【対抗試験】準備の変
|
■シリーズシナリオ
担当:蘇芳防斗
対応レベル:フリーlv
難易度:難しい
成功報酬:0 G 78 C
参加人数:4人
サポート参加人数:1人
冒険期間:07月17日〜07月24日
リプレイ公開日:2005年07月25日
|
●オープニング
学生の本文と言うのは、お勉強をする事である。
とは言え、ただ部屋に篭って熟考をしているだけでは頭も体も凝ってしまう‥‥そんな訳で、教師達は試験勉強に一計を案じていた。
「対抗試験?」
「ええ。お互いのチームの生徒達を競わせるの。面白そうでしょ?」
職員室、正確には教員相談所と言うのだが‥‥で、パープル女史からの提案に小次郎は首を傾げながらも面白そうな話に食いつけば
「そう言えば生徒も俺とアンタを競わせたいって言ってたなぁ、以前に。分かった、受けて立とう‥‥それで一体、何をどうするんだ?」
とある生徒の言葉を思い出し、その約束を果たす時が来たとは思ったが肝心の内容が閃かず目の前にいる女史へ尋ねると、彼女はしっかりと考えていたらしくさらりと小次郎の疑問に答える。
「そうね‥‥こんなのはどうかしら。お互いに問題を出し合って、四回違ったらアウトって方式」
‥‥パープル女史が言うには七人で車座になり、お互いに問題を出し合ってその回答が合っているか間違っているかを当て、指名が四回間違えたら失格にする。
そんな一風変わった試験を彼女は提案してきた。
「何だか良く分からんが、まぁ面白そうだな」
概要だけしか掴めず、今一つピンと来ない表情を浮かべる小次郎だったが感覚だけで感じたままを口にすれば彼女の頷きに、次はやるべき事を考え出す。
「となるとまず‥‥問題でも揃えっか」
「それでこんなもの考えてみたのよ、これを参考に生徒達から問題を提出して貰って頂戴」
そして呟く小次郎、試験である以上は問題も必要である。
それを彼女は生徒にレポート提出と称して、報告させる様に提案する。
「レポート作成? ヒノミ・メノッサ展‥‥?」
「まぁこれだけじゃないけどね、色んな所を回って生徒達に問題を作らせるのよ。それで、お互いに出し合って試験をやるの」
彼女が例題として提示したのは、一部生徒の要望により開催されているヒノミ・メノッサ展のレポートや総合研究塔で研究員達の話を纏めて来ると言った、極々普通のレポート作成方式である。
「うーん、意味が良くわかんねーんだが‥‥」
「まずは普通に予想問題を作って貰うだけよ。これをあたし達がきちんと編集して、問題文章にするの。その為の試験勉強をして貰うだけ」
例えば‥‥と彼女は言葉を切り、メモ代わりにしている木の板を出せばそこにこう記している。
レポート提出者名:ミス・パープル
調べた場所:図書館
ジャンル:イギリス王国の歴史
問い:現在の国王は、アーサー・ペンドラゴン様ですが、イギリスを統一したとされる、彼の父親の名前を答えよ。
回答:ウーゼル・ペンドラゴン
「こんな感じで、問題を作って貰うの。ちゃんと出所を調べて貰いながらね」
図書館とか、研究塔、修理商会から話を聞く、街中のハーブティ馬車や迷宮庭園のマーシア婦人に貸本屋のコレック卿等、ケンブリッジにはそれなりの知識人が大勢いる為に問題作成には事欠かないだろうと。
「‥‥まぁ、生徒に問題を作らせりゃいいのな」
「そう言う事、まずはこっちでやってみるわ」
そして二人は互いに頷いて、彼女は早速生徒達向けのレギュレーション作成に取りかかれば小次郎も負けじと対抗試験の準備を始めるべく、生徒達への告知用にと筆と大き目な木の板を取るのだった。
「‥‥つー事で、問題集めて来てくれ」
「えー!」
久々に広がる青空の下、皆を集めては小次郎先生が第一声と共に『勝つぞ、対抗試験!』と書かれた木の板を叩くと、生徒達は揃ってブーたれるが彼は聞く耳持たず
「一人のノルマは三問分な、ちなみにルールさえ守れば誰が参加しても構わないから友人の冒険者なり誘ってもいいぞー」
その先を紡げば、次いで試験についての本題を切り出した。
「それでこの試験だが俺は出来の良し悪しとか、そう言う所で採点はしないからな。何処を見るかは秘密だけど、参加するなら精一杯頑張ろうぜ! つう事で今日の授業だが‥‥」
勿論彼が口を開いている間、生徒達は叫びこそしていたが小次郎の全くと言っていい程の反応のなさからその根本を思い出せば、一先ず今日の授業に集中し始めるのだった。
『‥‥何事においても楽しければそれでいいんだろうなぁ、この人は』
生徒達がイメージした小次郎の思考パターンはあながち、外れではない。
――――――――――――――――――――
ミッション:対抗試験の為、それに使える問題を一人三問以上集めて来る事!
