おねがい! 砂霊どん 1

■シリーズシナリオ


担当:シーダ

対応レベル:1〜5lv

難易度:普通

成功報酬:1 G 48 C

参加人数:7人

サポート参加人数:1人

冒険期間:06月17日〜06月23日

リプレイ公開日:2005年06月26日

●オープニング

 ここは江戸から徒歩1日ちょっとくらいの郊外‥‥
「おねぇちゃん、この村ってお化けが出るんだって」
「違うだろ。精霊が出るって話だったじゃないか」
 小さな女の子の頭をぐりぐりと少年が撫でる。
「どこで聞いてきたの?」
 少女が女の子の手を軽く持って優しく振ってみせる。
「向こうでおじちゃんが話してくれたの。何でも願いを叶えてくれるんだって」
「すごいわねぇ。お姉ちゃんも会えるかな?」
「会えるかなぁ?」
 姉妹は顔を寄せ合って笑っている。
「ほら、家の中はまだ片付いてないからもう少しそこらで遊んでおいで」
「引っ越してきたばっかりなんですから遠くに行っちゃ駄目ですからね。
 千松と亀は、お兄ちゃん、お姉ちゃんなんだからしっかり千鶴のことを見てあげるんですよ」
「は〜い♪」
 父母が声をかけると子供たちは走り去っていった。

 ※  ※  ※

「ねぇ、いっしょに遊ぼうよ」
 女の子が手招きしている先では、褐色というよりは山吹色に近い肌の色をした小太りの子供のような物体が、せっせと穴を掘っている。
「あちゃ〜‥‥ 見つかっちまったか」
 ぽてぽてと体を揺らしながら、それは歩いてきた。
「あたし千鶴。あなたのお名前は?」
「砂霊と呼ばれておるな」
「変な名前♪」
「そうかのぅ?」
 楽しげに笑う女の子に砂霊は戸惑い気味だ。
「ねぇ、サレイどん。何してたの?」
「浜を綺麗にしておったのじゃ‥‥って、わしのことか? 砂霊どんとは」
「そうだよ。あたしも手伝ってあげる♪」
「あわわ」
 千鶴に手を引かれて砂霊は忙しく体を揺らした。

 ※  ※  ※

 場所は変わって、ここは江戸の冒険者ギルド。
「伝承が本当か確かめるって面白そうな依頼が来てるぞ。誰かやる奴はいないか?」
 ギルドの親仁が冒険者たちに声をかけている。
「こういう捉え処のない依頼も初心者にも貴重な経験になるんじゃないかな?
 やってみる奴、いないか?」
 実際、こういう依頼は面倒くさいことが多い。
 聞き込みのために地道に足で稼ぎ、あるいは紹介してもらった書庫などで地道に調べるしかないからだ。
 現地での調査も欠かせないし、地味〜〜なのだ。
 しかしながら、確かに貴重な経験になる可能性はある。実際に伝承が本当なら生き証人になれるからだ。
「お♪ お前さん、やってみないか?」
 さて、どうする?

●今回の参加者

 ea6144 田原 右之助(31歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 eb0139 慧斗 萌(15歳・♀・武道家・シフール・華仙教大国)
 eb1148 シャーリー・ザイオン(28歳・♀・レンジャー・人間・イギリス王国)
 eb1172 ルシファー・ホワイトスノウ(30歳・♀・神聖騎士・人間・イギリス王国)
 eb1174 ロサ・アルバラード(27歳・♀・レンジャー・ハーフエルフ・イスパニア王国)
 eb1755 鶴来 五郎太(30歳・♂・浪人・ジャイアント・ジャパン)
 eb2535 フィーナ・グリーン(32歳・♀・ナイト・ハーフエルフ・ロシア王国)

●サポート参加者

レヴィン・グリーン(eb0939

●リプレイ本文

●村
 冒険者たちは、足を棒にして目的の精霊の伝承が残るという村の場所を特定した。
 と言っても巷では法螺話として割と有名で、そんな都合のいいもんがいるならもっと有名になってると鼻で笑われる始末。
 それでも、冒険者たちにとっては飯のタネである。早速、彼らは目的の村に向かった。
 あちこち聞きまわっただけなので、特定にかなり時間が掛かってしまったのが痛い。
 帰還して報告しなければならないことを考えると、村での調査に割く時間はあまりなかった。
「綺麗な浜ですね‥‥」
 お掃除大好きなフィーナ・グリーン(eb2535)が感嘆の声をあげた。
 誰かが掃除しているのか、これだけ流木やら何やらゴミの落ちていない浜も珍しい。

