●リプレイ本文
「さぁて、もうそろそろ準備はいいころか?」
「はい、こっちの準備は大丈夫ですよ!しっかりと宣伝しましたから!」
「でも何で宣伝‥‥確かにみんなに見て貰うのはいいが、恥ずかしくないのか?」
「着ぐるみ着てるから大丈夫だと思いますよ!」
‥‥着ぐるみというのは殆ど名称だけで、それは実は防寒服という話。
この時期にこんなレースをやるというのはほとんど命がけである事は確かである‥‥。
●始まりの音
「さあ、始まりました着ぐるみレース♪美女出場者多数ポロリもあるのかー!募った参加者は男女問わず気がつけば美女6人に男子1人によるレースやはりかわいい着ぐるみ姿それなりの人が着てこその華、参加者の紹介だー!」
南天輝(ea2557)がノリにのって紹介をしていく。その間に、参加者達は着替え終わり、レースの位置についている。
とりあえず紹介をしてみよう。
一番の枠にいるのはトナカイ姿のミィナ・コヅツミ(ea9128)だ。この時期にトナカイ!?というのもあれなんだが本人はお気に入りのご様子。
本人はどクレリックとかいっているが、ここまで来たらどう見てもクレリックに見えません‥‥。
まぁ、それはそれでいいんだろうなって思う記録係。
二番の枠にいるのは南天桃(ea6195)。猫で参加らしい。‥‥名前はビャクヤだそうなんだが、猫につけても威厳がないっていうのが本音。
しかし、これは本人の趣味なんだ! と言い聞かせる記録係。
三番の枠にいるのは琴宮茜(ea2722)。ヤギだ。
‥‥ヤギの肉はーとか考える記録係は空腹なんだろうかとかちょっと思いながらも可愛いなー‥‥という状況。
結構回りの人はここまででも楽しそうだ。宣伝の効果はあったらしい。
四番の枠にいるのは南天流香(ea2476)。メリー。
‥‥‥‥妹達見世物ですね? とか思った記録員はさておき。これはこれでいい勝負になりそうだが、問題は魔法‥‥果たして大丈夫なのか?
五番の枠にいるのは柊小桃(ea3511)。そしてこれが大いにクリティカルヒット!
桃色のメリーさん‥‥しかも中身は可愛い娘! お客さん、熱く萌え上がるっ!記録員も其処に入らせてくださいとお願いしたいですが。
六番の枠にいるのはジャン・グレンテ(ea8799)。猫らしい。
そしてここで記録員は声高らかに言います! こんな可愛い子を出されると正直血が足りません。
まぁ、冗談はさておき、ジャンもどうやら魔法を使用するようだ。‥‥果たして成功するのだろうか?
七番の枠にいるのは如月あおい(ea0697)。どうやらウサギらしいのだが手作りなんで思いっきり変。
どっちにしても作ってしまったので仕方なく着てはいるものの、草履に関しての案はギルド員から猛烈に却下を食らったのでやらない。
理由は「バレたら子供の夢が壊れます」だそうです。
「俺はアキラだ。観客の皆も応援頼むぜ!」
輝がそう言って観客を盛り上げる。そして、走者達は位置につく。
さぁ、始まる、始まる。混沌レースがっ!
「各選手出立点にたったぞ、優勝は誰の手に!着ぐるみの愛らしさを見せるのは誰か?この太鼓の音が開始の合図だ!」
太鼓を取り出してにっこり笑う輝。漂う緊張感。これがレーススタート前の緊迫感だろう。
どんっ! と太鼓の音が鳴り響く。スタートの合図なので一斉に走者は走り出す!
●陸の競争戦!
「一番になるんだからっ!!」
小桃が思いっきり走り出す。しかし、慣れない姿でのレースだ。時々おっとっと‥‥と転びそうになる。
それが愛らしくてよかったのか、観客達は心配そうに見ているのだ。
そして遂にその瞬間は訪れた。ぽてっ‥‥。
「あわわわわわわ‥‥こけちゃったよう‥‥」
小桃のその姿がまた愛くるしい。観客達の目を奪うッ!
