シェリーが消えた〜後編

■シリーズシナリオ


担当:立川司郎

対応レベル:4〜8lv

難易度:普通

成功報酬:2 G 40 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:03月07日〜03月12日

リプレイ公開日:2005年03月15日

●オープニング

 森に住むエレメンタラーフェアリーや他の精霊達が騒いでいた事。
 彼らのせいで、森に人が近づけなくなっていた事。
 そして妖精のシェリーが姿を消していた事。
 アッシュは話を聞き、ふむ‥‥と腕組みをして息をついた。
「では、森が騒がしかったのは、森に侵入した人間達のせいだ‥‥と言うのですか」
 しかも、どうやらシェリーは彼らに連れ去られた模様。
 森の木々をいたずらに痛め、食する為ではない獣を乱獲したあげくにシェリーの作った酒を奪って酒盛りをし、ろくに火の始末もしない。彼らはまだ、森の中に居るようだった。
 メイとティアの村の人々は、アッシュの住処にやってきて、哀願するようなまなざしを向けた。特にメイが‥‥。
「お兄ちゃん、メイを助けてくれたんでしょ? だったらシェリーも助けて」
「‥‥」
 私は慈善事業はしていませんよ、と言いかけたアッシュだったが、シェリーの酒は飲みたい。しかも、話に聞くシェリーキャンは大層我が儘で、メイの言うことしか聞きそうにない。
 とすれば、メイを説得すればシェリーの酒は頂ける。
 にこりと笑うと、アッシュはメイの肩に手をかけた。
「わかりました、カワイイお嬢さんの頼みですからね。お友達を助けて、悪いお兄さんもやっつけてあげましょう」
「ほんとう?」
 きらきらとした目で、メイがアッシュを見上げた。
「ええ、本当ですよ。だから、シェリーが助かったら、“皆でシェリーの作ったお酒で”パーティーをしましょう」
「うん、お兄ちゃんにも、シェリーのお酒を飲んでもらいたいもんね」
「そうですね、是非飲んでみたいです」
 強調するように、そうアッシュは言った。

 さて、これでメイを言い含める‥‥もとい、約束を取り付けるのには成功した。希少性の高い、シェリーキャンのワインを入手出来る。
 後は、シェリーを助けて、くだんの騎士を始末するだけだ。
「という事でですね、皆さん。さあ、正義の心に目覚めて、堕落した騎士達を倒すのです」
 真っ先に正義の心に目覚めるべき人物が、にこにこと笑いながら言った。

●今回の参加者

 ea1679 丙 鞘継(18歳・♂・武道家・エルフ・華仙教大国)
 ea1695 マリトゥエル・オーベルジーヌ(26歳・♀・バード・エルフ・フランク王国)
 ea1861 フォルテシモ・テスタロッサ(33歳・♀・神聖騎士・人間・神聖ローマ帝国)
 ea2731 レジエル・グラープソン(29歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea3260 ウォルター・ヘイワード(29歳・♂・ウィザード・人間・ノルマン王国)
 ea4159 リーニャ・アトルシャン(27歳・♀・ファイター・人間・ロシア王国)
 ea4816 遊士 燠巫(38歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea5506 シュヴァーン・ツァーン(25歳・♀・バード・エルフ・フランク王国)

