【贖罪】最初の一歩は……。
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■シリーズシナリオ
担当:相楽蒼華
対応レベル:3〜7lv
難易度:普通
成功報酬:2 G 4 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:06月28日〜07月03日
リプレイ公開日:2005年07月02日
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●オープニング
「大ミミズ捕まえてくれや」
かぽーん。
奉行所の一角。後藤と綺螺が正座して向かい合っている。
後藤は暢気に煙管をふかし、綺螺はぽかーんと呆気にとられている。
「ご、後藤さん?い、今なんて?」
「聞こえなかったか?大ミミズ捕まえてくれって言ったんだよ」
またもや続く沈黙。
綺螺は前まで牢獄にいた。しかし、後藤の働きによって奉行所の密偵となったのはいいのだが他の役人達の目はまだ疑いに輝いている。隙があれば殺そうとしているぐらいだ。
それを何とかしようと後藤は綺螺に贖罪を奨めており、その最初の仕事だと呼び出されたのであった。
「な、何でミミズ‥‥?」
「そりゃお前。大ミミズが存在していて暴れて迷惑だからに決まってるだろうが」
「いや‥‥それは、分かるんだけど‥‥」
綺螺が苦笑を浮かべる。そりゃあ、理由聞いてないわけだからそうなる。
「いやな。最近大ミミズが近隣の村に現れてお百姓さんを困らせとるんだわ」
「冒険者に頼まないの?」
「バカ!お前にまわさねぇと意味ねぇだろ、贖罪の!?」
後藤が不意に怒鳴る。それにびっくりして綺螺の背筋がピーンと伸びる。
「いいか?お前はまだ疑われてるんだ。隙見せたら殺される可能性もある!だからこそ汗水流して働いて信頼を得られればだな‥‥!」
「でも、大ミミズは幾らボクでも一人じゃ無理だよぉ〜‥‥?」
「バカモン!気合と根性と勇気が足りとらんのだっ!」
「あ、冒険者に手伝ってもらえば結構早いかもよ〜?」
やっと後藤の性格を掴んだのか、綺螺ものらりくらりと逃げ始める。
これだと確実に話は平行線だ。後藤はそう察知して折れる事にした。
「で、その大ミミズはどうすればいいの?」
「無論、退治するんだ。ちゃんと倒した証を持って帰らんと信じてもらえんからな?」
「はーい♪冒険者に頼めばばっちぶいっだよ〜♪」
「‥‥ばっちぶい?」
綺螺の勢いに結局押されきった後藤は、ギルドにてお手伝いを募集するのであった。
●リプレイ本文
「さぁて頑張って捕まえるよっ!」
「綺螺姉ちゃん、張り切り過ぎだぞーっ!」
「仕方ねェだろ。久しぶりの牢の外だ。はしゃいじまうもんだろ?」
「だからといって怪我をさせるわけにはいきませんけれどね」
アキラ・ミカガミ(ea3200)が笑顔でそう言う。
そして、綺螺に向き直るという。
「『にゃっす』です綺螺さん。今回もお手伝いさせて頂きます。」
「えっと‥‥確か、一度手合わせした人だよね?わー、久しぶりだなぁ♪」
「おい。あんまりはしゃいでる場合じゃないんじゃないのか!?」
クルディア・アジ・ダカーハ(eb2001)が少しイライラしたように言う。
どうやら、早くミミズをたたっきりたいようだ。
