『アラン先生と遺跡探索』 実習に行こう編

■シリーズシナリオ


担当:雪端為成

対応レベル:6〜10lv

難易度:普通

成功報酬:3 G 9 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:11月02日〜11月07日

リプレイ公開日:2005年11月13日

●オープニング

「なにやら、ケンブリッジは祭りで浮かれているようだが‥‥学生の本分を忘れては困るのだ」
 気難しい顔をしてギルドにやってきたのはアラン先生だ。
 時はちょうどハロウィン真っ只中で、心なしかギルドもがらんとしている。
「は、ははは、そうですよねぇ〜」
 苦笑いを浮かべて同意する受付の青年もそわそわ、デートにでも行きたいのかもしれない。
「ふむ‥‥まあいい、一つ依頼を頼もうと思う」
 そういってアラン先生は懐から羊皮紙の地図を取り出すと受付に示す。
「今度の依頼は、我輩と共にとある遺跡の探索に向かってもらう」
「遺跡ですか! えーそれは一体どんな遺跡で?」
「期待してるのを裏切るようでなんだが、すでに一度調査された依頼の再調査だ」
「‥‥なんだ、そうですか」
 がっかりする受付の青年。やはり前人未到の遺跡に対する浪漫があるようだ。
「規模の小さい遺跡で、既に調査された遺跡だからな。新しい発見がある可能性は低い」
 ケンブリッジから歩きで1日ほどの森の中にある地点を指差しながら先生は言う。
「しかし、再調査の必要があるということがわかったのだ。なので、学生の実習も兼ねて依頼を募集したい」
「実習も兼ねているんですね」
「そうだ。冒険者の諸君の中でも古い遺跡に興味があれば参加すれば良いだろうし、危険が無いとも限らないからな」
「わかりました、それでは依頼を出しておきますね」
「ああ、急ぐのだ。学生を遊びすぎるのもいかんからな」

 さて、どうする?

●今回の参加者

 ea2438 葉隠 紫辰(31歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea3947 双海 一刃(30歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea8367 キラ・リスティス(25歳・♀・ウィザード・人間・イギリス王国)
 ea8870 マカール・レオーノフ(27歳・♂・神聖騎士・ハーフエルフ・ロシア王国)
 ea9520 エリス・フェールディン(34歳・♀・ウィザード・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb0753 バーゼリオ・バレルスキー(29歳・♂・バード・人間・ロシア王国)

●リプレイ本文

●遺跡への道
 季節は肌寒さを感じ始める冬の初め。吐く息も白い季節の中冒険者たちは黙々と進んでいた。
「学の無い身ではあるが、このような機会は大切にしたいのでな」
 なぜこの依頼にと聞えれば葉隠紫辰(ea2438)はこう答えたであろう。
 彼は一同の先頭を周囲を警戒しながら歩いている。ケンブリッジが近いとは言え、モンスターの警戒は怠らないのだ。
 今回目的地はケンブリッジ近郊の枯れた遺跡。すでに探索は行われ単に実習のために再度探索を行うことになっている。
 引率する教師はアラン・スネイプル先生。彼は今なにやら弟子や生徒たちと話しているようである。
「初回の探索では、めぼしいものは特に出なかったという報告がされている。規模も小さい上に短期間の調査だったからな」
「アラン先生は前回の探索には加わったのですか?」
 質問したのは弟子のキラ・リスティス(ea8367)。どうやら遺跡探索が楽しみらしく目をきらきらと輝かせている。
「ああ、我輩は古代魔法語の専門家ではないが、地の精霊魔法は材質の調査などに使用されるからな」
「地図を見せてもらいましたが、遺跡の範囲はこの程度ですか? 土に埋もれて見つかってないとか‥‥」
 続いて質問したのはマカール・レオーノフ(ea8870)、羊皮紙に書かれた前回の調査報告を眺めている。
「隠し部屋とかは無さそうだな‥‥」
 双海一刃(ea3947)も遺跡の見取り図を見ながら発掘に備えてチェックを怠らない。
 キラとマカールがアラン先生の許可を得て前回の資料を借り出して持って来たために資料には事欠かない。
 こうして、馬や驢馬に荷物を積み込んだ一同は、資料のチェックをしながら遺跡へと歩を進めるのだった。

