鋼鉄のアルカンシェル4〜貧しくとも我が家

■シリーズシナリオ


担当:立川司郎

対応レベル:9〜15lv

難易度:やや難

成功報酬:5 G 40 C

参加人数:8人

サポート参加人数:2人

冒険期間:12月05日〜12月10日

リプレイ公開日:2005年12月15日

●オープニング

 彼らが埋葬を行わない、理由の一つ。
 まずは土地がない。そして、教会がない為、習慣がない。墓場もない。
 そして‥‥。
 腐ってすっかり朽ちた遺体のうち、彼らは骨だけを取りだした。
 今まで、そんな気持ちになった事は、彼らにはない。リーダーの事を今までになく慕っている、というよりも‥‥これはきっと怒りだ。
 横合いからかっ浚うようなやり方の、銀狐に対する怒りなのだ。
 メトロ残党、十二名はそうしてアルカンシェルに下った。
 アルカンシェルの内に出来た派閥は、いずれ彼らを中から食い破るのかもしれない。たが、今はこれしか銀狐に勝つ方法がないのである。
 アルシエロは、黙ってメトロを受け入れた。
 元メトロメンバーが、総勢二十六人。それ以前のアルカンシェル五十二名。総勢、七十八名。
 アルシエロは彼らを全て集めると、ゴーシュとともに木箱の上に立った。
「‥‥知ってると思うが、銀狐が大麻をここで栽培している。シャンティイの騎士団が、奴らの大元であるフゥの樹‥‥悪魔崇拝団体を追ってる。だから、放っておいたら騎士団がここに来るんだ。それだけは避けたい」
 騎士団と聞き、彼らが小声で話し始める。
 アルシエロにかわり、ゴーシュが口を開いた。
「あの銀狐の女は、フゥの樹から派遣された暗殺者だ。一筋縄じゃいかない。奴ら、戦争にも長けているだろうから、うちだけじゃあ足りねえ。そこで、ギルドにも何人か人出を借りる事にした」
「でも‥‥大人が加わるのは嫌だ」
 誰かがぽつりと言った。何人か、同意を示している者が居るようだ。
 子供だけでこれてまでやってきたチームだ、ゴーシュ以外の大人が参戦するのには抵抗があるようだった。
「まぁ、気持ちは分かる。だが、あの銀狐はお前達じゃ勝てない。‥‥万が一、鉄の爪からリィゼでも来たりすりゃあ‥‥それこそ壊滅する」
 ゴーシュが恐れているのは、それだった。
 リィゼとあの娘、どちらかが戦場に紛れれば、労せずしてアルシエロを殺す事が出来るからだった。リィゼの腕を、ゴーシュはよく分かっている。
「‥‥幸い、フゥの樹は北の方に集結しているらしい。リィゼがここに居るって話もきかない。銀狐を倒して、ここを奪還するのは今しかない。銀狐は俺たちの敵だが‥‥ギルドの奴らにとっても、追ってる敵の一人だ。今回は奴らにヤルとしよう」
 ゴーシュが言い聞かせるように言うと、皆黙り込んだ。
 すう、とアルシエロが顔をあげる。
「メトロに居たヤツも、元からいたヤツも‥‥遺恨は今回は押さえて、協力してくれ。‥‥今からメンバーを八隊に分ける。メトロ隊を三つ、アルカンシェ‥‥いやアルシエロ隊を五つだ」
 それから一人ずつ、アルシエロはチームリーダーの名前をあげた。

 決戦の時、近し。

●今回の参加者

 ea3047 フランシア・ド・フルール(33歳・♀・ビショップ・人間・ノルマン王国)
 ea3062 リア・アースグリム(27歳・♀・神聖騎士・人間・ノルマン王国)
 ea3674 源真 霧矢(34歳・♂・ナイト・人間・ジャパン)
 ea3770 ララ・ガルボ(31歳・♀・ナイト・シフール・ノルマン王国)
 ea3856 カルゼ・アルジス(29歳・♂・ウィザード・人間・フランク王国)
 ea4813 遊士 璃陰(26歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea5796 キサラ・ブレンファード(32歳・♀・ナイト・人間・エジプト)
 ea7866 セルミィ・オーウェル(19歳・♀・バード・シフール・フランク王国)

