【金山迷動】 街とか作りますが何か?
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■シリーズシナリオ
担当:小沢田コミアキ
対応レベル:フリーlv
難易度:普通
成功報酬:0 G 65 C
参加人数:10人
サポート参加人数:12人
冒険期間:07月20日〜07月25日
リプレイ公開日:2006年08月07日
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●オープニング
C:松本清、上州に立つ!
奥多摩の薬売りの出身である冒険者、松本清。清は上州の地で叛主・新田義貞へ戦いを挑み、これに勝利した。新田方最強部隊・四天王筆頭の篠塚伊賀守を下し、金山城を見事攻略。遂には源徳の後ろ盾を得て金山城大田宿の代官へと就任する。
「俺が城主となったからには、城下町の大田宿も大きな街にしてみせるんだっぜ! 安心するじゃん? 俺は上州の英雄・松本清! みんな、俺についてくるんだっぜ!!」
こうして清の街作りがスタートした。んだけど。その実態はただのヘタレ。冒険者達に苛められながらも神輿兼使いっ走りとして日々慌しく街作りに従事している。
先日はそんな清に縁談の話が舞い込んだのだが、種族間の壁と為政者としての立場から話はいったんお流れとなってしまった。清はまだ諦めきれぬ様子で、同情した他の仲間達も一時この件は保留とする判断を下した。
「さて、地頭殿。本日の予定ですが」
先日完成したばかりの風雲キヨシ城の初回興行で、清がキヨシ城の城主として最終決戦にラスボスとして立ちはだかることとなった。
キヨシ城はあの義侠塾の教練施設をかねて建設されたもの。アトラクションを突破して清との決戦場に辿り着く者が初回から出るかは微妙なところだが、万一を考えて防衛戦に向けて最低限のトレーニングだけは積んでおきたい。
「仮にも城主、負けたとあっては示しがつきませんからな。江戸から冒険者の皆様を呼んでおりますので、みっちり訓練をつんで頂きます」
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D:由良具滋は静やかに考える
松本清率いる反上州連合が金山を新田軍より解放し、薬売りから身を立てた清は遂に金山の城主となる。だが、英雄物語の裏側はそう単純な話ではない。
江戸の源徳家康はただちに清へ後詰の兵500を差し向けた。事実上、金山城大田宿の支配権は、圧倒的軍事力を背景に源徳方へ握られたのだ。これに対し、清の腹心である由良具滋はただちに一計を講じる。度重なる支配者の交替による民の政治不信を背景に、傀儡の城主と執政として、清と由良を立てるという策だ。連合は大田界隈の侠客組織と繋がりを持っている。連合の長である清を城主の位置に据えることで裏社会への影響力を確保し、土地の名家である由良家が執政となることで民の信頼を得る。
「首の皮一枚。今はまだ命脈が繋がっただけだが、このままでは――終わらぬ」
大田の実権を握る源徳。そして連合を束ねる張子の虎、清。両者の間に渡された架橋は、たちまち踏み外してしまいそうに危うく細い。
(「現段階では我らが動く足場すら固まってははおらぬ。まずは力を蓄えねば‥‥」)
〇楽市楽座
経済活性化のために領外から華僑資本を誘致し、多くの華人系商人が金山に移住を開始した。華人自警団の発足によるトラブルが起こらないとも限らない。先ごろ創設された太田宿自警団の活動を軌道に乗せ、領内の治安を安定せねばならない。駅伝制導入の遅れもあり、行商人の流入も思うように促進されていないのも懸念事項だ。
〇駅伝制導入