成功条件:全員がノルマを達成出来た時。
失敗条件:全員がノルマを達成出来なかった時。
必須道具類:依頼期間中の保存食(日数分)は忘れずに。
それ以外で必要だと思われる道具は各自で『予め』準備して置いて下さい。
(販売されていないアイテムに関して、使う場合はプレイングにて根拠の明示を忘れずに)
その他:集める問題の詳細については別添の資料を参考の事。
尚、生徒に限らずどなたでも参加は可能なので積極的に参加して下さいと小次郎先生からお話がありましたので、お気軽に参加してみて下さい。
――――――――――――――――――――
●リプレイ本文
●戦友達
「張り切って来たんだが‥‥思いの他、少ないなぁ」
ケンブリッジから東にある森で巻き起こっている事など露知らず、十河小次郎は教室代わりに、頻繁に良く使う大きな木の下に集まった四人を見ていささか残念そうな表情を浮かべる。
「小次郎、もう少し情報を集める癖をつけた方がいいぞ。ちなみに今、ケンブリッジではな‥‥」
そんな彼の口ぶりから小次郎が見知っている一行の中、華麗な立ち姿でインドゥーラ国出身のシュリデヴィ・クリシュ(ea7215)が珍しく丁寧にケンブリッジの時事に付いて解説を始めればやがて納得する彼。
「なるほど、知らなかったなぁ。いつも悪いなシュリ、助かったぞ」
「‥‥しかし対抗試験か。ふむ、二人とも妙な事を考える‥‥だが、まぁ悪く無い。それに良い機会だ、ケンブリッジの事をもっと良く知るには」
そして真剣な表情に次いで彼の口から出る言葉へ、嘆息を漏らしつつもまだ始まったばかりで説教はとりあえず堪え、学生の本分である勉学が普段とは違う形式ながらも楽しく出来そうな事にまず遠回しながらも喜んでみる。
「小次郎先生、お久し振りです!」
「久し振りだな、ワケギ‥‥って先生って呼ぶのは止めろよなー!」
バチコーン!
「大丈夫か‥‥とカンタータもいるか。お前も久し振りだなぁ、元気だったか?」
「はい、小次郎せんせ‥‥い、こ、そ‥‥?」
バチコーン!
