真理のために‥‥ 最終話

■シリーズシナリオ


担当:雪端為成

対応レベル:6〜10lv

難易度:難しい

成功報酬:4 G 9 C

参加人数:6人

サポート参加人数:3人

冒険期間:12月20日〜12月26日

リプレイ公開日:2005年12月31日

●オープニング

「さて、かなり遅くなったけど決着をつけてもらいたいと思ってね」
 ギルドを久しぶりに訪れたのは好事家の貴族カシアス。
「ちょっと情報収集に手間取ったんだけど‥‥今回で決着をつけてもらう予定だから」

 カシアスは説明する。
 彼は以前、自宅に賊が侵入し所蔵していた錬金術関連の本を盗まれた。
 盗賊を雇ってその本を盗ませたのはどうやら他の貴族。そしてその背後に見え隠れする錬金術師の集団。
 さらには以前錬金術による金の創造をエサに詐欺を働いた錬金術師たちとの繋がりが見え隠れするのだった。
 その集団に関する情報は少ないが分かっていることもある。
 アイスチャクラを使う巨漢と細身の男のコンビ。
 地のウィザードと思しき女性、火のウィザードと思しき老人。この四名が現在までに確認されている。

「‥‥で、どうやら最近錬金術関連の品を買い込んだとの噂の人がいて、彼が怪しいんだ」
 とつとつと語るカシアス。
「前回の依頼でも話を聞きに言ってくれた人がいたけど、データス子爵が黒幕らしい」
 カシアスはきっぱりと告げる。
「詐欺にあった貴族さんたちとも協力して掴めた情報だし、確実だと思う。ということで今回は僕が代表して依頼を持ってくることにしたんだ」
 そして地図を広げるとカシアスはそれを指差しながら言う。
「最近データス子爵自身も郊外に長期滞在してるみたいで‥‥そこがどうやら拠点らしいんだ。場所はキャメロット郊外の小さな別荘。そこを管理しているのがデータス子爵の兄だとか‥‥病弱を理由に家を継がなかったらしいんだ」
 羊皮紙の地図にはその村への道のりと別荘の様子がメモされていた。
「ということで、資料の回収と組織の根絶のために働いてもらいたいんだ。よろしく頼むよ」

 さて、どうする?

●今回の参加者

 ea0424 カシム・ヴォルフィード(30歳・♂・ウィザード・人間・フランク王国)
 ea1135 アルカード・ガイスト(29歳・♂・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 ea1519 キリク・アキリ(24歳・♂・神聖騎士・パラ・ロシア王国)
 ea5021 サーシャ・クライン(29歳・♀・ウィザード・人間・フランク王国)
 ea9027 ライル・フォレスト(28歳・♂・レンジャー・ハーフエルフ・イギリス王国)
 ea9098 壬 鞳維(23歳・♂・武道家・ハーフエルフ・華仙教大国)

●サポート参加者

チップ・エイオータ(ea0061)/ マージ・アエスタース(eb3153)/ レオンハルト・ヴァルター(eb3741

●リプレイ本文

●追い詰められた者たちと追い詰める者たち
 薄暗い地下室の中で響く声があった。
「‥‥それでは、これからどうしたら良いのですか?」
「キャメロットにはもう戻れぬ‥‥我らの理想を介せぬ輩たちに気付かれてしまったからな」
「それでは、ここで研究を続けるのですか?」
「‥‥いつまでも匿い続けるわけには行かないが‥‥」
 影はデータス子爵と数名のローブ姿である。
 子爵に詰め寄っているのは禿頭の老人、その表情にはありありと焦りが見えた。
 老人が息を潜めて子爵に問う。
「データス様、この場所が感づかれているということは‥‥」
「それはまだ大丈夫だろう。カシアスの若造もそれほどの行動力はあるまい」
 傲慢に告げる子爵の声。しかし、彼らの上には疲労と憔悴が色濃く影を落としているのであった。
「‥‥‥‥このままで終わらせは‥‥」
 強く拳を握る子爵。その声には重く滲む憎悪の色。
 4人の外道の錬金術師とそれを支える一人の貴族。彼らの最後の城となった郊外の屋敷。
 もうすぐ、最後の決戦が始まろうとしていた。