●サポート参加者

サラフィル・ローズィット(ea3776)/ レティシア・ウィンダム(ea4655

●リプレイ本文

 銀狐を倒す。
 その目的こそ、皆共通であった。確かに銀狐は接近されれば弱い、弓兵だ。
 だが、今回の作戦は彼女を有利に働かせるものでしかなかった。
 メトロ隊に居たカルゼ・アルジス(ea3856)とリア・アースグリム(ea3062)。アルシエロを守りつつ隙を見ていたフランシア・ド・フルール(ea3047)は、カルゼの魔法解除を行う事になっていたが、フランシアはキサラ・ブレンファード(ea5796)と遊士璃陰(ea4813)に任せてアルシエロの護衛に徹していた。霧が発生する場所がそこから効果範囲内であったかどうか‥‥。
 同じくアルシエロの側に居た源真霧矢(ea3674)は、発見しだい矢で撃ちかけてフォローするつもりであった。
 そう、銀狐の攻撃に回っていたのは、キサラと璃陰の二人だけ‥‥。メトロのリーダーを暗殺し、アサシンガールの一人とも目されていた銀狐を騙すには、彼らの経験は足りなかった。
 残るは偵察を行う手はずのシフール二人、ララ・ガルボ(ea3770)と、セルミィ・オーウェル(ea7866)。
 それぞれが方々の位置から、混戦状態の中で‥‥隠密行動に長けた一人の少女にたった二人で攻撃を仕掛けたのである。
 また、キサラも璃陰も単独で、銀狐の側に居る兵士をいかに突破するかは想定していなかった。あるいは、全員でチームを組んで、敵の攻撃の隙を付いて銀狐の本体に攻撃していたら‥‥。

 これより七日程前。フランシアと霧矢、そして璃陰はアッシュとレイモンドからある事を頼まれていた。
 それは彼ら以外に公言出来ない事情であり、そしてその行く末すら話す事は出来ない。
 大麻を回収する。
 キサラと同じく身を潜めている璃陰を除いた、霧矢とフランシアの二人はゴーシュとアルシエロ二人を呼び、話した。
「大麻の煙は害になるんや。幻覚とか、錯乱症状とか‥‥せやから、燃やすのはあかん」
 霧矢はゴーシュに説明した。だからといって、生きた状態で回収するというのは腑に落ちない。何故、苗を持ち出すのか。そう聞くゴーシュに、フランシアは落ち着いた口調で彼らに説明しはじめた。
「苗を生きたまま回収するのは、中毒症状で困っている方々の為、治療法を研究する為です。レイモンド卿は、大麻を研究して彼らの為に役立てようとお考えなのです」
「‥‥貴族なんて、信用出来ない」
 そう呟いたアルシエロに、霧矢はちょっと困ったように眉を寄せ、笑い声をあげた。
「まぁ、それは仕方あらへんなあ。でも、ほんま悪いようにはせえへん。どのみち、ここに置いてほっとく訳にいかんやろ」
「それはそうだが‥‥」
 アルシエロの、貴族への不信感は根深いようである。ゴーシュは霧矢やフランシアを見つめると、息をついた。
「まあ、あんたみたいな神官が嘘はつかんだろう。信じて預けるとしよう」
 嘘は言ってない。大麻を回収する事は、研究にも繋がる。フランシアはこくりと頷いた。

