【凶賊盗賊改方・悔恨】闇路
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■シリーズシナリオ
担当:想夢公司
対応レベル:フリーlv
難易度:難しい
成功報酬:0 G 93 C
参加人数:8人
サポート参加人数:5人
冒険期間:10月28日〜11月04日
リプレイ公開日:2006年11月09日
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●オープニング
石川島・人足寄場の責任者を仰せつかった、現凶賊盗賊改方長官補佐の彦坂昭衛が船宿綾藤に受付の青年を呼び出したその場に、凶賊盗賊改方与力・津村武兵衛がやって来たのは日も既に落ちようという、とある秋の夕刻のことでした。
武兵衛と昭衛は白鐘の紋左衛門という香具師の協力申し出が一転して筋を通さないとして妨害に回られかねない状況にあることを説明したのち、暫くの間黙って茶を飲んでいました。
「ええと、この2つで宜しいですね?」
「‥‥いや、実は今一つ‥‥」
重い口を開いたのは昭衛でした。
「実は‥‥江戸郊外で起きた、殺しについても調べるのを手伝って貰いたく‥‥」
「‥‥えっと、その、奉行所の管轄では‥‥」
「殺されたのは小さな茶屋を営んでいる老爺と今1人‥‥その老爺の茶屋の床下には壺を掘り出したような小さな穴があいておったそうだ」
「‥‥‥え‥‥ま、まさか‥‥」
「‥‥永見の鶴助の埋めたであろう金の一部が、江戸にもあったらしく‥‥老爺は何も知らず鶴助らしき男を泊めたことがあると答えていた‥‥」
緩やかに溜息を吐いて話す昭衛。
昭衛の話では、その老人は鶴助について手分けをして聞き込んでいた者達の話を聞いて、まさかと床下を掘って見たのではないかということで、今1人の殺された男は老人の甥とのこと。
「かたや老爺、かたや腕はからきし駄目なお調子者の遊び人、何の抵抗も出来ずに滅多刺し‥‥何故埋められている可能性があることを言わなんだか」
「彦坂様、人は弱い者‥‥ましてや纏まった金が自分の寝泊まりする床下に埋まっているとなれば、魔が差してしまうのも人の弱さ」
武兵衛に諭されるように言われるも、理解できないとばかりに深く息をつく昭衛。
「どうも、この2人が殺されたときに、その付近を見慣れぬ女が彷徨いていたとか‥‥これが、どうにも嫌な予感がするのだ」
「‥‥嫌な、予感ですか?」
「儂らには、鶴吉の知る数え歌を他に知っていそうな人間は‥‥」
「っ!!」
はっとした顔をする受付の青年に苦い顔で頷く昭衛。
「安心と言うには皮肉ではあるが、其の女にとって産んだ子はいとも容易く捨て去れた‥‥あの一家の前には現れぬだろうよ」
「江戸の中でその数え歌に‥‥」
「後2箇所‥‥歌で察するに後2箇所有るようなのだが、具体的な場所は、鶴助が立ち寄った己には関わりのない場所、としか考えられぬ」
言う昭衛が頷いてみせれば、武兵衛は懐から数枚の紙を取り出します。
「鶴助は4箇所ほど、盗賊宿以外に泊まった場所があるらしい、その茶屋を除いて‥‥これは、鶴助が江戸より5日ほど行った先にあった祠に隠してあった記録と手紙より確認できた者なのだが‥‥」
「ただ、問題はその女の確保と、本当にその女があの老爺と若者を殺したかを調べること。それが肝心でな‥‥」
「では、その女性の確保を第一の目的として‥‥」
「そうそう、その書状を見てみろ」
「‥‥? 『つる‥‥き、ちえ』‥‥これ、鶴吉宛ですか?」
「皮肉なことに、鶴吉の両親の愛情は、生みの親ではなく離れて暮らしていた父の方が勝っていたと思えるな」
