【対抗試験】解答の変
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■シリーズシナリオ
担当:蘇芳防斗
対応レベル:フリーlv
難易度:普通
成功報酬:0 G 39 C
参加人数:5人
サポート参加人数:-人
冒険期間:10月23日〜10月26日
リプレイ公開日:2005年11月02日
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●オープニング
「よー、元気だったか皆」
「‥‥何をしていたんですか、先生」
「秘密だ、言ったら詰まらないからな」
「何がですか‥‥」
何かの事情で此処暫く授業を行わなかった十河小次郎の久方振りな挨拶に、生徒達はジト目でお出迎え、その歓迎に小次郎は頭を掻きつつも質問を一蹴し生徒達を呻かせる。
「まぁあれだ、じきに話すさ。それより今は‥‥三ヶ月程前に集めて貰った問題が整理し終わったと言う事で本題の試験に入る」
その反応に先生、先の発言を訂正すると次いで本題を切り出す。
『えー!!! 今更ー!!!』
無論、いきなりの試験実施の告知に生徒達が皆両手を高々と振り翳してはブーブーと文句を言うが
「このままじゃ、終われないんだっ! そもそも学生の本分とは何かっ!」
近くに佇む気へ拳を打ち据え、珍しく全うな事を言う小次郎の剣幕に場は一瞬で沈黙。
「‥‥勉学」
「そう言う事だ。それとまぁなんだ、祭も近い様だしそれだけすっきりさせた上で楽しもうって意味合いもある」
それに生徒の一人が答えれば、余程痛かったのか皆へ背を向けては掌を上下に振りつつ頷く小次郎は皆を諭し
「何、俺も体を張るから‥‥頼む、頑張ってくれ」
次いで呻く様に言葉を吐き出せば振り返り、皆へ勢いよく頭を下げると急転する小次郎の態度に皆は何事かと首を傾げるが、それは暫くして明らかになる。
「って、何であたしがこーなってるのよ!!」
数日後、会場で『賞品』とプレートをぶら下げたパープル女史は何故か右腕が固定され、おまけに非常に脱ぎやすい服装になっている。
「我慢しろ。俺だって負けたら女装なんだから!」
その傍らの小次郎先生には『罰ゲーム』と書かれたプレートと共に、女物の衣装が添えられていたりする。
「さて、問題です!」
そんな今回の賞品である先生方の叫びは無視して、司会役はさっさと話を進めてしまうのだった。
『海外の諸事情』
問:ジャパン江戸の松之屋の看板娘の名前は?
問:京都の治安を守るために結成された侍集団「新撰組」。現在、組織のトップである局長は「近藤勇」ともう一人は誰?
問:京都の治安を守る為に結成された侍集団「新撰組」。現在、何番組まで存在する?
問:和服で袖の上の部分、折目になる部分の事を何と呼ぶ?
問:フランク王国分裂の原因となったゲルマンの相続制度を答えよ。
問:フランクの分国のうち魔術師養成機関を擁するのはどこか。
『ケンブリッジ諸事』
問:市民の喉を潤す気軽な食事所として、あちこちに点在しているハーブティー馬車ですが、そのうち広場に店を構えているのは何軒でしょう?
問:昨年の体育大会で、バトルを制したのは何部?
問:ケンブリッジの学生証の素材は金属ですが、何の技術を使って作られた物でしょうか?
問:学園で今、一番人気のアクセサリーは何?
問:船が嫌いな人達が集まるのは何処のクラス?
『イギリス王国の歴史』
問:チェスターは元ウェールズ公国の首都であったが、今でも掲げられているウェールズ公国の国旗はどんな模様か。
問:古代魔法王国アトランティスの名残だと言われている遺跡のある町は?
問:アーサー王が「湖の淑女」と呼ばれる精霊から授かったとされる聖剣の名前は?
問:数々のイロモノが現れているキャメロットですが、三大イロモノといえば、カマ・褌と残り一つは?
『教師芸能』
問:紫色がよく似合う、優しくて知的で美しいと一部では噂のミス・パープルですが‥‥そんな優しい彼女でもこれだけは言ってはいけない一言があります、それは何でしょう?
問:そんなミス・パープルの年齢は何歳?
問:お騒がせ教師と名高いミス・パープル、生徒達の間で彼女に付いた渾名は?
問:お色気御姉様とも呼ばれているミス・パープルが見付けた教師は誰?
『学問研究』
問:ブランは魔法の物品の材料として使用される金属ですが、語源は?
問:リトール・イヤーエンドは何年生きているデーモン?
問:人の上半身にはあって猫にはない骨を答えよ。
問:「(X―A)(A―B)‥‥(X―Z)」この式の答えは?
