ギルフォードの迷宮1:モンスターパニック

■シリーズシナリオ


担当:紅茶えす

対応レベル:2〜6lv

難易度:普通

成功報酬:2 G 3 C

参加人数:8人

サポート参加人数:3人

冒険期間:10月25日〜10月30日

リプレイ公開日:2004年10月26日

●オープニング

 キャメロットから南西二日ほどの所にギルフォードという街がある。
 領主は、紅茶男爵の異名を持つ貴族。国より領土を与えられた貴族は、領土内に本邸を構え、またキャメロットにも参政のための別邸を持っているのが普通である。
 その紅茶男爵本邸にて、その事件は起こった。

 いつものように庭の手入れをしていた庭師が、庭の隅に大きな穴がぽっかりと開いているのを見つけたが始まりだった。
 少なくとも昨日まで、このような穴は無かったはずだ。
 昨日、ギルフォードでは規模の小さな地震があったが、そのせいかもしれない。
 庭師が穴を覗き込んでみると、獣のような不気味な唸り声が聞こえてきた。
 驚いた庭師は、慌てて執事へと報告した。

「何、庭に開いた穴から獣のような声が聞こえる?」
 執事の報告を受けた紅茶男爵は興味を持ったのか、衛兵を伴い自らその穴を確認に向かった。
 彼らが庭へと出たのと、穴から何かが這い出てきたのは同時だった。
「何だあれは‥‥モンスターか!?」
 這い出て来たそれは、どうやらズゥンビ化したコボルトのようだった。
 それも一匹や二匹ではない。次々と這い出してくる。
「男爵様、危のう御座います!」
 執事は紅茶男爵を守るようにしつつ、衛兵達にズゥンビコボルトの排除を命令したのだった。

 衛兵達は果敢に戦った。
 ズゥンビコボルトの多くは、武器すら持たず襲ってくるだけで動きも鈍い。しかし、斬っても斬ってもなかなか倒れない。
 一部のズゥンビ化したコボルトの中には、生前に使っていたと思われるコボルト特有の鉱物毒を塗った武器を持つ者もおり、それには衛兵達も手を焼いていた。

「まさか庭の地下からあのような魔物が這い出してくるとは‥‥」
 一時、屋敷へと避難した紅茶男爵。
「このまま衛兵達だけで殲滅できれば良いが、もしも抑えきれず、魔物を街へと解き放ってしまうことになれば大惨事だ。急ぎ、キャメロットへと連絡をとり、援軍を手配せねば‥‥。とは言え軍隊を動かすには時間もかかるし、軍隊が来れば民にも不安を与えてしまうだろう。やはりここは身軽な冒険者達に依頼するのが良かろうな」
「はっ、ただちに急使を送ります」

 屋敷の全ての衛兵を動員し、穴より這い出してくるズゥンビコボルトの殲滅を試みるが、コボルト戦士クラスのズゥンビも出現し、戦況は悪化し始めていた。

 ここは冒険者ギルド。
 冒険者達が仕事の斡旋を求めて集う場所である。
「仕事の斡旋か? 急ぎの依頼があるんだが引き受けてくれないか?」
 冒険者ギルドのおやっさんが依頼人を紹介する。
 依頼人は紅茶男爵の使いだと名乗り、紅茶男爵本邸の庭の地下から魔物が出現した経緯を説明する。
「本来なら足の速い馬車を用意したい所ですが、なにぶん急な事で用意することができませんでした。皆様には徒歩で向かって頂くことになりますが、幸いギルフォードまでは二日もあれば到着できます。食料は用意できましたのでお持ちになって下さい。宜しくお願いします」
 こうして、新たな依頼を受けた冒険者達。
 ギルフォードの地下に何が眠っているのか、今はまだ、誰も知る者はいなかった。

