作られた彫刻があった。
地上部分を探索し、この彫刻を破壊して回る役目を負うのは、草薙、島津影虎(ea3210)、ヴァージニア・レヴィン(ea2765)、ユナ・クランティ(eb2898)の4人と‥‥。
『これで3つ目〜♪ 後半分だよ、頑張ってこ〜♪』
『‥‥やれやれ。会うのは初めてですが、氷雨君は随分大きいですね‥‥』
五行龍の二匹‥‥水牙龍・氷雨と土角龍・芭陸。
氷雨は、絆を深め、自らを呼ぶことを許した冒険者の要請を受け‥‥今、救援に駆けつけたのだ!
‥‥這って。
「ごめんなさいね、遠かったでしょ? 特に氷雨さんは、藩の正反対のところに住んでるんだから‥‥」
「いやはや、しかし心強い限りです。さしもの怨霊も、精霊龍を二匹も前にしては恐れをなすようですしね」
「私は上手く行き過ぎてつまりませんの。少しくらい波乱が欲しいところですわ☆」
「なくていいからー! 地下では他のみんなが時間稼ぎしてくれてるんだから、急がないと!」
ヴァージニア、島津、ユナ、草薙。
この班は敵の一匹たりとも出くわしておらず、教会奥などを走り回っていた。
氷雨と芭陸が巨大なため、進みあぐねる場面もあったが、概ね順調である。
後は、この破壊によって、地下の簡易黄泉空間に変化があることを願うのみ。
一秒でも速く、他の班と合流したいところであるが―――
●伝令
『そっちは順調みたいやね。こっちも特に被害はない。気張ってな』
「刃鋼様、どうやら探索班は心配なさそうですね。これも五龍の皆様の御加護でしょうか」
「‥‥しかし、凄いものですね。まさか、怨霊を説得してしまうとは‥‥」
伝令役を務め、探索班の動きに合わせて多少移動する班。
御神楽澄華(ea6526)、山王牙(ea1774)の二人と、金翼龍・刃鋼という少数の構成であるが、草薙がちょこちょこ様子を見に来てくれるので特に問題は発生していない。
というか、襲い掛かってきた怨霊がいたはいたのだが、刃鋼がテレパシーで会話をすると、ふいっと去ってしまったのだ。
『別に特別なことは言うてない。あの子らはな‥‥辛かっただけや。苦しいとか助けてとかは言ったかも知らんけど、あんたらを殺したいとか仲間に引き入れたいとは一言も言わんかったはずよ?』
刃鋼によれば、あの怨霊たちは教会内を彷徨い、迷い込んできたものが地下に向かい、黄泉将軍に殺されないよう追い返そうとしていたらしい。
ただ、彼等は怨念でこの世に留まる怨霊。
触れれば生者を傷つけ、計らずしも犠牲者を増やしてしまう結果となってしまうのだ。
「‥‥つまり、十七夜はそれを見越した上で彼等を放置していたわけですか。助けようとしつつも死者を増やしてしまうこの死の螺旋を、嘲笑っていたと‥‥!」
「で、では刃鋼様‥‥まさか、外の森に出没する目も‥‥?」
『それはまぁ、魂も目も元は一人のヒトのもんやったんやろうからね。目の方は直接害はない分、脅かして教会に近寄らせないようにするので精一杯なんや。素敵やね‥‥死んだ後も他人の心配ができるなんて。そんな生物、ヒトくらいのもんよ‥‥きっと』
恐怖を増大させる薄至異認の森。
死者の善意をも錯覚させ、悲劇が悲劇を呼ぶ悪循環を作り上げる。
「薄く至る異なる認識‥‥つまりは、悲しいすれ違い、ですか‥‥」
「‥‥五龍が揃われた以上、八百万の味方を得た気分です。いざ、参りましょう」
そして、捜索組みが全ての触媒の破壊に成功したという報を受け‥‥伝達班も地下へと向う―――
●十七夜の策
「‥‥よぅやっとオトシマエつけれやすなぁ、森忌のダンナ〜」
「今回、総力戦ですね」
「気をつけろ。十七夜が何の策も講じていないとは考えにくい」
「聞いていた以上に酷い場所ですね。浄化の炎を使わざるを得ません」
教会地上部で他の面々が動き出した頃、伊東登志樹(ea4301)、ベアータ・レジーネス(eb1422)、琥龍蒼羅(ea1442)、ジークリンデ・ケリン(eb3225)は例の教会地下へと続く擂鉢状の部屋に来ていた。
途中に張ってあった網目状の荒縄‥‥地獄絵図の網を断ち切り、ここにも強力な助っ人が来ている。
『あんで俺と北斗が別の班なんだよ。まぁ、引き受けた以上はやるけどよ‥‥』
『漢がグダグダ抜かすなぁぁぁっ! あンの黄泉野郎にきっちりヤキ入れたるんじゃ! のぅ、登志樹ぃ!』
「あたぼうよ! ダンナがいてくれりゃ百人力だぜぃ!」
やたらとテンションが高い伊東と森忌だったが、その意気込みは見習うべきかも知れない。
やがて通路と穴にわかれ、木鱗龍・森忌と火爪龍・熱破も、地下の黄泉の空間へと向う。
そして、最下層に辿り着いた面々が見たものは‥‥!
