【華の乱】留守の勤め・追 其の二

■シリーズシナリオ


担当:想夢公司

対応レベル:11〜lv

難易度:難しい

成功報酬:9 G 4 C

参加人数:8人

サポート参加人数:1人

冒険期間:07月03日〜07月08日

リプレイ公開日:2007年07月18日

●オープニング

 その日、受付の青年が凶賊盗賊改方の役所へと呼ばれ急ぎ駆けつけたのは、けぶる様な雨の降る、梅雨のとある日のことでした。
 客間で待つのは凶賊盗賊改方長官・長谷川平蔵が妻、久栄で、その傍らに控えるのは筆頭与力の津村武兵衛。
 久栄から亡くなった門番の息子で門番見習いとして役宅に来ることとなった一太という少年と挨拶を交わし、役宅の懸念について相談したあと、受付の青年は改めて久栄を見れば、頷いてから武兵衛より話があると伝える久栄。
「さて、長谷川様、そして儂の不在の間、奥方様を助け働いて貰い忝く」
「いえ、それより本当に御無事で良かったです。後は長谷川様がお戻りになるのを待つだけですね」
「ほほ、殿様は運のお強いお方、どこぞで今頃寄り道でもされておられるのでしょう。きっとどこの蕎麦が旨かった、そこで飲んだ酒が旨かったなどと申されながらお帰りになられます、心配はいりませぬ」
 どこか気遣わしげな受付の青年へと微笑を浮かべて小さく首を振る久栄は、一時絶望的とも思われていた与力・同心がぱらぱらとではありますが戻ったことに、平蔵生存を強く信じることができているよう。
「我らが悪運強く戻ったのは長谷川様のその強運によるものかもしれん。が、まぁ長谷川様がお戻りになる前に、いくつか片付けねばならぬ問題があるよう、そのために手を借りたい」
「‥‥欠駒の仁八は既に捕らえたんですから、雹害の八十助ともう一人の流れ盗めの男ですね」
 受付の青年が聞き返せば頷く武兵衛、どうも仁八から聞き出そうとしてもその流れ盗めの男については名前も知らなかったようで、八十助ならば知っているかもしれないと答えて泣いたそう。
 八十助が知っているかはわかりませんが、仁八が知らないというのは確かなよう。
「一味の者たちも大したことは知らなかったよう、洗いざらい知っていることなどを吐かせ、万一を考え仁八だけは残してあるが、他の一味の者は処刑となった」
 この部分は留守中に伊勢がよくやってくれたと言うと、緩く息を吐く武兵衛。
「役宅内はまだ全ての同心の消息がわかったわけではない、長谷川様の御戻りもまだの現状、調査、捕縛を何とか手伝って頂きたく‥‥」
「わかりました。‥‥そういえば、それらしい姿をどこかの稲荷で見かけたという話ですが‥‥」
「稲荷付近で見られたという情報についても、未だ動きもなく、張り込んでいる密偵たちや同心も大分に疲れている。人相書きで確かにこの顔の者と答えているところから見ても、もう一人の男であろうことは確かなのだが‥‥」
 その辺りも併せて調べていって欲しい、改めてそう頼む武兵衛の言葉に頷くと、受付の青年は依頼書へと目を落として筆を走らせるのでした。

●今回の参加者

 ea2702 時永 貴由(33歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea2988 氷川 玲(35歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea3220 九十九 嵐童(33歳・♂・忍者・パラ・ジャパン)
 ea6780 逢莉笛 舞(37歳・♀・忍者・ジャイアント・ジャパン)
 ea6982 レーラ・ガブリエーレ(25歳・♂・神聖騎士・エルフ・ロシア王国)
 ea7755 音無 藤丸(50歳・♂・忍者・ジャイアント・ジャパン)
 ea8191 天風 誠志郎(33歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 eb2413 聰 暁竜(40歳・♂・武道家・人間・華仙教大国)

