【華の乱】留守の勤め・守 其の四

■シリーズシナリオ


担当:想夢公司

対応レベル:11〜lv

難易度:難しい

成功報酬:10 G 86 C

参加人数:8人

サポート参加人数:2人

冒険期間:10月18日〜10月25日

リプレイ公開日:2007年11月05日

●オープニング

 その日、受付の青年が凶賊盗賊改方の役宅へと呼ばれて伺えば、津村武兵衛と凶賊盗賊改方長官である平蔵の妻・久栄が迎えました。
「何かあったんですか?」
「いえ、殿様よりの便りで大分傷の具合も良く、今しばらくのんびりと湯治でもしておるかなどとお戯れを言われたようで」
 くすりと笑う久栄。
「御頭ならば、たまにはこうして湯治などでゆっくりと体を休めて頂きませんと」
 武兵衛も口元に笑みを浮かべその書状を見ていますが、実際のところは平蔵の本心は江戸へと戻り、盗賊たちに睨みを利かせておきたいと思っているであろうことを思ってか小さく息をつき続けます。
「御頭が一刻も早く改方に復帰していただければこれ以上の事は御座いませんが、奥方様、今は難しい時期」
「‥‥ええ、しかし殿様は一刻も早く江戸に戻られることを希望しておられます。そして、現状の長谷川平蔵不在という状況を維持しておきたいということも」
「‥‥‥‥? あの、不在を維持したまま、江戸に戻られる、ということでしょうか?」
 首を傾げる受付の青年に頷く武兵衛。
「御頭‥‥長谷川様はれっきとした旗本の御身分。そして先の乱では家康公に従い配下弓頭を率いて参戦し、伊達の覚えが良いとも思えぬ上に、万が一不問とされても伊達に与するを良しとは思われぬであろう」
「現状の改方は平蔵不在ゆえの不干渉‥‥万一が合っては身動きがとれぬようになる恐れがあるということにございましょう」
「なるほど‥‥」
 ぶっちゃけてしまえばふんぞり返っている―実際どうかは置いておいて―伊達なんぞに構っている暇はない、面倒事を避けて自由に動き回るためにも平蔵帰還は相手に知られているいないに関係無く、伏せて白を切ってしまおう、ということのようで。
「盗賊に付け入る隙を与えかねない口実は出さない、ということですね? では、長谷川様は‥‥」
「身分を隠し、江戸の知己の元に滞在し、改方への実質的な復帰をなさる御心積りにござりまする」
「そこで、なのだが‥‥まずは御頭の江戸入りを手助けして貰いたいことと、暫くの拠点を定めること」
 現状平蔵は捕らえられていた隠れ里から村の者たちの勧めで江戸より半日程の所にある、鄙びた温泉宿に身を寄せて療養を続けていました。
「まぁ、わざわざ御頭の人相書きを配して確認されるということもないであろうが、念には念を入れておきたい」
 武兵衛の言葉に頷くと依頼書へと書き連ねていく

「それと、牢内に留め置かれている女だが、先にセイバー殿に漏らした盗賊の存在なのだが、牽蓑の留八という男で塒も吐いたがそれを察したか、もぬけの殻だったそうでな‥‥」
「では、間に合わなかった、と‥‥?」
「それなのだが、牽蓑の留八は街道を荒らしていた賊で、仕事を請け負うために江戸へとやってきたらしい。そのついでに役宅の守りが薄くなったと判断してか、兄弟分であった盗賊を牢内から逃がそうとしていたそうでな」
 逆恨みもあって襲撃をして奪おうとしていたために女が先にやってきて、金をばら撒き浪人者を集めて取り返そうとしていたそうで。
「まぁ、先に仕置きになってしまったため、はっと気が付いたか今度は逃げ出す算段として盗賊の存在を匂わせ、留八の元へ行くか、何らかの手段を講じて手引きをさせるつもりだったらしい」
「じゃあ、そのひくさのとめはち、でしたっけ? その盗賊に対しての対応も必要と言うことですね」
 受付の青年の確認に大きく頷く武兵衛。
「苦労をかけますが、くれぐれも気を付け、此度の捜査に当たって貰えますよう、宜しく頼みまする」
 久栄が言えば、受付の青年は頷いて筆を走らせるのでした。