「‥‥何だと? 白骨が激減している‥‥?」
「間違いありません。以前の時の半分もないと思われます」
そう、以前は山のように積もっていたあの白骨が大幅に数を減らしているのだ。
十七夜の意図は分からないが、これもやつの策なのか?
「敵が見当たりませんね。まさか、逃げたのでしょうか‥‥?」
ジークリンデの言葉を聞き、一行は辺りの気配を探る。しかし、不気味に静まり返る地下空間には、相変わらずの淀んだ紫色の空気が揺らめくだけ。
松明の火を消せば、あっさりと闇だけが支配する世界となる空間。
そこに、天井の穴から森忌と熱破も合流する。
『いよっしゃぁぁぁっ! どこじゃ、あンのだらずはぁぁぁっ!』
『氷雨のやつとはまた違った意味でうるせぇなぁ‥‥。実際に会うと2割増しでうるせぇや』
「熱破だったか? お前は思ったより冷静なんだな」
『俺は黄泉将軍だかとはなんの関係もねぇし。北斗が手伝ってくれってわざわざ訊ねてきたから来てやっただけだからな。てんしょんってーのが上がんねぇんだよ』
「まぁ、ダンナと熱破が本気で暴れたらぺんぺん草一本残らねぇような気もするし、それはそれでいいんじゃねーの?」
しかし、この静けさは異常だ。
白骨が足元に散らばっている関係上、一歩歩けば確実に音がする。牛鬼サイズともなればそれは更に顕著であろう。
なのに何の音もしないと言うことは‥‥?
「まさかとは思いますが、逃げてしまったのではないでしょうか」
「牛鬼ごとか? しかも、大量の白骨の行方もわからん。答えを出すには判断材料が足りなさ過ぎる。ジークリンデ、お前の知恵を借りたい。お前はこの状況をどう読む? ‥‥‥‥おい、ジークリンデ?」
琥龍は、先ほどから一言も喋らないジークリンデに問いかける。
彼女は驚いたような表情のまま、身じろぎ一つしない。
いや‥‥できない‥‥!?
「お、おい‥‥まさか!?」
『リトルフライとインビジブルの併用か!? 味な真似をぉぉぉっ!』
『アホかっ! 森忌のおっさん、俺らはあの女を巻き込まないように攻撃できるほど器用じゃねぇだろーがぁ!?』
「ククク‥‥残念だったな。流石の五行龍の鼻も、黄泉空間にいる黄泉人を嗅ぎ分けられはしない! この女‥‥有名な火の魔法使いだろう? しかも‥‥ハーフエルフだ」
ジークリンデのすぐ後ろから、十七夜の声。
スクロールで姿を消し、魔法で足音を消し、背後から口を押さえるようにして彼女の生気を吸収しているらしい。
ジークリンデの顔色がどんどん土気色になり、じっとりと汗をかいていく!
助けようにも、十七夜が透明化している以上、正確な攻撃が出来ない!
