【贖罪】黒き陰謀を見破れ!

■シリーズシナリオ


担当:相楽蒼華

対応レベル:3〜7lv

難易度:やや難

成功報酬:2 G 25 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:07月19日〜07月25日

リプレイ公開日:2005年08月02日

●オープニング

「次な。ちょいと偵察を頼みたいんだ」
「偵察‥‥?」

 奉行所の一角で何時ものように行われる会話。
 前回の大ミミズ退治同様、急な仕事である。

「偵察って何を偵察すればいいの?」
「水戸にはびこる悪徳商人達の団体を探ってきてほしい。どうも幕府転覆を狙ってるという噂があってな?」
「でも、其れは水戸藩のお仕事でしょ?」
「バカモン!水戸藩が動いて見ろ!大きな騒動になって動乱になりかねないだろうが!」

 怒鳴る奉行所の後藤と、耳を塞ぐ密偵の綺螺。
 また遠出?という顔をしながら首を傾げる。

「行きの食料に関しては此方が持つ。お前さん達は水戸で旅人に成りすまして現状を見てきて欲しい」
「解決はどうするの?」
「其れは水戸藩に任せる。お前達は情報だけ持って帰ってくればいいんだよ」

 後藤がそう言うと、綺螺は苦笑を浮かべる。
 どうやら今回は前回みたいにミミズを食べたりしなくていいようだ。

「流石に偵察で大人数は怪しまれる。よって今回は雇う数を減らすぞ。こっちも自腹でやるんだしな!」
「で、具体的に何を調べればいいの?」
「まずはそいつ等の現状。其れから行動に移した悪事。これから実行しようとする悪事。あぁ、そうだ。見つかっても戦うなよ?いいか、逃げに徹するんだぞ!?」
「はーい!ボクにばっちりお任せあれ☆」
「やっぱ心配だわ‥‥アレ」

●今回の参加者

 ea0221 エレオノール・ブラキリア(22歳・♀・バード・エルフ・ノルマン王国)
 ea2034 狼 蒼華(21歳・♂・武道家・人間・華仙教大国)
 ea2127 九竜 鋼斗(32歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea9028 マハラ・フィー(26歳・♀・レンジャー・ハーフエルフ・インドゥーラ国)
 eb0406 瓜生 勇(33歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 eb0813 古神 双真(47歳・♂・浪人・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

 水戸藩入り口前。
 冒険者達は綺螺と一緒に藩を眺める。
 其処は活気があふれていて、いかにも商売繁盛というイメージが強く見える。
 しかしその商売も一部の者だけ。
 そんな事を知るのは、水戸に宿をとってからの事だった。

「とりあえず綺螺。相手の事を知ってたら教えてくれると助かるんだが」
「其れがボクにもよくわからないんだ・・・・後藤さんもいってたけど、これすごい裏がありそうなんだよ」
「どういう事なの?」
 エレオノール・ブラキリア(ea0221)が聞き返した。
 綺螺はく小を浮かべると言葉を続けた。
「まず、情報がこうも簡単に露呈するなんてどうしても思えないんだよ」
「罠かも知れないって事か?」
「其れはまだわからないけど。でも、何か裏があるのは確かなんだと思う」
「其れにこの国の藩士達も動いていませんしね」
 結局話し合いの結果、綺螺達は旅人に成りすまし藩を偵察する事にした。

○陰謀は・・・・
 瓜生勇(eb0406)は、酒場にいる浪人から話を聞いていた。
 しかし、手に入れられた情報は二つだけ。
 そして、とても些細なことだった・・・・。

「集めているのは、浪人達ではない、ですか」
 呟かれる言葉。どこか悔しそうだが・・・・。
「集めてる何かは知らねぇが、姉ちゃん深入りだけはやめた方がいいぜ」
「え?」
「確かに気になるもんではあるがよ。あいつらにかかわって死んだ人間が大勢いるからな」
「死んだ・・・・?」
 勇は眉をピクリと動かす。
 情報はどうやらこれで全部のようで、浪人も手を振って去っていく。

○団体の統一?
「何だか団体といってはまとまりがないように見えちゃいますよ」
 マハラ・フィー(ea9028)が茶屋の親父にそんなことを愚痴る。
 どうやらそうやって情報を集めようというのだが、少し難関だ。
「とりあえず、そういう商人がいるっていうのは事実なんですね?」
「あぁ、事実だな。寧ろいっぱいいる。今お前さんが通ってきたあの道筋にある怪しい店もそれだ」
「・・・・何だかあの悪趣味なところですか?」
「そうだ。お嬢さん、何者かはあえては聞かないが、とりあえず耳は隠した方がいいぜ」
 と、親父さんに忠告されてしまう。
 ハーフエルフである事を隠し忘れているぞ?と。
 マハラの方の情報も、然程重要な事は聞かれなかった。

○呑ませ屋は偉大でした。
「応、其処の兄ちゃん!ちょい話聞かせてくれや!酒は奢るぜ?」
 古神双真(eb0813)が酒場で浪人を捕まえ、そう告げる。
 酒がタダで飲めるとあれば、浪人も喜んでついてくることだろう。
「いや何、水戸に有名な商人がいると聞いてな?、どんなのか聞いて回ってるんだが」
「あぁ・・・・黒奇党の事ですかい?」
「黒奇堂?」
「あいつ等の名前ですさ。あいつ等、表では敵を装ってるが、中身は味方。とんだ古狸だ」
 浪人が、貰った酒をグイグイのみながらそう告げる。
 どうやら団体の名前までは分かってきた。
 後はその中身だ。
「一体どんな党なのか知ってるか?」
「にーちゃん、興味あるんだな?あいつ等、かなりあくどい商売しててな?貧乏人から金巻き上げる事だって平気ですっぜ。其れに・・・・」
「それに?」
「あいつ等、妖怪と手を組もうとしてるって噂だ」
 妖怪・・・・?やはり水戸藩は危険な状態だということか?
 後藤の読みはあたってしまっているのか?
 双真は浪人に礼を言うと、その浪人に酒を飲ませ続け、酔い潰す。
「こりゃあ、裏があるな」