「戦うのは好きではありませんが、こういうのは面白そうですね」
その横を楽しそうにジャンが走っていく。
着ぐるみではいけない足場の悪そうなところを避けてぴょい、ぴょいっと進んでいく。
今の所のトップの二人である。
「わっ、わっ!?つ、ツノが意外におもっ‥‥!」
ミィナはトナカイの姿で走るものの、結構ふらふらしている。
ちょっとツノが大きい為か、バランスがとれていないようだ。
そして、彼女にとっての一番の脅威は「ハーフエルフ」だということがバレる事。
これは頑張って隠しているようだ。
その隣では桃が猫のビャクヤとじゃれあうように進んでいる。
心配そうに見守る兄を他所に本人は楽しんでいるようだ。
茜はそれをまるで支えるかのようにして真剣勝負を望んでいるのよう。
しかし、それだけではこの先乗り越えられない!
そして、流香とあおいは凄いところで結構苦戦している。
流香は体力勝負が苦手ということで、陸で早くも少し息切れをしている。
志士だから仕方ないのだろうか。
「この季節に着ぐるみは少し熱いけど、レースは燃えて当然ピョン♪」
あおいがそう言いながら走る。暑いっていうか、寒いんです、本当は。
えぇ、寒いですから。
●第一の水は清流の如く。
まず来た。第一の難関! やはりトップで入ってくるのは小桃とジャン。
「おーっと!ここでトップは二名だっ!」
輝が頑張って司会をする中、小桃がまずえいっと水に入る。
最初は順調に泳いでいたのだが‥‥。
「‥‥あれれ??着ぐるみが水を吸って重くなってるよう‥‥」
それもそのはず。着ぐるみは水を吸うもの。そしてそれは重くなって‥‥。
まるで錘を抱えてるかの如くです!
「や〜ん!!おぼれちゃう〜〜〜!」
それでも必死に泳ぐ小桃はもはや気合だろう。
そんな小桃を応援するかの如く、観客達も走っていく‥‥。
「ここはどうしましょう。‥‥こうする方が得策ですね」
そうやって知恵を使い、板を使って進んでいくジャン。
なんか傍から見れば愛らしい。そんな状況を見て、観客の女性陣のハートを奪っているようです。
‥‥かっ、かぁいいなぁ‥‥。
そして後ろを追ってくるのはミィナ、桃、茜だ。
「ツノは伊達じゃないのですー!」
と、突っ込むミィナだが、ツノと水はもう関係ない。
しかし、ツノのお陰で順調には進めているご様子だ。
「ビャクヤ、楽しむのですよー」
本当に楽しんでいる様子で水浴びするかのように突進していく。しかもレースの道外れてます。
そんな彼女に輝がソニックブームを飛ばす。
「そっちじゃない!!」
「あれぇ〜?」
‥‥なんか凄い兄妹ですね。
それに巻き込まれてる茜も凄いことになっているのだが、これは本人の名誉の為にあえて言わず。
遅れてきたのはやっぱりあおいと流香。
流香は鷹に手伝ってもらいながらもひたすらに泳いでいるのだが、問題はあおい。
男性陣に媚を売ろうとするものの、唯一の男性参加者のジャンは前。
輝に言っても怒られるだけで子供の夢が潰れてしまう。
結局泳いでいくのだがー‥‥。
「仕方ないわね、泳いでいくしかないわね!」
「そうだぞ。忍者の忍は忍耐力の忍だ!」
何処のコーチと教え子ですかっていう突っ込みもあると思いますが、このままで。
●匍匐全身ルート!