●遺跡にて
「アラン先生も色々といそがしいですね。今回は遺跡の調査の引率をしてますし‥‥」
 同じく教師の職にあるエリス・フェールディン(ea9520)が、作業の指揮を執っているアラン先生を眺めて言う。
 依頼を受けた一同は遺跡にたどり着き、準備を始めていた。
 遺跡は寒々しい風が吹いている丘の上に野ざらしになっている。規模はそれほど大きくなく、視界を遮るように幾つかの壁が立っていた。
 柱はほとんど倒れ、地面に埋もれているものも少なくない。
 しかも前回の調査から時間も経っているので、植物に隠れてしまっているものも多かった。
「忘れ去られた遺跡‥‥といった感じですね。いつの日にか、我々も忘却されてしまうでしょう‥‥」
 バーゼリオ・バレルスキー(eb0753)が、おそらく正面の門を撫でて1人呟く。
「自分は自身の記録が残らなくても、残す側に回りたいものです」

 遺跡から少し離れたところに野営のために荷物を広げ、いざ探索の始まりと一行は移動を開始した。
 先頭はマカール。まだ日が高いのでとりあえず剣を抜いてそっと遺跡に踏み込む。
 するとひょこっと顔を出したのは一頭のホーンリザード、たまたま遺跡の石畳の上で日向ぼっこをしていたらしい。
「一頭だけなのは良いのですが、厄介ですね‥‥」
「‥‥自分に任せてください」
 剣を手にホーンリザードを見据えたマカールに言ったのはバーゼリオ。警戒しているホーンリザードに対してテレパシーを使ったようだ。
 すると、ホーンリザードはくるっと背を向けてさっさと丘から去っていった。
 そして遺跡の探索が始まったのだった。

「これとこれの破片は繋がるのではないかな?」
 粘土板の破片を前に紫辰は試行錯誤を繰り返していた。
 地面に埋もれた破片をそっと掘り起こして、それを組み合わせている。
 丹念に調べた結果かなりの数の粘土板の破片が見つかり、解読されるのを待っていた。
「何らかの手がかりがあればいいのだがな‥‥」
 そういいながら、土を掘り返していた紫辰の後ろ、石畳が続いている場所を歩いているのは一刃だ。
「実習とは言え冒険者を雇うのが気になるといえば気になるな‥‥」
 ちらりとアラン先生の方を見ながら、石畳の下や特殊な仕掛けを探している一刃。
 しかし、どうやら遺跡というよりは古代の単純な観測所だったらしく、大したものは見つからなかった。
「ここにも何も無いか‥‥さて、解読の方はどうなったかな?」

 解読作業を進めているのは、アラン先生とその弟子のキラであった。
「星‥‥見る‥‥高い‥‥えーっと場所、ですね。この遺跡のことを示しているのでしょうか?」
「ふむ、前回の調査で解読した時も同じ言い回しで書かれているとこの資料には書いてあるな」
 地道な作業である古代魔法語の解読。新たに見つかった粘土板の内容の解読が主となっているようだ。
 と、そのときエリスがテントへと入ってきてキラへと話しかける。
「リスティスさん、ちょっといいかしら? 柱の下から壁の破片が出て来たのですけど‥‥」
「あ、はい。今行きます‥‥あの、アラン先生。丁度時間ですし、ちょっと休憩にしませんか?」
「‥‥‥‥ふむ、効率のためには適度な休憩も重要だから、仕方ないだろう」
 そして、エリスはキラを連れて新たな壁の文字を見に行き、アラン先生も休憩のためにテントから出るのだった。

