【五龍伝承歌・肆】信じるもの

■シリーズシナリオ


担当:西川一純

対応レベル:11〜lv

難易度:難しい

成功報酬:9 G 95 C

参加人数:10人

サポート参加人数:2人

冒険期間:08月12日〜08月18日

リプレイ公開日:2007年08月19日

●オープニング

世に星の数ほど人がいて、それぞれに人生がある。
冒険者ギルドでは、今日も今日とて人々が交錯する―――

 夏もいよいよ本場になり、いつになく暑い京都冒険者ギルド。
 その職員である西山一海は、自分の担当スペースの机に突っ伏し、一人ダレていた。
「何をやっているんだね、君は」
 一海の友人であり、京都の何でも屋たる藁木屋錬術が姿を現し、彼を見下ろしながら溜息をつく。
 一海は首だけぎぎぃっ、と動かし、藁木屋の方を見る。
「あー‥‥どうも‥‥。いやぁ、云時間かけた代物が、上司に怒られて無駄になりまして‥‥」
「それはご愁傷様だ。それより、芭陸のことはどうなっているのかね? 報告書を見せてもらった限りでは、彼だけ置いてけぼりにしたように見えたが‥‥」
「あー‥‥まぁ、そう見えますよねぇ。その辺りが問題になったわけですが、とりあえず芭陸さんは無事です。あの後、強行突破組みが最下層に辿り着いて、芭陸さんの脱出を手伝ってくれたらしいので」
「そうか。まずは安心だな‥‥」
「‥‥私が口で言っちゃうのは簡単なんですけど、どうせなら報告書風にした方が臨場感が出ると思いません?」
「‥‥それを咎められたと?」
「はい。‥‥とりあえずこの話は止めましょう。鬱になりそうです(泣)」
「そうだな。しかし、やはり十七夜が絡んでいた上、簡易的な根の国とはな‥‥いよいよ最終局面か」
「牛鬼なんていう強力な妖怪も控えているみたいですしね。薄至異認の森を解除するより、やつらを倒しちゃったほうが速いかも知れません」
「だが、戦闘中に錯乱しても困るだろう。特に、相手は油断のできない強力な存在だ。私は先に憂いを断っておく方が無難だと思うがね。まぁ、その辺は冒険者の方々に任せるしかあるまい‥‥」
 謎と言うヴェールは剥がされ、真実が白日の下に晒された今、後は往くのみ。
 物語の顛末は、常に人の手の中にある―――

●今回の参加者

 ea1442 琥龍 蒼羅(28歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea1774 山王 牙(37歳・♂・侍・ジャイアント・ジャパン)
 ea2765 ヴァージニア・レヴィン(21歳・♀・バード・エルフ・イギリス王国)
 ea3210 島津 影虎(32歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea4301 伊東 登志樹(32歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea5062 神楽 聖歌(30歳・♀・侍・人間・ジャパン)
 ea5414 草薙 北斗(25歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea6526 御神楽 澄華(29歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 eb1422 ベアータ・レジーネス(30歳・♂・ウィザード・人間・フランク王国)
 eb2898 ユナ・クランティ(27歳・♀・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)

