第3R『筋肉料理人vs筋肉騎士団』

■シリーズシナリオ


担当:紅茶えす

対応レベル:6〜10lv

難易度:普通

成功報酬:3 G 40 C

参加人数:7人

サポート参加人数:1人

冒険期間:07月04日〜07月10日

リプレイ公開日:2005年07月08日

●オープニング

 キャメロットから南西二日ほどの所にギルフォードという街がある。
 そこに『レックス亭』という一軒のスープ専門店があった。
 シェフのレックスは、世界各地を巡って料理の腕を磨いてきたというので評判である。

 ここは冒険者ギルド。
 冒険者達が仕事の斡旋を求めて集う場所である。
「仕事の斡旋か? ギルフォードのレックス亭からの依頼があるぞ」
 いつものように冒険者ギルドのおやっさんが依頼書のひとつを見せる。

『求む、冒険者!
 この度当店では、客層拡大を狙っての特別イベント期間を実施します。
 イベント内容は、お客様が当店の闘士に挑戦し、一本取れば料金半額というもの。
 腕に自信のある冒険者などがターゲットですが、その分、荒事に発展してしまうようなトラブルも予想されます。
 そこで、冒険者を用心棒として雇いたいのです。もし良ければ、ウェイター・ウェイトレスや調理補助、闘士の仕事も手伝って頂ければ幸いです。
 ギルフォード・スープ専門店『レックス亭』店主レックス』

 所変わって。
 ここは筋肉騎士団宿舎。
 なぜか旗持ちの掲げる軍旗にはジャパン語で『天手力男神』と力強く書かれている。
 今日も、照りつける太陽の下、筋肉騎士達が鍛錬に励んでいた。
「隊長、ギルフォードにある『レックス亭』という店に『筋肉料理人』と名乗る傑物が居るらしいですぞ」
「ほう、筋肉料理人とな?」
「世界各地を巡って料理と筋肉を磨いてきたとか」
「うむ、筋肉と料理は切っても切れないものだからな」
 汗を滴らせ、気合いの入ったポージングを交えた会話。これが彼らの日常である。
「筋肉自慢の闘士によるパフォーマンスが店の売りらしいのですが、丁度良い事に『特別イベント期間』とかで、客が闘士に挑戦し、一本取れば料金半額だそうです!」
「ほほう。では、筋肉料理人とやらの筋肉・料理両方の実力を試す事が出来、なおかつ、半額とはな。我らが筋肉騎士団もまだまだ人材不足、その筋肉料理人が噂通りの傑物ならば、是非ともスカウトせねばならんな!」
 こうして筋肉騎士団は、総出でギルフォードへと向かうことを決定したのだった。

 嵐を呼ぶお客様の予感に鳴動するレックス亭。
 冒険者達の運命や如何に!?

●今回の参加者

 ea2789 レナン・ハルヴァード(31歳・♂・ファイター・人間・フランク王国)
 ea5153 ネイラ・ドルゴース(34歳・♀・ファイター・ジャイアント・モンゴル王国)
 ea7487 ガイン・ハイリロード(30歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea7694 ティズ・ティン(21歳・♀・ナイト・人間・ロシア王国)
 ea9515 コロス・ロフキシモ(32歳・♂・ファイター・ジャイアント・ロシア王国)
 eb0970 ゴルス・ヴァインド(50歳・♂・ファイター・ドワーフ・イギリス王国)
 eb1600 アレクサンドル・リュース(32歳・♂・ファイター・ハーフエルフ・ビザンチン帝国)

●サポート参加者

ユリア・フィーベル(ea5624

●リプレイ本文

「よろしく頼もう!」
 元気よく、ポージングで挨拶するファイターのレナン・ハルヴァード(ea2789)。筋肉料理人レックスの依頼を皆勤賞でこなしてきた影響だろうか。
「間に合って一安心だ」
 どうやら遠出をしていたらしいファイターのアレクサンドル・リュース(eb1600)。今回も耳はバンダナで隠している。
「噂ですけど、筋肉騎士団が総出で遠出したと聞きました。ギルフォードに向かったって‥‥」
 さり気なくレナンへ情報提供するユリア。皆に緊張が走る。偶然ではないだろう、彼らに遭遇する可能性は極めて高い‥‥!