「‥‥なぁ、作っていて思ったんだが何か問題がやたら多‥‥」
「それでは先生に‥‥ヘプタゴン!!」
そんな小次郎先生の疑問も爽やかにスルーすれば、司会役が声高々に叫ぶ中でゲームの様相を呈してきたテストは開始されるのだった。
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ミッション:パープル先生率いる部隊に打ち勝て?
必須道具類:依頼期間中の保存食(日数分)は忘れずに。
それ以外で必要だと思われる道具は各自で『予め』準備して置いて下さい。
(販売されていないアイテムに関して、使う場合はプレイングにて根拠の明示を忘れずに)
その他:【ルール】について
まず、問題を読み上げる順番を決める。今回はくじ引き。
次に、問題を読む人(コールと呼称)以外が車座になって問題を解く。
コールはその中で、誰が当たっていて誰が当たっていないかを予測し、全員が当たっている場合は『セーブ』、誰かが間違っていると思った場合はその人に対して『ヘプタゴン』と宣言。
セーブ、もしくはヘプタゴンが間違っていた場合、罰点1ポイントとなる。3ポイントついた時点で、その人は失格。失格者ルームへ連行される。
三回連続成功で、罰点を1ポイント減らす事が出来る。
チーム成績は、どれだけの問題が読み上げられたかによって点数計算を行う。
個人成績は、どれほど相手を困らせたかによって総合的に判断する。
【その他、注意事項】
一人落ちていく順に、パープル先生が衣装を脱ぐ。
残って行く人が多いと、小次郎先生が女装しなくなってしまう。
裸まで行かされると、例によってライトハルバードが降ってくると思われる。
なお、女装衣装と司会進行役は、生徒の希望により変動する。
一応、魔法の品・魔法は使用禁止。
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●リプレイ本文
●頼むぞっ!
「死力を尽くして試験に回答する事、それは大事ですが‥‥両先生が不憫です」
決戦を前に、ワケギ・ハルハラ(ea9957)は一人静かに図書館に篭っては最後の試験勉強を行なっていた‥‥が、賞品として台の上に晒されていた二人の先生の姿を思い出せば涙し、霞む視界に躍る文字をそれでも必死に頭の中へ叩き込んでいた。
「‥‥明日は一体、どんな事になるのでしょうね」
だが次には少しだけ笑い、一瞬の間を置いてから再び書物に向かうのだった。
そんな事で翌日、試験の当日です。
「先生ー、お久し振りです!」
どごーん!
「何度言えば分かるんだ、ワケギー。先生って呼ぶなよぉ!」
「うう‥‥酷いです」
久し振りに小次郎先生と出会い、皮切りの挨拶でワケギが禁句を口にすれば道を跨いだ向こう側にまで吹き飛ばされ先生、彼の瞳に光る涙を気にする事無く叱咤する。
「問題が難し過ぎやがるですよ、これ‥‥しかも」
「私達が集めた問題の倍近くはありますね」
そんな、ある意味お約束とも言える場面を展開する中でシフールのカナ・デ・ハルミーヤ(ea4683)が慌しく小次郎の回りを飛び交い本日の問題について言えば、続いてソフィア・ファーリーフ(ea3972)も頷きながらげんなりと呻く。
「確かに‥‥これは腹を括らざるを得ないぞ、俺も皆も今回ばかりは流石にな。と言う事で頼んだぞ、皆! 全ては俺の為に!」
『えー!』
それでも皆を鼓舞し、頑張って貰う為‥‥尤もその延長線上には女装したくないと言う気持ちがあるのだが、それは死んでも言えな‥‥って言ってるし。
そして皆、揃って声高らかに不服の旨を訴える。
「‥‥そんなに不服そうな声を上げる事、ないじゃないか。確かに最近留守にしていたのは悪かったが」
「いえ、女装が見たいだけですよ♪」
そんな皆の様子に詫びる小次郎だったが、それを否定しては中途半端な長さの耳を下ろした髪で覆い隠すカンタータ・ドレッドノート(ea9455)がにこやかに言うと小次郎はうな垂れるが
「まぁ試験には変わりないし、対抗試験でもある。折角だから勝つつもりで行こうぜ!」
『‥‥おー!』
「だからその間は‥‥」
負けん気が強いジーン・インパルス(ea7578)が先生の肩を叩き言えば、一拍の間を置いて皆が叫びは更に小次郎を不安に陥れるのだった。
●解答の変
「きやがりましたわー!」