 さて、江戸近郊だけあってそれなりの人口を有しているといっても小さな村である。
 聞き込みと言ってもそれ程時間は掛からなかった。
 結果としては‥‥収穫ゼロ。
 仕方なく一行は、今後の方針を話し合うためにも食事がてら作戦会議を開いていた。
「その精霊って本当にいるんかな? いるならいるで楽しそうだけどな!」
 漁師に魚を分けてもらった田原 右之助(ea6144)。
 今日の昼御飯は保存食と焼き魚。料理は得意だけあって塩を振る手も慣れたものである。
「猟師さんたちは法螺話みたいに言ってたけどな」
 物を買ってくれる相手に対して多少口が軽くなるのは世の常。田原は串を砂浜に刺し、鼻歌交じりに焚き火で炙り始めた。
 次第に漂ってくる焼き魚の香ばしい匂いが食欲をそそる。
 保存食ばかりでは、やはり飽きてくる。そういった意味で地の物を求める冒険者は割といるのだ。
「森に棲む森霊、森蔵どんの話と似てるのかな〜。森霊の子供の木頃と一緒にいるんだって〜」
 どこで仕入れてきたのか慧斗萌(eb0139)は、そんな話を始めた。
「森の精霊か‥‥ 木霊とかいう子供のような姿の精霊の噂は聞いたことあるぞ。
 そういう奴と同じなら、この砂浜って怪しいよな。綺麗すぎる」
 誰か掃除してるのか聞いてみようという鶴来五郎太(eb1755)の提案には皆が賛同する。
「ところで、精霊について詳しくないので分かりませんが、精霊さんは何でも願いを叶える事ができるのでしょうか?」
 ルシファー・ホワイトスノウ(eb1172)は、思案に食べ物を口に運ぶ手を止めた。
「何でも願いを叶えてくれる精霊‥‥ 私の故郷でも聞かないですね。
 そういう不思議な精霊の出てくる子供話は、いくらかあると思いますけど」
 シャーリー・ザイオン(eb1148)は首を傾げた。
「馬車の車輪を好んで食べる精霊の話とか‥‥
 夜中に食べ物を与えてはいけない精霊の話とか‥‥
 今思うと子供向けの話と思えますけど、どこまで本当なのでしょうね」
 悩んでも答えが出てくるわけもなく、シャーリーは保存食を口に入れた。
 ふと、ロサ・アルバラード(eb1174)が口を開く。
「子供の頃に話してもらったお話に似たようなのがあったかなぁ‥‥
 お父さんの病気を治して欲しいって男の子が、精霊に会うために旅に出たの。
 幼馴染のお兄さんから『何でも願いを叶えてくれる精霊』の話を聞いたのがきっかけだったみたいね。
 でも、あちこち放浪したんだけど、結局、会えなくて。
 長い間、お父さんをほっとくわけにもいかないから、いったん戻ったのよ。
 異国で貴重な薬を手に入れることもできたしね。
 なんと、お父さんの病気は、その薬で完治。結局、願いは叶ったわけよ。
 幼馴染のお兄さんが、実は‥‥ってのは、また別の話ね」
「でも結局、何でも願いをかなえてくれる精霊ってわけじゃないじゃんよ」
「願いを叶えるためには自分から動かなきゃダメってことを教える子供向けの話なのかもしれないけど、元になる事実や伝承はあるんじゃないかな?」
 苦笑いする田原にロサが笑顔で返す。
「願いがかなうのならね〜、萌っちを人間みたいに大きくして欲しいかな〜。
 あ☆ もしかしたら、子供たちの中に精霊さんの友達がいるかも〜。
 運がよければ紹介してもらえるかもね〜♪」
 大きくなった自分の姿を想像しているのか、慧斗が楽しそうにヒラヒラ舞い始めた。
「願いは叶えてもらうよりも、自分の力で叶えた方が良いです。その方が叶った時の喜びは大きいです」
「でも、頑張っても、これ以上大きくなりそうにないし〜」
「そうですね。あなたの場合、そうかもしれません」
 ルシファーは慧斗の様子にクスリと微笑む。
「何にしても何でも願いを叶えてくれるかぁ。いいな〜。
 本当かどうかはわからないけど、夢があるわよね。
 悪魔なら代償に何とられるかわからないけど、精霊なら何となく安心。気分的な問題かもしれないけどね」
 ロサは未だ見ぬ精霊に思いを馳せる。
 きっと可愛いに違いないとか色々想像するだに楽しくてしょうがない。
「ところでさ、精霊ってこういうの食うのか? そもそも仏さんだってお供え食ってんだよな?
 その精霊っての、こういうの目当てに出て来たら面白れぇのに」
 田原は焼き上がってきた魚をクルリと回して火に当てる。
 こういうのは焦っては駄目だ。近づけすぎず、じっくりと焼くのがコツなのだ。
「サレイど〜ん、サレイど〜ん」
 近辺で女の子の声がする。やがて声の主が姿を現した。4〜5歳くらいの子だろうか。
 その子は冒険者たちの近くに寄ってきた。
「あら、近くの子?」
「そうだよ。引っ越してきたの」
 フィーナが声をかけると女の子はニッコリと笑った。
「そうなんですか。私の名前はフィーナ。あなたのお名前は?」
「千鶴ね〜、お友達探してるの。サレイどんって言うの」
 女の子の興味は別のところに移ってしまったようだ。小さい子には、こういうところが多々ある。
 世界中どこに行っても同じなんだなぁと、フィーナは千鶴に合わせた。
「千鶴ちゃん、サレイどんってお友達なのかな?」
「そうだよ。どこ行ったのかなぁ‥‥」
 千鶴のお腹が、ぐ〜っと鳴った。
「待ってな。焼けたら食べさせてやる」
「食べていいの?」
「あぁ、食ってけ。熱いからな。気をつけんだぞ」
 田原がいい具合に焼けた魚を渡した。
「ふ〜ふ〜して食べないと熱いぞ〜☆ ほら、ふ〜、ふ〜」
 千鶴にしてみれば不思議な生き物にしか見えないのか、肩にとまった慧斗に喜びながら一緒になって息を吹きかけている。
 2人して両側からパクつく姿は、どことなく微笑ましい。