 丁度左端に位置するアルカンシェルと、右上に位置する銀狐。
 ピリピリとした緊張感の中、キサラと璃陰はそれぞれ別に潜伏しようとしていた。さすがに奥地は警戒が厳しく、立ち入れない。
 恐らく、戦闘が始まるのは中心となる広い路地。そこから銀狐側のいずれかの場所に陣取り、射掛けるはずだ。
 キサラは足音を忍ばせるのは得意だが、周囲の物音を察するのは得意ではない。アルカンシェルに接触せずにアルシエロと会うには、誰かを介さなければならせないのだが、キサラは結局誰にも頼まずに潜伏した為、アルシエロと会う事が出来なかった。
 とにかく周囲の護衛が一人二人ついている為、個人的に彼と会う事は難しかったのである。
 ただ、ララやフランシアに自分の作戦は伝えてある。あとは機会をうかがい、状況を見て行動に移すのみだ。
 一方璃陰は、キサラよりはまだこういう隠密活動に慣れている。一旦アルカンシェルと合流して話しておいた璃陰は、ある程度作戦も把握していた。事前に偵察をしてきたセルミィから、地理も聞いている。忍術が使える彼は、彼女に接近する上では最も適していると言える。
 彼らを除く本体は、八隊に分けられていた。
 メトロ三隊、アルシエロ五隊。そのうちリアとカルゼはメトロ隊へ入るつもりであった。
「“メトロ”としてリーダーの仇を討つ‥‥いえ、これ以上メトロの仲間を失う事の無いように、協力させて下さい」
 と頭を下げたリアに、メトロはどうすればいいのか困ったように顔を見合わせていた。
 突然現れてリーダーにしてくれと言われても、何とも言いようがない。
 むろんこれは作戦上、疑似リーダーとしてであった。
「銀狐の注意を引きつける為に、私をリーダーにさせてください。多少の兵法の心得と剣の腕もあります」
 リアの剣の腕は、正直キサラや霧矢に到底及ばない。アルカンシェルの中でも居る程度である。
 リーダーは自分で決める。そう言いたい所だが、今回は銀狐を倒す事が目的だ。リアには、メトロが壊滅した時に遺体を運んでもらった恩もある。
「まあ‥‥いいよ。そう言うからには、何か考えてるんだろうな」
「はい」
 今回のメトロ隊は、三隊。アルシエロ隊が正面から攻撃する事は、アルシエロ自身からも聞いている。そこでリアは、メトロ隊を戦地において、地図左下“南西”方向から右上“北東”へと斜めに突っ切り、分断を図ろうとした。
 彼女の行動は、銀狐を倒すキサラと璃陰をフォローしようとしたものであった。
 そのまま銀狐本隊に突入し、乱戦に持ち込もうとしていた。
「カルゼ、お前はどうするんだ」
「ん? 僕はやる事があるんだ」
 カルゼは、自分の荷物を確認すると、戦地の方へと視線を向けた。

 早朝。
 緊張は、アルカンシェルが破った。
 双方のエリアの端に潜んでいた各隊が、攻撃を開始する。しかし銀狐はすぐには動かず、彼らが接近するのを手をかざして待っていた。
 炸裂する炎の弾は、アルシエロ隊を巻き込んで爆発する。
 後ろに居た数人が、一息後には時間差で前に出て次の一撃を放つ。たった数人だが、交互に範囲魔法を放つ事で大きな効果を持つ。
 銀狐は、アルシエロ隊に大ダメージを与えると突撃命令を出した。
 その様子を上空から確認し、セルミィはわたわたとアルシエロの所に戻ってきた。
「銀狐は、魔法を時間差で使ってきてます〜!」
「なるほど‥‥詠唱時間の合間を埋める為ですね」
 フランシアは、魔法隊が二隊に分かれている事を確認した。
「あんた、回復魔法はつかえんのか」
 ゴーシュが仲間の様子を痛々しそうに見ながら、フランシアに聞いた。むろん彼女は治癒魔法など修得していない。そのうえポーションでは、とうてい足りない。
「魔法隊は先に叩かなあかんね」
 霧矢は、遠くを見ながら言った。混戦状態になってはそうそう範囲魔法で叩いて来たりはしないだろうが、撤退時にやっかいな事になる。
「怪我が酷いヤツは、下がらせるんや!」
 盾でアルシエロを守りつつ、霧矢は声を張り上げた。