●リプレイ本文

 あちこち、小枝で切り裂かれた服。そして、血の滲む腕。息も絶え絶えに、走り続けていた。視線の先に、彼らが居る事を確認して‥‥。
 白い肌は、興奮で赤く火照っている。彼女は木々の合間に動く三つの影へと、真っ直ぐ駆けていった。彼女の気配に、彼らがこちらを振り返る。
 そのうちの一人、年長の男の腕に、荷物が抱えられていた。迷わず、彼女‥‥シュヴァーン・ツァーン(ea5506)は、彼にすがりついた。
「騎士様、お願いします。かくまってください」
 といいかけ、シュヴァーンは振り返る。木々の合間に精霊達がちらちら見えている。
「珍しい精霊達が目撃される森だと聞いてやって来たのですが‥‥一体どういう事なのでしょう‥‥? この通り、精霊達に襲われて森を出る事すらかないません‥‥」
 演技は自信がある方ではないが、シュヴァーンは吟遊詩人。様々な逸話や伝承を語り、聞かせる事もその一端だ。語り聞かせる話だと思えば、さほど苦労もない。
 ただ、相手は人間だ。異種族のエルフであるシュヴァーンに興味を抱くかどうかは、相当確率の低い賭けになるが。
「何だ、エルフの女か‥‥」
 案の定、騎士達は残念そうな表情をしている。ちら、とシュヴァーンは正面の男を見返した。おそらく、この男がリーダー格だ。年もいちばん年上の20代中盤、いちばん身なりが整っており、ロングソードと皮鎧。そして背中にシールドを抱えている。
 残り二人は、十代後半位だろうか。おそらく、叙任されて間もない頃だろう。
「あの‥‥騎士様‥‥」
 騎士とあえて強調して聞くと、ようやく正面の男が口を開いた。
「ああ‥‥丁度いい。わたし達はこの森で暴れている精霊を倒しに来たのだ」
「そうです。‥‥まあでも、もう日が暮れる頃だ。今日は我々と一緒に野営をするといい」
 後ろに居た若い騎士のうちの一人が、素早くそう言葉を続けた。そう、そうするといい。三人が揃って、シュヴァーンにそうすすめた。
 ‥‥あらあら、異種族女に興味をお持ちとは、よっぽど珍しいご趣味ですね。今日日異種族に欲求を持つ方は、三〇才年の差カップルよりマイナー趣味だと言いますけれど。
 まあ、こんな森の中‥‥男ばかり三人で酒盛りは、確かに楽しく無いだろうが。
 シュヴァーンはにこりと笑った。
「ではお礼に、月影に揺らめくこの竪琴の音色を‥‥お聴かせ致しましょう」
 ぽーん、とシュヴァーンの持つ竪琴から音が流れた。

 丁度、木々の向こう‥‥こちらに背を向けた三人の男の向こう側に、こちらを向いてシュヴァーンが座っていた。シュヴァーンは、竪琴の奏でる音色に邪魔されないように、小さな声で歌っている。
「さて‥‥それにしても酒癖の悪い騎士“様”ですね」
 男達は、うまそうに酒を口に運んでいた。騒ぐ、触る、暴れると三拍子揃った酒癖の悪さに、シュヴァーンはよく耐えていると、遊士燠巫(ea4816)も思う。レジエル・グラープソン(ea2731)は、腕組みをして彼らをじっと見る。
 武装は、自分達と変わらない。ただ、盾がある為にやや戦いづらいかもしれないが‥‥それは酒が入っている分、差し引いて考えてもいいだろう。
 どうやらシュヴァーンがこちらに気づいたようだ。シュヴァーンは、微かな声で、しかし通常より早く詠唱を口にした。歌声に紛れ、男達は歌詞まで聴いちゃ居ない。
 ふい、と若い騎士のうちの一人‥‥いや、二人がうとうとしはじめ、地面にぐらりと崩れた。騎士が手若い二人の肩にやり、揺さぶる。すると一声うめいて寝返りをうち、また目を閉じてしまった。
「おい、もう寝ちまうのか。‥‥まだ酒は‥‥うん? もう無いのか?」
 くるりと騎士は、荷物に手を伸ばした。先ほどから、側に大きな包みを置いている。上からかけられた布を剥ぐと、中から木で出来た籠が出てきた。
「おい、シェリーキャン、酒が無いぞ」
 シュヴァーンの目が、その中に居る小さな影に奪われた。首に小さな鎖をつけられ、逃げないように籠に繋がれていた。小さな影はうつぶせて縮こまっていたが、むくりと起きあがって声をあげた。
「お酒はあたしのモノなのよっ! あたしが好きな時に、好きな人にあげるモノなの!」
 ぐい、と騎士が鎖を引っ張る。するとシェリーは籠にぶつかった。
 ‥‥見ちゃいられませんね。レジエルが首を振ると、燠巫はくるりと背を向け、音もなく地を蹴った。

