【収穫祭】ベルモットの戦い〜白軍本体1

■シリーズシナリオ


担当:立川司郎

対応レベル:2〜6lv

難易度:やや難

成功報酬:1 G 69 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:10月26日〜10月31日

リプレイ公開日:2004年11月02日

●オープニング

 世は作物の収穫と豊作の喜びに溢れ、人々はその感謝の意を天に地に捧げている。ここパリもその例外では無かった。
「不健康ですね、昼日中からこんな所でワインにおぼれているなんて」
 艶やかな声に、ちらりと銀色の髪が揺れる。端正な顔立ちからつくられた柔らかな笑みで、彼はその人物を隣の席に呼び寄せる。彼の手の中にあるものをちらりと見ると、カウンターに声をかけた。
「私もワインを頂きましょうか。‥‥彼と同じものをね」
 細い手にグラスが渡ると、彼はようやく口を開いた。
「‥‥珍しいですね、あなたが私に会いに来るなんて」
「あなたが私に会いに来たんじゃないアッシュ」
 アッシュは、そうでしたか? ととぼけた声をあげる。
「アッシュ、聞きましたよ。またギルドの子を使って、猿やら磯巾着を食べさせたんだとか? いけない人ですね‥‥」
「私はマレーアほど意地悪じゃ、ありませんよ」
 人が見れば、五十歩百歩。どちらも怪しい事には違いない。
 マレーアはくす、とわらってグラスを掲げた。赤い液体の向こうに、ランタンの灯が見える。
「アッシュ、私退屈しているんです。‥‥何か楽しい事が無い?」
「楽しい事ですか?」
 少し考え込み、アッシュがすい、と視線を上げた。
「‥‥久しぶりに戦争なんてどう?」
「戦争? どこをけしかけるっていうんです」
「いいえ、模擬戦ですよ。せっかくの収穫祭ですし、模擬戦でもやって盛り上げるのもいいかと思いますが‥‥幸い、私の“知り合い”がパリ郊外に土地を持っているんです」
 知り合い、という言葉にマレーアが興味を示す。
「あなたのパトロンと言うと、どこと繋がっているものやら‥‥」
「いいえ、どこにでも居る貴族のうちの一人ですよ。せっかくの収穫祭ですから、何かイベントがやりたいと言うのです。勝利者側には、ベルモットが振る舞われるそうですよ」
「美味しい酒が出るのならば、やらない訳にはいきませんね。‥‥かつては戦争政治陰謀といえば、あなたの名前が挙がったものです。これは、腕が鳴りますね」
 マレーアは楽しそうに、ふふっと声をたてて笑った。

 パリの宿に戻ったアッシュは、さっそくマレーアと協議した結果に基づいた計画書を作り始めた。
 まずマレーア側が防御、アッシュ側が攻撃側となる。人数はギルドを通して招集し、パリ郊外に布陣する。
「まずは、下準備。模擬戦といえど、戦いというからには負けられません。準備は怠りなく‥‥」
 築城編成等準備、そして模擬戦集結まで締めて10日という所だろうか。
「攻撃側は兵の人数は多いですが、城攻めとなると五分‥‥。ただ、準備の際に構築する城が1つで済むので、その分手をかけられますね」
 駒を繰るものは、人か魔か‥‥一時の快楽を思い描き、地図を片手に笑みをうかべた。

[模擬戦ルール]
1:布陣
.両軍は紅軍(防御)と白軍(攻撃)に分ける。初期参加人数は紅軍30名、白軍36名までとする。
.紅軍は土で城1つと砦6つを、白軍も土で城1つを事前に、相手に見えぬように構築する。