●サポート参加者

神哭月 凛(eb1987)/ 木下 茜(eb5817

●リプレイ本文

●それぞれの主義
 丹波藩南東部、件の森。一行は、夜の森を前にして立ち止まっていた。
 いつものように薄至異認の森が発動する森に到着して息をついたのも束の間‥‥話の流れは、ある意味必然的に前回起こったある人物の行動に行ったのだ。
 それは口に出さないまでも、当の本人以外全員が思っていたことである。
「おいコラおまえ。とりあえず前回のアレはどういうことか説明しやがれ! 上手く逃げられたからよかったようなものの、下手すりゃ二人ともオダブツだったんだぞ! 遊びでやってんじゃねぇんだよーっ!」
 伊東登志樹(ea4301)が口火を切り、糾弾が始まる。
 しかし、当事者であるユナ・クランティ(eb2898)はまったく意に介さず、いつものように小悪魔的な笑顔を崩さない。
「あらあら、これはお遊びですわ。退屈な人生を彩る、ほんの茶目っ気ですの☆」
「茶目っ気じゃ済まないよ! 他人を巻き込むなんて、子供じゃないんだからさ!?」
「よせ。俺は気にしていない」
「でも、こういうことはちゃんと言わないと駄目よ。一人の勝手な行動で全員が死ぬ事だって‥‥」
 草薙北斗(ea5414)、琥龍蒼羅(ea1442)、ヴァージニア・レヴィン(ea2765)。
 巻き添えを食らった一番の被害者がよせと言うのもおかしな話であるが、それだけ琥龍の懐が深いということか?
「‥‥ユナさんの行動に腹を立てたのか、一人欠席者がいらっしゃいますしね」
「その件に関しては、ユナさんはあまり関係ないかと思われます。私の主観ですが」
「ふむ‥‥今回の後始末は、いつにも増して人手が欲しいところだったのですが‥‥痛いですね」
「過ぎてしまったことは致し方ありません。ユナ様には、二度とあのような軽率な行動は取らないようお願いします」
 山王牙(ea1774)、ベアータ・レジーネス(eb1422)、島津影虎(ea3210)、御神楽澄華(ea6526)。
 今までより一人少ない以上、これまでよりも更に警戒は強めなければならない。
 そんな時に味方から自分たちを不利にされては話にならないため、彼らの言は当然だ。
 しかし、やはりユナにはまったく通用しない。
「あらあら、そんな念押しなんてしなくても、御神楽さんが私に食べられてくれるならいくらでも大人しくしてますわ♪」
「ぜんっぜん分かってねぇじゃねーか、このスカポンタンはぁぁぁっ!?」
「いいと言っているんだ。怒るだけ時間の無駄‥‥労力の無駄だ。行くぞ」
 違った。琥龍は『懐が深いから許した』というわけではなく、『きっぱりとユナを見限った』のだ。
 合理的な考え方をする琥龍にとって、ユナは最早、仲間ですらないのかもしれない。
「‥‥まぁまぁ、つれないですのね♪」
 この場において、ズキン、と言う音を聞いたのは芭陸だけだったのだろうか。
 似たもの同士だからこそ感じる、ユナの心の動き。
 思うところがあった芭陸は、ユナと伊東の間に角を割り込ませ、諍いを止めた。
『‥‥個人の主義主張にケチをつけるのは感心しませんね。好きなように行動するからにはどうなってもそれなりの覚悟があるんでしょうし、踏み込みすぎは逆に迷惑ですよ。琥龍さんがいいと言っているんですから、この件はもう終わりと言うことで。よろしいですね』
「あらあら、流石、芭陸さんはわかっていらっしゃいますのね☆」
 芭陸にまでそう言われてしまうと、一行は黙らざるを得ない。
 いつまで経っても慣れない薄至異認の森を歩きながら、少しずつ気持ちを切り替えていく。
 そんな中、仲裁に入った芭陸は、ユナを眺めながら物思いにふける。
(『‥‥寂しさを無理に押し込める小生。無茶な行動で回りに示すユナさん。そろそろ、あなたもしっかりと前を向く必要があるのでは? あなたは小生よりもよほど人間に近い存在なのですから、尚更―――』)
「あらあら、どうかしたんでしょうか、芭陸さん♪」
『‥‥別に。ただ、気ままにマイペースという私と似たユナさんのスタンスを崩させたくなかっただけです』
「くすくす‥‥どうやら芭陸さんは、まだまだ面白そうですわ♪」
 奇妙な理解と誤解が重なり合う中、一行は決戦の場へと急いだのであった―――