 考え込んでウォルター・ヘイワード(ea3260)と話しているマリトゥエル・オーベルジーヌ(ea1695)が、ちらりと二人へ視線を向ける。
「待っていたわよ。どうだった、連中は」
「そうだな。作戦通りだ」
 燠巫がちらり、とリーニャ・アトルシャン(ea4159)を見下ろす。いつになく、リーニャは仏頂面をしている‥‥気がする。いや、燠巫が気になったのは、そんな事ではない。彼女が手にしている、麻袋だ。
「おい‥‥何か、動いてるぞ‥‥ソレ」
 と燠巫が、袋を指さす。動いてます。めっさ動いてます。ウォルターは、肩をすくめて笑った。
「言わないでやってください‥‥。いや、見なかった事にした方がいいと思いますよ」
「‥‥そうだな。見なかった事にするよ」
 とはいえ、レジエルはともかくとしてリーニャと行動を共にする燠巫は、いずれその正体を知る事になるのだが。
「どうやら、騎士は三名‥‥打ち合わせ通り、酒を飲ませる事に成功したようですね」
 ウォルターが聞くと、レジエルは頷いた。
「ええ、大分嫌な思いさせられてるようですけども。二人はシュヴァーンの魔法で寝ていましたが、何かあったら目が覚めそうですね。‥‥残るのはリーダー格の男‥‥そっちはちょっと、手強いかもしれません」
「お二人がシェリーを確保して頂けるなら、私が木々を操って隙を作りましょう」
「それでは、私はウォルターさんのお手伝いを」
 レジエルが答える。燠巫はリーニャと二人、シェリー救出。丙鞘継(ea1679)は正面から騎士と戦って捕縛するつもりのようだ。
「わしは待機しておる。人質が終出されるまで、待っていよう。人質さえ救出出来れば、奴等など恐るるにたらぬわ!」
 フォルテシモ・テスタロッサ(ea1861)は、怒りもあらわにそう答えた。

 風が‥‥吹いたか?
 騎士が顔を上げる。腐っても鯛。シュヴァーンは、笑顔で答えた。
「獣かなにかでしょう。精霊の居る森ですから、別段珍しくありませんよ‥‥風もないのに木々が揺れる事など」
 そう。風は無い。しかし木々が揺れている。
 騎士が剣に手を伸ばした時、側にあった木々がぎしぎしと音を立てて枝を揺らした。根が地から抜け、騎士を叩く。酒が入っていた為か、反応が遅れてまともにそれを受ける。
「起きろ!」
 騎士が側に居た若い騎士達を蹴りつける。ちら、と騎士がシェリーの入った籠に視線をやった‥‥その視線に何かが入り込んだ。何時の間にか、その影が接近していた。酒で周囲の確認を怠っていた間、シュヴァーンの歌を聴いていた間、近づいてきていたのだ。
 素早く、燠巫が籠をつかみ取る。騎士の剣が鞘から抜かれようとする、その腕に衝撃が走った。
「あなたの相手は、こちらですよ」
 レジエルが二つ目の石を手に取り、スリングで放つ。その間に、後ろに立っていたリーニャが袋を逆さにしながら投げつけた。あの、何か動いていた麻袋である。
 麻袋の中で動いていたモノが、袋からこぼれ落ちる。
「‥‥!!!」
 声にならない程の衝撃が、ざわざわと燠巫の背筋を走る。
 おおよその者は、かようなモノが大量に発生して平気な神経は持ち合わせていない。
 おおよその者は、それらが発生すると激しい拒否感を持つものだ。
「ぎゃーっ!」
 のらりくらりしていた若い騎士が、悲鳴を上げて飛び起きた。足下に蛇やら蜘蛛やらがうようよしていれば、誰でも飛び起きる。
 燠巫はリーニャの腕を引掴むと、後ろへと引きずった。
 あとは、フォルテシモと鞘継達に交代だ。周囲に潜伏していた鞘継とフォルテシモが、一気に間を詰めて攻め掛かる。彼女達の接近をフォローするように、ウォルターのグラビティーキャノンが騎士達に炸裂した。
 一人が転倒、残った若い男の一人に向けて鞘継が隠し持っていたナイフで斬りつけた。隙間から繰り出されたわずかなリーチの差に、男の腕が血を吹く。しかし二度目のナイフは、男の盾に阻止された。
 ‥‥さすがに一筋縄ではいかない‥‥か。
 鞘継は、迷わず返す刃を手元に引きつけつつ斬りつける。その切っ先が、男の手元をかすめた。たまらず剣を持つ手をゆるめた所、鞘継は投げるようにナイフを落とした。
 男の視線が鞘継に向けられる。鞘継がナイフを落としたのは、偶然ではない。もう一つの武器を使う為だ。
 拳を突き上げるように男ののど元に叩き込むと、すう、と鞘継は背をのばした。
「‥‥主上に仕える身で在りながらこの不始末、許し難い」
 静かな口調で、鞘継が言った。

