『アラン先生と遺跡探索』 新たな遺跡
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■シリーズシナリオ
担当:雪端為成
対応レベル:6〜10lv
難易度:難しい
成功報酬:3 G 72 C
参加人数:8人
サポート参加人数:1人
冒険期間:11月21日〜11月28日
リプレイ公開日:2005年12月02日
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●オープニング
「今回も引き続き冒険者たちの参加を求める」
ケンブリッジのギルドで依頼を出すはアラン先生。
いつもに増して表情を引き締めて、かなり怖い顔である。
「前回遺跡探索の実習を行った依頼の続きでしょうか?」
「その通りだ、前回の遺跡で幾つか新しいことが見つかったのだがな‥‥危険度を考えて、我輩が再び冒険者を率いていくことになったのだ」
「新しいこと‥‥ですか?」
「まだ探索されていない遺跡の場所が確定した。予想通り発見されていない遺跡のようだ」
「新しい遺跡ですか‥‥すごいアイテムがあったりするのでしょうか?」
「目先の欲に惑わされるのは感心できないな。今回は星に関して祭儀を執り行っていた場所らしいからな‥‥その可能性は薄いだろう」
そうですか、としょぼんとする受付。それを気にせずに続けるアラン先生。
「その遺跡はどうやら地下のようだ。大まかな場所も分かっているのでその場所に行くまでに問題は無いだろう」
「いままでなんで見つからなかったんでしょうか?」
「‥‥おそらくだが、場所が原因だろう。あまり人が踏み入らない森の一角だからな」
「なるほど‥‥ケンブリッジの回りも広いですからね」
そしてアラン先生はゴホンと咳払いをして話を戻す。
「それでは、発掘された内容から判明した内容を依頼書に記しておこう」
・星を観測するための遺跡と対を成す星を祭るための遺跡の位置が判明した。
>遺跡は地下。場所はケンブリッジからおよそ徒歩で2日ほど。
・遺跡の内部の形状は不明。ただし祭儀用なので、罠や妨害は無いはず。
・遺跡を守護するなんらかの守護者の存在。
「判明したことで一番問題になるのは、守護者の存在だ。未踏の遺跡が危険たるゆえんであるな」
「‥‥たしかに、怖いですね。どんな守護者がいるのか分かっているのですか?」
「古代魔法語なので曖昧だが‥‥『黒』と『柔らかい』と『石』と『食べる』という表記が出てきている」
「黒くて柔らかくて石で食べる? どんなものか分かりませんね」
「おそらくモンスターなのではないかと我輩は思っている。冒険者ならば分かるかもしれないしな」
そして、アラン先生は最後に締めくくった。
「今回は守護者の撃破と、2日ほどの探索を予定している。難易度は前回よりは遥かに難しい。心してかかってもらおう‥‥」
さて、どうする?
●リプレイ本文
●道中
「前衛に立つ者はこれを一応装備しておけ」
遺跡への道中、アラン先生が前衛に立つことになる冒険者たちに指輪を渡す。
未踏の遺跡には危険であることは良く知られており、それだけに今回の依頼でも注意が払われているのであろう。
それはさておき冒険者たちの話題はもちろんいまだ正体不明の守護者についてであった。
それぞれが準備期間を利用して資料を集めてきていたが、どうやらいまだ決定的な答えは出ていないようだ。
「長期にわたって守らせることが可能で、侵入者以外にとっては無害‥‥小さなストーンゴーレムなどでしょうか?」
双海一刃(ea3947)が言う。確かに遺跡の守護者としてはゴーレムは非常に一般的だ。
「でも、それでは他の言葉に説明がつきませんよね‥‥」
そう答えたのはキラ・リスティス(ea8367)だ。首を傾げながらアラン先生を見上げて言う。
「ブックス女史から聞いたのですが、遺跡とは言え小動物や虫を捕食して長期間生きるジェルやスライムの類が守護者とされることも有るようですよ。それにエルマさんと一緒に文章を考え直したのですが守護者に関する記述は“柔らかい黒石”と訳せるかもしれないという話になって‥‥」
「妖精王国の騒ぎの時に見たのですが宝の番人をするスプリガンという精霊かとも思いましたが、記述から考えると違いそうですね。もしジェル系のモンスターなら床に化けてたりするかもしれませんし‥‥」