江戸と金山を直接馬車便で結んで、流通を促進させる。そのためには、まず駅の中継地点として武蔵国内に基地駅を作らねばならない。武蔵国内の宿場から候補を探し、領主や土地の実力者と交渉して合意を引き出す必要がある。現時点では武蔵領内にコネもなく、しかも一から駅を敷設するとなると膨大な費用が必要となるだろう。
〇野盗討伐
上野を跋扈する野盗たち。先の大規模な討伐で野盗は金山領内から姿を消したが、他領から領内へ通じる道に出没し、旅人や商人を襲うようになった。この先、江戸へ駅馬車を往復させることにもなれば、ゆくゆくは脅威となる。だが金山の兵を領外に差し向ける訳にはいかない。現段階では、清と繋がりのある太田の侠客筋を通じて、非公式に裏社会の連中を借り出して討伐を行う計画が持ち上がっている。
問題は山積みだ。
現時点で重大な問題がこの3点。さらに、清の結婚問題や、キヨシ村の開発、自警団の運営、更にはいまだ治まらぬ新田義貞の乱や、華人流入によるトラブルも予想される。
これらを処理する資金である金山城の金蔵は底をつきつつある。金山の商人への税免除により税収も大幅に落ち込むだろう。そして城内の勢力も一枚岩とは言いがたい現状。この厳しい状況の中で、源徳からの外圧を避けて金山の主権を確保せねばならない。
「金山七千の民を生かすも殺すもすべて我らの胸先三寸。その重い責を自覚し、皆でこの金山の発展に尽力しようぞ」
●リプレイ本文
金山城の金蔵の余裕はもう幾許もない。巻き返しの為の新政策の費用ばかりが嵩み、まだ目指す成果は得られていない。資金が底を尽きれば、それを理由に金山の主権は完全に源徳の手に落ちるだろう。
政治顧問に抜擢されたアルスダルト・リーゼンベルツ(eb3751)にとってはここが堪え所。全てが裏目に出さえするかのようなこの逆境においても舵取りを見誤らず、金山七千の民を導かなければならないのだ。
「その為にもまずは駅伝制導入に全力を尽くす。それがワシの使命ぢゃ」
これまで金山発展の為に尽力してきた戸来朱香佑花(eb0579)と共に今日も由良の執務室では政策会議が開かれている。
「由良のおぢさん、提案があるんだけど」
楽市楽座の為に金山商人連盟への税の免除を採った為、財政の負担は深刻化している。仲間の冒険者から援助もあるが現状では焼け石に水だ。
「地主から今年残りの分の年貢を纏めて納められたら、来年の分は8割に下げる。どうかな?」
「先細りの早摘みという策か――諸刃の剣だな。検討はしてみよう」
それより、と由良。
「駅伝の件を片付けねばならぬだろう。アルスダルト老、候補選定の件は進んでいるだろうか」
楽市楽座の成功の為にも江戸との輸送ルート確立は急務。アルスダルトは力強く頷いた。
「‥‥なに、当てが全くない訳でもないでの」
だがその表情にはどこか苦いものが残る。由良は危うげなもの見る目で見詰めていたが、やがて末席へと視線を移した。そこには赤毛の少女が正座してじっと視線を向けている。
「緋宇美桜(eb3064)と申します。駅伝制の件で進言したいことがあって参りました」
緊張した面持ちで桜はその瞳に由良を映している。声を僅かに上擦らせながらも桜は口を開いた。
「馬を安価で用意するのであれば、馬を産する所と昵懇になっておくのが吉かと。秩父丹党の中に軍馬を産する所があると聞きます」
不意に由良の目が鋭く光った。
「緋宇美殿と言われたな。お考えを伺おう」
「駅伝制は民生におきたいのでしょうけど、今は時期も時期ですから軍事色が強くなるのは避けられないと思います」
元新田の重臣でもあった由良の表情が僅かに翳った。だがその私情を飲み込むように頷くと、桜へ続けるよう桜へ促す。
「はい。だから、そこを最大限に利用してはどうかと思うんです。有事の高速連絡手段として計画を進めるんです。これなら上州の乱へ睨みを効かせながら、しかも源徳候から資金も引き出せる筈です」