●最下層への道
 一行は前回同様、魔よけのお札で恐怖心を抑えながら教会を進む。
 すでに最下層への道は熟知しているので、迷うことはなかったのだが‥‥。
「‥‥どういう理屈でこちらを感知しているのでしょうね‥‥!」
「あ、あんまり消耗したくないんだけどなぁ。本命はまだ先なのに!」
「でも、倒していかないと後が恐いわ。背後から襲われたら、十七夜たちの相手なんてできないもの‥‥!」
 山王、草薙、ヴァージニア。
 一行は教会に入り、ちょっと進んだ時点で怨霊の大群に襲われた。
 まるで最下層への道を阻むかのように、今までにない意図的な襲撃。
 仕方なく最低限の攻防をしつつ下へ向っているのだが、移動速度は鈍るしダメージは貰うしで散々である。
「この螺旋状の下り坂が長ぇんだよな! 道が狭ぇ上に穴に落っこちるわけにもいかねーしよぉ!?」
「ユナ様、大丈夫ですか? 先ほどから走りっぱなしですけれど‥‥」
「し、正直な、ところ、あまり‥‥大丈夫じゃ、ありませんわ‥‥けほけほ」
 伊東、御神楽、ユナ。
 地下への大穴まで来たものの、怨霊は相変わらず追ってくるし湧いてくる。
 強行軍で進んでいるため、ユナやヴァージニア等、体力のない面々には少々辛いだろう。
「いけませんね。魔法使いも少しは鍛えておかないと」
「まったくだ。せめて少し走るだけで即息切れなどと言う状態はどうにかすべきだろう」
「いや、お二人はわりと珍しい部類に入ると思いますよ。ええ」
『‥‥面倒ですね。ユナさん、ヴァージニアさん、乗ってください。落ちないようしっかり掴まってくださいよ』
 ベアータ、琥龍、島津、芭陸。
 魔法使いのわりにやたら体力のあるベアータと、志士なので体力もある琥龍は、わりと普通に進軍している。
 手間取るのも何なので、芭陸はユナとヴァージニアを背に乗せて進むことにしたようだ。
 そして、ようやく擂鉢状の部屋を通過し、前回強行突破組みが通った通路を進み‥‥最下層付近へ着いた。
 何匹の怨霊を倒したかもう数えていなかったが、見渡してみると疲労とダメージはあまり軽視できそうにない。
 息を整えるための休憩と薬による回復を済ませ、一行は更に進んだ。
 一刻も早く、十七夜との決着をつけるために―――