1:防具と武具
.防具は実戦と同様。その上から紅白の布の服を着る。
.槍は6フィートの棒の先をキルトで包み、顔料を塗る。
.鏃は丸い木製でキルトで包み顔料を塗る。
.剣は木剣で刃部分に布を巻き、顔料を塗る。
.急所に顔料がべったりつけば負傷と見なし、城や砦に仲間が回収する。服は紅軍40枚、白軍110枚初期配布され、汚れた布の服を取り替えれば回復と見なす。
.城や砦には防備のために顔料を入れた堀を創ることが出来、城や砦から、顔料を柄杓で掛けることが許される。
.替えの服が無くなった場合は回復できず、負傷の者は戦いから除かれる。
.砦の旗を奪えば、砦を陥落と見なし、戦いから除く。砦に備えてある服も失われる。
.城の旗を奪えば、城陥落と見なし勝利とする。
.敵を全滅させれば、勝利とする。

<マップ>
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1マス100フィート四方

□:平地
川:川
丘:丘陵
茂:茂み
森:森林
◎:白軍城塞
●:紅軍城塞

●今回の参加者

 ea0121 ティルフェリス・フォールティン(29歳・♀・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea1000 蔵王 美影(21歳・♂・忍者・パラ・ジャパン)
 ea1662 ウリエル・セグンド(31歳・♂・ファイター・人間・イスパニア王国)
 ea1944 ふぉれすとろーど ななん(29歳・♀・武道家・エルフ・華仙教大国)
 ea2100 アルフレッド・アーツ(16歳・♂・レンジャー・シフール・ノルマン王国)
 ea3062 リア・アースグリム(27歳・♀・神聖騎士・人間・ノルマン王国)
 ea4136 シャルロッテ・フォン・クルス(22歳・♀・神聖騎士・エルフ・ノルマン王国)
 ea7211 レオニール・グリューネバーグ(30歳・♂・神聖騎士・人間・ロシア王国)

●リプレイ本文

 数日後には戦場となる広大なフィールドを、ぱたぱたと慌ただしく女性が駆けている。先ほどまで、築城の測量を手伝っていたのだが、一区切りついた所で抜け出してきた。あのまま居たら、きっと城ができあがるまで手伝わされてしまうだろう。
 手伝いたいのは山々だが、先にやっておかなければならない事がある。
 彼女はちょうどこちらに歩いてくる青年を見つけ、そちらに足を向けた。
 さんさんと日が照っているというのに、彼は日陰に立っているかのように白い肌をしている。
「あ、アッシュさん! 丁度会いに行こうと思っていた所なんだ」
「どうかしましたか?」
 アッシュは、ふぉれすとろーど ななん(ea1944)に笑みを向ける。ななんは懐から色々と書き込んだ紙を取り出し、それに目を走らせた。
「聞きたい事があったんだ。ルール確認なんだけど‥‥」
 支援隊や、ティルフェリス・フォールティン(ea0121)、レオニール・グリューネバーグ(ea7211)から聞いた質問を一つ一つ確認していく。
「砦を奪ったら、それをあたし達が使ってもいいって言ったけど、そこに置いてあった服は使っちゃ駄目なの?」
「用意してある服は、それぞれ色分けしてあります。ですから、奪っても無意味ですよ。それと、武器はこちらで支給しますから、ご安心を。シフールの方には、シフールサイズの服を用意します」
「あー‥‥えっと」
 ななんは軽く頭をかき、アッシュをちらと見上げた。
「あの〜‥‥あたし、この拳が武器なんだ。剣とか槍より、出来ればこっちが使いたいんだけど‥‥駄目かな?」
「それは構いませんけど、剣に比べてリーチが少ない上に、自分の服が汚れる可能性もあります。そのリスクを負うなら結構ですよ。ダーツなどの投てき武器も矢と同様に処理を施す事になりますが、重くなりますので使えるかどうかは疑問ですね。槍は結構ですけど」
「その場合、服が汚れないように処理を施したりは駄目なの?」
「そうですね、ルールが複雑化しますから」
 ななんの場合、戦い慣れた方法で参加するのが一番だ。しかし、アッシュの言うように自分の服が、自分のナックルの攻撃や相手の服から液が飛び散ったりして汚れる可能性がある。
「それにしても‥‥あなたを含めて白軍の約半数は、戦闘能力に不安がありますが‥‥大丈夫ですか?」
「‥‥頑張ります」
 ななんは苦笑しながら、答えた。

