【ゴーレム工房】人材募集
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■シリーズシナリオ
担当:龍河流
対応レベル:8〜14lv
難易度:普通
成功報酬:4 G 98 C
参加人数:10人
サポート参加人数:1人
冒険期間:05月31日〜06月10日
リプレイ公開日:2008年06月11日
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●オープニング
「オーブルさっまぁ、本日もご機嫌麗しゅ〜う」
この挨拶を耳にしたときのウィルゴーレム工房の責任者オーブル・プロフィットの表情がご機嫌麗しく見える者は、ウィルの国広しと言えども一人しかいないだろう。名前はナージ・プロメ。オーブルの機嫌を急降下させることにかけては、彼女が誰より一番だ。
「私は今忙しい。新人募集の件は、皆と相談して進めてくれ」
普段なら、気に入らない者は無視するか、けして下品にはならずに嫌味の一つもくれてやるのがオーブルのやりようだが、ナージは無視されると付きまとい、嫌味は理解しない。よって、最低限の会話で追い返されるのだが、オーブルの姿を見れば必ず近寄ってくる。
「費用の概算の請求は確認していただけました?」
「金属製の風信器なら、すでに返事は出した。職人の空きはない」
後は担当者に訊けと追い払われたナージだが、未練がましくオーブルの周辺を歩き回ろうとして、助手のユージス・ササイに引き摺られて持ち場に帰っていった。
それからしばらくしてからの、冒険者ギルド。
「すみません、通訳」
受付係が、ナージの話す依頼内容が意味不明で、ユージスに助けを求めていた。依頼が発生する紆余曲折や本人の要望や金銭面の苦労などを次々訴えられても、依頼内容がなんだか分からなくなるばかりなのだ。ナージはナージで、誰かに聞いてもらいたかったようで、すっきりとした顔付きである。
「ゴーレム工房の新人育成を行うことになったので」
今回の用件は、その募集の声掛けだ。各分国などからもゴーレムニストや鎧鍛冶師育成のために人材が送り込まれてくるのだが、冒険者ギルドからも希望者がいれば受け入れることになった。工房側の都合もあるので、短期集中型の養成講座を複数回行って、適性と希望が合えばゴーレム工房での職を得ることが出来る。
ただし適性がなければ、その後のことは保障しない。
「冒険者がゴーレムニストになれたら、こちらの登録はどうしたものでしょうね」
「本人の要望もあるが、冒険者は見聞を広めるのに適しているから、季節ごとに招集をかけて新規開発に繋がる案を出す事を義務化するかという話は出ている。後は冒険者ギルド用ゴーレムの整備をさせるとか、そちらで使ってもらってもいいだろうし」
「それ、実現するんですか?」
「今回集まる人材がどうしようもない人物ばかりだったら、ゴーレムは他所に回ると思う」
「喧嘩売りに来たんですか、もう」
「ごめんなさいねぇ。工房も忙しくて、みぃんな、大変なのよぉ」
多忙を極めて、疲れて神経が尖っていることもあるのだと言いたいようだが、ナージが言うとそれらしく聞こえない。でも工房でゴーレム作成数を増やすために、ゴーレムニストのみならず、鎧鍛冶師や素体作成の石工、木工など、人材確保に努めたいことは間違いないようだ。
ついでに色々と仕事をさせてやれと言う態度が見えるのが、少しばかり気になるところだが‥‥ナージは『現場を見ることも大事よ』とにこやかだった。
ゴーレム工房の様々な人材募集並びに育成。
ゴーレムニスト転職希望者に始まり、ゴーレム素体、外装作成の技術者。更にはそうした素材や資金確保のための文官まで、希望があれば一通りの工房での労働者を募集する。育成は四回から五回の短期講座を重ねて、適性の有無と人柄などを見る。