 そして、休憩時間。
「いったい、この遺跡に何があるのでしょうね?」
「新しくいろいろと資料は見つかってるみたいだけど、なにか発見されたら面白そうですね」
 エリスがお茶を飲みつつ、マカールに話しかける。
「この遺跡はどういった背景で作られたのかとかは分かっているんですか、アラン先生?」
「星に対する関心があったことは分かっているのだがな‥‥」
 ケンブリッジの学食から持って来た日持ちする焼き菓子なんかを齧りながら会話する先生と弟子。
「星の観察に使用した建築物だったのなら、調査は夜間した方が良くないか?」
「ああ、調査するなら付き合うぞ」
 バーゼリオがそろそろ傾きかけてきた陽を見て言えば、一刃が答える。

 そして夜、一同は調査を続けていた。
 ランプの明かりを元に壁の文字を書き写したり、粘土板の補修をしたりと作業は多いのだ。
「それなら、この柱がそっちの壁の横に立っていたという感じでしょうか」
「ええ、多分そうだと思いますわ」
 バーゼリオがエリスから話を聞いていた。そして竪琴の響きで魔法を唱えるとファンタズムを唱えたのだった。
 在りし日に遺跡の姿を一部だけでも復元してみようと思ったようである。
「この遺跡を使っていた人々は、こんな光景を眺めていたんでしょうね‥‥」
 解読の手を休めてキラが言う。
 そして、遺跡の探索は進んでいくのだった。

 いよいよ最後の調査の日。やはりその日も作業が行われていた。
「ローリンググラビティーは直接地面にかけることは出来ないようですね」
 サイコキネシスで石を避けながらエリスは言う。
 と、そのとき、どうやら解読が終わったようでアラン先生が一同を呼び集めたのだった。
「そろそろ帰り支度をしなければいけないので作業はこれまでだ」
 アラン先生が言う。発掘した資料を積んで帰る必要もあるため時間がかかるのだ。
「それで、とりあえず現時点までにわかったことをミス・リスティスに述べてもらう。任せたぞ」
「は、はい。それでは説明させていただきます。今回の調査では主に粘土板と幾つか調査されていなかった壁などを中心に解読が出来たのですが‥‥」
 そういって、羊皮紙を幾つか取り出す。
「この遺跡で行われていたことに関する記述がいくつか見つかったのですが、どうやらここと関係のある遺跡がもう一つあるらしいのです」
「別の場所に遺跡か‥‥その場所はわかったのか?」
 紫辰が問うと、キラは首を横に振って答えた。
「いえ、詳しい場所はまだ解読されていないので、ケンブリッジに持ち帰ってからになると思うのですが‥‥」
「それなら、既に発見されてる遺跡が、この遺跡と関わりのある遺跡って可能性もあるんだな?」
 一刃が問うと、今度はアラン先生が答える。
「ああ、その可能性もある。だが、違う可能性もあるのだ。‥‥我輩は未発見の新遺跡だと思っているのだがな」
「なぜ新遺跡だと? たしかにこの遺跡と関連がある遺跡は資料には無いみたいですが‥‥」
 エリスが問うとキラが答える。
「それは多分、解読できた遺跡の用途だと思います。この遺跡は‥‥」
「確か星の観測所という話ですよね」
 バーゼリオが言葉を継ぐ。
「ええ、星を見る場所らしいのです。そして粘土板に書いてあったのは、祭る場所らしいのです」
「‥‥なるほど、今まで遺跡で星を祭る場所というのは見つかって無いということですね」
 マカールがぽんと手を叩いて言う。
「はい、たぶんそういうことだと思います」
 そうキラが締めくくった。そしてアラン先生が言う。
「まだ調査し切れなかった部分が残っているので、新遺跡の全容がわかるわけではないが、この資料を持ち帰って調べれば新たな遺跡の位置がわかるはずである」
 そして、一同の顔を見回して続けた。
「おそらく、そのときも調査をすることになると思うのだが、可能なものはそのまま継続して参加するほうが効率がいいだろう」
 そして言葉を切ると、さらに言う。
「‥‥おそらく次回は、さらに過酷になると思われる。未踏の遺跡にはそれを守るものがつきものだからな」
 どうやらまだまだ遺跡の探索は終わらないようである。