●黄泉と現世の境界
「また来たのか。今度は更に雁首を揃えて御登場とは、よほど私が気に入らないようだな」
 紫がかった、淀んだ空気が充満する教会最下層。
 夥しい白骨が足元を埋め尽くし、一歩歩くだけでぱきんぱきんとそれが砕ける音がする。
 闇に住まう十七夜にとってはそれが心地よいメロディーらしいが、冒険者一行にとってはかなり不快だ。
 というか、お札で抑えている恐怖心がじわりじわりと増大していく。
 もし、ここに散らばる大量の白骨が怪骨として動き出したら?
 そんな仮の想像であっても、ありえない話ではないから困る。
『到着‥‥と。被害者の皆さんには申し訳ないですね。来る度に粉々にしてしまいますので』
 芭陸も擂鉢状の部屋の穴から降り、天井から落下してきて戦列に加わる。
「飛んで火に入るなんとやらだ。牛鬼! 今度こそやつらをしとめろ!」
 十七夜が手を振り上げると、闇から牛鬼が歩み出てくる。
 しかし、怯んでばかりはいられない。
「上等だコラぁっ! 今回は最初から全員集合なんだ! 命(タマ)取ったるわぁぁぁっ!」
「全員、配置に着け。作戦通りいくぞ」
 琥龍の音頭でフォーメーションを組み、一行は戦闘に入る。
 伊東や山王のリクエスト道理に、初っ端から牛鬼にアグラベイションを試みた芭陸であったが、あっさり抵抗された。
 結局のところ、力と力のぶつかり合いしかないということか。
 そして、十七夜を担当するために駆け出した御神楽が‥‥。
「なっ‥‥!? ほ、骨に足を取られて‥‥!?」
 踏み込んだ位置が悪かったのか、右足がすっぽり骨の山に埋まってしまい、動きが止まる。
 それを見逃す牛鬼ではなく、巨大な爪を振り上げて御神楽を弾き飛ばした!
「かっ‥‥は‥‥!」
「御の字! やっべぇ、ありゃあ一気に重傷ペースだぞ!?」
「いけません、伊東殿! 牛鬼から注意を逸らしては‥‥!」
 蜘蛛のような体型の牛鬼は、うず高く積もった人骨の山も自由自在に動き回る。
 一気に伊東に肉薄し、再び爪を振り上げた!
「だっ!? ち、ちっくしょう、骨だけのせいじゃねぇな‥‥なんか、上手く力が入らねぇぞ‥‥!」
 体勢が悪くギリギリではあったが、伊東はなんとか受けてダメージを受けずに済んだ。
 しかし、がらがらと骨の山から立ち上がる時に初めて、自分の身体の変調に気が付いた。
 それは何も伊東だけではなく、冒険者全員の問題だったのだ。
「ダークの結界は地面が見えないので発動させられない上、精神集中に妙に時間がかかります。何かに妨害されているような感じがするのですが」
「私も、歌の集中が乱されちゃうのよね‥‥歌えないというほどじゃないんだけれど」
「北斗、例の燻り出しはどうした? 桃や布がどうとか言っていたが」
「先に落っことしておいたんだけど‥‥燃えた形跡がないみたい‥‥(汗)」
 十七夜は器用に骨の山を移動し、のらりくらりと琥龍や草薙から逃げ回る。
 冒険者一行は歩行だけでも困難で、大きく戦闘能力が削がれていると言うのに‥‥!
「ククク‥‥どうだ、死人に足を引っ張られる感覚は。別に妖怪化などさせなくとも、そこそこに役に立つものだ。きっと自分たちと同じような、新たな犠牲者を望んでいるのだろう。自分だけこんな目に合うのは理不尽だからと、物言わぬ骸の状態でさえ生者を死者の国へ引きずり込もうとするのさ‥‥!」
『‥‥そう仕向けたのはあなたでしょうに。死人の気持ちを勝手に代弁するのは感心しませんね』
「あながち的外れでもあるまい。‥‥しかし、流石は五行龍と呼ばれる高位精霊。瘴気の影響が無いと見える」
「‥‥やはり、この地下空間の空気が私たちの力を削いでいるわけですか‥‥!」
 御神楽を薬で回復させている山王が、十七夜の言を聞き逃さずに問いかける。
 そう、この紫がかった淀んだ空気。十七夜の言を信じるならば、人為的に作り出した根の国の空気らしい。
 これが普通の生物には毒になるらしく、時間が経てば経つほど冒険者一行は身体が蝕まれ、戦闘能力はおろか最終的には生命活動そのものも危ぶまれるだろう。