初回の講座は、鉄鉱山からの鉄材引き取りを行いつつ、工房での仕事内容についての質疑応答を主とする。新規開発希望などは、次回以降確認の予定。
ちなみにナージからの話。
「鉄鉱山は近くのドワーフ集落の人達が掘ってねぇ、鉱石から鉄を取り出すところまでやっているのよぅ。村人全部でぇ、二百人くらいかしら? わたくしが行く時は、必ず日用品や布や珍しい食品を持っていくことにしているのだけれどね、今回は費用があんまりなくてぇ、お安く手に入れてきて」
ただ育てるだけではなく、実地で適性を見るつもりもあるらしい。
●リプレイ本文
ゴーレム工房が、今回新規職員募集の枠として冒険者ギルドに提示したのは十。それが満員になったので、責任者のナージ・プロメは一安心したようだ。
「人が集まらなかったらぁオーブル様に嫌われちゃうところだったわ」
「オーブルさんって、どんな方ですか? 天界の方と小耳に挟みましたが」
「工房長だから、やっぱり魔法たくさん使えるのかな?」
集まった十人を前に、何の説明より先にそんなことを言い出したナージに、さっそく質問を繰り出したのは篠原美加(eb4179)と岬沙羅(eb4399)の二人。ともにゴーレムニスト志願者だ。
他にゴーレムニスト志願者はカルナック・イクス(ea0144)、ティアイエル・エルトファーム(ea0324)、セレス・ブリッジ(ea4471)、越野春陽(eb4578)、ギエーリ・タンデ(ec4600)の五人。ミーティア・サラト(ec5004)はゴーレムニストと鍛冶師の兼任を希望する変り種だ。
後は経理担当希望に信者福袋(eb4064)がいる。つまりはほとんどがゴーレムニスト志願なのだが、ラマーデ・エムイ(ec1984)はメイでゴーレムニストになったウィルの出身者だった。
「メイでねぇ。今回は工房には入らないから、向こうの様子でも説明してやってくれ」
元々ミーティア、ギエーリと知人だったらしいラマーデは、ナージの助手のユージス・ササイに促されている。
それに困惑した様子の春陽は、ユージスから羊皮紙を一枚渡されて『記録して』と指示された。
なお、美加と沙羅の質問は、ナージからは『とっても素敵』と無意味な返答があり、ユージスは具体的な出身や使用魔法は言わず、『魔法は相当使えるし、頭もいいけれど、それを他人にも要求するきつい人。近くにいると容赦なく打ちのめされる』と。そんな人には懸想しないわと、ナージの態度に冗談を口にした沙羅だったが、人間の彼女ははなから恋敵には見られていない。
「レンジャーなんぞは門前払い、なんてことはないだろな」
志望動機もフロートシップで珍しい食材を探しにいけたら、というカルナックが困ったものだと口にしたが、さすがに適性も見ないうちから叩き返すことはないようだ。
でも、今回の仕事がいい加減だったらドワーフ達に殴り飛ばされるかもとは言われた。
持参する荷物の手配は、信者が経理を取り仕切り、物によってミーティアとギエーリが知っている店を紹介してくれることになった。準備するものに上がったのは、まず酒。それから海産物、服地、日用品修繕用の素材など。
「酒樽が入ると馬車が二両は必要。私達も現地までの移動手段に使いたいわ。御者がカルナックさんしかいないけど、手配はどうしたらいいかしら」
それぞれ得意分野で大半が街に散った中、春陽は移動手段の確保に動いていた。馬車の御者は、予想外にユージスが担当してくれる。
ついでにもてなしの一環としてカルナックが天界風の手料理を振る舞うことも告げたところ、ナージ懇意のシフール便が一働きしてくれることになった。いなければグライダーを借りて一足先にと思っていた春陽だが、道中に質問したいことはないのかと問われれば、もちろんある。一時は渡航を悩んだメイではなく、ウィルでゴーレムニストになれるのだ。