『‥‥酷いです‥‥』
共にイギリス出身の、ワケギ・ハルハラ(ea9957)にカンタータ・ドレッドノート(ea9455)は久々に小次郎と邂逅した事からか思わず禁句を口にすれば、二人揃って盛大に叩き飛ばされ、やはり二人揃って異口同音に呟いてはシクシクと泣き出す。
「あー、悪い悪い!」
「はぁ‥‥」
そして二人に詫びる小次郎、本気で悪いと思っているのか怪しくシュリデヴィが溜息を付くがとりあえず此処に戦士達は集まった‥‥こんな四人+αが構築する問題とは一体どんな物になるのやら。
「試験ですよ、問題集めも頑張りやがりますよ。さぁ行きやがりましょう!」
が、そんな中でも集合当初から張り切り皆の周りを飛んでいたイスパニア王国出身のシフールであるカナ・デ・ハルミーヤ(ea4683)は、一応場が落ち着いた事から上品そうな面立ちより想像出来ないギャップのある口調で皆を促すと
「楽しみだなぁ」
いつもなら問題を作る側の小次郎が暢気にそう言えば、それを合図代わりにして四人は同時に街目指して一斉に駆け出すのだった。
●準備の変
と言う事で早速、皆は場所も散り散りになって問題作成へと励む事になる‥‥とは言え、比較的あちこちで出くわす事になるのはお約束か。
‥‥学生食堂『プレミアム』にて。
「と言う事でやがりますので、何か問題になりそうなお話はないでしょうか?」
「うーん、そうねぇ‥‥」
その内部を忙しそうに飛び交うシフール飛脚達の中で比較的余裕がありそうな一組を見付けカナ、掻い摘んで事情を話せばいつもの口調で尋ねると三人は首を傾げるも
「イギリスにない習慣の事とか!」
「ニンニクなんてどう?」
「そう言えば京都はもう落ち着いたのかなぁ」
「‥‥三つ子でやがりますか?」
『‥‥違うよ〜』
それぞれが彼女へ全く異なる情報を提供するとそれを受けてカナは再度、天然ボケから沸いて出た疑問を投げ掛けたが今度は揃って彼女達、首を横に振る。
「‥‥やっぱり三つ子じゃ‥‥」
「あ、カナさん。こんにちはー」
彼女の疑念は払拭されなかったが、たまたまその場に出くわしたカンタータはいつもの様に耳を隠したままだがカナへの挨拶と同時、礼儀正しく一礼するとまだ別れてから然程時間は経っていないが
「順調ですか?」
「まぁ‥‥順調でやがりますよ、今の所は」
「いいなぁ、僕も頑張らないと」
状況を尋ねれば、難しげな表情ながらも頷くカナを見てやっと一問分だけ回収したハーフエルフの少女は羨ましげにカナを見るも、自身を鼓舞すればやがてくるりと踵を返す。
「よーし、じゃあ僕は次に行きますね。カナさんも頑張って!」
「勿論でやがります、カンタータも頑張ってね!」
そして駆け出すカンタータへ手を振ると彼女は三つ子と疑って信じない三人のシフールに向き直り、先程の続きを改めて聞くのだった。
「いい天気、だなぁ‥‥」
いつも使っている教室代わりの木の下、今日は授業もなく一人のんびりその袂で寝転んでいる小次郎だったがその平穏は長く続かなかった。
『小次郎さーん!』
うつらうつらと舟を漕ぎ始め、眠りの淵へ落ち掛けていたその時。
声を重ねて響かせる主達がすぐ近くまでやって来た事に気付くと久々の休日故に頭を掻いて、だが無視する事は出来ずに寝惚けた表情そのままで起き上がると、その眼前にはカンタータの顔が既にあった。
「小次郎さん小次郎さん、小次郎さんが使える魔法って何ですか?」
「んー‥‥ほら、あれだ‥‥コジロウバーニングとか」
「それ、初耳ですけど」
まだ寝惚けているらしい彼の口からついて出る意味不明な言葉にワケギは突っ込むも、彼は意に介せず今度は逆に二人へ問い掛けた。
「‥‥俺って魔法使えるんだっけ?」
『さぁ?』
「じゃあ、使えないんだ、きっと」
‥‥どんな過程を経ての結論だ、小次郎先生。
まぁそんな訳で寝惚けている小次郎だったがそれでも
「それじゃあ先生‥‥」
「だーかーらー、先生って呼ぶなってー」
すっかり癖になっているらしく、特に気にせず呟いたワケギのその一言にも反応すればその豪腕を躊躇いなく振るう。
「‥‥あ、これを問題にしましょう〜。面白い事になりそうです」