 生者と死者の住む世界は、やはり大きくかけ離れている‥‥!
「色んな意味で弱りましたね。ベアータ殿、五行星符呪は?」
「十七夜が動き回りすぎます。結界の範囲内に収められません」
「草薙殿、例の仕掛けはどうだったのですか?」
「十七夜か牛鬼が火を消しちゃったみたい!」
「手を打っても実りませんか‥‥。これはまずいですね」
 もっとも、不死者である十七夜や精霊である牛鬼に煙が通用するかは疑問であるが。
「ぐあっ!? こ、こんちくしょう、噛み付くことまでできんのかよ‥‥どあぁぁぁぁぁっ!?」
「あらあら、ライトニングサンダーボルトのスクロールがかすり傷程度にしかなりませんのね。普通の物よりかなり威力があるタイプなんですけれども♪」
「た、助けんなら、もっとマシな手ぇ‥‥使えよ‥‥! 俺まで、感電して、だ、ダメージが‥‥くそっ‥‥!」
「ごめんあそばせ☆」
 牛鬼に噛み付かれた伊東をユナが助けたが、伊東はなんだかんだで重傷に。
 噛み付かれたままでいるよりはマシかもしれないが。
「‥‥島津さん、この薬を伊東さんに。俺は牛鬼を抑えに回ります」
「了解しました。お気をつけてください」
 だが、山王のスマッシュ+ソードボンバーの一撃を、牛鬼あの体躯のくせに回避した。
 やはり瘴気の影響と足場の悪さが、冒険者一行を大幅に弱体化させている‥‥!
 攻撃後の隙をユナがLTBのスクロールでフォローしてくれたが、残りは2発しか撃てないらしい。
「ふふふ‥‥圧倒的じゃないか我等は。だが、いたぶりながらなどと言う舐めた真似はもうせんよ。人間は恐るべき種族に成長しつつある。殺れるときに‥‥殺る」
「っ!」
 十七夜がそう口走った瞬間、草薙が微塵隠れで移動、十七夜の背後を取る!
「その台詞は、荼毘煉魏の台詞だよ! あの人は嫌いだったけど‥‥お前に言われるのは我慢ならないっ!」
「ぐっ!? 魔法の武器か‥‥小僧ぉぉぉっ!」
「う、うあぁぁぁっ!?」
 動ききってしまった草薙は、腕を掴まれて生気を吸収される。
 まずい、と思ったときにはすでに援護が入っている!
「やらせはしません! この焔の剣に、命を賭して‥‥!」
「ならば俺は雷の剣だな。炎雷の二重‥‥どう避ける?」
 御神楽、琥龍が十七夜に挟撃を仕掛ける。
 相変わらずの足場の関係で、いつもほどの精細は無いが、十七夜はこれを避けられるほど体術に優れていない!
「チィィィッ!」
 十七夜は草薙の身体を御神楽に向けて投げつけ、よりダメージが小さいと判断した琥龍のライトニングソードを喰らう。
 そしてまたかなりのスピードで骨の山を移動したわけだが、その胸中は穏やかではない。
「なんだ‥‥瘴気にやられているわりに動きが機敏すぎる。瘴気が通用しないわけはないのだが‥‥」
 その時になって、ようやく気付いた。
 地下空間に響き渡る歌と、発光する一匹の大蛇の姿に‥‥!
「『ForYou いつも あなたを 胸に想えば ただ 抱きしめてくれる だけで 心が騒ぐの 確かな 鼓動が 二人を繋ぐわ 今 どこまでも高く Blue この空に―――』」
「大丈夫ですか、芭陸殿。精霊力の放出というのは、かなり負担になるのでは‥‥」
『‥‥こうでも、しないと‥‥全員、死んで、しまいますからね‥‥』
 つまり、島津を護衛役とし、ヴァージニアのメロディーで士気を向上させた芭陸が、自らの精霊力を放出して瘴気を中和しているのである。
 本当の根の国ではないからこういう真似が出来るわけだが、芭陸はかなりの勢いで消耗していく。
「おいおい、ありゃやべぇって! 芭陸が力尽きねぇうちに退こうぜ!」
「‥‥後詰はお任せを。芭陸様、前回のようにアースダイブで撤退してください」
「ライトニングトラップを複数設置してあります。足止めになるでしょう」
「ふん、勝手にするがいい。だが、次も同じ手が通用すると思うなよ‥‥!」
「まぁまぁ、では次のそちらの手を楽しみにしておりますわ☆」
 一行は素早く撤退し、十七夜もそれを追わなかった。
 どちらも、一手足りない。
 相手を凌駕する一手を考案するのは、果たしてどちらか―――