○団体に接触を
 其処は黒奇堂の一味である店、【黒撰堂】の中。
 九竜鋼斗(ea2127)は己の道具を持ち、其処にいた。
 売るつもりはない。ただ、この店の中を探る為だけにここにいた。
「はい、これでお客さんの鑑定は終わりましたよ。品をどうぞ」
「どうも。そういえば商売敵って言葉があるけど、実際同業者とは仲良いんですか?」
「え?」
「だって水戸、見たところ店多いですし?」
 鋼斗が尋ねると、嗚呼・・・・と番頭は大きく頷く。
「そうですね。相手様達には悪いですが、私達も負けてはいられませんので・・・・いい好敵手だとは思っていますよ」
(「なるほど。どうやら、表向きではこんな感じか」)
 そして、怪しまれないように鋼斗は店の中を珍しそうに見渡す。
 まるで初めて見るかのように。実際には何度も見た武器やら防具、道具が置いてあるのだが。
 其処で目に入ったのは一つの置物。二股の狐の尻尾。商売人が持つようなものではないのだが。
「あれ?アレ、どうしたんですか?」
「おや、お客様も目に入りましたか。其れは狐の奴の尻尾ですよ。私が退治した狐の」
「退治、したんですか?」
「えぇ、えぇ。珍しい狐でしたから」
 おかしい。普通、妖怪の狐の尻尾であるのならお払いの札はあるはず。
 其れに、こんな人が見るような所には出さないはずだが・・・・。
(「この男、絶対何か企んでるな・・・・まさかこんなところにこんなものがあるなんてな」)
 そして、道具を纏めて持つと、踵を返す。
「ありがとう、また来るよ」

○姉弟に扮装して・・・・
「あっちこっち旅してると物騒な話をよく聞くんだ、けど水戸は平和そうで良かったな、姉ちゃん♪」
 そう笑顔で話すのは狼蒼華(ea2034)だ。綺螺と一緒に茶屋で情報集めの為、演技をしていた。
 其れは仲のいい姉弟をという事だ。
「そだねぇ。他のとこってみんな物騒だったしねぇー」
「何言ってるんだい!この水戸も何れそうなるかも知れないんだよっ!?」
 と、近所のおば様。噂好きなおば様を捕まえたとあれば、情報は幾らでも聞き出すものだろう。
「え?なんでっ!?」
「なんでって・・・・知らないのかい?どうやら水戸に向かって妖怪達が動いているらしいんだよ!」
「妖怪!?そんなのがこの水戸藩にも!?」
「そうさ!噂だけどね、大きな群れが近日この水戸に接触するらしいんだよ!其れを手引きしてるのが人間だって噂だよっ」
 そう言うとおば様は「気をつけなよ?」と言って去っていく。
 その瞬間、二人の顔は真剣なものになる。
「どうやら、妖怪の狙いはこの水戸藩みたいだな!」
「其れもそうだよ。水戸が落ちれば江戸に攻めやすくなる。其れにここを他人が納めれば、確実に江戸への商売を握れるわけだし」
「と、いう事は藩転覆の目論見って・・・・!」
「何れ江戸まで手に入れるつもりだね。尻尾がつかみやすい・・・・。いくよ、此処にいててももう仕方ないから」
 綺螺は真剣なまなざしで、その茶屋を後にするのであった。

○確実な証拠を
 エレオノールは自慢の話術で情報を集めていた。
 エルフでありながらも丁寧な物腰に、人間も気分をよくしてしまうだろう。
「そういや、こんな話を知ってるか?妖怪は商人達を利用して、内乱させようと目論んでいるらしい」
「内乱を?でも、妖怪がそんなことして意味があるの?」
「・・・・あるさ。江戸を攻める為の一つの足場となるからな。頼房様さえ倒してしまえばな?」
「つまり、その商人達は妖怪と手を組んで、水戸藩を落とそうとしているのは確実なんですね?」
「嗚呼、確かな筋からの情報だ」
 親父がそう言うと、エレンは小さく首をかしげる。転覆を狙うのであれば自分達でも出来たはず。
 なら何故妖怪の手を?
「それに、妖怪達に取り入ることで、自分達がその幹部にのし上がろうって魂胆だ。つまり、妖怪が江戸を攻めて滅ぼせれば・・・・」
「その商人達だけ生き残れるという事、ですか?」
「そのとおりだ。とんでもねぇ野郎たちだ」
 エレンがつかんだ情報は、全て他の者たちが手に入れたような情報ではあったが、確証が持てるものになった。
 妖怪は狙っているのだ。
 このジャパンという土地の占拠を。


 妖怪達の足音。
 妖怪達の声。
 冒険者達は走った。
 この事実、江戸に伝えるまで。

 しかし、帰った冒険者達に
 過酷な依頼が出ることを、だれも知らない・・・・。

【次回へ・・・・】