 視線の先で、フォルテシモが騎士と対峙している。若い男はレジエルとウォルターが相手をしていたが、鞘継が一人を片づけたのに気づくと、レジエルが確保に向かった。
 燠巫はマリに、押しつけるように籠を渡す。
「俺は鞘継の加勢にいく。後は頼むぞ」
 マリは、燠巫が抱えていた籠を受け取り、そっと籠を開いた。小さな影が、見上げている。
「お姫様、助けに参上しましたわよ。怪我は無いかしら?」
 シェリーは、むすっとした顔でマリを見上げている。あちこち、傷だらけだった。怖かったに違いない。マリがふ、と微笑すると、シェリーは声をあげた。
「‥‥何よっ、酷い目にあったわよ!」
「メイ‥‥探してた」
 リーニャの言葉に、シェリーがぴくりと反応した。
「メイが?」
「ええ。‥‥探しに森に入ったらしいわ。でも大丈夫、今は村であなたを待ってるわ」
 マリが言うと、シェリーは安心したのか、ほっと息をついて座り込んだ。そして首についたままの鎖を見下ろす。
 何も言わず‥‥マリはそっと鎖を取ってやった。

 鞘継と燠巫が、若い騎士に縛り付けた頃、フォルテシモは騎士とまだ格闘していた。こう近くに居ては、魔法を掛ける事も出来ない。レジエルも、手を出せずに居る。
 こやつめ、オーラを使う‥‥。
 フォルテシモの体に刻まれる、傷。こちらの攻撃は盾で遮られる。それなのに、相手の攻撃は体をかすめ、じりじりと追いつめられていく。
 すう、と鞘継の体が動いた。
「くっ‥‥このような狼藉者一人に、わしは負けられはせぬ」
 剣が繰り出される‥‥それを剣でわずかに返す。剣先が体をかすめ、脇腹に吸い込まれた。痛みに声を出すよりも、フォルテシモは剣を繰り出す事に専念していた。
 フォルテシモから返された刃が、騎士の体に深く食い込んでいく。
「‥‥己の欲望の為に妖精をさらい森を汚す‥‥不届き者め、騎士を名乗るでない!」
 ずるり、とフォルテシモが剣を引き抜くと、騎士は崩れ落ちた。