司会である生徒会長のユリア・ブライトリーフが宣言を持って遂に始まる対抗試験‥‥ちゃっちゃとくじを引く皆の中、カッと目を見開き気合と共に引いたくじに踊る『1』の数字を見て叫んだのはカナだった。
「それじゃあ行きやがりますよ‥‥」
ひらひらと羽を羽ばたかせコール席へと向かえば、早速皆へ記念すべき第一問を告げた。
「海外の文化諸事に付いてでやがります‥‥ジャパンの江戸にある松之屋の看板娘、その子の名前は?」
カナの問い掛けが響けばすぐに、四人の筆が静かに走ると出題者はその間暇になる訳で、横笛なんか吹いてみる。
「まだでやがりますか〜?」
「‥‥出来たぞっ!」
ぴーひょろろと奏でられていた笛の音が不意に止めば、出題者の急かしにジーンが声高く終了を宣言。
「じゃあいやに自信満々なジーンさんにヘプタゴン!」
「ふ‥‥任せろぉ!」
すると息つく暇なくカナが彼を指差せば、対するジーンは自信満々
「さぁジーン君、果たしてその答えは‥‥って、それは」
ユリア嬢の促しにジーンはボードを掲げ、『春さん』と記されたそれを皆へ見せ付けた。
因みに回答者の弁は以下の通り。
「分からないから適当に書いて見た」
その光景に小次郎は眩暈を覚えて、呟いた。
「大丈夫か、俺?」
「まぁ、無事には終わらないわね‥‥絶対に」
そしてうな垂れる小次郎を見てパープル先生は一つだけ、艶やかに笑えば問題は続き紡がれた。
以下、珍回答集をチラリと。
「京都の治安を守る為に結成された侍集団『新撰組』‥‥現在、何番隊まで存在する?」
「いろは四十八隊ではなかったのですか‥‥残念」
ジャパンに付いての問題に対するソフィアの回答‥‥何処からその答えが導き出されたのか謎である。
「船が嫌いな人達が集まるクラスは何処でしょう?」
「フネイヤー先生のクラスだと思いやがったのですが」
ケンブリッジ諸事より、出題された一問に答えたカナが不正解だった事から横笛で悲しみの音を連ね奏でる‥‥そんな先生はいない、きっと、必ず。
「アーサー王が『湖の淑女』と呼ばれる精霊から授かったとされる聖剣の名前は?」
「エロスカリバーじゃなかったのですか?」
イギリスの歴史に付いての問いへカンタータ‥‥セーブ崩しが狙いの解答だったろうがアーサー王がそれを持っていたら嫌だ、余りにも嫌過ぎる。
それから暫く時間が経ち、戦場は正解率の低さから混沌としていた‥‥それこそヘプタゴンと言ってしまえば殆どが当たってしまう様な勢いである。
だがその中、五人の中で群を抜いた正解率を誇っていたのはワケギで彼に対してだけは誰もヘプタゴンと言えなかった、言えやしなかった。
「はい、失格者ルームの様子をすこーし見てみましょう」
司会の希望が一部からあったが失格者ルームの監視役として今はその様子を伺う生徒会員の一人が一時の休息の折、脱落した者達が集う閉鎖空間を覗いてみる。
「参ったな、もう少し頑張るつもりだったんだが」
「だから問題が難し過ぎでやがりますよ‥‥」
「確かにそうですねー」
そこにはジーンの嘆息を皮切りに、カナとカンタータは同時にうな垂れる四人の姿があった‥‥即ち、回答席に残るのはワケギのみ。
勝負はほぼ、決しているしその結果もまた、見えている。
「でも、この後が楽しみだね」
「成績の事を考えると頭は痛いが、確かに」
がソフィアが満面の笑みを浮かべ言えば、失格者ルームにいる四人は割り切り早くその後の展開に期待していた‥‥だが一応此処には書いておこう、それぞれに奮戦してはいた事を。
「‥‥それにしたって早い、早過ぎるっ!」
それでも現状を認識しながらも納得出来ないのか、隣でパープル先生がほくそ笑む中で絶叫する小次郎‥‥しかしワケギが残っている以上、それが例え彼の独壇場でも、三ヶ月も休んでいた先生が地獄への一途を辿っていると分かっていても、問題は続きます。
「紫色がよく似合う、優しくて知的で美しいと一部では噂のミス・パープルですが‥‥そんな優しい彼女でもこれだけは言ってはいけない一言があります、それは何でしょう?」
(『キター!』)
残された問題もあと僅かと言う所で内心、ギャラリーの生徒達が何人叫んだ事だろう‥‥非常に難易度、じゃなくて危険度の高い問いが遂に上がってしまう。
場に走るのは戦慄と緊張、因みにパープル先生は縛り付けられながらも静かに黒い闘気を放っている。
それはさっきまでの比ではない程に凄まじく、下手に近付こうものならそれだけで気分を悪くしそうなまで、どす黒い負のオーラだった。
「‥‥うっ」
「それ程困った問題では‥‥ないだろう?」
