【上州騒乱】金山鳴動‥‥すんの?マジデ?

■シリーズシナリオ


担当:小沢田コミアキ

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:1 G 17 C

参加人数:10人

サポート参加人数:1人

冒険期間:07月02日〜07月12日

リプレイ公開日:2006年07月11日

●オープニング

●松本清、上州に立つ!
 奥多摩の薬売りの出身である冒険者、松本清。清は上州の地で叛主・新田義貞へ戦いを挑み、これに勝利した。新田方最強部隊・四天王筆頭の篠塚伊賀守を下し、金山城を見事攻略。遂には源徳の後ろ盾を得て金山城大田宿の代官へと就任する。
「俺が城主となったからには、城下町の大田宿も大きな街にしてみせるんだっぜ! 安心するじゃん? 俺は上州の英雄・松本清! みんな、俺についてくるんだっぜ!!」
 こうして清の街作りがスタートした。んだけど。その実態はただのヘタレ。冒険者達に苛められながらも神輿兼使いっ走りとして日々慌しく街作りに従事している。
 そんな清に、つい先日、明るい話が舞い込んだ。長く縁のあった女性冒険者が清へ結婚を申し込んだのだった。モテたい一心の清は軽くこれを承諾。
「へへへ。遂に俺も嫁さんをもらうんだっぜ」
「なりませんぞ地頭殿。ハーフエルフの娘を嫁にとるなど、言語道断ですぞ!」
 だがこのジャパンにおいても異種族婚は禁忌。領主がそのようなことを行ったとなれば評判はガタ落ちだ。敵を増やすばかりか、味方をも失う結果になるだろう。楽市楽座に向けて商人との信頼関係を築こうというこの時期に、事が知れれば大きなスキャンダルとなる。
 しかも事態はそれだけでは済まない。ただでさえ源徳の傀儡に過ぎない清がそのようなことをすれば、それを理由に金山城の主権は完全に源徳に握られるだろう。
「でももう約束しちゃったんだっぜ。やるといったらやる、金山挙げてのでっかい結婚式をやるんっぜー!」


●由良具滋は静やかに考える
 松本清率いる反上州連合が金山を新田軍より解放し、薬売りから身を立てた清は遂に金山の城主となる。だが、英雄物語の裏側はそう単純な話ではない。
 江戸の源徳家康はただちに清へ後詰の兵500を差し向けた。事実上、金山城大田宿の支配権は、圧倒的軍事力を背景に源徳方へ握られたのだ。これに対し、清の腹心である由良具滋はただちに一計を講じる。度重なる支配者の交替による民の政治不信を背景に、傀儡の城主と執政として、清と由良を立てるという策だ。連合は大田界隈の侠客組織と繋がりを持っている。連合の長である清を城主の位置に据えることで裏社会への影響力を確保し、土地の名家である由良家が執政となることで民の信頼を得る。
「首の皮一枚。今はまだ命脈が繋がっただけだが、このままでは――終わらぬ」
 大田の実権を握る源徳。そして連合を束ねる張子の虎、清。両者の間に渡された架橋は、たちまち踏み外してしまいそうに危うく細い。
(「現段階では我らが動く足場すら固まってははおらぬ。まずは力を蓄えねば‥‥」)
 政策の目玉である楽市楽座の実現まであと僅か。野盗を駆逐して領内の街道の治安を回復させ、金山商人連盟を創設して税の免除で既存の商人も説得した。後は行商人を呼び寄せるために城下町の治安を維持し、流通を促進するため交通機関を整えるだけだ。
 城下の治安維持には自警団の組織が計画されたが、計画は頓挫している。その代わり街道整備の方は明るい展望だ。江戸までの街道伝いの宿場に駅を設けて早馬を走らせ、駅伝制を敷こうという計画が持ち上がったのだ。金山を江戸を結ぶ直接の大きな街道がない分、移動手段を確保して交通の便を図ろうという考えである。
 だが問題は依然として残っている。江戸まで繋ぐ駅伝が十分に機能するだけの馬を揃えるのには多額の資金がいる上、江戸までの途上の宿場のどこかに中継の拠点を設けねばならない。また、馬車の行き来の安全を確保するには上州全体の治安も懸念事項だ。最近では野盗は金山領外に活動の場を移しつつある。他領に逃げられては手が出せないが、いずれ手を打たねばならない。
「さて、前置きが長くなったがこれからが本題だ」
 以前から産業振興のために江戸から老舗を誘致する計画があがっていたが、金山の復興の噂を耳にした商人達から幾つか話が持ちかけられたのだ。名乗りを上げたのは3資本。江戸の両替商が一つ、北方の貿易商、そして華僑系の資本だ。
「いずれも幾つかの条件を提示した上で、大田宿へ支店を作ることに同意している」
 江戸の両替商の条件は、金山商人連盟店の加入と金井宿の利権の独占。見返りに二千両の資金援助のほか、駅伝制の資金負担を引き受ける。
 北方の貿易商は、七月中の駅伝制確立と、支店設立候補地の再開発。資金援助はない。
 華僑資本は、金井宿への華国人入植者の受け入れと、華人による独自の自警団組織の許可を条件とした。これが認められれば、金山で新たに事業を興そうとする華人を対象に全面的な資金援助を行うことを通して、金山の殖産への貢献も約束している。更に金山復興のため一千両の資金援助を行う。
「城の金蔵が尽きたも同然の我らにとって、この話は喉から手が出るほどのものだ。だが条件を見極めて事は慎重に選択せねばならないぬな」
 交渉次第ではこちらから若干の付帯条件をつけさせることは出来るかもしれないが、大枠は動かないものと思ってよい。いずれにせよ、条件さえ呑めば多額の資本の導入が現実となる。
 だがここにきて持ち上がって清の結婚が少々厄介だ。事が知れれば話は流れかねないし、今回はやり過ごしたとしてもいつか露見すれば資本の引き上げを取られるかもしれない。
「清殿には同情するが‥‥城主として情を断ち切らねばならぬ時もある。ここが器の見せ所ということであろうな」