●今回の参加者

 ea2175 リーゼ・ヴォルケイトス(38歳・♀・ナイト・人間・ノルマン王国)
 ea3269 嵐山 虎彦(45歳・♂・僧兵・ジャイアント・ジャパン)
 ea3731 ジェームス・モンド(56歳・♂・神聖騎士・人間・イギリス王国)
 ea8703 霧島 小夜(33歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 eb0939 レヴィン・グリーン(32歳・♂・ウィザード・人間・ロシア王国)
 eb1098 所所楽 石榴(30歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 eb1645 将門 雅(34歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ec1132 ラスティ・セイバー(32歳・♂・ファイター・ハーフエルフ・イギリス王国)

●サポート参加者

所所楽 林檎(eb1555)/ クーリア・デルファ(eb2244

●リプレイ本文

●手引き
「やっぱり御頭の潜伏先っつったら綾藤が一番だろうな」
 嵐山虎彦(ea3269)が言えば、頷くのはジェームス・モンド(ea3731)。
「綾藤が船宿であることを考えれば好都合。また改方の事も良ぅく理解しておられるからな」
 綾藤は船宿なので、出入りもお忍びの人間にとっても有難い、見られにくい手段でする事もでき、顔を隠して出入りする客も珍しすぎるものでもなく。
「お藤さんは改方に好意的だし、平蔵さんの様子をしっかり見てくれそうだしね」
 リーゼ・ヴォルケイトス(ea2175)も笑って頷けば霧島小夜(ea8703)はふむ、と僅かに口に端に笑みを浮かべます。
「それにしても、先の乱より五ヶ月と半、長いと言えば長いし逆もまた同じく‥‥」
「本当に無事で良かったわね」
 小夜に微笑を浮かべてリーゼが言えば、小夜も頷いて。
「江戸入り自体はうちの後見人として町人に扮してもろて、舟で入る方向でええね?」
 将門雅(eb1645)が言えば、改めて荷の確認と万一の時の水路の確認を絵図面に目を落として相談し。
「んじゃま、話は通しておくから、御頭のこと任せたぜ」
 そう言って立ち去る嵐山、それを見送れば、互いに互いの役割を確認した後、一行は荷の奥に幾つかのものを隠すと江戸を抜けて。
 とは言え護衛を付けた商人、それ以上の認識を持たれずに済んだ一行は、江戸からのでは思ったよりもずっと順調に進んで、平蔵が滞在する宿まで、障害らしい障害にも出くわさずに辿り着きます。
「おお、よう来たな」
 部屋へと一行が案内されてくれば、その部屋の奥では、煙管を燻らせながら庭を眺めていた男、凶賊盗賊改方長官・長谷川平蔵その人が顔を上げて柔和な笑みを浮かべます。
「怪我の具合はどう? 平蔵さん」
「おお、もうすっかり直ったわ。これ以上休んでおればすっかりと身体が鈍っちまうな」
「もう、平蔵さんおとなしくしてなさいよ? 何かあったらまた、振り出しに戻ってしまうんだからね?」
「‥‥ま、じっと湯治ばかりを続けていれば、身体も鈍ってこようがな」
 嗜めるように言うリーゼに低く笑いを含んだ声で言う小夜。
「それにしてもすっかりと良くなられたようで、このモンド、安心しましたぞ」
 笑みを浮かべて言うモンドに、心配かけて済まんな、そう平蔵は返すと、一行に紹介される雅に改めて名乗り、助力に感謝をして。
「では、具体的に俺はどうすればいい?」
「それなんやけどね? うちの後見人ちゅう事で町人姿に‥‥」
「髷は私が結い直そう‥‥それとこちらを‥‥」
「へぇ、平蔵さん、意外とそうしてみると身体が一回りは小さく見えるね」
 雅に取り出される商人らしい上等で落ち着いた色合いの袷に羽織、そして小夜が髷を町人髷に似せて直せば意外と穏やかな様子になるようで。
 軽く平蔵が身体を屈めて見れば、それだけで大分姿形も変わっているように見えて。
「では、江戸入りの支度を始めますかな」
 モンドの言葉に、平蔵は笑みを浮かべて頷くのでした。