ただ。
「そ知らぬ顔で情報を引き出すのは感心しないわね」
「ゴーレム開発は任務で、商売でもある」
情報は大事だと言ってのけるユージスには、今までとは違う印象が残った。
そんな会話は露知らず、ラマーデはギエーリとミーティアと一緒に服地の買出しに出向いていた。鍛冶屋のミーティアに、職人の作業着向けの服地を扱う店へ案内してもらう。
「ゴーレムニストにはこうしたやりくりも必要な資質なのですねぇ」
「メイではそんなこと言われなかったけど」
「でも、幾らゴーレム工房でも無尽蔵にお金があるわけではないから、無駄遣いはするべきではないわよ」
ギエーリはどこまで本気か分からない浮かれた口調が常で、ラマーデも物言いは明るい。いきなりお金の心配をするとは思わなかったと笑顔で言い交す二人と並んで歩いて、ミーティアはいささか気を引き締めたようだ。こちらは家業が左前で、国の事業に参加することで立て直しを図ろうというのだから、金銭の使い道も気になるところ。
「これならゴーレム工房の方も我々を誉めてくださるでしょう。ええ、実は工房からの仕事でございまして」
ちなみにこの三人だと、店の紹介がミーティア、品物の質はラマーデとギエーリが判断し、値段交渉はギエーリの独壇場だ。
「あ、納品数の証明書を貰わないと」
こういう時は書面が安心よねと、ミーティアとラマーデは筆記用具など準備している。
かたや海産物の買い付けに出向いたのはカルナックとティアイエル、沙羅の三人だった。正しくは買い付けがカルナック、ティアイエルと沙羅は馬と荷物の番が担当だ。
「今回の仕事はドワーフの腕を見るいい機会だと思ったけれど、そこまでが忙しいですね」
出番がない沙羅が、海産物を扱う店の入口で乾物を眺めながらぼやいていた。半分くらい、意識は魚の動きを機械で実現にはどうするかみたいなことに流れている。
同様に、口を挟む隙間もないティアイエルは、鳥型のゴーレムもカッコいいかもと思い描いていた。
「あれを邪魔したら、怒られそうだよね」
手持ち無沙汰な二人の視線の先では、カルナックが箱に詰められた商品を細かく確かめて、店主と熾烈な値段交渉に入っている。二百人分の料理のため、彼は懸命だ。
酒の買い付けは、信者と美加、セレス、その友人のケンイチの四人が向かっていた。セレスの驢馬と美加の馬がお供である。
「いざとなったら一人が一つ担げばいいしね。期待してるよ」
美加があっさりとい言ってのけ、叩いたのは当然男性の信者の肩。セレスもけしてひ弱ではないが、なにしろ女性。
「文官志望ですので、出来れば別の期待をしていただきたいものですが」
交渉事は得意と自負する信者にはちょっとばかり抵抗されたが、女性二人に対して力仕事が嫌だとは言わなかった。代わりなのか、酒屋の主との交渉では買い付ける量を示して、笑顔で値引きを迫る。
なにしろ発注元がゴーレム工房、しかも仕事用とあれば交渉の種には困らない。帰り道は馬と驢馬の足取りが重い事態となった。
「魔法の道も長いですが、ゴーレムニストは細かいことも見なくてはいけないようですね」
早く魔法のことなど尋ねたいものだと口にしているセレスは、ケンイチに頑張ってと言われていたが、それは樽を運ぶことに掛かっている言葉かもしれなかった。
揃えた荷物を馬車に積み込んで、ユージスが難しい顔をした。信者が特に目立ったが、明らかに使わない荷物を持参した者が複数いたからだ。
「グライダーやチャリオットに乗り込む時は荷物が多いのは速度と操作に関わるぞ」
言われて、あらと首を傾げたのがミーティアで。
「ゴーレムニストもグライダーの操縦が出来るもの?」
ラマーデに尋ねた。しかしラマーデはゴーレム操縦などやったことがないと、この時は頼りにならなかった。