●轟!義侠塾!!
「ワシが義侠塾塾長の雄田島である!!」
 武蔵国の私塾・義侠塾では、益荒男たちが日々真の義侠を目指して過酷な教練による研鑽を積んでいるという。この義侠塾の分校が、金山に設立されることとなった。金井宿を見下ろす八王子の砦に建設中のキヨシ城を分校舎として、新入生を大々的に募集する運びだ。
「日ノ本を憂う義侠よ、来たれ! 共に励もうぞ!」
 キヨシ城はハリボテの外観の中に、内部へ阿斗落所(あとらくしょん)と呼ばれる複合教練施設が設置される計画となっている。今回はその一環として、第一阿斗落所の建設が行われる運びだ。
 現段階で阿斗落所の候補としてあがっているのは、急傾斜の巨大な坂「国境にかける坂」、無数の壁と泥沼の窪地が待ち受ける「あの壁を破るのはあなた」、複数の浮石が浮遊する「竜神池」。更には溶岩池や回転する炎の棒、火を吐く亀の化け物が待ち受ける城砦などが案としてあがっている。
 もっとも予算的にも工事日程的にも、設置が可能な阿斗落所はせいぜ一つだろう。今回はこれを皆で話し合い、計画を実行に移すのだ。その他には塾長室、兵士の詰め所、清の寝所などが建設される予定になっていたりする。
「ワシが塾長の雄田島である!」

●今回の参加者

 ea0270 風羽 真(36歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea0452 伊珪 小弥太(29歳・♂・僧兵・人間・ジャパン)
 ea6381 久方 歳三(36歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 eb0569 小 道具(35歳・♀・武道家・ハーフエルフ・華仙教大国)
 eb0576 サウティ・マウンド(59歳・♂・ファイター・ジャイアント・ビザンチン帝国)
 eb0579 戸来朱 香佑花(21歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 eb2743 ヴェルサント・ブランシュ(36歳・♂・バード・エルフ・イギリス王国)
 eb3751 アルスダルト・リーゼンベルツ(62歳・♂・ウィザード・エルフ・フランク王国)
 eb3773 鬼切 七十郎(43歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 eb3859 風花 誠心(32歳・♂・僧侶・人間・ジャパン)