「ほら、ちゃんと片付けないと」
 食事を終えて一服したフィーナたちは焚き火の後始末を念入りに行った。
 これだけ綺麗な浜なのだから汚したくはないと思うのが人情というものだろう。
 ゴミもちゃんと燃やして埋めると一行は出発した。
「感心、感心」
 冒険者たちが去った後に焚き火の跡を覗き込む子供くらいの大きさの影があった。
 きちんと片付けられているのを確認して、その影は満足そうに去っていく‥‥
 しかし、彼らが去った後の出来事であり、彼らが知る由もなかった‥‥

●探索? 罠?
 昼食を終え、探索を続けることにした冒険者たち。
「精霊さんとは砂浜を掃除していたら、偶然お会い出来るかもしれません。皆さん、砂浜をお掃除しませんか?」
「賛成よ。あんまりゴミとか落ちてなさそうだけどね」
 ルシファーの提案にロサが乗った。
 そして、ある者は掃除をしながら、ある者は釣りでもしながら、それぞれの方法で浜の時間をすごし始めた。
 何かしら他の村と違う場所があるとすれば、確実にこの砂浜である。
 手がかりがここにしかない以上、一縷の望みをかけるしかなかった。

 暫時‥‥
「どうだった?」
「駄目駄目、上がるのは外道ばかり。こんなんよ。」
 夕飯用と食い物の匂いで砂霊どんを釣るためにと垂れた釣り糸に引っかかったのは藁人形のような海草の束やらなんやら‥‥
 鶴来と千鶴はガッカリしながら仲間たちのもとに帰ってきた。
 しかし、それくらいでめげていては冒険者や子供は務まらない。
「そうだな‥‥ こんなのどうよ」
 鶴来は三度笠に突っかえ棒をして、そこに釣り糸を結びつけた。スルスルと下がると物陰に身を隠す。
「これ何?」
「これはな、雀とか捕まえる罠だ。砂霊どんが、あの真下に来たときに、糸を引けば捕まえられるって寸法さ」
 自慢げに罠の説明をするが、誘き寄せる餌もなしでは‥‥
 ところが‥‥
「あ、サレイどんだ♪ 鶴来、後ろ後ろ」
 へ? と素っ頓狂な声を出して鶴来が振り向くと、フラフラと三度笠に近寄っていく山吹色の物体がいた。
「いたよ‥‥ ホントに」
 三度笠を嬉しそうに掲げると小躍りし始める山吹色の生き物に、鶴来は暫し目を奪われた‥‥