 第一波の魔法攻撃を受けずに済んだメトロ隊は、リアの号令で突入。
 銀狐が居ると思われ銀狐隊奥に向けて、斜めに突っ切ろうと剣を振った。
 十字架のネックレスをしたリアは、回復魔法を防ぐ為にも格好の餌となる。すう、と前に出たメトロのメンバーを、リアは押し退けた。
「大丈夫です‥‥あなた達は私が言ったように、確実に銀狐のメンバーを倒していってください」
「二人一組だろ。‥‥じゃ、俺があんたをフォローする」
 メトロ残党の少年は、リアにそう言って肩を並べた。
 子供に剣を振るう事、子供同士戦わせる事、卑怯な手段で勝たねばならない事。リアは心中で、その事に対してずっと心を痛めていた。
「あんたも子供じゃねーか」
 そう言うメトロの少年に、リアは頷くのだった。
 すう、と視線を上げる。
 そろそろ、カルゼが動く頃だ‥‥。

 リアとは別のメトロ隊に居たカルゼは、ララとセルミィの報告をずっと待っていた。
 魔法隊を叩かなければならない‥‥それはカルゼにも分かっていた。カルゼが警戒していた矢も脅威だが、あの魔法はもっと恐ろしい。
 この距離であれば、霧は届く‥‥。
 カルゼは、手をかざすと霧を発生させた。この距離だと、専門レベルでめいっぱい遠くに発生させた方がいい。でなければ、自分たちも巻き込まれてしまうだろう。
 しかしこの状態で広範囲に霧を発生させると、アルカンシェル隊をも巻き込む事になる。むろん、突入しているメトロ隊をも、だ。
 一寸先もわからぬ霧の中、リア隊も混乱した。
「フランシア様、お味方も困ってます」
 リア隊の様子を見たセルミィに言われたフランシアは、即座に霧を解除。
「カルゼさん、範囲をよく読まなければ、霧を発生させるのは危険ではありませんか?」
「ん、そうだね。リア、ここは頼むよ。僕は銀狐の所に行くから」
 カルゼはメトロ隊をリアに預けると、アースダイブのスクロールを広げた。
 薄暗い、地の中。距離も方角も分からぬ中、カルゼは戦地の奥を目指した。
 そして‥‥ララは、ついに銀狐を見つけていた。

 はるか上空から、ララは目を細めながら地上を見ていた。
 ‥‥100m上空は、建物でいうならば二〇階以上の高さ。ほとんど確認出来ない。確かに魔法は届かないが、何が起こっているのかまるで確認出来ない。
「どこかに居るはず‥‥弓の射撃方向から‥‥っ」
 ララは、少しずつ高度を落としながら矢の方向を見た。
 この状態では、誰も上は確認していない。シフールであるララは、その身の小ささを利用して上空から銀狐の動きを予測。
 十字路の手前、端に積み上げられた木箱の隙間に影を見つけた。周囲の仲間と木箱に守られるようにして、フードを深く被った影が弓を構えている。二本差しのその矢は、的確にアルシエロ隊を貫く。
 銀狐の位置を確認したララは、一旦キサラやアルシエロ隊に報告。
 ぎゅ、と手を握りしめると、ララは力を込めた。
「仲間が来るまで、引きつけておかなければ‥‥」
 オーラソード、オーラシールド、そして気合い十分でララはシールドを構えて一人、突撃した。
 シールドの後ろに身を隠せば、矢もある程度防ぐ事が出来る‥‥そういう判断だった。しかしオーラシールドは片手に多少の受け効果を持つ盾を創り出す魔法。彼女の前方を覆い尽くす盾ではない。
 羽音に気づいたフードが、ふう、と上に向けられる。
 鋭い一撃は、避ける間もなく彼女の体を二本、貫いた。
 崩れる体勢。何とか羽ばたきながらも、彼女の体は地に落ちた。
「‥‥殺しておけ」
 少女の言葉が無惨に響く。