「さぁ、続いてのルートは匍匐全身だ!低い位置に網がなされているっ!その下を進んでいくんだっ!」
輝の気合が入った説明。その中を可愛い声で歌う小桃の姿。
その姿はちょっぴり異様。
「♪しゃくとりむ〜し しゃくとりむ〜し」
歌っている姿はいいのだが、くねくねしている姿は結構なものだ。
「しかし‥‥僕は二位ですか‥‥どっちにやろうか迷ってしまいますが‥‥」
ジャンも匍匐全身しながら少し悩んでいる。前に妨害を出すか、後ろに出すか。
二位の位置を確保しておきたいのなら‥‥。そう思ったジャンは少しとまって詠唱を始める。
「悪く思わないでくださいね‥‥?」
少ししゅんっとした表情で、後ろにクーリングを施す。水にぬれた地面は少し凍っていく。
そんな表情もまた愛しいっ!となる女性達も多いだろう。
それを後ろから追いかけてきたミィナがまず一発目に引っかかる。
つるっと滑ってそのままずしゃーっと転ぶ。顔面が痛々しい。
「う、ううっ!?痛いです‥‥。でも負けませんっ!」
ここまでくるとミィナの意地というかガッツ。勢いよくまた歩みだす。
「ビャクヤ、氷ですよー。冷たいですねー」
桃はもうマイペースを極めている。猫と戯れては進み、戯れては進み。
兄の輝も心配しているのだが、変えるつもりはないらしい。
茜も一緒に遊ぶように進んでいる。取り込まれてしまったらしい。
ウサギの姿で頑張るあおいもこの氷に見事に引っかかる。
水と氷というのは相性がいい。つまり、ぬれたままで氷に触れるとくっついてしまう。
「な、なにこれー!?水が‥‥ッ!
「おおっと!これは意外なトラップだ!クーリングがトラップになっているーーっ!」
「と、とってよ、これーっ!?」
もうパニック状態になっているあおいの横を、流香がリトルフライで少し浮きながらの前進を始める。
これはちょっと意外なダークホースという形になり、流香は三位にまで上ったという状況に入った。
●ラストの水は激流だ?
「さぁ、ここが終盤!激流くだりだっ!さぁ、果たして一位はどの着ぐるみだぁっ!?」
「あ〜ん!!沈んじゃう〜〜〜!」
小桃がバタバタと手足を動かしながら水の中を頑張って泳ぐ。しかし、ジャンの木の板が迫ってくる。
そう、これは激流。流れた方が泳ぐよりかはマシなのである!
「うー‥‥こうなったらぁ!」
小桃の頭の上でピカーンッ!という音がしたような気もしないでもない。
「必殺!ぷかぷかめり〜!」
浮き上がり、完全に激流に身を任せる小桃。それはジャンとて同じ。
それを後ろから突っ込んでくる流香。既に勝負は激流の流れに左右されるっ!
「おぉっと!これは混戦だ!どうなるか分からない〜〜〜〜っ!」
輝も手に汗握るものがある。自分の妹がその中の一人になっているのだし。
なんと言っても周りに集まってきている子供達は楽しそうに笑っていた。
だから、もう少し盛り上げていこうとか思ったのだろう。
そして終盤。
ゴールに近づいてきた三人は、入り乱れてずしゃあぁぁぁぁっとゴールする。
ゴールした後は清流。ぷっかりぷっかりと浮けるぐらい。
三人共目を回しながらぐたーんとなりながら浮いていた。
「これは‥‥誰が一番だ?」
「さぁ‥‥私もよく見えませんでした‥‥」
ギルド員と輝がそんな話をする。
本当に誰が一位か分からない状態。しかし、誰かを決めなくてはならない。
その時、よく見れば‥‥。木の板のリーチの長さでジャン。メリーさんで浮いた状態で手をぴーんと伸ばしていた小桃。
どっちかだという事は分かるのだが‥‥。
「ジャンさんでいいような気もしますけど‥‥」
「でも小桃もそうだよな‥‥」
「こうなったらどっちも優勝という事で」
「そうだな、そうしてしまうか!」
適当な言葉で優勝者は二名という事で幕を閉じたレース。
「楽しかったか、坊や?」
「うん、楽しかった!お父さんの無茶なお願い聞いてくれてありがとう!」
ギルド員の子供もご満悦のようだ。
「で、賞品って何なんです?」
「あ、それはですね。着ぐるみの銅像を‥‥」
「え?」
「子供達が頑張って作ったんですよ。貰ってあげてください」
にっこりと笑うギルド員。
冒険者達も嬉しそうに笑ってうなずく。ジャンと小桃は銅像を貰って嬉しそうだった。
「さぁ、この時期に水に入って寒かったでしょう?向こうに温かい料理を用意していますから」
『やったぁ♪』
たまには、こんな依頼もいいのかも知れない。と思った冒険者達だった。