「彼らは錬金術で何をしようとしてたのかな? ‥‥気になるけど、きっといいことじゃないよね」
 屋敷の裏口を見据えて呟いたのはカシム・ヴォルフィード(ea0424)。
 同じ錬金術師として、非道を働いた4人の錬金術師に対しての言葉にできる想いがあるのかもしれない。
「それではそろそろ行きましょう、ライルさん」
「うん、わかった‥‥見張りが居るみたいだけど、家の中の様子はわかるかい?」
 ライル・フォレスト(ea9027)は魔力を帯びた木の剣をきつく握り締めて問う。
 その言葉にカシムはしばし目をつぶると、
「‥‥ええ、家の中の気配は地下に集中してます。とりあえずは大丈夫でしょう」
「ん、なるほど。それじゃ、今のうちに裏口を塞ごうか!」
 言葉と共に駆け出すライル。それを追うカシム。
 彼らの仕事は裏口の封鎖であるのだが、その前に裏口を警備しているらしき2人の敵を倒さねばならない。
 見たところ金で集められたゴロツキ崩れのような様子。先手必勝でライルとカシムが迫る。
「なっ! 誰だおま」
「ストーム!」
 お前ら、とでも言おうと思ったのか口を開いた敵の2人を巻き込んで炸裂するカシムの魔法。
 圧倒的な勢いで吹き付けた風は既に凶器。警備の2人はそのまま後ろの壁に叩きつけられるように吹き飛ばされる。
 風の余波が吹き荒れる中、一直線に距離を詰めたのはライル。武器を振るって、2人の首筋を強く打ちすえ意識を闇に落とす。
 そして、2人は急いで扉に近寄り封鎖のために動くのだった。
「とりあえず粘土を‥‥」
 外側から見えていた鍵穴に粘土を詰めるライル。その間にカシムは扉の隙間に外側から楔を打ち込む。
 そして内側から先ほどの暴風を不審に思った声が聞こえ始めたとき、すでに二人は正面玄関に回っていたのだった。

●決戦
 戦いの始まりを告げる号砲は、爆炎だった。
「突入しますよ! ファイヤーボム!」
 アルカード・ガイスト(ea1135)が正面入り口の扉に着弾、扉を内側に向けて吹き飛ばすとともに、見張りをまとめてなぎ倒す。
 そして、裏口を封鎖してきたカシムとライルと合流した総勢6名の冒険者は一気に屋敷の中になだれ込む。
 先頭を行くのはキリク・アキリ(ea1519)と壬鞳維(ea9098)のコンビ。ばらばらと現れた警備の傭兵たちを2人が迎え撃つ。
「キミの相手は僕だよっ!」
 傭兵が一撃をキリクは屈んで回避。小柄な体を利用した機動力重視の戦い方に傭兵たちは翻弄される。
 パラの剣士は素早く剣を振るい敵の武器を弾き、時には渾身の振り下ろしによって着々と戦力を削っていく。
「‥‥通さないよ」
 響く音は三度。左の掌打から右の拳、そして身をかがめての足払いの連携で傭兵を転ばせたのは鞳維。
 残像すら残して繰り出させる蹴りの連打に護衛の傭兵たちは一人一人と数を減らしていく。
「「ウインドスラッシュ!」」
 重なり響く二つの声はサーシャ・クライン(ea5021)とカシムである。
 風の刃は傭兵たちを切り裂き、この連携によってほとんどの傭兵たちは沈黙する。
 累々と倒れ伏す警備の傭兵たち、そこかしこでうめき声が上がっているところをみるとまだ息はあるようだが動くものはほとんど居なくなった。
「またしても冒険者か‥‥警告は聞き入れなかったようだな!」
 そのとき響く声。ホールの正面の階段上。廊下からこちらに狙いをつけてアイスチャクラムをかざす細身の男だ姿を見せた。
 言葉と共に投じられるアイスチャクラは2つ。狙いはキリクとライル。
 ライルは身を捩って辛うじて回避するが、キリクは高速回転する氷の刃をじっと見据えて動かない。
 と、なんとキリクは、その刃を額のメタルバンドで受ける。ガードのCOを使っての受けだ。
「あの人たちには二回も痛い目に合わされてるからね。今回はきっちりお返しさせてもらわないとね!」
 そういうと、ライルが回避したチャクラムを追いかけるように階段を駆け上り2人に肉薄するキリクと鞳維。
 そのとき、細身の男へと向かって階下から声が飛んだ。2階へ向かって手をかざすのは2名。
 サーシャとアルカードが同時に声を響かせる。
「アグラベイション!」「ストーム!」
 迎撃のために魔法を唱えようとしていた大男はその身にかかる重圧のために魔法の詠唱が乱れて止まり、細身の男はよろめきたたらを踏む。
 そしてそこに直撃する破壊の暴風。軽い調度品をなぎ倒して凶悪な風が吹き荒れ冒険者たちの衣服の裾も激しくはためく。
 2人の錬金術師はその暴風に巻き込まれて壁へと叩きつけられる。
 さらにそこに追い討ちのようにアイスチャクラムが戻ってくると、受け損ねたアイスチャクラムが細身の男を刻む。
 そこに到着するキリクと鞳維。漸く立ち上がった大男の錬金術師に対して鞳維の蹴りが決まるとその背後から躍り出たキリクの剣がさらなる一撃を加える。
 そして、既に傷を受け倒れ伏していた細身の男にも一撃。階上の2人は沈黙するのだった。