●サポート参加者

九十九 刹那(eb1044

●リプレイ本文

●各々の足もと
 凶賊盗賊改方役宅、その一室で眉を寄せながら調べ物をしているのはレーラ・ガブリエーレ(ea6982)。
「んーっと、もう少し情報が欲しいじゃん? でもなかなか無いじゃんー」
 九十九嵐童(ea3220)の手伝いに来ていた九十九刹那と共に先程からずっと調べ物をしていたレーラですが、なかなかはかどらないその様子に眉を寄せて小さく愚痴を零して。
「名前分かっていない事件との繋がりとか、何か掴めたら良いのになー」
 んーっと延びをしながら呟くレーラ、既にかなりの時間書面に向き合っており集中力も限界に近く、側に置いて置いたお饅頭を手にとりもそもそと食むのもそろそろ飽きてきた頃、ふと目に留まった一文。
「えーっと‥‥流れ盗めが手引きしたと思われる事件でーきょーあくでー‥‥‥結構昔の事っぽい?」
 そこまで読んでから、ふと首を傾げるレーラ。
「そーいえば、八十助とか名無しの男ってどんな状態で捕まったんだっけ?」
 刹那から流れ盗めの男が捕まったときの御調書きを受け取ると、レーラは首を捻りながら読み続けるのでした。
「親分、折り入って頼みがあるんだが‥‥数人、人探しなどに適任と思える奴を数日ほど借りたい。それと‥‥もし問題がなければだが――」
 香具師の元締めの1人・白鐘の紋左衛門の屋敷で挨拶代わりに一献受けてから切り出したのは氷川玲(ea2988)。
 既に若頭として一家の者達から慕われている氷川が切り出した言葉になるほど、と頷く紋左衛門。
「なるほど、そのお稲荷さんの所の元締めなら知っている男だねぇ。では、一筆書いてやろうかぇ。人捜しなら、松と数人連れて行くと良いさね」
「済まねぇな、親分。ったく、伊達の野郎が面倒なことしてくれたせいで」
 戦が起こらなければ、むしろ戦が起こったとしても乱で江戸内が混乱へと落とされなければ起きなかった盗賊脱獄という事態に、声に僅かに怒りを滲ませて言う氷川。
「なんにせよ、今は誰にとっても大変な時だからねぇ。ま、なんにせよ玲、お前さんはやりたいようにやると良いさ」
 喉の奥で低く笑って言う紋左衛門に頷くと、氷川は立ち上がって沖松を呼ぶのでした。
「‥‥‥‥」
 天風誠志郎(ea8191)は先に寄った同心達の墓へしたのと同じようにぐいのみを置くと、持ってきていた徳利から酒を注ぎ、『文吉』と記された墓の前で手を合わせていました。
 既に通い慣れた役宅、誠志郎にとっても改方と深く関わる者にとってもその門番はあまりに親しく信頼を向けていて。
 それを思えばこそ、手を下ろしても暫しの間深く息を付いてその墓を見る誠志郎は直ぐに立ち上がるという気も起きずにいます。
「‥‥この身が道を踏み外さぬよう、酒でも飲みながら見守っていてくれ」
 小さく呟くように告げる誠志郎、その言葉は目の前の墓だけでなく、先に逝った同心達への言葉でもあり。
「‥‥さて、行くか」
 桶を手に誠志郎はもう一度だけ深く息を吐くと、ゆっくりと歩み去るのでした。