綺螺の言う武を真っ向から理想論だと否定する彼。彼もまたそういう武人なのだろう。
綺螺はそれで納得している。
「それもそーだね。それじゃ、ボクもお手伝いするから頑張ろうね♪」
「お前は手伝いじゃなくてトドメの一撃だ。頼んだぜ?」
「‥‥もしかしてボク、アテにされてない?」
小さく呟かれた綺螺の囁きは、古神双真(eb0813)にだけ聞こえていた。
●到着一日目。準備期間。
「さて、それじゃ情報収集からいきましょうか」
瓜生勇(eb0406)はそう言うと、グリーンワードの準備をする。
どうやらそれでミミズの情報を聞き出そうというのだ。
他の冒険者達は地道に足で情報稼ぎだ。
「私は少し罠の準備をしますね。役に立つかどうかは分かりませんが‥‥」
音無藤丸(ea7755)はそう言って、同行を拒否。残りの人間で行うことになる。
「最近現れた大ミミズというのは、どの位大きなミミズなんですか?」
「そうさなぁ‥‥あれは結構でかかったさなぁ?」
「そうじゃのう。まるで地面が割れるかと思うぐらいの地震だったしのぅ?」
「大ミミズが出てくる時間帯というのは決まってるのか?」
「いんやぁ、さっぱりだ」
「大ミミズは主に何処から現れるんですか?」
「この近くに森があるだろう?あそこからよく見るんだがー‥‥」
アキラと狼蒼華(ea2034)が情報を聞き出している。
「出来れば次は料理できる奴を退治したいねぇ…食材(贖罪)だけに」
「くだらない駄洒落を言ってないで、貴方も手伝ってくださいな」
飽きれたようにパフィー・オペディルム(ea2941)が九竜鋼斗(ea2127)にツッコミを入れる。
鋼斗はどうやら依頼で駄洒落を言うのが間違った趣味だという。
「全く‥‥これだからジャパン人はまったりしすぎで‥‥」
「しかし、パターンが分からないんじゃあ対応の仕方がないんじゃないか?」
「それについては何か双真さんと綺螺さんが何か調べに森へ行きましたけど‥‥」
「ふむ‥‥俺も少し行って来る。二人だけじゃちっとばかし危険だ。パフィーも他の奴と合流してくれ」
●綺螺の読み。
「おい、どうしたんだよ、綺螺?こんな森に何があるっていうんだ?」
ぼやく双真。どうやら綺螺に森まで引っ張りこまれたらしい。
何故双真?というと、近くにいたからだそうで。
「いた。二人とも!其処で何やってんだ?」
「鋼斗クン!‥‥二人とも、此れ見て」
「‥‥?動物の死骸、か‥‥?」
「ミミズが襲った後だよ。ほら、この噛み砕かれ方。異常だもの」
綺螺が言う。大ミミズ。それはシフール一匹を丸呑みするぐらいの生き物だ。
綺螺はもしかしたら血の臭いでも誘き出せるのではないのか?と目論んでいるようだ。
「でも、それで誘き出せるとしても、何処に誘きだすんだ?」
「森にやったら確実に俺達が不利だな」
「畑の近くも避けたいから、出来るだけ村の外だね。血の用意はボクがするよ」
軽々と獣の死体を持ち上げると、血を布袋に手早く詰める。
自分の手が血まみれになろうともおかまいなしだ。
「後はこれに鈴をつけて‥‥。臭いと音で多分来ると思う‥‥」
「さて、後は明日を待つだけか‥‥?」
双真がそう言うと、鋼斗と綺螺は小さくうなずく。
村人にこの事を告げて、どうにか広場を確保しないと。
それは、その日のうちに行われる事となった。
●二日目。ミミズ・現る!