唯一の救いではあるが、小さく呟くように付け足す昭衛に、受付の青年はそのぼろぼろとなった手紙をじっと見つめているのでした。
●リプレイ本文
●役宅・朝
「その女性、鶴吉君の母親の可能性が‥‥」
何とも言えない表情を浮かべ呟くように言う時永貴由(ea2702)に、凶賊盗賊改方長官・長谷川平蔵は緩やかに煙管を燻らせると深く息を一つ吐きます。
ここは与力達の詰め所、奥では与力の浅間真蔵が幾つか調べ書きを抜き出してはジェームス・モンド(ea3731)にそれを渡している姿があります。
「では、老爺が死ぬ前に鶴助のことを尋ねていったのは‥‥」
「あぁ、同心の荻久保という。今は見回り中故、用があるならば戻り次第こちらに顔を出すように伝えよう」
応える彦坂兵衛はこれから石川島へと向かうようで、そのついでに同心へと言付けをしに行くらしく廊下を歩き去り。
「しかし、本当に鶴吉の母親が金の為に人殺しまで?」
「そこの所は何とも言えんが、人殺しをしてまでというのはあり得ない話ではない‥‥鶴吉の生まれた村では少なくともそう思われているようだが‥‥」
御神村茉織(ea4653)が問えば浅間与力は1人では厳しいかも知れぬが、と呟くように付け足し。
「とりあえず鶴吉のことぁ知ってるが、母親については良く知らねぇ。人相書きなどがあると助かるんだが」
「あぁ、それなら書き上がり次第同心達の詰め所の方に届く。直ぐにこちらへも届くだろう」
「何にせよ、鶴吉くんはせっかく新しい家族の下で幸せに暮らし始めた処だ‥‥変なとばっちりが行く前にきっちりこの件に片をつけないとな」
御神村と浅間が言うのを聞きながら呟くように言う逢莉笛舞(ea6780)の言葉に、貴由は鶴吉の今の生活が脅かされるのを恐れてか、どこか辛そうに目を伏せるのでした。
「はい、これが人相書きですね」
回ってきた人相書きを手にしてレヴィン・グリーン(eb0939)が言えば、ひょこっと覗き込む所所楽石榴(eb1098)。
久々に夫婦揃って改方の仕事とのことで少し心配そうな表情を浮かべていたレヴィンですが、そんな石榴の様子に思わず微笑を浮かべるのですが‥‥。
「でも、本当に気をつけてくださいね? 何かあったら大変ですし‥‥」
「ん、十分気をつけるし危なくなったら戻ってくるから平気だよっ♪」
花街へ探りに入るという石榴に今度は危ない目に遭わないかどうかと心配そうな表情になるレヴィン、石榴はにっこりと笑いながらも少し頬を染めて照れているような嬉しそうな様な。
「なるほど、あれが他人が入っていけない幸せ空間なんだねぇ‥‥」
「‥‥俺に振るな」
これから回るところの打ち合わせや見張り所の連絡などの為に来ていた天風誠志郎(ea8191)にちょっと面白がっているような様子のサラ・ヴォルケイトス(eb0993)が言えば、なぜか疲れたように誠志郎は溜息を吐き。
「では寺の裏にある蕎麦屋の二階に後ほど与力の浅間殿が詰めることとなる。情報収集や、手が居るときの為に密偵の誰かをそこに送っておこう」
「うんっ、じゃあみんなも気をつけてね?」
誠志郎が伝える言葉に頷いて出かけていく石榴を見送り。
「今回は綾藤じゃないの?」
「いや、綾藤では他の組の者達からも情報が来ることになっている。行き違いがないように、我々の情報はまずその蕎麦屋にということだな」
サラに答える誠志郎、レヴィンとサラも、そろそろ行こうか? と顔を見合わせて確認すると出かける支度を急ぐのでした。
●茶屋すなわち現場・昼時
「どうだ、この格好もなかなか似合うだろう」
にかっと笑みを浮かべ藍の袷に紺帯、モンドはランティス・ニュートンを助手として引き連れて現場へとやって来ると、話は既に通されており現場を任されていた所の岡っ引きが中へと通してくれます。