●女
「良かった、大丈夫のようだね」
 そこは凶賊盗賊改方の役宅、密偵のおさえが我が事のように嬉しげに眼を細めて見るのは所所楽石榴(eb1098)。
 おさえはちょうど出来上がったという美しい色艶の髢を持参しており、着けた具合を見るためにもと合わせているところで、石榴もどこか嬉しそうににっこり笑い。
「うんっ、おさえさん、ありがとうだよっ」
 そう言って石榴は、微笑を浮かべてその様子を見守っていたレヴィン・グリーン(eb0939)にはにかむような笑顔を向け、レヴィンも微笑みを浮かべたままに頷いて見せます。
「髪は女の命だからね、それこそ、本当に文字通りに。そうそう、鬘の方も出来たから、後で妹さんにも渡しておかないとねぇ」
 そう言って眼を細めると、おさえは髢を収めるための桐の箱を石榴の手を取り渡して。
「今はあたしに出来るのはこれぐらいだけど‥‥困ったことがあったらなんでも、あたしに言うんだよ」
「うんっ‥‥本当にありがとうっ!」
 石榴は強く頷くと、髢をそっと箱に収め、おさえへと微笑みかけるのでした。
「無事、出立したか‥‥平蔵殿の顔を見てみたくはあるが‥‥」
 役宅へと戻ってきた嵐山に言うのはラスティ・セイバー(ec1132)。
「興味に引かれて下手を打ったのでは、それこそ会わせる顔がないからな」
「違いねぇ。周囲ににらみを利かせて、俺たち改め方にゃ隙なんてねぇぞ と知らしめてやらねぇとな」
 牢に罪人がいれば、内にも外にも気を配らなければ行けない現状、ラスティは丁度一太に声をかけており、そこに嵐山も加わり門の内側で注意すべき事についての確認を行っているようです。
「物音などの不用意に顔を出さず、出来るだけ確認は一人では行わないようにな」
「俺ぁ中庭で稽古か直ぐ近くで調書きを確認してっか、近くで警戒しているからな。何かあったら直ぐに呼べな」
「はいっ! えぇと、何かあったときのために、後で呼び子笛を津村様に頂いてきます」
 一太自身も出来ることを頑張ろうという気構えがあるのか、言われた言葉に真摯に頷いては一つ二つと気になる事柄の相談を口にし、それぞれに助言を与える嵐山とラスティ。
 門の方を一太に任せ中へと戻れば、調書きの束を前に数人の同心達が過去の事件などを読み込んでおり、そこへと加わる嵐山に、武兵衛与力や伊勢同心などと言った者達と、久栄の外出時に付く護衛の話を詰めるラスティ。
「そうだな、現状やはり狙われるとすればやはり筆頭は奥方様であろう」
 そう言葉を交わしていれば、やがて部屋へと入ってくるのは石榴とレヴィンの夫婦。
「役宅付近で、不自然な時間伏せておられる方が居るようです。恐らくはこちらの様子を窺っているのだと思われますが‥‥」
 レヴィンはブレスセンサーによって、石榴と共に付近をぐるっと一巡し、効果内に居続けた、人ら敷きものが2人いることを確認していました。
「最初確認したときには2人いたらしいんだけど‥‥今確認したら一人になっていたみたいだよっ?」
 確認してみないと言い切れないですが、と2人一組で交互に窺っている可能性を示唆するレヴィンに武兵衛は頷いて。
「ではそれとなくその者達の人相を確認させよう。嵐山殿、そちらの人相書きは頼んだ」
 言って武兵衛は支度が調ったとの知らせを受けて、レヴィンへと目を向け協力を頼み。
「痛めつければそれなりに口を割るやも知れぬ‥‥が、あの女はしたたかで、そして何もなくとも泣いて叫び、嘘を信じさせかねんのでな。申し訳ないが‥‥」
「本意ではありませんが、やむを得ません」
 レヴィンの言葉、その直ぐ後、牢にいた女の取り調べに教典を使い心を読めば、石榴の妹・林檎はじっと女性の仕草とその姿を胸に刻み込むかのようにじっと見つめており。
 女の名は佐和、牢内にいて処刑された男の情婦であり、その男に隠れて留八とも関係を持っていて、上手く留八を利用して稼ごうと考えたよう。
「‥‥つまりは、仕事を終えた後‥‥その、力が強い残った方に付こうと考えていたようですね」
 思った以上にえげつない考えを持っていた女性の毒気に当てられたか、取り調べを終え調書きを確認、補足していたレヴィンは疲れた様子で小さく溜息をつくのでした。
 さてその頃、同心の一人が遠巻きに窺い出来上がったのは二枚の人相書き。
 いる場所が分かってしまえば、そこに住んでいる者の方が上手を行けるのは当然と言えば当然。
「そう言えば、牢の方はどうなってんだ?」
「先程レヴィン殿と石榴殿の妹御に協力頂き、幾つか分かったことがあってな」
 出来上がった人相書きを武兵衛に見せながら尋ねた嵐山に、武兵衛も先程誠志郎にも渡したと言いながら調書きの写しを嵐山へと渡します。
「末薪の新伍ねぇ‥‥」
「もとより凶悪な流れ盗めと幾度も耳にしたことがある名前だ。が、しかし‥‥」
「しかし?」
「聞いた話では死んで居るのではないか、とまことしやかに囁かれておったそうでな。盗賊同士のいがみ合いで殺された、と」
 武兵衛の言葉に首を傾げる嵐山。
「しっかし、こっちの調書きの様子じゃ、牽蓑の留八のお盗めに手ぇ貸す為に近々江戸にはいるらしいじゃねえかと」
「女の記憶を考えれば、既に入っているかも知れぬな」
 言って、武兵衛と嵐山は難しい顔で暫し調書きへと目を落としているのでした。