二日目。作戦決行の日。
前もって勇が綺螺に告げる。
「奥義、出来るなら使わないで欲しいんです。クリスタルソード貸しますから」
「いらない。ボクの武器は拳。剣には頼らない!」
「無粋だぜ、勇。そいつは一度言い出したら聞き入れやしねぇ」
「綺螺姉ちゃんだって強いんだ!迷いのない拳の持ち主だし!少しは信用してあげて欲しいなっ!」
蒼華がにっこりと笑ってそう言う。綺螺は少し安堵してゆっくりと広場へと歩みだす。
「そろそろか?」
「あぁ。たたっきりたいんだろ?しっかりとしてろや」
クルディアにそう声をかけると、双真と鋼斗は綺螺のサポートに入る。
蒼華はできるだけパフィーの護衛。アキラは何時でもアタッカーに入れるよう準備をする。
リィン‥‥。
鈴の音が鳴る。
血の臭いが辺りに広がる。
「な、なんです?あれ?」
「獣の血だ。シフールも食うっていうミミズなんだったら臭いに釣られてくるはずだ‥‥」
息を潜める冒険者達。
綺螺がゆっくりと鈴を投げ、地面に落ちると同時にリィンと鈴が鳴る。
ほぼそれと同時に地面がゴゴゴゴと揺れる。どうやら臭いにつられたようだ。
「来るぞ、構えろ!」
勇が一気にウォールホールでミミズの位置を探す。片手には先に出していたクリスタルソード。
「見つけた!」
クリスタルソードでスマッシュを打ち込むものの、大ミミズにはあたらない。
それどころが、土の中では相手の方が地の有利。移動の邪魔にもならないようだ。
「バカ!相手が顔出したとこ狙え!クルディア、そっちは頼んだぞ!」
「へいへい‥‥殺せればそれだけでいいんでね!」
地響きが段々とでかくなっていく。
どうやら大ミミズの挑発に成功したのか、地面がボコリと浮き動き回る何かが見えた。
どうやら大ミミズの頭のようだ。
「今度こそ捉えますッ!」
アキラのチャージングが見事タイミングバッチリ。見事に大ミミズに命中する。
それに合わせてパフィーが詠唱を開始する。
「喰らいなさい!唸れ!業火よ!!」
地面からマグマが吹き荒れる。それはミミズの体を焼き払う。
が、図体でかい大ミミズはターゲットを綺螺へと移す。
「綺螺姉ちゃん!」
「させるかよっ!」
クルディアが大ミミズをぶっ叩く。されど勢いは止まらず、綺螺へと向かう。
決して彼が弱かったわけではない。ただ、でかい物の勢いは止まらぬという事だ。
「鋼斗、蒼華!合わせろよ!?」
「言われなくても分かってる!」
まずは蒼華が大ミミズの行き先である綺螺の前に立つ。綺螺はとっさに移動を開始。
蒼華は向かってくる大ミミズにオーラショットを放つ。
少し怯むものの、再度綺螺を狙って動き出す。
「次、そっちいったぞ!」
「トドメささねぇようにな!」
「分かってる!抜刀術…一閃!」
鋼斗、双真の二人のブラインドが一気に大ミミズの体半分を切り落とす。
ある意味共同作業。なんか、ウェディングケーキ作業みたいでヤだけども。
「綺螺!トドメ頼むぜェ!」
「綺螺姉ちゃん、オーラパワーだけでもかけておくなっ?」
「ありがと、みんな♪さー、それじゃいこっかなっ♪」
少し衰えながらも勢いづいた大ミミズは、綺螺に向かっていく。
綺螺も今度は避けようとせず、構える。
「さぁて、行くよッ!龍飛翔ッ!」
ゴシャッと思いっきり大ミミズの頭が半分砕ける。
強力な綺螺の拳に耐え切れなかったのだろう。
「いぇーい♪ばっちぶーいっv」
「ばっちぶい♪」
綺螺と蒼華のダブルばっちぶい。似合い過ぎる二人は問題ありなのだろうか。
●証拠
「村長、依頼を出したのは村長でよかったでしょうか?あたしは礼法も話術も多少出来ますから交渉。この度の件を解決した証拠をあたし達は持って帰らねばなりません、ご迷惑でなければついてきて証言をしてもらうか書面証明してもらえませぬか? 」
「本気でおっしゃられておるのか?流石にここから江戸までの期間、村をあけるわけにはいかんですじゃ」
「こんな小さな村だと、男が長期間外に出られると困るのですよ」
「仕方ないな、大ミミズの肉を持って帰るしか‥‥」
「腐らなきゃいいんですけどねぇ‥‥」
そういえば綺螺は?と鋼斗が振り返ると‥‥。
「ねー、これ結構イケるよー?」
「なっ‥‥!」
『証の分までミミズ食うなよッ!?』
「ほへー!?」
どうやら食欲の方が勝ったようだ。大ミミズはどうやら美味だったようで。
しかし、何とか証になる分はゲット。
干していってはどうか?という案もあったが仕方なくこのまま持ち帰ることに。
村からは手紙を持たせて貰えることになった。十分な証拠になりそうだが、疑いの炎はまだ消えないだろう‥‥。
後は後藤に任せるしかないのだ。
因みに、大ミミズを食べた綺螺は。
双真に思いっきり頭をグリグリとされながら帰路についたという。