●サポート参加者

猪神 乱雪(eb5421

●リプレイ本文

 経済活性化のための外資誘致は必要事だが、ただでさえ源徳の介入で頭が痛い時。江戸の両替商や華僑を呼び込んでこれ以上問題を抱え込みたくはない。戸来朱香佑花(eb0579)の案を清の補佐である政治顧問役に抜擢されたアルスダルト・リーゼンベルツ(eb3751)が推す形で決が最終的な決が下された。
 第一の交渉相手として北方の貿易商を想定し、同時に二者とも交渉を重ねる。
「‥‥開発資金は直ぐには用意出来ないから待って貰うけど、不必要に干渉して来ないのは好ましいし」
「出来る事から進めて行くしかないの。焦りは禁物ぢゃ」
 こうしてすぐに会談が行われた。
「承知致しました、再開発の話を一月でというのはこちらも急きすぎましたな。更に一月の猶予を設けましょう」
 所で、と貿易商。
「駅伝制の計画はどうなっておいでで御座いましょうか。こちらは元から地頭様の推し進めておられた計画と聞き及んでおります」
「そ、それは‥‥」
 まだ駅候補地の選定すらも済んでいないなど言える筈もなく、二人が顔を見合わせる。由良が渋面で首を振った。
「江戸との距離をみるに駅は武蔵国に置かねばならぬ故、候補地との交渉が難航しておる次第。今しばらくは時間が必要だ」
 咄嗟の機転でこの場は切り抜けたが、躓きは縺れとなり、傷は致命的に広がる。続く両替商との交渉では代替条件として駅伝の利権を提示したが、金山領外の話では商人も土地の領主と直接交渉する方が確実だ。具体的な候補地すら決まっていないこともここで露見し、貿易商との交渉ともども誘致の話は流れてしまう最悪の結果となった。
 退かぬ!媚びぬ!省みぬ!
 か、どうかはちょっと微妙だが、出立前には塾生達で徹夜で図面を引き、旅の途上で塾長からも認可を貰った。青写真に期待に胸も膨らむというものだ。久方歳三(ea6381)も自腹で建設資金を捻出し、いよいよ本格的な建設がスタートする。
「柱の作成は任すでござるよ。拙者の秘儀『駄岩』にて既に製作を開始しておるでござるよ」

 解説
 駄岩(だがん)とは硬い岩を駄なるものとし、「だがしかし」の精神で素手で粉砕、研削する妙技である。

 にっこり笑った久方の拳は血塗れになって砕けていたりするが、そこは気にしない方向で。あれだ、バーストアタック修得してたらよかったのにね。
 それはさておき、伊珪小弥太(ea0452)達の下へ壱号生の鬼切七十郎(eb3773)が麓から駆け上がってきた。
「先輩方、この鬼切が建設資金を工面してきたであります!」
「なんだって鬼切!でかしたぜ!」
「キヨシ殿から証文を貰って借金をしてきたであります!」
 証文は「可愛い街娘がおるので恋文を出して進ぜよう」と騙くらかして一筆認めて貰った物だ。それで太田宿の侠客筋を回り、復興のためと借金を願い出たのだ。
「侠客も組織の危機と義理人情を出せばうんというしかない‥‥義侠塾一の智謀をみるがええ。この通りじゃあっ!」
 と、峠道を振り返ると、そこは見るからに堅気ではない若衆が数十人。
「親分の命令で手伝いに来やした。宜しく頼んます」
 清と繋がりのある太田の侠客は、反義貞の戦いを共にした同志。これまで資金的にも何度も援助をしてきたのに、更にまた金を引き出すのは流石に無理があった。
 人手と金を集めるつもりが、人手と人手と人手を集めてしまった訳だが。まあそこはそれ。
「なぁに、義侠塾魂がありゃあ他にいるものなんてねえ。一丁、やったろうじゃねぇか!」

 解説
 竜神池は、池に打ち込まれた丸太を渡り、対岸に辿り着くことを目的とした教練である。
 丸太の表面には苔が敷き詰められて非常に足を滑らせ易い上、一定時間を過ぎると岸から投石が始まり挑戦者を脅かす。強靭な足腰を培うのは勿論、咄嗟の判断力、バランス感覚、瞬発力、集中力、そして運までもを鍛え上げる教練である。
 問題は、この八王子山には池がないことである。
 おしまい。