「わざわざ現場へお出張り、何かご不審な点でもありやしたか?」
「資料では見せて貰ったが、現場100ぺんという言葉もある、それにこの目で見ないと、どうも落ち着かなくてな」
にと笑うモンドになるほど、頷いて見れば、既に遺体は運び出された後ですが、そのほかは全く手を付けていないとのこと。
「茶碗が三つに死んでいたのがこの家の老爺と一緒に住んでいたその甥の2人‥‥」
「確かに一つには紅らしいのが付いてるねぇ‥‥」
モンドとランティスが3人の人物が居たであろう辺りを見ていると、そこへ少し遅れて到着する誠志郎。
「裏を無理に開けた様子はない。だが普段から開けっ放しって言うわけでもない、恐らく中から開けられたのだな」
「おお、何か裏にあったかな?」
「直ぐ裏ではないが、直ぐ側の端を渡れば、川の向こうからこの裏口は丸見えだ。おまけに、そこは雨の中延々待っていた人間が居たようで、一箇所酷く踏み荒らされていた」
誠志郎が言えばむと眉を寄せるモンド、ランティスはなにやら用意した房紐につり下げた銭を弄りながら室内を見回しています。
「この茶碗の位置からすれば、男2人、裏口に背を向けているような形になるな」
「事件当夜は雨だったようだ、気をつければ開いていた裏口から男が入り込んでも気付くまい」
モンドが言えば誠志郎も頷いて。
「その鶴吉の母の犯行でなければよいのだがな‥‥と、いかんいかん、先入観は勘を鈍らせる。全く、因果な仕事だ」
「全くだ‥‥しかし、女の狙い‥‥普通に考えれば、鶴助の残した金なのだろうが‥‥」
誠志郎は呟くように言うと掘り返されたと言う床下へと案内させて入っていき。
「瓶が2つ‥‥ここにあったのだろうな」
殺してから掘り返したのか? 呟く誠志郎に違うのでは、と答えるモンド。
「室内には泥の痕跡はない。殺してから掘り出したならわざわざ泥を綺麗に片付けていかんだろう」
「となると、掘り出したのは老爺と甥か?」
「改方で鶴助についての聞き込みと金目の物を預けていかなかったかという問いに愛想良くだが強引に追い返したらしいな。その時に大金が家に隠されていることに気がついて甥と2人で掘り出したのやもしれんなぁ」
それが死に繋がった、と誠志郎は溜息を吐くのでした。
●茶店〜寺・日中
「うーん、見つからないもんだね〜」
困ったように苦笑するのはサラ。
寺を中心とした、幾つかの小さな旅籠がひしめき合う一角、レヴィンが聞き込みを続けてもそれらしい場所は見あたらず、サラも女性の手がかりが掴めずにすっかりと困った様子。
「まだ3日目ですし、頑張って聞き込みを続けましょう」
レヴィンが穏やかに言えばそうだねぇ、とサラは肩を竦めて。
「三森の梅がよつ宿に‥‥で、三森の梅というのがわからんが、鶴助が4箇所宿にしていた場所のうちに3箇所宝を埋めてあると‥‥すでに一つが持ち去られているのを考えれば、吉だ矢だというのは、屋号か何かなのではないか?」
「数え歌のは手紙のありかとどこにどれぐらい隠してあるか、がわかっただけだよね?」
舞が入ってくれば言う言葉にサラも首を傾げて。
「絵図面があれば助かるんだけどね」
「花町のはちょっとわからないそうだが、このあたりの絵図面は寺に行けば見せてもらえるそうだ」
「一応気をつけてはいますが、見落としがあるかもしれませんしね」
レヴィンも同意し寺に連れ立っていけば、寺の住職が絵図を広げて見せてくれます。
「花町のほうは?」
「これは少し前のでな、花街の中の店の入れ替わりまではわからんでの」
住職の言葉に眉を寄せつつ見比べれば、なにやら目立たないところに小さな茶店があり。
「御住職様、すみませんが、ここは?」