●今回の参加者

 ea0144 カルナック・イクス(37歳・♂・ゴーレムニスト・人間・ノルマン王国)
 ea0337 フィルト・ロードワード(36歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea0356 レフェツィア・セヴェナ(22歳・♀・クレリック・エルフ・フランク王国)
 ea0640 グラディ・アトール(28歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea0974 ミル・ファウ(18歳・♀・バード・シフール・イギリス王国)
 ea1402 マリー・エルリック(29歳・♀・クレリック・パラ・イギリス王国)
 ea3117 九重 玉藻(36歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea5592 イフェリア・エルトランス(31歳・♀・ナイト・人間・イギリス王国)

●サポート参加者

ハンナ・プラトー(ea0606)/ フルーレ・リオルネット(ea7013)/ イリヤ・プレネージュ(ea7328

●リプレイ本文

 依頼を受けた冒険者パーティ恒例の挨拶を交わし、信頼を築く冒険者達。
「苦しい戦いになるかもしれないけど‥‥みんな、頑張ろう!」
 騎士だが優しい性格で本来は戦う事をあまり好まないナイトのグラディ・アトール(ea0640)だが、ズゥンビコボルトの大群を放っておけず、被害を拡大させないため引き受ける事にしたのだ。
「僕のことはレツィアって呼んでね☆。僕たちが着くまでみんな生きててくれるといいな。怪我は治るけど死んじゃったら元には戻らないもんね。着いてからはもっと大変だろうけど」
 無邪気で天真爛漫なクレリックのレフェツィア・セヴェナ(ea0356)。
「助けを求める人を‥‥助けるのも‥‥聖職者の勤め‥‥神の為なのです‥‥」
 無表情で不思議な雰囲気を持ったクレリックのマリー・エルリック(ea1402)。
「直接的な戦闘は全然駄目なんだけど、補助的な役目は結構得意な方かな。兎に角、私に出来る事があればなんだってやってみるからね」
「シフールも大変だな‥‥」
 過重状態のバードのミル・ファウ(ea0974)からパックパックを受け取って馬に載せるナイトのフィルト・ロードワード(ea0337)。
 そしてギルフォードを目指し、出発する冒険者達。

 急ぎの旅とは言え、無理な強行軍をせずとも二日で到着するのだ。
 到着後はすぐに戦闘だろう。しっかり英気を養っておく必要もある。
 猟師セットを使い、獲物を捕って皆の食事に一品加えるマリー。
「肉は‥‥好き‥‥おいしいから‥‥」
 調理も彼女がしたものだ。
「‥‥まずは敵のポーンはポーンに任せ、ナイトとタワー、ビショップは敵の主力を排除。ナイト・タワーは武器持ちを。ビショップは戦士級を落として、最後にポーンを掃討すればチェックメイト、と」
 食後、大理石のチェス一式で作戦を説明しておくフィルト。
「あらかじめ策を練っておけば、道中そんなに考えることはほとんどない。後は剣を振るっていればいい。俺はそっちの方が楽だし、第一性分に合っている」