●2人の凶賊
「‥‥舞さん、あの家だ」
「見つけるのも大変だったが、塒まで辿り着くのも骨が折れたな」
 時永貴由(ea2702)がちらりと二階の部屋、障子を薄く開けて伺い見れば、その部屋に駆けつけた逢莉笛舞(ea6780)が密偵の庄五郎に案内されて入ってくるのに低く声をかけて。
 2人が場所を借りたのは吉賀屋と言う小さな小間物屋で、郊外のその家を木々の間から見張るのに丁度良い場所を探していた貴由は合流した孫次に確認を取った上で詳しい事情は置いて2階を借り受けていました。
「これぐらい距離を置くのは心許ないが、これ以上近付けば気が立っている八十助達のことだ、感付かれる可能性が高いからな」
 僅かに眉を寄せて言う舞に、貴由はこの辺りの地形などを店の娘さんに聞いて書き付けたものを広げて。
「細心の注意を払わなければいけないが、近付くことが出来そうな道がある」
 貴由が言えばその手元の図に目を通す舞は小さく首を傾げて。
「このあと、私は行ってみようと思うが‥‥」
「では、私はもう少し出入りしている者達を調べてみようと思う。この直ぐ側に妙な者達が滞在する空き家があるとのことだしな」
 役宅によって聞いたところで、恐らくその空き家の男達はもう一組の者に関わっているよですが念のためと思ったようで。
 舞が出かけるのを見送ると、貴由は町人姿の自分に不自然な場所はないかと確認をしてから、後を密偵達に任せて八十助らしき男達の事を探るべく出かけていくのでした。
「じゃじゃ〜んっ♪ 見事に中にいた鳥が‥‥あれ?」
 どっと笑いの起きる参拝道、見れば帽子から鳥を消そうという手品をしようとして居たのですが、手品と言うよりは笑いを取る演芸のような雰囲気に。
 レーラはその参拝道で姿を変えて大道芸をしながら情報を集めていたのですが、未だにこれと言った手掛かりを得られていませんでした。
 同じく氷川の方も白鐘の一行を引き連れての情報収集をしていますが、今までの目撃証言以上の証言をなかなか得られず、沖松と共に参拝道の屋台を冷やかしている風を装い通りかかりそんなレーラの様子を眺めていて。
「そうそう、例の男じゃあありやせんが、ちょいと先にある賭場に出入りしている男が、やはりこの辺りの道を通い詰めているとか‥‥それも、あの乱以降にってぇ話なんですがね?」
 レーラの大道芸を見ながら囁く些細なことでも報告した方が良いと思ったの様子の沖松、その言葉に少し考える様子を見せる氷川。
「‥‥ちょいとその賭場に出入りする男の事ももう少し詳しく探れるか?」
「へ‥‥任しといておくんなせぇ、若頭」
「その男の事、念のため伝えに行くか‥‥」
 氷川はそう呟くと綾藤へと足を向けるのでした。
「‥‥なるほど、まだその流れ勤めの男は見かけていないが、その様な男なら昨日‥‥」
「賭場がこの稲荷の裏手にある屋敷に立つらしい。だが乱で盗賊達が逃げ出すまでは、この稲荷の中をわざわざ通ることはなかったそうだ」
 辺りが茜色に染まる頃、聰暁竜(eb2413)は稲荷参拝道に立つ一件の水茶屋の2階から下を眺めつつ、嵐童からの連絡を受けていました。
「‥‥確か、あの辺りで誰かと話していたな。例の流れ盗めの逃げ出した男ではなかったようだが」
 そう言って暁竜が指すのは屋台と屋台の裏にある木の陰で、丁度暁竜が田村同心を休ませに返した直後に見かけたため良く憶えていたよう。
「向こうの方で他に何か‥‥」
 綾藤での情報交換について言いかけた暁竜ですが、ふと言葉を止め眼を僅かに細めると参拝道の一点を見据え、それに気が付いた嵐童も障子の影から見下ろせば、そこにはまさに今話に出ていた賭場の男の姿。
「‥‥」
 それを確認すれば急ぎ店を出る嵐童に、店の者へと綾藤へ使いに出すよう伝えつつ紙に何事か書き付ける暁竜。
 それを駄賃と共に店の者に持たせると、暁竜は再び参拝道へと目を向けるのでした。
 同じ頃、音無藤丸(ea7755)は参拝道へと向かう細い林道を、息を殺して視界の先に見える男の後を追っていました。
 その男はまさに人相書きに記された流れ勤めの男。
「既に何か仕事をしているのか、それとも‥‥?」
 あまり懐に金を持っているようにも見えない男の様子に仕事をする気なのではないかと疑いを持っていた藤丸。
稲荷の付近の裏道や人の顔が分かる人間を捜して話を聞いて見てはいましたが有力な情報が見あたらないままに居たところ、付近の空き家からひょっこり這い出て来た男に気が付いたのは幸運だったといえます。
「江戸を離れられないなら遊ぶ金は欲しいのではないかとは思っていましたが‥‥」
 小さく呟く藤丸、向かう方向は男が何度も目撃されていた稲荷で、夕刻、そろそろ人通りが少なくはなってきていますがするりと溶け込むように屋台の影から影へと進む男を見失ってしまいます。
 撒こうとされたと言うよりは念を押した様子の行動に辺りを見渡す藤丸。
「尻尾を掴むまでは行きませんでしたか‥‥しかし、この先にあるのはせいぜい‥‥」
 眉を寄せ一度情報を確認した方がよいと思ったか、藤丸は綾藤へと急ぎ向かうのでした。