「おお、そこは昔からある茶屋で、ところの者にはちと有名でな。数年前に代替わりしておってなぁ」
住職の言葉に顔を見合わせる3人。
「茶屋・吉治か‥‥」
「でも、代替わりしているってことは、ちょっと怪しくない? ほら、なんか逆に盗賊宿っぽいなーなんて‥‥」
言いかけて自分の言葉になんだか微妙な表情を浮かべるサラ。
「盗賊宿以外にも泊まった所があるってことは、逆に言うと盗賊宿に泊まるのは当たり前のことだな‥‥」
「御住職、此方の茶屋を継がれたのは、そのお店のご子息か何かですか?」
「いんや、遠縁とか何とか‥‥現れて半月ほどで後を継いで前の主人は亡くなったで、店を托せる身内を呼び寄せたのではと近所絵もっぱらの噂での」
「うーむ‥‥後で写しを貰えないだろうか?」
「おお、では後で写しを持って行かせようの」
住職と約束をし寺を後にする3人。
「さてと、もう一回りしてその女の人を探さないとねー」
「では、後で見張り所で」
「ああ、二人とも気をつけてな」
「あ、レヴィンさん、そっち違うよー」
サラとレヴィンはうっかり違う方向に向かいつつも聞き込みに、舞は絵図面で気になるところを調べるために分かれるのでした。
●花街・夕刻
「変装や役のなりきり‥‥お芝居みたいだよね」
誰にも聞こえないように小さく口の中で呟くと、石榴はどこか楽しそうに夕闇の中を賑やかな提灯や店の明かりに照らされる花街の通りを歩きます。
そろそろ日も落ち、鶴助に用があるので一緒にいたらしい女性を捜している、その言葉に下級遊女と位置付けられている女性達は色々と思うところがあるのでしょうか、何くれなく世話を焼いてくれるので、花街での情報収集は思ったよりもずっとしやすいもので。
「何処の店だったかねぇ、数日居漬けだった鶴さんって言う男の話は記憶あるんだけど、何せ幾つかの店を回っていたらしいからねぇ」
「回っていた? 贔屓のお店とか無かったのかなっ?」
「何でも聞いた話じゃ数件泊まって回って、あんたに言って良いのか分からないけど、とある人の所に暫く転がり込んでいたみたいだよぅ」
石榴が聞き込んでいるとなにやら勘違いしたのか上目遣いに伺いながら言う遊女の1人、その女はそう言えばやっぱり鶴さんを捜していた女が居たねぇ、と思い出すように首を傾げながら言います。
「どんな女の人だった?」
「ありゃなんだね、男連れて男に会いに来るなんて、たいしたたまじゃないか」
わいわい話す姐さん方、石榴が詳しく聞けばその2人が押しかけていって追い出された宿の場所を教えてくれるのでした。
「あれは‥‥」
御神村が着流しでぶらぶらと花街を流していると、なにやら体格の良い老人が駕籠に乗り込むのに数名の若い男達が頭を下げ、側には浪人らしき男が付き従い、駕籠は去っていきます。
「しかし大丈夫なのか、冒険者に呼ばれたとか‥‥」
「綾藤の女将からの招待とか‥‥客商売の顔を潰すようなこたぁしねぇだろう、いくら冒険者でもな」
聞こえてくる声に、今のがこの辺りの香具師の元締めである白鐘の紋左衛門で有るらしいことを理解する御神村。
現時点では改方の者は花街から締め出されているそうで、冒険者達もそうであるため御神村も普通の遊びに来た客を装って中へと入っています。
始めは花街の中に入り込んでいるのだろうかと虱潰しに当たっていたのですが、それらしい女は居ないようで。
先程見張り所の蕎麦屋二階で石榴から聞いた情報を元に聞いた桔梗やという店を伺いに裏へと回れば、なにやら伺うように見るすらりと背の高い女が1人。
いらいらするかのように桔梗やの裏を伺っていたようですが、やがて踵を返し戻っていくその姿は、確かに鶴吉の母親として配られた人相書きそのまま。