 予定通り、ギルフォードに到着した冒険者達。
 紅茶男爵本邸の近くまで行くと戦いの音が聞こえてくる。
 『疾走の術』で少しだけ先行する忍者の九重玉藻(ea3117)。空を飛ぶミルも共に先行する。
 到着と同時に高笑いをあげ『大ガマの術』を発動させる玉藻。
「お行きなさい! エリザベス!」
 大ガマのエリザベスを跳躍させて防衛線を張る衛兵達を跳び越え、敵のもっとも密集している所に突っ込ませる!
「「新手か!?」」
 警戒する衛兵達に、
「冒険者到着〜☆ あと一ふんばりだから一緒に頑張りましょう!」
 大声で衛兵達の士気を鼓舞する玉藻。
 続いて冒険者達が全員到着する。
「よし、決着をつけるぞ! 総員、反撃開始〜!」
 心強い援軍の登場に、衛兵達も攻撃に転じる。
「偵察してきたよ〜♪」
 上空を飛んで敵の内容を調べ、武器を持っていたり、特に手強いと思われるズゥンビの位置と数を把握し、仲間達に連絡するミル。
「私のお仕事は前線でズゥンビの相手だね」
 『オーラパワー』を掛け、ミルの報告とタイミングを合わせて突撃するハンナ・プラトー。
「ズゥンビコボルトですか。これまた奇妙なモンスターが庭から現れたものですね‥‥などと感心していないでさっさと退治するとしましょうか」
 仲間達の動きに合わせ、戦闘を開始するレンジャーのカルナック・イクス(ea0144)。
「まずは武器を持っている敵ならびに戦士級ズゥンビコボルトを優先的に叩く」
 そして衛兵達に、それら強敵には手を出さないように呼びかけるフィルト。
「頑張ってズゥンビ全部やっつけるんだから。それと怪我人の治療もね」
「大丈夫‥‥貴方達は‥‥私が治すから‥‥」
 負傷している衛兵達に応急手当と『リカバー』を状態に合わせて使い分けるレツィア。マリーも『リカバー』と『アンチドート』を掛けていく。
「衛兵達が体制を整える時間が必要のようね。こちらも配置に着くわ。援護は任せてちょうだい」
 屋敷の二階に回って狙撃位置を確保するレンジャーのイフェリア・エルトランス(ea5592)。
「私を楽しませてね♪」
 衛兵や仲間達を巻きこまないよう声を掛け『ストーム』を発動させるイリヤ・プレネージュ。敵の前線を少しでも後退させようと試みる。
 フィルト達に順次『オーラパワー』を付与していくフルーレ・リオルネット。対アンデッドには非常に有効である。
「敵を知り、己を知れば百戦危うからず、か‥‥」
 援護を受けて最前列へ出るフィルト。
「こいつらを放っておけばもっと大きな被害が出る‥‥だから、絶対に負けるわけにはいかない!」
 前衛に出てロングソードを構えるグラディ。武器持ちや戦士クラスなどの強敵を重点的に相手をする。
 弓での後方支援を得意とするカルナックだが、最近覚え始めたスピアを使って前衛に立つ。
「頑張れ‥‥負けるな‥‥力の限り‥‥」
 『グッドラック』を発動させ、仲間達の支援に回るマリー。
「死して彷徨いしモノよ‥‥神の名において浄化を‥‥」
 前衛達の少し後ろで、魔法を使うタイミングをはかる。
「これ以上の悲劇を防ぐ‥‥それが私の願い」
 『シューティングPAEX』で的確に、衛兵達を追撃する敵、仲間の背後や側面に迫った敵など、味方が危機に陥った時に狙撃による救助を中心として行動するイフェリア。
 相手との距離や状況に応じて『オーラショット』を交えた攻撃、ダメージは『オーラリカバー』で回復するグラディ。
 上空待機のまま戦場全体を見渡すミル。
「逃げ足には自信があるし、ズゥンビをちょっと引きつけるくらいなら‥‥ね。ちょっと怖いけど」
 苦戦している衛兵を発見すると、攻撃範囲ギリギリに高度を下げて飛び回り、囮役になると同時にハンナに救援要請を呼びかける。
「思いっきり、いってみよう!」
 それに合わせて戦場を駆け回るハンナ。
 重傷を負った衛兵を屋敷の中に避難させ、ダメージの少ない衛兵には密集陣形を取らせ、足を狙って攻撃するように指揮を執るフィルト。
「何事にもエレガントさが必要さ」
 前衛として指示を受けつつ戦うフルーレ。『オーラパワー』が切れる前に余裕を見計らって掛け直していく。
「次はあそこよ! お行きなさい!」
 冷静に戦況を分析してエリザベスに指示を出す玉藻。巨体から生み出される力任せの攻撃でズゥンビコボルトが動かなくなるまで叩き潰していく。
 玉藻自身はイリヤの護衛しつつ、『ストーム』と連携しての手裏剣投擲で前衛の援護に回っている。
「それ以上は近づかせないよ」
 スピアで常に自分の間合いを作って戦うカルナック。
「絶対に守ってみせる‥‥守らなきゃいけないんだ‥‥!」
 仲間達と連携してズゥンビコボルト戦士に当たり、常に仲間の安全を守ることを第一に考えて行動、そのために自分が傷つく事は厭わない覚悟のグラディ。
「ふふ、もう逃げられない‥‥人を傷つけた報いは受けてもらうわよ」
 口元に氷のような微笑を浮かべるイフェリア。人に対する献身と魔物に対する秘めたる狂気が同居する。狙いを定め、ズゥンビコボルト戦士の武器を持った腕を『シューティングPAEX』で打ち抜く!
 さらに攻撃魔法をズゥンビコボルト戦士に集中させるべく、護衛と時間稼ぎに徹するフィルト。
「死してなお人に向かってくる‥‥何が原因かはわからないけどもう一度おとなしく眠っててね」
 『ホーリー』を発動させ、聖なる力で攻撃するレツィア。
「神の名において‥‥今‥‥奇跡の力を‥‥ピュアリファイ!」
 浄化の魔法を発動させるマリー。
「神の力の元に‥‥朽ちよ‥‥」
 ズゥンビコボルト戦士が消滅していく。