 怖い顔で見下ろしているリーニャと、フォルテシモ。その側に、黙って鞘継が立っている。リーニャの側には、解放されたシェリーが飛び回っていた。
 リーニャはむっつりとした顔で、縛り上げられた男達を見下ろしている。
「それだけの腕を、己の為だけに使うとは‥‥恥を知れ!」
 フォルテシモの一喝に続き、鞘継が続く。
「騎士とは‥‥名誉、寛容、奉仕の精神だと聞く。お前達にとてもそれが備わっているとは、思えん」
「‥‥ごめんなさい‥‥しろ」
 詰め寄る、リーニャ。すう、と目を閉じ、鞘継が小さく息をついた。
「それともアッシュの所に行く方がいいか」
「あら、それはいい案ね、丙」
 マリがぱっと笑顔を浮かべる。アッシュが何者か分からない騎士達は、返答のしようがない。黙って顔色をうかがう騎士達に、にんまりと笑顔を浮かべたマリが近づく。
「そうねえ‥‥アッシュっていうのは、人に痺れ磯巾着とか猿とか食べさせて困らせるのが大好きな人よ。大丈夫、多分一ヶ月もすればあなたも心を入れ替えているわよ」
 入れ替えるというか、入れ替わるというか、違う自分が植え付けられるというか。ぽつりと丙が呟く。
 びく、と騎士達がおびえたように震えた。

 騎士達は、ウォルターとフォルテシモに連れられて、村の人々へと差し出された。きっと彼らが、この不作法な騎士達を訴えてくれるだろう。
 アッシュの家へと戻ってきたウォルターとフォルテシモは、さっそく待ちきれないように酒を飲んでいるアッシュや仲間をぐるりと見まわした。フォルテシモは腰に手をあて、ため息をつく。
「やれやれ、半日も待てぬのか。そんなに酒が欲しいか」
「ええ、確かに美味しいですよ」
 と、レジエルが酒を二人に差し出す。ウォルターは苦笑をうかべ、酒を口に運んだ。シェリーの作る酒‥‥それは、確かに長い間置かれて作られた酒と同じく、香ばしい味がした。しかし確か、これはつい最近作られたものであるはずだが。
「シェリーに聞いた所、シェリーキャンは食物を腐食させる力を持っているそうです。シェリーがお酒を造っているのは、そういう事なんですね」
 レジエルにそれを聞き、ははあ‥‥なるほど、とウォルターは酒を見つめた。これはまさしく、あのシェリーの手によって作られた、シェリーキャンの酒というわけだ。
 フォルテシモは酒の入ったカップを手にすると、シェリーの元へとやってきた。シェリーは、メイやリーニャ達と話している。その表情に、緊張の色はもうなかった。
「‥‥シェリー、それに精霊方には申し訳ない事をした。同じ騎士として、心よりお詫び申し上げる」
 とフォルテシモは、深く謝罪の言葉を述べた。シェリーは、ちょっと小首をかしげている。
「何謝ってるの、別にあたしはあなたに困らせられた訳じゃないわよ。ねえ?」
 シェリーは、笑っているメイと視線を交わした。
 そして、一番シェリーキャンの酒を飲みたがっていたアッシュはというと‥‥。
 しばらくの間シェリーキャンの酒を定期的に譲ってもらう約束を取り付け、すっかり上機嫌であった。下心見え見えね、と言うマリの言葉もかまわず、アッシュはご満悦だ。
 燠巫もそんなアッシュを、憎めないといった様子で見ている。
「‥‥なあアッシュ。俺、イギリスに待たせてるやつが居てな」
 どういう心境か、燠巫が突然そう切り出した。
「待ってくれる人がいると、それだけで一人の時の倍、こころが満たされます。待ってくれているうちに、帰ってあげる事ですね」
「へえ、あんたがそんな事を言うとはね。‥‥でもまあ、もう暫くここに居て、あんたを見ているのも遅く無いさ」
「そうですか。それでは今後もまた、いつでも呼ばせていただきますよ」
 と爽やかに答えつつ、抱きついてきた燠巫を軽やかなステップで避けた。
(担当:立川司郎)