●江戸入り
 暖かな日差しの昼下がり。
 舟がゆっくりと川を進むと見えてくるのは河口、そして行き交う賑やかな大小の船。
「長谷川殿、これはこれでまた良くお似合いですな‥‥これなら俺も、番頭役でも買って出るんでしたかな」
「はは、俺は只ちょいとしおらしくしているだけなんだがな」
 見えてくる河口を前に笑って言う平蔵、辺りは漁の船ではなく各地方からの荷揚げの船が行き交い、取り締まるための役人がちらほらと見えますが、船の数も多く取り締まるための手が足りないといった印象でか、形ばかりに見えて。
「手前で荷揚げして、陸路からはいる方が安全のようですな」
「船宿に入るんは舟で行った方が良さそうやけどね」
 よく見れば荷の調よりも顔を確認しているようにも見えモンドが言えば、手前の船着き場で一時上がって、中に入ってから別の舟で向かうのが一番無難だろうと言うこととなり、クーリア・デルファが江戸に入ってからの舟も手配しているはずと言い。
「実際、船だと逃げ場もないから誤魔化しきれない部分もあるしね」
 リーゼも頷けば、手前で船を止め、幾ばくか払って船を借り受けたところへと戻して貰い、関へと徒歩で向かう一行。
 平蔵は身体を屈めてゆっくりと歩いており、見たところは中年の商人とも見えなくもなく、雅も商人のなりで歩き。
 リーゼと一応ミミクリーで顔を若くしておいたモンドとが先を行けば、後に小夜が付いて、端から見ても商人と護衛という風に十分見える一行は、馬には乗っていたら怪しまれるかも知れないとのことで荷を乗せてゆっくりと関へと近付きます。
「‥‥では、其方が後見人と」
「左様に御座います」
 あくまで人が良さそうな穏やかな受け答えでぺこりと頭を下げて平蔵が言い、雅が荷を見せて念のための護衛であると説明をすれば、少々時間はかかるものの何とか無事に籍を抜けることが出来ます。
「一瞬ひやっとしたけど‥‥何とか怪しまれずに済んだみたいね。それにしても、何だか平蔵さんは普段の姿が頭にあるから、ちょっと不思議なものを見た気分になったね」
「念のために髷を直しておいて良かったな」
 笠を取って顔を見せろと言われたときにひやりとした一行ではありましたが、個別に人相書きなどで手配をされているわけでもないので、躊躇無く取った平蔵。
「ま、安心するのは着いてからにした方がええよ?」
 そう言って手配したと聞いていた茶屋へと足を向けると、舟と船頭がのんびりと待っていたようで、待機していた屋根船で綾藤へとのんびりと船旅を楽しみつつの移動。
「長谷川殿、久しぶりの江戸はいかがですかな?」
 モンドの言葉に平蔵は、低く笑いを漏らすと、どこか満足げに眼を細めて流れる風景を眺めているのでした。