「後始末の仕上げに参りましたが‥‥様子が変ですね?」
「上の結界は壊してきたよ! でも、相変わらずここは瘴気でいっぱいなんだね‥‥(汗)」
そんな時、教会地上部分を担当していた6人と3匹がこの地下にやってきてしまったのだ。
本来なら喜ぶべきことなのだが‥‥こと現状では違う!
「やっべぇ!? おい、来んなお前ら!」
「もう遅い。さぁ、女! このまま何もしなければ貴様は死ぬぞ!」
「う‥‥うぁぁぁぁぁっ!?」
ズッ‥‥ゴアァァァァァンッ!
そんな爆音が響き、冒険者、五行龍、十七夜、その全てを巻き込む炎が地下空間に燃え盛った。
狂化の影響で、ジークリンデがなりふり構わず超越級のファイヤーボムを放ったのだ。
責められはしない。誰だって自分の身に危険が迫れば反撃する。
薄至異認の森が結界崩壊で解除されたとはいえ、これは生物の自然な反応なのだ。
問題は、彼女の放った反撃の威力と、効果範囲‥‥!
「‥‥い‥‥くら、なん、でも‥‥こ、こん、な‥‥ハプ、ニング、は‥‥!」
「ごほっ! ごほっ! か‥‥身体‥‥が‥‥うごか、ない‥‥!」
自爆覚悟の全員巻き添え。冒険者の中に著名な魔法使いであるジークリンデを確認した十七夜は、彼女を自らの火力とすべくターゲットを絞った。
本来は姿を消したまま地道に生気を吸って回る予定だったようだが‥‥!
ユナ、ヴァージニア、ジークリンデ、ベアータなどの魔法使い組みは、抵抗に失敗すれば即死だっただろう。
前衛組みの面々でさえ、瀕死の人間が量産されているのだから。
「ク、ククク‥‥さ、さぁ、観念するんだな‥‥! 貴様らの負けだ‥‥!」
「‥‥よ、よく言う‥‥! 貴様だって、ボロボロだろうに‥‥!」
「ど、どうかな。山王よ‥‥前にも言ったはずだ。この黄泉の空間には、黄泉人の傷を癒す力があると。それに、忘れてはいないか? 牛鬼をなぁぁぁっ!」
見れば、十七夜の傷はどんどん回復していっている!
しかも、空間の隅っこで身動き一つしていなかったらしい牛鬼が、骨を踏み割る大音響を立てながら近づいてきた!
「い、いけません‥‥! い、今、牛鬼に襲われては‥‥!」
御神楽も、立つのがやっとの状況でなんとか槍を構えるが‥‥とても牛鬼とは戦えないだろう。
絶望。
冒険者に、その言葉しか思い浮かばなかった時!
『小生たちを忘れていただいては困りますね、御神楽さん』
『再生能力ならワシらも持っとるわぁぁぁっ!』
『牛鬼はウチらに任せ。あんたらは、なんとか十七夜を!』
『ヴァージニアお姉ちゃんを死なせるもんかー!』
『はっ、五行龍勢ぞろいの舞台にゃ辛気臭い場所だが‥‥やっと燃えてきたぜぇぇぇっ!』
五行龍も全員重傷級ではあるが、そこはそれ‥‥持ち前の再生能力でカバーする。
五匹の龍が揃って牛鬼と戦うその光景は、まさに怪獣大決戦である。
「チィィィッ! 馬鹿な‥‥雁首揃えて人間を助けるだと!? 何故だ! 何故精霊龍がそこまでする!?」
「お、おまえにはわからないよ! 熱破も他の五行龍も‥‥色んなものを乗り越えて僕たちと共存してるんだ!」
「支配することしか知らない貴様の誤算だ。くっ‥‥そろそろ、年貢の納め時だぞ」
「ほざけ! 私はすぐに回復するが貴様らは違う! 私が手を下さずとも瘴気の影響でじきにくたばる! 貴様らさえ倒してしまえば、五行龍から逃げることなど容易いわ!」
インビジブルの効果が切れたらしく、姿を現した十七夜が右手を突き出す。
風魔法で草薙を狙うが‥‥!