 冒険者達の活躍によって、ズゥンビコボルト戦士や武器持ちから次々に撃破されていった。
 そして勢いに乗った衛兵達と協力し、ついには庭に這い出してきていたズゥンビコボルトを全滅させる事に成功したのだった。
 残るは累々たる屍と、不気味に口を開ける穴。
 衛兵には重傷者も出ているが、死者は無し。冒険者達は『リカバー』と『アンチドート』で回復することができている。
「衛兵並びに冒険者諸君よくやってくれた。ギルフォードの街に被害が及ばずに済んだのは諸君のおかげだ。礼を言うぞ」
 執事を伴った紅茶男爵が労いと感謝の言葉をかける。
「さて、この穴の奥に何かあるんでしょうかね‥‥?」
 穴を覗き込むカルナック。暗くて分からないが、かなり奥まで続いていそうである。
「バリケードで一時的に封鎖した方がいいよね」
「この穴に関して何か心当たりは‥‥?」
「うむ、とりあえず、バリケードを築いて塞いでおこう。この穴に関しては文献を調査している所だ。何かあれば、また諸君に依頼する事もあるかもしれん」
 ミルの進言を聞き入れ、玉藻の質問に答える紅茶男爵。
「死体は焼却を提案するわ。疫病の元となる可能性もあるし、魔物の死体なんて完全に消去すべきよ」
 矢の回収を終えたイフェリアが提案する。
「そうするとしよう。処分はこちらに任せておきたまえ」
 バリケードの準備や屍の処分の指示を出していく紅茶男爵。
「‥‥この穴の下に一体なにがあるんだ‥‥?」
 バリケード作りに協力しつつグラディが呟く。
 再び『大ガマの術』を発動させ、協力する玉藻。
「うわぁ!?」
「危ない‥‥!」
 転びそうになったレツィアをすんでの所で抱き留めたフィルト。危うく穴に落っこちる所である。何か芽生えるものがあったかどうかは不明だが。
 そんなちょっとしたハプニングもあったが夕刻にはバリケードも完成。ひとまず、これで安心だろう。
「‥‥ごはん」
 ぼそりと呟くマリー。
「ああ、そうだ。今夜はウチで食事をしていってくれ。自慢の紅茶も御馳走するぞ」
 紅茶男爵は冒険者達を屋敷に招き入れ、御馳走を振る舞ってくれたのだった。
 依頼を達成し、キャメロットへの帰路に着く冒険者達。
 しかし、大きな謎はまだ残されたままであった。