●見張り
「‥‥そうですか、心遣い、感謝いたしまする」
 役宅、平蔵の妻・久栄へと無事に着いたことを報告するモンド、久栄は微笑を浮かべて頷くと再び口を開きます。
「殿様に宜しければ伝えてくださいまし。役宅のことは心配いりませぬ、時が来るまでは存分にお役目を御果たし下さいますよう、と」
「はっ、必ず」
 頭を下げて退席するモンド、久栄はそれを見送ると立ち上がり何やら荷を持って外出の支度を始めます。
「そう言えば、先程裏門の方で少々騒ぎがあったように思いまするが、何か起きので御座いましょうか?」
「いや‥‥忍び込もうとしていた方を追い払ったそうで、今石榴さんが後を追われていますが‥‥」
 先日、石榴の妹林檎が牢内の女に化けて裏門を出ようとしたところを、石榴が引き戻すと言った姿をあえて見せていたのですが、それに乗ってお佐和を回収できると踏んでか、一人男が門に近付いたところを、嵐山に追い散らされており。
 追い散らされた男が見張っていた場所へと引いて、そのうちのどちらかかははっきりしませんが、その場を立ち去った男を石榴は追跡したようで、心配そうに言うレヴィンに久栄も身を案じて僅かに表情を曇らせますが、やがて小さく息を付き。
「今より少々出かけなければならなくなりました。役宅をお願いいたします」
 そう言って出かける久栄に護衛として付くのはラスティ。
「これから何処へ?」
「先日も共に来ていただきました、大叔父の所に御座います。何度か行き来しても怪しまれないように挨拶に出向いておりましたが、漸くに良い知らせを持って行けまする」
 何処かほっとした様子で微笑を浮かべる久栄、一瞬綾藤に出かけるのかとも思えたためか、僅かに考える様子を見せたラスティですが、久栄はくすくすと小さく笑みを零して。
「殿様にしてみれば、古女房の顔を窺いながら仕事をなさるより、上げ膳据え膳気を使わないでも済む所にてお仕事をされる方が、余程気が楽に御座いましょうから」
「ふむ‥‥まだ平蔵殿の顔を見知っていないので、ますますどういう方なのかが分かり辛くなった気がするが‥‥」
 言いつつも周囲に気を配るラスティ、途中暫くの間明らかに害意を持って窺っている様子の男を見つけはするものの、男もラスティを窺いつつ、やがて諦めたかのように踵を返して立ち去り。
 訪ねた先で暫しの歓談の後に帰途についた久栄を狙う様子は見受けられず無事に役宅へと戻ったラスティは、石榴が末薪の新伍と言われていた人相書きの男の塒らしきものを突き止めたという知らせを聞くのでした。