見慣れてはいるのだが、舟を漕いでいるにも拘らず繰り広げられるその光景に絶句するカンタータだったが、呻くワケギを見て一つ問題を思い付くと敵チームが苦悶しやしないだろうか微笑を浮かべ‥‥次いで、内心では魔術師に詫びるのだった。
‥‥そんなこんなで小次郎に良く吹き飛ばされる憂き目に遭うワケギ。
今は時と場所を変え、近々キャメロットに向かうと言う友人と一時の別れを交わしつつも、肝心の問題集めもしっかり行っていた。
「へぇ‥‥そんな話があるんですか」
「あくまで人伝で聞いた話、ですけどね」
ジャパンに行っていた友人が語る様々な話に感心を覚えるワケギへ、その彼は照れながらもやおら立ち上がり馬車の時間が来たと告げ手を振っては理の門へと向かう。
「おかげで助かりました‥‥気を付けて行って来て下さいね〜!」
その背中へワケギもまた感謝の気持ちを込めて手を振って礼を言えば彼の姿が完全に見えなくなるまで見送った後、小次郎に提出すべき問題を纏め上げに入るのだった。
「何か楽しそうだなぁ‥‥俺も何か考えてみるかな」
数的不利も去る事ながら、二人の様子を見て小次郎は草葉の影から見守りながらそれだけ呟けば居ても立ってもいられず立ち上がり、何処かへと駆け去って行くのだった。
「何も起こらなければいいのだが‥‥はぁ」
その光景をたまたま通りかかっては近くで見ていたシュリデヴィ、恐ろしい勢いで駆けて行く彼とワケギ達を見て、今までの経験論から小次郎が駆ける理由を察すると嘆息を漏らさずには居られなかった。
‥‥そして刻はあっと言う間に過ぎ去り、問題を提出すべき日の前日。
しかしそんな今日でも変わらず荘厳に佇むのはケンブリッジの学び舎が一つ、フリーウィル。
それを見上げるシュリデヴィ、どうやら彼女はケンブリッジに関わる事柄から問題を探し出している様子。
「フリーウィルは古くからあった建物を改築して学び舎として利用しているのか‥‥知らなかったな」
「それは俺も初耳だったな〜」
案内人の話を聞いた上で改めて見たそれに感慨深く呟くと、その背後から掛けられる聞き慣れた声に平然と僧侶が振り向けば、同様に学び屋を見上げる小次郎の姿があった。
「‥‥‥‥」
「ん、どうしたシュリ?」
「やはり小次郎、どうも教諭としての自覚が足りな‥‥」
「ばっか、教諭も止めろってばさー!」
そんな小次郎の紡いだ言葉に彼女はお約束の説教を始めようとするも、『教諭』の言葉にも反応して彼はシュリデヴィの説教を初めて、文字通り吹き飛ばすのだった。
「‥‥馬鹿は死んでも治らない、か‥‥全く持って小次郎に相応しい‥‥な」
「何か言ったかー?」
天地は逆転したまま、揺れる意識の中でそれだけ言えば彼の言葉を気に留める事無くその意識を闇の中へと滑らせていった‥‥様々な意味で酷い先生である。
●いざ戦いへ!
「ふむふむ‥‥‥よっし、お疲れだったな皆!」
『ほぅ〜』
最終日を迎え、一行は揃って掻き集めた問題の山を決められた形式で提出すればそれに一通り目を通して小次郎、ノルマを満たしている事に頷くと皆は一先ず安堵の息を漏らす。
「所で小次郎さん、人数で不利な分はどうしやがりましょうか?」
「そうだなぁ、それは確かに悩みの種だな‥‥」
だが次に続く先生間抗争(?)へ人員的な不安を覚えたカナの質問は、少なからず小次郎も不安を覚えていた様で頭を掻いては呻くと
「ここは公正に、向こうから一人貰いやがりましょう」
その彼が肩に止まりカナ、一つの提案を述べたが小次郎は珍しく逡巡すると皆を見回し、これまた珍しい答えをその口から紡ぎ出した。
「まぁ‥‥とりあえず暫く時間もある事だし、もう少し様子見だな。何、もしもの時は小次郎に任せろ! 俺が引き受けて来たのにお前達ばかりにやらせる訳にも行くまい!」
「‥‥今更の申し出ながらその時は頼んだぞ、小次郎」
「おう、大船に乗ったつもりでいろ〜!」
「泥船に乗り間違えない様、気を付けないとな」
「確かにそうですね」
そして言い終われば自信たっぷりに頷いて小次郎が胸を叩き言うも、その人となりを知っている一行の中で良く彼に説教を説くシュリデヴィの一言とそれに賛同してカンタータが頷けば小次郎は凹みうな垂れ、その光景に生徒達は揃い笑うのだった。
そして準備は整った、後はその日を迎えるだけ‥‥企てた先生達が先生達だけにどうなる事やら。
〜Go to Next!〜