マカール・レオーノフ(ea8870)が愛馬に積んだ装備をチェックしながらキラの言葉に応えた。
マカールが装備のロングロッドを確認して、エリスに振り返ると物思いにふけっていたエリス・フェールディン(ea9520)
も言葉を挟む。
「柔らかいの記述は確かにその答えなら合理的ですね。ただ具体的なものは思い当たりませんね‥‥」
「黒、すなわち闇を食べて、やわらかい石‥‥だと何か違いますね。黒くてやわらかい体で石を食すモンスターとか?」
バーゼリオ・バレルスキー(eb0753)も意見を述べる。やはり決定的な意見はなかなかでないようだ。
「一体どんなモンスターが守護者なんでしょうね?」
その答えももうすぐ分かる。いよいよ一同は件の遺跡の場所へと近づいていくのだった。
●遺跡にて
「いよいよ遺跡探索ですね‥‥少し緊張します」
エレナ・レイシス(ea8877)が遺跡を前にして言った。
遺跡は地下に作られており、土に半分ほど扉が埋もれているのを掘り起こしてやっと扉にたどり着いたのだった。
「未調査の遺跡、正体不明の守護者、謎の星祭、歌の題材として完璧ですよ」
ニコニコしながらバーゼリオ。彼は星を祭る人々の伝承についてケンブリッジで調べていたようだが、
「ほとんどこの文化については資料がありませんでしたからね。今回の探索で研究が進むかもしれませんね」
「新しい文化の発掘‥‥はぅ、なんだか幸せです♪」
アラン先生と共に行動することも幸せ〜と言わんばかりにアラン先生をちらっと見上げてキラも言う。
「あ、エリス。とりあえずこれを貸してあげるね」
ジェシュファ・フォース・ロッズ(eb2292)がエリスにアゾット+1を渡す。
いよいよ準備は整った。ついに一同は遺跡の中へと踏み込むのだった。
「先頭はミスタ・レオーノフとミスタ・双海に任せよう。見たところ崩落の危険性は薄いようだが気をつけるのは重要だからな」
アラン先生の指示の元、一同は陣形を整え、遺跡へと踏み込んだ。
ランプを掲げ、ロングロッドで地面を探りながら慎重に歩を進めるマカールと優れた聴覚を働かせて警戒する一刃。
通路はそれほど狭くなく、少々かび臭いものの、特に荒れた様子は無かった。
「けっこう綺麗に残ってるんだね。壁とかも壊れてないし」
「頑丈に作られているようですね‥‥」
ジェシュファが壁を眺めて言うと、エリスも壁に触れて感心する。
「‥‥探索系の魔法が有る者は使用しておくべきなのは気付いているか? 不意打ちを受けるのがもっとも危険なのだぞ」
物珍しげに遺跡の内部を見回している一同をじろっと見るとアラン先生が口を挟む。
その言葉を聞いてエリスがバイブレーションセンサーを使用するのだが‥‥。
「‥‥前方に二つほど動くものがいるように感じます。ただ、歩いているとかではなくて‥‥」
どうやら守護者を捉えたようだが、やはり正体が分からない。そのまま一同が注意深く進んでいくと、すこし開けた部屋に出た。
ケンブリッジの教室ほどの広さで石畳の部屋である。殺風景な部屋で特になにも置かれている様子は無いのだが、奥に二つの塊があった。
ごろごろと、転がりながらこちらに向かってきているのは、濡れた黒曜石のような塊。
人一人を飲み込めそうなぐらいの大きさのおおきな丸いスライムだった。
「ブラックスライムだな‥‥スライムの類の中でも最上級に危険なモンスターだ」
アラン先生が一目見て言う。一部冒険者たちの推測は当っていたようだ。
「スライム系のモンスターは酸を飛ばして攻撃することがあるとブックス女史に聞きました。皆さん注意してくださいね」
ライトニングアーマーを唱え雷光を纏うのはキラ。
「スライムなら通常の武器で通じるはずだな‥‥それならこっちだ」
小太刀を二本抜いて構えるのは一刃。
「手強そうですね‥‥」
月桂樹の木剣+1を構えていったのはマカール。
スライムたちもこちらに気付いたようでごろごろと転がりながら近づいてきた。いよいよ戦闘開始である。
ジェシュファがスクロールを広げて、先制攻撃の雷光を放つ。
「アイスブリザードよりはライトニングサンダーボルトの方が良さそうですね」
雷光は一体のブラックスライムに突き刺さる。しかし、ブラックスライムは痛痒も見せずにただ近づいてくるのだった。