それまではゴーレムを作る時の魔法は、最初に『ゴーレム生成』があって、後は作るものによって色々な魔法が存在してと、セレスやギエーリ、ミーティアに問われるままに話していたのだが、
「実は魔法も覚えてる途中だから」
素直に知らないと白状した。尋ねられたナージは。
「出来る人はぁ出来るわよ〜。ユージスは鎧騎士兼任だものねぇ」
グライダー乗りもチャリオット操縦士もいるそうだ。ただし、総じて稼動時間は短いし、ゴーレムニストでも少数派。元からその能力があった転職組ばかりだ。天界人なら同様に、ゴーレム操縦の腕は活かせるだろう。
もう一人、似たようなことを心配していたのがティアイエルだ。
「ねえ、ほかの魔法も大丈夫? 精霊魔法が使えなくなるならない?」
「使えるわよ」
ゴーレムニストになった後に精霊魔法も覚える人は労が多いので少ないが、使用は可能。
これでまた一安心と胸をなでおろした天界人一部とウィザードの面々がいるのだが、後の質疑応答は馬車に分乗して行われることになった。出発しないと、目的地にいつまでも到着しない。
カルナックが御者をする馬車にナージとティアイエル、信者にラマーデ、ミーティアが乗り、ユージスの馬車は春陽、美加、沙羅、セレス、ギエーリが乗り込んだ。
「私がいなければ、ユージス殿が心楽しかったかもしれませんが」
ギエーリは乗り込む際にいらぬことを口にしていたが、この後の彼は自分が『民の心を掴む英雄譚となるべき、新たな英雄の誕生に一から関われるのがゴーレムニスト』と自らの志望理由を延々と語って、皆からいい加減にしろと言われることにもなる。
そんな彼はさておき、天界人女性陣からの質問攻めが始まった。
「色々魔法があると伺いましたが、精霊魔法と似通った部分はあるのでしょうか」
それならば理解しやすいがとセレスが問えば、地水火風の四系統に分かれていると返事がある。月と陽の系統は、今のところない。
「そうなると、光を通信に使用するのは難しいと。風の精霊力にも特有の波動周期みたいなものはあるんですか? 純度の高い金属のほうが伝わりやすいとか? 記憶装置を作るとしたら、風なのか火なのかも気に掛かるところです」
沙羅の質問は、地球の技術の解説を合間に挟んでいたが、ユージスには地球技術の理解が困難ではっきりしない。金属は稀少なものほど魔力が集まりやすいが、合金で素体を作るゴーレムもあるので、一概に純度だけで考える事も出来かねる。レミエラについては言葉を濁したので、言えないことがあるらしい。
これらをメモに取っていた美加が、レミエラについて、春陽も交えて可能性について論じていたが、徐々にゴーレムの関節がどうとか始まった。春陽が図面を引いて、美加と沙羅が機械的な助言をして、セレスとギエーリが目を見開いている間に、何枚か図面が出来上がっている。
「「これがゴーレムですか?」」
見せられたギエーリとセレスが異口同音に口にし、ユージスも形がそうだと納得するまでに時間が掛かった。詳細な設計図にはいずれも馴染みがないらしい。
かたやカルナックの進める馬車では、最初はお金の計算が行われていた。予算を銅貨一枚も余さず使い切ったので、誰かが自己負担をしているのではないかと確認されたのだ。
「ゴーレムニストって思っているより大変みたいだけど、獣型とか鳥型とか作りたいから頑張らなきゃ」
計算まで得意じゃないと駄目なのねと、ティアイエルは色々考え込む素振りは見せながらも元気なものだ。ドラゴンパピィとの友情も問題なしとわかって、後は目的に向けて邁進するのみなのだが、
「騎士様が乗るのに、どうして獣型なの?」
計算が終わったナージが、心底不思議そうな顔をした。カッコいいじゃない、そう? といった会話の後に判明したのが、人型以外のゴーレムは操るのが困難で頓挫した研究があることだった。
次に身を乗り出したのはラマーデで。