 城から河原まで馬を走らせると、30を数える位で到着した。これがシャルロッテ・フォン・クルス(ea4136)の駿馬であれば、もう少し早く着いているだろう。
 河原で彼女、リア・アースグリム(ea3062)と待ち合わせをしていたティルは、白軍の作業を遠目に見たり茂みの深さを測ったりしながら、河原へと向かった。当然リアの方が早く着いたのだが、馬で来たリアと違ってティルは徒歩であちこち見回りながら来た。
 ティルは髪を掻き上げながら、呟いた。
「ショートボウは難しいかもしれない。‥‥まあ、ボウも貸してくれるようだから、いざとなったらロングボウを借りるって手もあるか」
「しかしティルさん、敵兵は全部で10名です。フィールドがいかに広くても、戦う相手は目の前じゃないですか?」
「まあ、そうかな」
 ふ、とティルは苦笑すると、鞄から筆記用具を出した。
 支援隊が河原まで繋げている舗装路が、およそ700フィート。舗装路の周囲は、水を撒いて荒らしておく。実際ティルが聞いた所によると、舗装が終わったら戦闘前に荒らしておくと話していた。
「しかし、作戦では別働隊を組織する事になっているようですが‥‥」
「ああ、レオニールがそれについて向こうと話していた。その区画だけ荒らさないでおく、という事で話が付いたようだな。迂回路の方の距離はどうだった? 地図によるとだいたい1.5倍のようだけど」
「はい、それ位ですね。どのルートを通るにしろ、騎馬での移動であれば、相手側にどうしても見つかってしまうでしょう。徒歩で茂みを通れば見つからずに潜入出来るかもしれませんが」
 と、リアがの方を見た。
 茂みは支援隊が刈り取り作業をする事になっている。と、丁度茂みの方に歩いていくウリエル・セグンド(ea1662)を見つけて、ティルが声をあげた。
「どこに行くんだ?」
 ティルが聞くと、ウリエルが立ち止まってこちらを振り返った。
「‥‥草刈り」
「草刈り? ‥‥ああ、茂みか。あの茂みを、支援隊が刈るらしいんだ」
「あれ、全部ですか?」
 けっこう広いが‥‥あの広さを全部刈り取るんだろうか? リアが驚いて聞くと、ははっとティルが笑う。ウリエルはまた、茂みの方にふわりふわりと歩いていった。
「森と茂みの間だけ、刈り取るんだよ。そうすれば、茂みから森に抜けようとしている奴が居たら、すぐ分かるだろう?
 私も行ってみたが、茂みは人が立つほどの背丈はない。しかし屈んで歩けば身が隠れる。森には人が歩く事が無いと聞いていたが、確かに道らしい道はないな。ただ、獣道が白軍の城から森の奥に真っ直ぐ抜ける道が一本、それに合流するようにして南から北に抜ける道が一本あった。支援隊は、あの周辺に罠や鳴子をしかけているらしい」
 森は向こう側までずっと続いており、見晴らしは悪い。獣道はあるといっても、人が楽々通れるような道ではなかった。
「森の中に罠を仕掛けるのも、大変ですね」
「そうだな‥‥ん? シャルロッテだ」
 ティルが指す先に、白い騎影が映っている。それは次第に近づき、やがてティルとリアの前に停止した。
「作業中失礼します。‥‥お二人とも、もう計測は終わりまして?」
「‥‥ああ、支援隊からも話を聞いて、ほぼ地図に書き込んだが‥‥あとは敵側の様子を見て、川の計測がだな‥‥」
「ではお二人とも、城の築城を手伝っていただけないでしょうか? 土煉瓦の作成と積み上げに、手が足りないんですの」
 土木作業と聞いて、ティルが眉を寄せる。
「しかし‥‥」
「川の測量は、美影様とアース様がされるとの事です。地図はわたくしからレオニール様にお渡ししておきますわ」
 間髪いれずシャルロッテが答え、ティルは黙り込んだ。しばらくして、リアがティルの顔を見返した。
「‥‥城の築城も大切な役目。お手伝いしましょう」
 そう言うと、ティルも仕方ないな、という風に肩をすくめて笑った。