「って、どうすんだーー!」
 まさか固い岩盤からなる金山を掘削する訳にもいかず計画はとんでもない暗礁に乗り上げた。だがこのくらいで挫ける義侠塾ではない。鬼切がニヤリと笑う。
「このくらいの障害なぞなにするものぞ! キヨシ城が義侠塾の分校でしかも自力で建設、まさに男児の本懐じゃぁっ! 燃えるぜ」
「無論でござるよ!義侠塾魂で見事乗り切ってみせるでござる!」
 お隣は金井宿でもヴェルサント・ブランシュ(eb2743)の手で着々と街作りが進んでいる。
「この調子で行けばキヨシ城の完成も間近です。複合宿泊施設『歓楽街』のテナントについて考えていかねばなりませんね」
 一軒でも歓楽街をテーマに、観光に訪れた人々へ娯楽を提供する。‥‥のだが、今の所はキヨシ城受付兼物販ブースと義侠塾広報課が置かれただけである。
 空き部屋で無理やり宿も用意したりしたが、これ以上は増築しないと無理だ。賭場も用意しようとしたが、そちらは地元の侠客のシノギなので手の出しようがない。
「お客様にはヤクザ相手にびっくりするくらいヒリヒリした勝負ができるようになったのでよしとしますか」
 なんだか投げ槍だが、これでもまだ良い方である。城の金蔵は多数の計画で費用が嵩み、少しの余裕もない。剣術道場を開こうとしたサウティ・マウンド(eb0576)へは由良からはノコギリが支給されただけであった。
「いくら100tハンマーがあっても、ノコギリ渡されただけじゃ俺一人で道場建てるのは無理ってもんだぜ。だいいち、釘もねえとな!」
 そういう問題かどうかは置いといて。太田宿の寺院を借りる許可は取れたのでサウティ個人で道場を開く分には城の許可はいらないが、自力で用意を整えろということのようだ。
 さて城では由良達と小道具(eb0569)が結婚問題についての会談を持っている。
「うーん、自分としたことが清君羅武(はぁと)に目がくらんで本来の自分を見失ってたっす‥‥」
 清にとってこの結婚は、今以上に一生物の不幸を背負い込むことになる。
「自分だってハーフエルフがどう扱われているかくらいはよく知ってるっすよ‥‥。今の金山の情勢はまさに薄氷の上を歩むが如しっす。それを、自分一人のために滅茶苦茶にするわけにはいかないっすから」
「左様、為政者として人倫の禁を犯すなど言語道断。妾か、或いは内縁の妻とするのが良かろう」
「自分はそれでも構わないっす。正妻か妾だとか、体裁のことなんかより、自分は清君のために何か出来る事が嬉しいっすから」
「そのことだけどよ」
 と、サウティ。
「ひとまず結婚は延期にしときゃいいんじゃねーかね。清にゃもっとでかい功績を挙げさせて、誰も文句が言えないような城主になってからでも遅くはねーだろ」
「その通りぢゃ。ワシも、辞退するか否かも含めて保留することを推すぞい」
 が、清だけは状況をよく分かってないらしく駄々をこねている。
「やだやだやだ〜やるっていったらやるんだっぜ〜!」
 清にしては人生初のモテ体験。逃すものとかじたばたしているが、それも両脇でサウティと香佑花が100tハンマーと100貫はんまーを振り被ると途端に大人しくなった。
 小が苦笑しながら清の目を覗き込む。
「聞き分けの悪い子は、めっ、っすよキヨシ君‥?」
(「そういってくれること自体は、嬉しいっすけどね」)