「今工房では何を作っているの? ギルド用のゴーレムって、どういうのの予定? 就職したときに作るものは自分で選べるの?」
「選べないと困るわ。鍛冶師の腕も磨いて、実家を立て直したいもの」
ミーティアも、ティアイエルも興味津々だが、そこにカルナックが口を挟んだ。問い掛けるのは、ゴーレムニストになってから、他国を訪ねることは可能かどうか。馬の世話をする都合でユージスとの会話も多かった彼は、態度から何か読み取っていたらしい。普段は他人の考えに口出ししないが、自分にも関わることなので、先程から質問を挟む機会を狙っていたのだ。
答えは『是』。ただし、続けて言われたのが、『誰か同行していることが望ましい』だ。もちろんこれにはラマーデが虚を突かれた顔になった。
「ゴーレムニストはねぇ、その国の開発内容を知っているから狙われるのよ」
それでなくても貴重な人材だ。技術を学んで、出身分国に戻る際は護衛が付いて当然。それでも移動中に奇禍に遭い、行方不明や死者は出ている。天災がほとんどだが、中には金持ちだろうと賊に襲われた例もあった。
「ラマーデちゃん、向こうの先生はいい人?」
「ユリディスせんせは、ナージせんせと一緒で風信器作るのが得意みたい」
「じゃあ、もし向こうに行ったら、工房の前にその先生の所に行くのよ?」
質問の詳細には答えず、ナージが生真面目な顔で言うものだから、ラマーデもこくこくと頷いたが‥‥カルナック達は『出国は難しいな』と肝に銘じていた。
なお、道中に危険なことはなく、無事にドワーフの集落に到着した。
ドワーフは酒好きだ。それは有名なことで、滅多にそれを裏切る者はいない。
だが、しかし。
「炉? 止めた」
カルナックの天界風料理でもてなすことは連絡済だった。大事な取引相手なので、もちろんゴーレムニストの卵達と経理担当候補は信頼されるように努めるつもりでもいた。
更に、ぜひともドワーフ族の鉄精錬技術や方法の一端を見学させてもらい、知らぬ技術は覚え、先方が使っていないものを知っていれば惜しみなく提供するつもりだったのだ。ティアイエルと美加とか沙羅とかミーティアは特に。
けれども酒好きの彼らが、思い切りよく作業を止めて、皆が来るのを待ち構えていたとは予想外。
ここは信者と春陽が『納品物の数量を点検してから』とぴしりと言い、ミーティア、セレス、ラマーデ、ティアイエルが品物の出来を確かめ良質と断言すれば、ギエーリがいささか大げさな口上ながらもドワーフ達の仕事振りを褒める。その間に、こちらも待っていた女性陣に導かれて、カルナックは沙羅と美加を助手に、持ってきた荷物を広げていた。お祭りのように集まって、何が出来るのかと楽しみにしている女性と子供を満足させなくては。
品定めが終わった人々も次々と応援にやってきて、集落の女性達もカルナックの手際を見たさに手伝ってくれ、子供達はティアイエルとギエーリ、ラマーデが引き受けた。
持っていった海産物や土産話、個人的に贈った酒、料理の腕に鍛冶の話、天界の品物の説明がよかったのか、一部でこれを寄越せ、駄目だとか、そういう騒ぎはあったが、ドワーフ達は大変な満足して彼らを送り出してくれたのだった。ナージが勝手に配ってしまった、信者の荷物の一部も貢献したかも知れない。
「山と作業場が見たいなら、今度はそう連絡してから来てくれ」
ここまで言ってくれたのだから、関係良好であろう。実際、来月にでもという話にもなった。
「この鉄で、どのくらいのものが出来るのかしら?」
帰り道、春陽の問い掛けにユージスが『ゴーレム二体と後何か少し』と答えた。馬車二両の鉄でそれだけだ。大変な材料と労力が必要だと実感させる返答である。
「次は実験しましょうね」
余った鉄で風信器を作るのだと浮かれているナージは、次回の集合時の課題をそう教えてくれた。