●捕縛
 闇夜の中をひたひたと走る足音。
 一行は細い林道の先にある小屋へと駆けていました。
 木々に隠れるように建つ小さな家迄辿り着くと、裏口へとまわる二つの影‥‥いや2人の影と、2つの小さな影。
「‥‥」
 裏へと回ったその2人は目配せをすると小さく頷いて息を殺して耳を澄ませます。
 表にいた者達も目配せと共に頷くと、うちの1人が戸の前へと立ちすぅっと息を吸ったかと思うと、勢い良く正面の木戸を蹴り破り。
「凶賊盗賊改方だっ! 神妙に縛につけっ!」
 木戸を打ち破った暁竜が中へと飛び込むのに次いで中へと入った誠志郎が声を上げれば、予期すらしていなかった深夜の訪問に中にいる男達が弾かれたように立ち上がり裏木戸へと向かいますが‥‥。
「そんなに泡くって、どうした? あぁっ?」
「伏姫、八房‥‥外道に加減はいらんぞ」
 そこに立つのは裏木戸を打ち破って入ってきてにやりと笑う氷川に、低く唸りを上げて男達を牽制する愛犬の伏姫・八房へと声をかける嵐童の姿が。
「くっ‥‥どけぇっ!!」
 1人の浪人らしき男が誠志郎へと抜き様に斬り付けますが、それを刀で受け流す誠志郎、その横を摺り抜けるようにして突進するもう一人の浪人へは、半ば悲鳴に近い声を上げたレーラのホーリーが直撃、間髪入れずにねじ伏せて押さえ込む暁竜。
 裏木戸へと駆け寄った男の1人を加減なしにその短刀というよりは包丁そのもので力で斬り伏せる氷川に、もう一人の男は左右から伏姫と八房に苦無で斬り付けられ意識が逸れたところを嵐童の一撃によって意識を刈り取られ。
「ち‥‥何で彼奴等にここが‥‥」
 焦ったような声を漏らし階段を駆け上がったのは流れ盗めの男。
 男は2階の部屋の窓に駆け寄り障子を開け放ち足を縁にかけ、視界を覆った影に、目を見開いて。
「闇の世界は‥‥伊達が支配しようとこの者達がいる限り住みやすくはならない」
 その影は藤丸。
 藤丸は咄嗟に男が突き出す短刀を刀で受け止める峯で叩き伏せ。
「大人しく捕まりなさい」
 為す術もなく引き立てられる男、藤丸に階下へと連れて行かれれば、そこでは既に4人の浪人者が在る者は意識を失い、在る者は血を流し――ただ1つだけ共通していたのは全員が縛り上げられているということ。
「さて‥‥これで残るは逃げた1人‥‥しかし‥‥」
 流れ盗めの男が接触していた賭場の男のこともある、小さく口の中で呟くと、誠志郎は男達を引っ立てて役宅へと戻るのでした。

●凶報か吉報か
 貴由は床下で息を殺しつつ男達の話を聞いていました。
 雹害の八十助の潜伏する場所で話を聞いている限りから判断できるのは、平蔵が居ない今江戸を無理して落ちる必要はないと言うことのようで。
 床下を抜けて張り込んでいる密偵達に後を任せると綾藤へと貴由は急ぎ足で向かい事に。
「手も足りない、見失わないように慎重に事を進めないとな」
「ああ、それに今は次の仕事のために何かを調べているようだしな、慎重に動かざるを得ない」
 舞が言えば貴由は頷いて同意を示すと、少し考える様子を見せます。
 情報の確認を済ませると、一度役宅へと寄ってから張り込みに向かうと告げて出る舞。
 思い起こすのは数刻前のこと。
 各人が情報を持ち寄り集まった時に流れ盗めを見失った藤丸は、上から男がどちらの方に抜けたのかを確認した暁竜に呼び止められ、男が賭場の入口まで来て、嵐童の尾けていった男と幾つか会話をしているのを確認していました。
 レーラが調べた内容から、何年も前に流れ盗めの男らしき者の記述があり、その記述の中で賭場の男らしき者とやはり接触を持っていたことや、その当時に使われそれ以降打ち棄てられた家のことが判明し。
 男がその家を今また使っているらしいことをその家へと戻るところまで確認した一行は、直ぐに準備を調え捕縛へと向かい、舞と貴由は八十助に集中することが出来ていました。
 とはいっても、八十助の周囲への警戒が半端ではなく、貴由が床下に潜入して話を聞くまでに何度感付かれるかと冷や冷やすることがあったのもあり安心は出来ないと小さく呟いて溜息をつく舞。
「それにしても‥‥近くの民家でのアレが原因も1つでもあるからな‥‥」
 空き家を使っている者達が捕らえられた騒ぎもあって余計に警戒が厳しいと言うこともあり、慎重に八十助のことを探らないとと小さく息を付いた舞は役宅の中が妙に慌ただしいことに気が付いて首を傾げつつ中へと足を踏み入れて。
 中へと入り様子を窺うも、流れ盗めを捕らえて戻ってきたという様子でもなく、手近にいた田村同心へと声をかければ、思いがけない答えに目を瞬かせる舞。
「煙管が‥‥捕らえた役宅を窺っていた男達が、御頭の煙管を‥‥」
「長谷川殿の‥‥?」
 その煙管の意味は吉報か凶報か、舞は暫しの間驚いたように立ちつくすのでした。