武蔵国の街道は新田征伐に向けて整備が行われていたともいう。ここを使えれば経費の見積もりもかなり低く計算できる。また、秩父の領主は冒険者とも安い仲であると言う。名馬の産地も近く、ここ以外にはないと言える程だ。
「お許しがいただけば、一筆書いてもらって使者なり何なりにたちますよ」
「よかろう。長尾殿とは面識はないが、この由良が責任を持って話を進めよう」
「おぢさんが紹介状を書いてくれたらボクも北武蔵の鉢形城まで使者に出向くよ」
「急いては仕損じる。まずは城内で話を詰め、そこからであろうな。‥‥無論、下見は可能な限りしておきたい所だ」
身軽さが身上の冒険者の仕事だ。事が具体的な話に及ぶ前に武蔵領内を検分して回れば話も進め易いだろう。
「ならばワシは北武蔵・金山間の候補地探しぢゃな。上州内にも可能なら駅を置きたいでの」
江戸の誠刻の武の仲間の他にも、幸い久方歳三(ea6381)の紹介で何人か協力者が集まっている。手分けすればそう時間は掛からぬだろう。香佑花達は早速旅の支度へ取り掛かった。
そうして3人が慌しく部屋を後にすると、入れ違いに今度は別の三人組が執務室を訪れた。
「お初にお目にかかります。私は楠木礼子(ea9700)、代官殿へ策を献上いたしたく参上致しました」
その手には太田自警団の組織や運営に関する構想を纏めた書状を携えている。見止めた由良は満足げに頷いた。
「ご協力感謝致す。清殿は不在故この由良が承ろう。して‥‥」
楠木の隣へ控えたアルフレッド・ラグナーソン(eb3526)がその視線に気づいた話し出した。
「私も自警団を憂いて参りました。組織を立ち上げるに何より指導者は必要。由良殿の人脈から然るべき人材を選任すべきではないでしょうか」
「そのことなんすけど‥‥」
小道具(eb0569)がおずおずと切り出した。
「うーん、まぁ周りからの反発がないなら別に自分がやっても問題はないっす」
「と、いうことだそうだが。如何かな? 小殿は連合の立ち上げから金山城攻略まで尽力した重鎮。しかも清殿の婚約者でもある」
自警団を城の制御下に置いておきたいなら人選としては外したものでもない。三人の意見へ由良が認可を与え、自警団は更に楠木を補佐役として動き始めることとなった。
さて、次の案件は。
「押忍、義侠塾壱号生の鬼切七十郎(eb3773)であります」
「話は聞いている。金山に検察所という司法機関を作るという策であったな」
鬼切が携えた策とは、懸念されている上州の民と華人との対立に備え、司法と警察機構を整備する案。
「各勢力を抑えながら発展させるにゃ、治安の大元となる法を整備せにゃ駄目ってことでわ。独立した機関である検察所が金山でおきる事件を調査し、警察機構の監視を行って架橋と地元民との摩擦を軽減するということでよろしぅ」
「しかし、検察が地頭に仕えるのでなく金山に奉仕するとするのは先鋭的過ぎやしまいか」
清の治める金山も、神皇を長とする国の統治体制の中の一つの行政区分に過ぎない。まして自由に泳がされているに過ぎない傀儡の清にそれだけの変革の力はない。せいぜい、既存の警察勢力との命令系統を独立に保てるぐらいだ。
「手続きはこちらで整えよう。検察官は暫定的に貴殿に推したいが」
「望む所じゃな」
あくまで金山の主は清。それを踏まえた上で試験的に検察所の活動は始まる事となった。鬼切は由良の書状を手に部屋を後にする。そして執務室から冒険者達が去った後。小だけは所在なさげに部屋へ一人残っていた。
「如何されたかな、小殿」
「異なる民が共に繁栄するには法が必要、なるほどっす。自警団もこの先は規律が必要になりそうっすね。チンピラ崩れが多いと聞くから心配っす」