 川の広さは、およそ200フィート。川の中程には中州があるが、後にアルフレッド・アーツ(ea2100)が確認した所によると、中州の茂みは、紅軍によって綺麗に焼き払われていた。
 川はそう広くは無いので流れも緩やかで、人であれば歩いて渡れる。騎馬で渡れば、なお容易であろう。もっとも、人には容易でもシフールのアーツからすれば、ひとたび波に飲まれれば生きては居ない。
 蔵王 美影(ea1000)はアーツを連れ、疾走の術を使って川まで駆けた。フィールドは広いが、美影が駆ければあっという間だ。楽しそうに美影にしがみついていたアーツだったが、途中の茂みまで着くと美影の懐から飛び出した。
「ありがとう、美影さん」
「帰る時は、また呼んでよ。おいらがつれて帰ってあげるから」
 美影に言われ、アーツは手を振って答えた。
 川の計測をティル達から任されている美影は、ロープを取り出した。このロープで、川の長さを測るのだ。測量などやった事が無い美影がするのだから、測るとなると物を使うしか無いわけだが。
 一般に冒険者が持っているロープは、20フィートしか無い。今回はアッシュに無理言って100フィートのものを借りて来たが、やはり聞いていた通り川幅は200フィートあった。
 深さは、小柄な美影であればちょっと簡単に渡る、とはいかないが、人間やエルフの大人であれば、問題ないであろう。
 敵は、築城予定地近辺に居る。草刈りをしている人も居た。
 やっぱり、敵も茂みを刈っているんだ‥‥。
 美影が、仲間の方を振り返った。
 と、茂みの方からはたはたとアーツが飛んで美影の前に現れた。アーツは何やら、困ったような顔をしている。
「どうかした、アーツ?」
「うーん‥‥美影さん、あっちの川底で罠を見つけたんだけど、深くて僕じゃ入れないんだ」
「分かったよ、それじゃおいらが解除する」
 美影は勇んでアーツとともに罠をはずしていったのだが‥‥。
 翌日、また元通りにされているのを発見する事になった。
 呆然と立ちつくす、アーツと美影。
 美影は腕組みをすると、しげしげと川を見下ろした。
「‥‥多分ね、今解除してもまた元通りにされると思うんだ」
「そうだね。‥‥じゃ、敵の偵察は?」
 アーツがぎゅ、と拳を握りしめて美影に聞く。
「偵察はいいけど、まだ戦闘開始の合図が無いなら、相手に手を出したり敵地に入り込んだりしちゃ駄目だって言われたんだ」
「しょうがないね、それじゃ。‥‥あっちから丸見えだし」
 とアーツが、敵地を見る。あちら側から障害物が無いから、あっちの行動もよく見えるが、こっちの動きも丸見えだ。
「こうなったら、とにかくあっちの動きを見るだけ見ておこう。‥‥後で罠の位置を変えられたりするかもしれないけど、動きはよく分かると思うよ」
「そうだね」
 そうして美影とアーツはしばらく、涼しげな川沿いで敵地を眺めていて、“少しは手伝え”と強引にティルやななん達に、築城にかり出されるのだった。