「‥‥こっちです!」
 カシムが指を指すのはいくつか部屋を通り抜けた先。そこには老人が立っているのだが‥‥
「あれは囮でね」
 ライルが蹴り上げた椅子の一撃をぶつけると老人は灰と化す。
 そして追いすがる面々が見たのは、壁に大きく開いた穴から逃げ出そうとする2人の錬金術師と貴族の姿だった。
「ここまで来て逃がすわけには行きませんね」
 足を止め急ぎ印を組み詠唱の声を響かせるアルカード。
 そして、屋敷から離れていく3名を追って放たれたのは火球の一撃だ。
 しかし、老人が足を止めると一瞬で魔法を放つ。同じくファイヤーボムは正面からアルカードの一撃とぶつかると爆炎をばら撒いて消滅する。
 相殺の余波が吹き荒れる中、煙と熱を突き破って肉薄する冒険者たち。
 それを迎え撃つように二名の錬金術師が足を止め、ただ一人データス子爵だけが走り逃げようとする。
 しかし、あまりにも戦力差があった。
 遠距離から打ち込まれるストームやウインドスラッシュの一撃は魔法使いの身ではあまりにも重く、前衛の一撃には耐えられるべくも無い。
 そして、データス子爵に追いついたのはキリクとカシム。
「‥‥くっ! これまでか‥‥」
 小さく呟くとデータス子爵は懐からナイフを取り出し、その刃を自らに向ける。
 そして小さな凶器を自分の喉下に突き刺そうとしたその瞬間、
「そうはさせません!」
 素手でそのナイフを掴んだのはカシム。次の瞬間キリクが剣の腹で子爵の腕を打つとナイフを静かに地に落ちた。
 剣を突きつけられて、漸く諦めた子爵と縛り上げられた4名の魔法使い。
 こうして、キャメロットで非道を働いた錬金術師たちの組織は瓦解することとなった。
 冒険者たちの捜索によって、別荘の地下から様々な資料が見つかり、彼らの罪が白日の下へとさらされたのだが、結局彼らが最終的に何をしようとしていたのかは調べ上げることはできなかった。
 しかし冒険者たちの活躍によって、災いの芽が摘まれたことは確かである。

「有り難う、無事本は戻ってきたし他の人たちも感謝していたよ」
 依頼人カシアスは冒険者たちをそう言って労った。
 錬金術師たちが保持していた書籍や資料の中にはカシアスと同じように盗まれたりしたものも少なくなかったらしい。
 幾人かは回収した品物の中から、出所不明なアイテム類を手にする者いたようであった。
「でも‥‥彼らは何をしてたんだろうね?」
 カシアスは一人呟く。
「やっぱり一つの考えにこだわって究極を目指すと‥‥歪むこともあるのかもね」
 その言葉を聞いて、冒険者たちは一様に頷くのだった。