 そして翌日。
 城では華僑達との会談が行われた。連合の後ろ盾の奥多摩商人からもこれ以上の援助が見込めない今、この誘致話を逃す訳にはいかない。
「‥‥条件は呑む。その代わりに、商業圏を金井宿に限定させて貰うから‥」
「困りましたな。金井宿は太田と比べて規模が小さい上、金山の流通の中心からも外れている。ならば、資金援助まではできませんな」
「では限定を商業圏にするのでなく、居住区域とするのではどうでしょうか」
 同席したヴェルサントが、文化間の摩擦を防ぐ名目で華人居住地区を金井宿に限定する提案を持ち出すと、漸く両者は合意を見た。入植者は最低限日本語の話せる者にすること、そして華僑にキヨシ城での興行圏を明け渡すこと、資金援助は5百両とすることで誘致の話は決定した。
(「しかし‥華僑と聞くと、どうも悪印象は禁じ得んのぅ‥」)
 かつてこの地を治めた新田家臣の華西虎山の正体は華国妖怪であった。華人と聞くと九尾のイメージと重ねてしまう者もいるだろう。経済の上では商才に長けた彼ら華僑の協力は心強いが、共存の為には障害も多い。
 まずは華人の入植が始まる前に自警団の組織を終えねばならない。
「治安の問題があるから自警団創設も急がないといけないっすね‥‥義侠塾が役立ってくれるといいっすけど」
「華僑の力が強まれば、金山の主権を確保する上でも地元の勢力を後押しする必要があるわけだ。義侠塾にどんと任せるんじゃあっ!」
 小たち幹部の他、鬼切ら義侠塾も協力も取り付け、ヴェルサントの案で自警団と住民との相互連絡システムの構築により華人組織を有名無実化する策が採られることとなった。
 が――。
 自警団の具体案は何一つ決まらない所か、責任者を引き受ける者いない有様で計画は少しも進展をみなかった。七月初旬にはさっそく華僑商人達が金井宿への入植を始め、互助組織を作り上げた。
 すなわち、完全に時機を逸したのである。
「一手遅かったか。自警団の方はこの由良の手で進めては見たが、実働までは流石に間に合わぬか。私一人ではこなせる実務にも限りがある」
 由良の指導で太田宿の宿屋を買い上げて本部として宿内の定時巡回を行うことが決まった。町人から団員を募集し、五十名程度の規模にする計画だ。
 それでもまだ駅伝は手付かずのままだ。領外に駅を敷設するだけでも難題なのに、候補すら挙がらぬまま。駅に馬や厩舎を一から用意するとなると大きな費用も要る。香佑花は少し気落ちした様子だ。
「‥‥くノ一で12歳のボクが、一国の政治に口出ししてるのって、かなり変だと‥‥どうなんだろ?」
 だが思いもかけず由良は重く首を横へ振った。
「戸来朱殿は紛れなく連合の重鎮。城の誰もが納得しておろう。その自覚と矜持を持たれよ」
「香佑花ちゃんは若いのに良い意見を言う。頼もしい事ぢゃ」
 一方、キヨシ城。
「遂に、遂に竜神池完成だぜ!!」
 切り出した丸太で塀を作って漆喰で目張りし、そこへ麓から桶で汲んできた水を張って池が作られた。工作をやらせたら義侠塾随一の伊珪が大張り切りしてこさえたのである。
「見たか、これが暗黒流の妙技だぜ!」
 そして今日はキヨシ村の人々と義侠塾入塾希望者を集めてお披露目が行われている。風花誠心(eb3859)が司会を務めて来場者を案内する。
「ようこそお越し下さいました。現役城郭を使った世界初の娯楽施設、風雲キヨシ城です。今日は皆様には竜神池に挑んで頂きます。希望者にはこちらに拘束具を用意してあります。より厳しい教練を臨む御方はご自由に御取り下さい」
 目隠しや錘などが希望者へ渡されると、風羽真(ea0270)が大声を張り上げた。
「よくぞ集まった、義侠塾体験入塾生達よ! 今日は特別に聞素人例初音(でもんすとれぃしょん)として、金山地頭でもある松本清義侠塾特待生に竜神池へ挑んで貰う!」
「い、嫌に決まってるっぜ」
 と、ゴネるが、真がこう耳打ちする。
『清、実は正解ルートには艶絵を置いてあるから、それを辿って進めば大丈夫だ』
 これに鼻を膨らませた清は説明も待たずに竜神池へ特攻。そこには既に、秘奥義『破死羅乃漢(はしらのをとこ)』で丸太と化した久方が待ち受け受けている。自らを死んだものと思い込む強烈な暗示により石柱と化すこの奥義は傍から見ると大変恥ずかしい奥義なのである。
「こ、これでも『死を破る羅漢』の意が込められてあるでござってな‥‥」
 と、言ってる傍から清は持ち前の身軽さを活かして器用に対岸へ渡り切った。などと思った所で見事にゴール前の落とし穴に清が豪快に嵌まる。
「ままま負けねー!」
 何とか這い出るがゴール地点にある筈の艶絵の最後の一枚が見当たらない。オロオロする清へ真が一喝。
「人生、そこまで甘くねぇ!」
「あ、あんまりなんだっぜ〜〜」
 こうして清には気の毒なことだったが、ひとまずお披露目も成功に終わった。三月に渡ったキヨシ城計画は遂に実を結び、娯楽施設として動き出したのである。



〇おまけ
「いい? 負けたら、勝った方の言う事を何でも聞く事。じゃあ始め」
 夕暮れ時、竜神池には香佑花に付き合わされた清の姿。二人で池へ挑むが、能力の限りで清を妨害して勝つのはいつも香佑花だ。
「私の勝ち‥じゃあ命令。もっかい勝負」
「つつ、次こそは勝ってやるんだっぜ」
 無謀なレースはは香佑花の気の済むまで続けられたという。