そして近づいてくるスライムを迎え撃つために前に出たのはマカールと一刃。
その2人にブラックスライムは酸を吹きかける。
2人は辛うじて酸を回避するも、すぐさまブラックスライムは体当たりで攻撃。
「なかなか素早いですね‥‥」
一刃は再び回避、マカールは武器で突進を受け止めるのだが。
「くっ! しまったっ!」
マカールの腕にへばりつく大きなスライム。鎧の下の肌がじゅうと音を立てて焼け爛れる。
「サイコキネシス!」
魔法を詠唱し終えたエリスがサイコキネシスの力でスライムを引き剥がそうとし、マカールも必死で振り払ったことで、なんとか引き剥がされるスライム。
しかし肌は焼け爛れて、いきなり中傷を受けてしまったのだった。
「マカールさんは一度引いてください!」
キラがライトニングアーマーによって雷光を帯びた鞭でスライムを連打。電撃の一撃がスライムに音を立てて突き刺さる。
一時マカールは下がり、バーゼリオから受け取ったポーションで傷を癒す。
しかし、前衛としてはウィザードのキラはあまりにも危険すぎた。
再びスライムは酸を飛ばして攻撃、その酸をキラが浴びそうになるのだったが‥‥。
「ストーンウォール!」
高速詠唱で唱えられたアラン先生のストーンウォールが間一髪で酸を防ぐ。
あくまでも授業の一環だったので、少々苦々しげな表情だが、流石にアラン先生でも見過ごせなかったようだ。
「ちっ、結構頑丈で攻撃が効かないな‥‥」
一刃はスライムの攻撃を避け、何度もきりつけるのだが小太刀の一撃ではかすり傷しか負わない。
そろそろスライムの一撃を避け続けるのにも限界が見えてきてしまったそのとき、
「ちょっと時間を稼いでください!」
エレナがそう呼びかけると、すぐさまエリスがサイコキネシスでスライムを妨害、その隙にキラの鞭が直撃し一時一刃が引く。
「バーニングソード!」
エレナによって煌々と燃える魔法の炎に小太刀が包まれる。すぐさま一刃はスライムに向かっていくのだった。
「ローリンググラビティー!」
ふわりと1匹のスライムがエリスの魔法で飛び上がると天井にべたんと叩きつけられ、再び床にべたん。
高さがそれほど無かったせいで、それほどの効果はなかったようだが、そろそろスライムたちもぼろぼろになってきているようだ。
「これで終りっ!」
バーニングソードの炎を纏った両手の小太刀がダブルアタックで同時に叩き込まれると、一体のスライムは動かなくなった。
「二度も同じ攻撃は受けないですよ。せぃ!」
マカールの一撃がスライムの真ん中を捉え、スライムが動きを止めた瞬間。
「えぃ!!」
鞭がびしりとスライムを叩き伏せ、それっきしこちらのスライムも動かなくなるのだった。
●いざ探索
「これは星の図のようですね」
「へー‥‥月や太陽の精霊魔法はありますが‥‥」
図書館の資料の写しと見比べてエリスが言うとそれをバーゼリオが興味深そうに眺めていたり。
「食べ物とか無さそうなのに、スライムって生きてるんだね‥‥虫とか食べてたのかな?」
「いくつか崩れているところから小動物ぐらいが入り込んだのかもしれませんね」
かりこり壁画を羊皮紙に写し取りながらジェシュファとエリスが話し合っていたり。
「奥の方を見てきたが、ほとんど一本道だった。おくに扉があったがあの向こうが多分祭壇だな」
「ただ、もしかするとまだ守護者がいるのかもしれませんね‥‥」
一刃とマカールが武器を手にぐるりと見回す。他の冒険者は戦いの場だった場所で資料集めにいそしんでいるのだが、2人はアラン先生の命で少しだけ先を偵察に行ったのだった。
「脅威となるものが無いのなら問題はない。守護者がまだ存在する可能性もあるだろうから、今回はその先には進まないことにするからな」
少々不服そうな一同にぴしりと行って再び作業を再開させるアラン先生。そしてキラの方を振り返ると言った。
「ミス・リスティス。祭壇に関する文章があればそれを優先して訳せ。守護者の記述があれば対策が立てられるからな」
「は、はい。わかりました」
こうして遺跡の探索を進め、いくつかのことが分かったところで一同はひとたび帰還することにしたのだった。
次回はおそらく一番奥の祭壇のある部屋の探索を行うことになるであろう。
一同は資料を手に、ケンブリッジへの帰路、分かったことについて様々な議論を交わしつつ、次なる探索への思いを馳せるのであった。