その人相書きも鶴吉に確認まで取ってあるため間違いはないようで、それを知れば悲しむ人間に心当たりがあるのか僅かに眉を寄せる御神村。
女を付けていけば、やがて見張り所の近くを通り裏通りへ、とある小さな茶店へと入っていく女を見届けると、そっとそこに歩み寄ろうとしてふと気配に気がつき。
「あ‥‥」
「貴由? どうしてここに?」
「数え歌と残されていた手紙頼りに絵図面を照らし合わせたらそれらしい茶屋があったから‥‥」
「俺の方は人相書きの女を追って来りゃ、ここへ、な」
「では、やっぱり‥‥」
目を伏せ小さく呟く貴由、御神村はこのことを見張り所へと伝えるように言うと、そっと茶屋へと歩み寄るのでした。
●その宿・夜更け
「例の盗賊宿っぽいところ、どうなってた?」
「あそこに出入りする人間が何処へ行っていたと思う? 2人ほど、石川島の人足寄場に通っているらしくてな」
サラがこそっと聞けば、声を潜めて答えるモンド。
一同は女が入っていった茶屋を包囲し、押し入る機会を窺っていました。
御神村と舞が中を窺ったところ中にいるのはこの茶屋の老夫婦と鶴吉の母親である女で、他にいる様子はありませんが、どうやら女は言葉巧みにその茶屋に留まりもてなされています。
「どうも、金が埋まっている話を老夫婦にして‥‥しかし、取り分で暫く互いにごねたりしていたようだな」
聞けば女は8割は譲れないと言い、老夫婦は自分の所の床下にあるのならば6割は自分だと主張していたとか。
「急に女が大人しく折半ならば良いと言い出してその場は収まったようだが、ありゃ納得していた様子じゃ‥‥」
言いかけて言葉を止める御神村、見れば誠志郎に押さえ込まれる男の姿があり、レヴィンと石榴で付近を調べていたところ茶屋を伺っていた男を見つけたとのこと。
「‥‥この男、どこかで‥‥」
縄を打ってから思い出すように睨め付ける誠志郎ははたと思い出したように頷き。
「この男、改方調べ書きにあった沼田蛇の喜助‥‥」
改めて付近を探るも、他に誰も潜んでいる様子はなく、踏み込めば、老夫婦交えて酒を呑んでおり、逃げようと暴れるもたいした事も出来ずに捕らえられます。
引き立てられた4人、念のため取り調べた老夫婦は欲に目が眩み届け出ることをしようとも思わなかったとか。
茶屋へと返そうとしたところ、金は自分たちの者だと騒いで一悶着があったとも。
そして、女性が取り調べを受けると、鶴吉の母親で間違いないことを確認し手折り、貴由が無言でその場を去るなどがありましたが、滞りなく取り調べは進むのでした。
●綾藤・昼下がり
「私もまだまだ修行が足りない‥‥」
小さく溜息を吐く貴由に、綾藤の女将・お藤がお茶を出しながら怒るのは当然のことですよと微笑を浮かべ。
場所は綾藤、それぞれの首尾を確認し合う一同、どうやら花街の方も条件付きで情報を回て貰い探索をする許可を漕ぎ着けたとか、石川島では内部に潜んでいた男を1人捕らえたとかいう話が耳へと入ってきます。
「しかし、思いの外宿を割り出すのに手間が掛かったな」
「既に茶屋の一つに入り込んでいたのは、恐らく例の喜助とか言う男が鶴助が泊まっていた場所に心当たりがあったからであろう」
舞は前もって場所を割り出し護衛へと回るつもりだったようですが、小さな茶屋や宿、色々な場所でも幾らか払えば空いている部屋を貸したりと言うこともあり、なかなか大変だったよう。
「一箇所しか見つかりませんでしたが、もう一箇所は花街の桔梗やなのでしょうか?」
「んー、その辺は今後協力して貰えるらしいし、調べさせて貰うしかないかな?」
スクロールで壺を見つけたレヴィンの言葉に石榴は首を傾げて言うのでした。