そしてそのプレッシャーに呻くワケギを尻目に、パープル先生側が出題者は優しい声音で彼を見つめ笑えば、脂汗の滲ませる彼の様子からヘプタゴンと宣言する。
そしてそれに答えるべく、恐る恐る掲げる回答者のボードには
「‥‥‥!」
言葉にしてこそ言っていないが、そのボードに文字として躍る『パープリン』を見て拘束されているにも拘らず暴れるパープル先生。
「ぁ? 挙動が怪しい人では‥‥」
「逆じゃないの、正しい答えを書いている人の方が覚悟を決めているんじゃなくてー」
その様子に、唖然とする出題者だったがギャラリーの突っ込みから遅れてそれに気付く。
「‥‥パープル先生、ごめんなさい」
『度胸あるなぁ〜』
その呻く出題者を気にする余裕なく冷汗を掻いては生きた心地のしなかったワケギが静かに拘束されている先生へ詫びれば、その光景を見つめるだけながらもホッと安堵の溜息を漏らす、失格者ルーム在住の四人。
一人残された魔術師はそれでも、早々に答えを書いたボードをパープル先生の目が届かない所へと撤去するがそんなギスギスした雰囲気の中でも、まだ問題は続いた。
「じゃあ次の問題‥‥‥‥ミス・パープルの年齢‥‥は?」
そして次の問題が紡がれると周囲に再び衝撃が走ったのは言うまでもなく、それから暫くの間ワケギは生き地獄を味わう羽目に遭うのだった‥‥憐れなり。
●戦い終わって
そして恐るべき戦いは遂に幕を下ろした‥‥。
「うん、良く頑張りました‥‥ワケギさんは」
その結果は生徒会員の一人が告げる通り‥‥と言うか、既に途中から分かっていた事だったがワケギだけが最後まで残っていると言う燦々たる結果‥‥他の皆は変にセーブ崩しを狙っただけと、信じたい所である。
だが、この結果から一つ‥‥ようやく別な問題について、その解答が遂に導き出される。
「華国で女性の方が着ている服、スリットきつめ希望です♪」
「な、なんだってー!」
それは小次郎への罰ゲーム、失格者ルームから飛び出せば愉しげな表情を浮かべ言うカンタータの宣告に小次郎は顔を引き攣らせ、後ずさるが
「先生、新たな世界への見聞を広げましょー♪」
「だな、これもきっといい経験になるだろう」
「お前達は‥‥鬼かー!」
ソフィアとジーンもまた愉しげな表情を浮かべにじり寄り、それに合わせ更に小次郎は後ずさるも背に衝撃を感じ振り返れば、いつの間にやら出来ていた人の壁。
小次郎先生はその壁にそれ以上の後退を阻まれると
「公約は守りやがって下さい‥‥衣装も準備してやがる事ですし、覚悟を決めやがって!」
「いっぎゃー!!!」
カナの叫びと同時、皆一斉に小次郎へ飛び掛ってはとっ捕まえて‥‥それから暫く。
「寄るな、見るな‥‥ってそこぉ! 描くんじゃねぇー!」
「先生、腹を括ったんじゃなかったんですか?」
「知らん、忘れたっ!」
『先生』と呼ばれている事に気付かない程動転しているらしく小次郎、スリットから覗くごつい足で地団太を踏んでソフィアの手によって化粧も施されながら絶叫を木霊させるとその様子を流石に憐れと見てか、自身のマントを羽織らせるワケギ。
「先生‥‥色々と御免なさい」
「‥‥全力を出したのなら、文句は言わないさ」
瞳を潤ませて詫びる彼に小次郎も怒る事は出来ず、だがまだ動転しているのか『先生』と呼ばれている事に気付かず、静かに彼の肩を叩くも
『‥‥‥』
「目を逸らすなよ‥‥」
生徒達は華国の女性服に身を纏う小次郎から一斉に視線を逸らし沈黙、無論先生は一行へ両手を上げて抗議するが
「そう言えばご不在の理由は結局何だったんでしょう、小次郎さん?」
「あ、そうだな‥‥人を探していたんだ」
話を逸らそうとするカンタータの問い掛けに小次郎はその目論み気付かず、あっさりと乗っては答える。
「人、ですか」
「あぁ、此処まで来た理由の一つだったりするからな‥‥まぁそれはいずれ、追々話すとしよう」
そしてそれだけ言えば‥‥彼は再び現実へと引き戻される。
「‥‥で、俺はいつまでこの格好をしていればいいんだ?」
『ずっと』
「お前達なんて‥‥嫌いだー!」
一つの疑問を紡ぐ小次郎へ、皆は口を揃えて言えば叫んで踵を返し町の中心部へ向けて駆け出すのだった。
「何だ、意外にやる気満々だな」
その光景にジーンが笑えば、皆は艶やかな後姿を満面の笑みを持って見送り、此処に試験と言う名の聖戦は終わりを告げた。
因みにその後、小次郎先生がどうなったかは当分の間、誰も知る事はなかったと言う‥‥。