 銀狐の脇にある建物内部、キサラは身を隠していた。周囲に対する警戒能力が乏しいキサラでは、これ以上奥に潜入する事が出来なかったのである。
 その頃、銀狐位置する更に奥へ璃陰は居た。
 お互い、双方の位置は分からない。また、確認する術も連絡方法もない。ただ、璃陰はララが無惨な目にあった事だけは、その目で確認していた。
 身を潜めたまま、璃陰はぎゅっと膝に爪をたてる。
 このまま突っ込んでも、わい一人で殺られるだけや。タイミングは見計らんと‥‥。
 璃陰は銀狐の動きを遠目から観察し続けた。
 同時刻。カルゼは、何度か繰り返して後方に入り込むと、後ろからグラビティーキャノンを放つ為、地に上半身を出した。十字通路で戦うアルシエロ隊や、彼女の周囲に立ちふさがる銀狐のメンバー。
 彼らが積み上げて壁にした木箱。
 魔法を放っても、全てを転倒させる事は出来ないかもしれない。また、彼女を巻き込む形で放つにも、この位置しかない。
 ララの報告は届いていないが、地中を潜る事で銀狐側陣地に潜入、彼女の位置を確認していた。
 黒い光が、彼女の方へと伸びる。それは彼女の周囲に居た者から、その向こう側にいたアルシエロ隊、そして銀狐の周囲にあった木箱も巻き込んで薙ぎ倒した。
「今しかあらへん!」
「‥‥逃がさない!」
 璃陰は、物陰から飛び出した。離れた建物内にいたキサラが、一歩遅れる。しかし周囲にいた銀狐の護衛のうち、転ぶことのなかった数人が璃陰の前に立ちはだかった。
 隠れていた建物から飛び出したキサラの前にも、銀狐のメンバーが立ちふさがる。
 掴もうとする手を飛び避け、璃陰は崩れた木箱に向かう。そこに、すうっと矢が出た。
「‥‥あかんか!」
 二本の矢は、接近した璃陰を貫いた。
 すい、と銀狐が木箱を蹴って戦地に飛び出していく。
「逃げちゃう!」
 カルゼのスクロールが、再度霧を発生させる。それは銀狐だけでなく、璃陰、キサラ、そして周囲の者を深い闇で包み込んだ。
「で、ファイヤーウォールを、って」
 対象は、深い霧の向こうに‥‥。

 霧が晴れた時、銀狐の姿は戦地になかった。
 ふらふらと飛び回りながら、セルミィが傷ついたメンバーを見て回る。
「みなさん、大丈夫ですか?」
 セルミィが璃陰の傷を見ると、彼は手を振った。自分で手当しているようだ。キサラは無傷だったが、押し黙っている。彼女の側には、回収したララの遺体があった。これは後で、シャンティイに運ばれて蘇生が試みられるそうだ。
 リアも深い傷を負っていたが、それよりもメトロのメンバーを気にしているようだ。
 頭を掻きながらこちらに戻って来る霧矢を見つけ、璃陰とフランシアが立ち上がった。
「どうやった?」
「ん‥‥まあ、半分は残っとったで。半分はもう無かったけどな」
 霧矢は璃陰に言うと、ゴーシュの前に進み出た。
 彼は意外にも、あまり興奮してはいない。腕を組み、フランシア、璃陰、霧矢。そしてキサラやリア、セルミィ。ララ。八人を見た。
「‥‥仲間が居ないとイレギュラーに対応出来ない。分かったか?」
 璃陰とキサラは黙っている。
「てんでバラバラだ。お前達、自分一人で銀狐を倒せると思っていやがる。大麻さえ確保できりゃ、それでいいのか?」
 ゴーシュの言葉に、前面に出る事のなかった霧矢が口を閉ざした。
 セルミィも、しゅんとして飛んでいた。それを見たアルシエロが、肩に乗せてやる。
「‥‥ずっと飛ぶの、疲れるだろ」
「いいんです‥‥」
 ここに居たい。セルミィは誰よりも、この戦いの終結を願っていた。終わったら、またここに戻ってきたい。
 それが‥‥今は言い出せなかった。

 大麻は残され銀狐は去る。
 しかし、姿を消した銀狐は、一路‥‥

 ランズ=シシリーと合流すべく北上。
(担当:立川司郎)