「侠客といっても連合の同志であった太巖組の若い衆や息の掛かった者が中心。我ら為政者が表立って動けぬ所では、彼ら裏社会の連中を使う。アルスダルト老もなかなかの策を使う」
懸念事項となっていた野盗の跳梁にも対策が打たれようとしている。
城は協力者である太巖組へ密かに協力を取り付け、彼らを動かして金山領外の野盗駆逐に乗り出していた。太巖一家の若い衆や太巖組に迎合する一部の太田の侠客筋などを中心に非公式の討伐隊が金山を出発したのだ。
一行はほどなくして領外で野盗の一団と遭遇。戦闘状態となった。太巖組に草鞋を脱いだ渡世人の猪神乱雪もそれに加わっている。
「僕の太刀筋は見切れんよ」
閃光の切っ先が居合いで野盗の鎧を切り裂いた。遭遇したのは30人からの集団。半数は馬に跨り、それぞれ鎧を身に着け、刀や槍、弓など思い思いの武装に身を固めている。上州の乱の敗残兵や脱走兵などが多く混じっているようだ。
対する太巖組は数では負けていないものの、着流し姿にバラバラの得物を持っただけの武装。城の正規兵ならいざ知らず、戦慣れした連中へ寄せ集めの侠客達が無策で挑んで勝てる筈もなかった。
「おい、逃げるぞ!」
金山攻めでの実戦経験のある太巖組の連中は幾人が逃げ延びたが、討伐隊は壊滅状態。現在の敵の規模や本拠などはまるで分からぬまま徒に犠牲者を増やす結果となった。
そんなことが起こっているとは露知らず、地頭である清はシェリル・オレアリスと太田宿でのデートを楽しんでいた。
「この間はキヨシ城で頑張ったものね、今日は特別よ」
「えっへっへ。ももももっと褒めて〜」
貸し切った茶屋の奥座敷では、シェリルに膝枕された清が鼻の下を伸ばしている。
「はい、キヨシ君、あ〜んして? 私が作った冷却して、インドゥーラ名物のラッシーよ。甘〜いドリンクでリフレッシュよ♪」
「はやくー、はやくー」
暑い中、必要以上に蕩けて馬鹿丸出しだ。
「竹之屋さんの件はありがとうね♪ これからも頑張ってちょうだいね♪」
さて、そんな中、シャーリー・ザイオンは太田の街の木工を訪ねていた。
「木彫りで‥‥ええと、白と黒の招き猫だっけ?」
「ええ、そうです。竹をあしらった造形にするのもお忘れなく」
キヨシ村の名物になる物があれば街も賑わう。この木彫り細工も何かの形で利用できればいいが。
「ちゃんと刻印もつけて置いて下さいね。でないと折角人の目に留まるのに勿体無いですからね」
綻びは広がる。
武蔵の検分に赴いた香佑花と桜、そして上州近辺を具に歩き回ったアルスダルトとその従者が城へ戻ると、待っていたのはこんな報せだった。
「この由良の力が及ばなかった。申し訳もない」
彼らを向かえた由良は深々と頭を下げた。
軍用道路を作るとなると、清達の手に余る大計画だ。案は源徳の手によって握り潰されてしまった。もし実行に移すとなっても清と金山の手を離れて行われるだろう。
更にトラブルは重なる。
風羽真(ea0270)や伊珪小弥太(ea0452)らが参加していた風雲キヨシ城の興行で華僑とのトラブルが起きたのだ。
「華僑の連中がキヨシ城の興行権を主張して、城に居座っているというのだ」
誘致を決める会談では城が華僑へキヨシ城での興行を許可するという内容だった。それがどういう訳か、キヨシ城の興行権そのものを華僑が所有すると話が取り違っているのだ。
「‥‥そんな、ボク達にとってキヨシ城はこれから収入を見込む段階、手放せるワケもないのに」
「華僑に交渉へ応じる気配は見られぬようだな。残るは実力行使での排除だが‥‥その場合は華僑商人全てが金山から引き上げると主張してるとのことだ」
これから楽市を軌道に乗せねばならぬ時期、街から一斉に華僑商人が消えたとなればどんな噂になることか。命取りになりかねない。
「‥‥まったく、次から次に‥。駅伝制もこのままじゃ頓挫しそうだっていうのに」