「うおっ!? 威力は低いが‥‥マグナブローだと!?」
「め、迷惑を、かけ通し、では‥‥名が、廃ります、から‥‥!」
「び、美少女さんが、頑張ってるなら‥‥お手伝い、ですわ‥‥☆」
ジークリンデの初級+ユナのスクロールによるWマグナブロー。
ダメージと言う面ではさして影響は無いが、足止めには充分!
「漢気全快!! 見ててくだせぇ、森忌のダンナぁぁぁっ!」
「負けられないんだ‥‥例え、どんな傷を負ったって!」
「亡者に、生者の世を乱されるのも‥‥ここまでです‥‥!」
その隙に、伊東、草薙、御神楽が、痛む身体を引きずりながら攻撃を仕掛ける!
「馬鹿め! 死に損ないに捕まる私だと思うのか!?」
ざざざ、と骨の上を高速移動する十七夜。
しかし、不意に電撃が移動先で巻き起こる!
「ざ、残念ですが‥‥ライトニング、トラップを、仕掛けさせて‥‥いただいて、いますので‥‥」
「小賢しい真似を‥‥くっ!?」
「か、賢くて‥‥悪い、かしら‥‥!」
「魔法使いどもが何故まだ魔法など撃てる!? 死に掛けのはずだ!」
「それがわからないから、貴様は‥‥負けるんだ」
ベアータ、ヴァージニアも必死で魔法を使い、仲間を援護する。
そして琥龍が一気に近づき、クーリングで十七夜の手を凍らせ、生気を吸うことを封じる!
「お、おのれぇ! ‥‥な、何? なんだ、この手は!?」
琥龍を振りほどき、離れようとした十七夜の足を掴む者がいた。
しかも、それは一人や二人ではなく‥‥足元に散らばる白骨が、群がるようにして十七夜の動きを封じていく!
「そんな馬鹿な!? 私は貴様らを怪骨にした覚えは無いぞ!? 放せ! 黄泉将軍の言うことが聞けないのかぁっ!!」
それはまさに地獄絵図。
犠牲になった者たちが、十七夜への復讐のために死してなお立ち上がる‥‥!
「‥‥皆々様の無念、俺が受け継ぎましょう。この一撃にて‥‥決着を‥‥!」
「五行龍の皆のためにも‥‥お前は、ここで倒すよ!」
「後始末は私の十八番。延び延びになってしまいましたが‥‥これで、お仕事完了です‥‥!」
「や‥‥やめろぉぉぉっ! ぐあぁぁぁぁぁっ!?」
山王、草薙、島津がゆっくりと十七夜に近づく。
やがて、十七夜の断末魔が響き‥‥そして、聞こえなくなった―――
●エピローグ
一行が教会を脱出して間も無く‥‥教会は崩壊し、時空の狭間へと消えた。
まだ夜だというのに薄至異認の森も消えており、もう二度と犠牲者が出ることは無いだろう。
流石の牛鬼も五行龍五匹を相手には長く保たず、撃破されたことも追記しておこう。
『ユナさん、島津さん、御神楽さん、山王さんにヴァージニアさん。顔と名前が一致したのはあなた方だけでしたが、他の皆さんにも感謝しています。小生は‥‥もう少し考え方を変えてみることにしますよ』
これは後で刃鋼が言っていた事なのだが、長々と昔語りをしたことによって、自分の気持ちを顧みることができ、芭陸はより柔軟な思考できるようになったらしい。
もしあの昔話が無ければ、他の五行龍の介入すらも拒否していた可能性があったとのこと。
五行龍で刃鋼に次ぐ頭脳の持ち主の芭陸‥‥紡がれた伝承歌はこれからもその人柄と共に語り継がれることだろう。
『ところでユナさん。よろしかったら、たまに遊びに来ていただけると嬉しいのですがね』
「お断りですわ☆ 美少女のお誘いなら即お受けしますけれど♪」
『‥‥‥‥』
「‥‥冗談ですわよ。たまに、本当にたまーにでよろしければ、果物でも持参して参りますわ☆」
『ユナさんらしいというか‥‥。期待せずに待っていますよ』
十七夜は地に溶ける様に消えた。
残ったのは、平穏と‥‥ヒトと五行龍との絆―――