●どうするか‥‥
 サレイどんは千鶴に捕まって逃げられずにいたところを冒険者たちに発見された。
「む‥‥ 不覚じゃな。丸い物には目がないのじゃよ」
 自らを砂霊と名乗ったその生き物は、名残を惜しむように三度笠を鶴来に返した。
「浜を掃除してるときに一緒にお掃除していた方じゃないですか。
 お掃除って良いですよね。綺麗になっていくのが気持ち良くって」
「おいおい、このサレイってのが、つまりは砂の精霊ってことだろ? いい加減気づけよ。それに見かけてたんなら先に言え」
 田原が呆れ顔でフィーナに突っ込む。
「‥‥ え! あなたが探してた精霊さんですか?」
「さぁ、わしゃ知らんぞ」
 砂霊どんは不思議そうな顔をしてフィーナたちをキョロキョロ見渡した。
「でも、間違いなさそうですね」
 ルシファーがしたり顔で頷く。
「触ってもいいですか?」
「少しだけじゃぞ」
 ふさふさの毛が、何となく気持ちいい。シャーリーに続いて他の仲間たちも触ってみた。
 こういう時、遠慮なく抱きつける千鶴が羨ましいとも思う。
「絵を描きたいのですが、構いませんか?」
「ふむ、どうすればいいのじゃ?」
「いいんですか? それではジッとしていてくれればいいですよ」
 シャーリーは、まさか描かせてくれるとは思っていなかったので嬉々として描き始める。
「よその浜に移らねばならんかのう。人に見つかっては静かな暮らしはできん‥‥」
 耳を引っ張られたり、くすぐられたりしながらも、砂霊どんは千鶴と仲良く絵のモデルを続けてくれている。
「地元でもあまり詳しいことが広まっていない伝承のようですし、見つからなかったか、見つけても既存の生物の見間違いだったか‥‥ そんなところで報告しませんか?」
 シャーリーは、この愛らしい出で立ちの優しい精霊を白日の下に晒すことを良しとは思わなかった。
 元々、何でも願いが叶う精霊として噂が広まっている話である。砂霊どんの存在が知れれば‥‥
「そうだよな。砂霊どんも騒がれて住処を荒らされたりは嫌だろ? 何とかできねぇかな」
 田原もシャーリーに同意する。
 砂霊どんを捕らえようと多くの人がこの浜に押しかけ、見るも無残な姿にしてしまうことは容易に想像がついた。
 そういえば頼みごとに嫌と言わないことにシャーリーは気が付いた。もしかして‥‥
「何でも願い事を叶えてくれる精霊じゃないんですよ。
 一緒になって遊んでくれたり、お願いを聞いてくれたり‥‥
 それを聞いた大人が願い事を叶えてくれると勘違いしたんじゃないですか?」
「そうですわね。
 何でも願いを叶えるという事はできないけれど、ちょっとした恵みを与えてくれる。
 千鶴さんを見ていると、子供にとって人とか人でないとか、そんなことは関係ないのかもしれません。
 お友達と仲良く遊んだ思い出を、自分の子供に話してあげたりしたのが、この伝承の起こりかもしれません」
 ルシファーは納得したように小さく首を縦に振った。
「それなら、なおさら本当のことを報告しちゃまずいだろ。知ってて話してない奴もいるかも知れねぇんだから」
 鶴来は小さく静かに溜め息をついた。
「それにしても綺麗な砂浜ですね」
 ルシファーは改めて砂浜を見渡した。
 打ち寄せる波が白く模様を作りながら押しては引き、砂地に消えていく。
「わしの自慢じゃ。もっと綺麗な場所があるぞ。行ってみんか?」
「行く〜」
 千鶴の一言で決定。一行は砂霊どんに連いて歩き始めた。

 木々の間を抜け、パッと視界が開けたそこには砂浜があった。
 自然という美しさが、そこにはある。左右を岩壁に囲まれ、扇型に広がる砂浜。
 背後には木々の茂みが備え、海と大地の狭間‥‥ まさにそんなことを連想させる場所だった。
 大人では枝などを掃わなければ来ることができそうになく、それ故に残されている自然と言える。
「わしは、ここが好きなんじゃ。静かで浜を荒らす者もおらん。時には千鶴のような子にも出会えるしの」
 砂霊どんは砂浜を見つめながらそう言った。

 砂霊どんと別れた後、千鶴を探していた千松と亀に彼女を引き渡して、冒険者たちは帰途についた。
 結局、そういう説話を子供にして聞かせる村があったが法螺話の域を出ないと依頼人に報告して、冒険者たちは依頼を終えたようだ。
 何でも願いを叶えてくれる精霊を捕まえたなどという噂は、まだ聞かない‥‥