そんな折だ。
華僑の中心人物である景讃繁の使いが城を訪ねてやってきた。景大人の代理の華人と、そして彼の紹介だという赤ら顔の侍――鷲落大光だ。
「駅伝のことで話を持ってきた。武蔵に中継駅を探す話が難航してると聞いたぜ。なら一つ、拙者が仲介をしてやろうと思ってな」
奥多摩に鬼哭という宿場町がある。そこに江戸と往復する馬車便があるというのだ。
「鬼哭の街は領主も侠客連中の前じゃ顔色を窺う始末だ。話はつけた、心配はいらねえ」
彼は宿を牛耳る的屋の幹部でもある。親分から交渉の全権を貰って既に華僑と話をつけ、この場に立っている。
華僑の要求は1つ。駅を金井宿にも置くこと。
アルスダルトが渋面で頷いた。
「受けるしかあるまいの。これ以上、完成を遅らせる訳にはいくまいて」
鬼哭・江戸間はルートが確立されており費用は最低限で済む。上州内の土地へはアルスダルトの根回しで都合がつき、波乱含みではあるが馬車便の運用はひとまずの実現を見たのだった。
(「‥‥鬼哭を利用するのは火種を抱え込む様で怖いがの‥」)
同じ頃、金井宿。
キヨシ村の外れに建った大きな屋敷。その二階の奥まった一室で林潤花は飲茶を楽しんでいる。テーブルを囲む相手は華僑の重鎮である景讃繁という老人だ。
「林君といったね」
針葉樹を思わせる骨ばって固く痩せた体。目は大きく、銀色の髪は針のように短く刈り込まれている。
「よい儲け話を持って来てくれた。礼を言うよ」
「鬼哭の実力者とは縁浅からぬ仲、ちょっとしたコネを使ったまでですわ、老大」
この林が鷲落を紹介したことで、華僑は城から駅伝の利権を引き出した。楽市政策が成功すれば将来的に大きな富を引き出せるだろう。
「――褒賞は50両が相応かと、老大」
隣に侍ったカンフースーツの男がボソリと呟いた。景が鋭く横睨みにする。
「沈(シェン)、私は彼女の器量を金で換えるような真似をする気はないよ」
「‥‥出過ぎた真似を致しました」
「ふむ。どうかね、私の下で働いてみないかね林君。我々の自警団に一つ席が空いていてね」
団の運営に携わる書記の役職。実質的なナンバー2だ。
「喜んで。我ら華僑の繁栄の為、尽力する所存ですわ大人」
(「思惑通りね。ふふ、火種を撒いていくわよ」)
金山にはいつしか黒い影が忍び寄りつつある。
事件は翌日にも起きた。
「なんじゃって〜! ワシの赴任早々に凶悪事件じゃと〜!」
太田の街で自警団員が惨殺された。一晩に3人。
鬼切の下へ届けられた報せによると、2人の首は高札場に晒され、1人は遺体を酷く弄ばれた。2人の死因は撲殺。喉と目を潰されて殺された後に首を落とされている。残る一人は喉の刃物の傷が致命傷。
「検察官殿、この最後の一人の遺体は特に酷い有様で‥‥目は抉り出され、耳と鼻は削がれ、口も裂かれていました。その上で腹を切り裂かれ、遺体は両手で取り出した腸を自分の――」
「もうええ!」
首の晒された現場には、血文字で『天誅!黒夜叉』とだけ書かれていたという。
「黒夜叉‥‥舐めた真似を。何事も最初が肝心、この事件は徹底的に厳しく取り調べてやらにゃあな」
金山のこれからの発展は、多くの人を集め経済を活性化する他に道ははない。だがそうして集まった連中の中には良からぬ者も混じる。このようにそれが元で事件も起こるだろう。
それを今後どう乗り切ることが出来るか。
金山七千の民の存亡は全て、清とその仲間達の手に掛かっているのだ。
○おまけ
「‥‥ったく。やることなすこと面倒ばかり」
城の天守、今日もそこには清と香佑花の姿。
遠出から帰ってきた香佑花が清に肩をもませている。
「こここ、こんな感じでいいじゃんか?」
「へたくそ‥‥もっと力を入れて」
清のご奉仕は日が暮れるまで延々と続けられたという。