 本隊から手伝いに来たウリエルは、茂みの刈り取り作業、と聞いてぼんやりと周囲を見回した。刈り取りといっても、四〇〇フィート近くあるが‥‥。これを手作業で刈り取るのは、相当骨が折れる。
 支援隊の方は、どうやらウリエルの前にいる女性一人だけらしい。
 彼女に言ってはいないが、ウリエルはかなりの方向音痴だ。刈っているうちにうっかり間違った方向に行ってしまわなければいいが‥‥。
 じいっと見ているウリエルに、彼女が声をかけた。
「さあ、はじめましょう。‥‥大丈夫、二人居れば早く済みます。それに、後から本隊の人も手伝ってくれるそうですし」
「‥‥そう‥‥かな」
 後から手伝ってくれるのなら‥‥少なくとも、あそこで土で煉瓦を作って運んで積み上げるより、早く済むかもしれない。
 勝ったらおみやげも貰えるし。
 ‥‥そうのんきな事を考え、ウリエルはつい作業を手伝う事にしてしまった。
 おみやげが一番で、戦う事は二の次だったとか、アッシュさんはごちそうしてくれたいい人だ、と思っているとか、そういう誤った(はたして、アッシュがイイヒトなのかどうか‥‥)認識が手伝っていた。
 どのみち、四〇〇フィートがどれだけ広いのか、分かった所で彼女一人を置いて行く事などできはしなかったのだが。

 シャルロッテからの報告と、支援隊の報告を受けてレオニールは地面をにらんだ。支援隊には建築などの設計に詳しい者が居るし、猟師としての経験を生かしてティルが地図に詳細情報を加えてくれている。
「美影様達の報告によれば、紅軍は陣地南側の茂みと中州の茂みを焼き払って、陣地に落とし穴を作っているようです。また、中州に砦を作っているのも見えたそうですわ」
 シャルロッテが地図を指しながら言うと、レオニールはうめくように答えた。
「うん‥‥そうだな。言ったように、本隊は2手に分けて攻撃したい」
「打ち合わせが思うように出来なかったせいですが‥‥もっと早く聞きたかったですわね。まあ、結果的に間に合ったからよろしいのですけど」
 支援隊の者が言った。ちら、とシャルロッテは彼女に視線を向けると、冷静な口調で言葉を続ける。
「道は残して置いていただけたそうですね。ありがとうございます」
 シャルが軽く一礼すると、レオニールはシャルと支援隊の者を交互に見やった。
「それでは、予定通り2手に分ける事にしよう。幸い、我々の一連の作業が相手にも見えている。だから、それを利用する事も出来るだろうな」
 レオニールが、茂み、そして舗装道などに視線を向ける。
「まず本隊、そして別隊、更に中州で紅軍を阻止する隊だな」
「城に残る者も必要ですわね」
 シャルロッテに言われ、ふ、とレオニールが苦笑した。
「そうだな、すまん。‥‥ただ、我らの中にシフールが2名居る。彼らをどこに配置するか、どういう役目を担って貰うかが肝心だ。それに、アッシュに昼間言われたように、我々の中には戦闘能力が十分で無い者も居る。‥‥自分も人の事は言えないが‥‥組み合わせを考えなければ、あっという間に紅軍に蹴散らされる事になるだろう」
 ちら、とレオニールが顔を上げる。いつの間にか、アッシュがやって来ていた。相変わらず、何を考えているのか分からない笑みを浮かべている。
「まだ日はあります。あなた達も日々訓練しているでしょうから、これから伸びる人も居るでしょう。また、遅れて加わる者も居るでしょう。‥‥敵との人数差は大きいと思いますよ」
「ああ、分かっている。ただ、城に人を何人か残してしまうとすると、前線の者は多くて12、3人‥‥。中州で戦う者は、守りに強くなくては崩される」
 また、別隊は素早く動かなければ、敵側から動きが丸見えだ。
「本隊と中州に陣取る隊は、紅軍を引きつけるだけの働きをしてもらわなければ、別隊が迎撃されてしまう。別隊が迅速に敵陣に突っ込めるだけの力が発揮出来るような配置が必要だ」
 シャルに調べてもらって来た所によると、近接格闘が8名、射撃が3名、術攻撃が3名といった所だ。
 これらをどう振り分けるか‥‥。
 本隊指揮、別隊指揮、城に残る者、そして斥候。
 レオニールは深く息を吐くと、地図を見下ろした。

(担当:立川司郎)