 レックス亭へとやってきた冒険者達。
「今回もよろしく頼む、依頼人殿。また大胆なイベントを行ったものだな」
 挨拶するファイターのコロス・ロフキシモ(ea9515)。
「誰だろうと、メイドの強さを味合わせてあげるよ。って、今はウェイトレスだね」
 ヤル気が空回り気味なファイターのティズ・ティン(ea7694)。イギリスにおける『メイド』は、『貴族令嬢の他家での花嫁修業』を指す言葉だが、特に咎める者はいなかった。
「ガイン・ハイリロード(ea7487)だ、よろしく頼む」
(「筋肉料理人ねえ‥‥確かに料理には体力とか必要な気はするが‥‥なんか違う?」)
 ポージングで裸エプロン(?)な姿のレックスに、素直な感想を抱くガイン。
「正直、家事等は得意ではないが、力仕事とかなら何とでも、こき使ってやってくれ‥‥暇な時で良いから、店で一曲弾かせてもらえると嬉しい」
 ナイトながら、ガインの演奏の腕はかなりのものである。
「この『漢の褌』‥‥見た瞬間、レックス殿の顔が浮かんだぞ。土産として適切かと聞かれれば、返答に窮するのだが‥‥」
「これは‥‥素晴らしい! こんな高価な物を本当に良いのか?」
「良ければ貰ってくれ」
 アレクサンドルの土産は、レックスに喜ばれた。
 早速、『漢の褌』に履き替えたレックスは、せっかくだからとエプロンを脱いでポージング!
 あまりの眩しさに、その場の全員が一瞬目を奪われたのだった。

 今日のレックス亭はいつにも増しての繁盛振り。
 特に、料金半額を目指し、闘士に挑戦する冒険者達で賑わっている。
 レックスの『漢の褌エプロン』姿もウケが良いようだ。
「〜♪」
 開店準備では、裏方で水汲みや薪割りといった仕事を担当していたガインも、開店中は闘士の舞台入場など、雰囲気に合わせたリュートベイル演奏が大好評!
 露出度の高い衣装で、レックス亭闘士として人気を得つつあるファイターのネイラ・ドルゴース(ea5153)。
 ファイターのゴルス・ヴァインド(eb0970)やコロスは、用心棒として睨みを利かせつつ、闘士としても活躍している。
「私も、ウェイトレスの仕事が板に付いてきたなぁ」
 雑務全般をそつなくこなすティズ。
 同じく手慣れてきた雰囲気のレナンだが‥‥あ、皿をひっくり返して怒られてる。
「くそ〜油断禁物かい」
 誰しも慣れてきた頃には気がゆるんでしまうものである。

 そんな中、筋肉騎士団御一行様が来店!
 団体客ということで、ティズと共にレックス自らが大テーブルへと案内する。
「我々は筋肉騎士団! 貴公が筋肉料理人と名高いレックス殿か?」
「いかにも」
 挨拶代わりに力一杯ポージングを決める筋肉騎士団に呼応するように、レックスもエプロンを脱いでポージング!
「「「びゅーちほーっ!!」」」
 清々しいまでに純白の『漢の褌』と見事な肉体は、筋肉騎士団を魅了したようだ。
「早速だが、ここの闘士から一本取れば料金半額というのは本当か?」
「勿論だ」
 最初の筋肉騎士数名は闘士達と互角に渡り合い、勝ち負けに一喜一憂していたが、それがエキサイトしてくると、冒険者達の出番である。
 完全燃焼させた方が良いだろうと判断したレックスは武器の使用を認めた。越えてはならない一線は両者とも分かっているだろう。
「まずはわしが一騎打ちで相手じゃよ。どうじゃ、やってみようとする奴はおるかい」
 一番手に名乗り出たのはゴルス!
「ただの老骨だと思ってたら大間違いじゃよ。見よ、この体を!」
「「「びゅーちほーっ!!」」」
 気合いの入ったポージングを決めるゴルスを讃える筋肉騎士団!
「ぬぅん!」
 同じく、ポージングを決めて相対する筋肉騎士!
 彼らの見事な攻防を見るうちに、順番を待ちきれなくなった筋肉騎士達が、次々と相手を指名して乱入してくる!
 素手対戦を望む者、武器使用を望む者様々だが、舞台入り乱れての同時バトルに発展!
「おぬしらが噂に名高い『筋肉騎士団』か。その力、試させてもらおう‥‥。その鍛え抜かれた筋肉、飾りではなかろうな?」
 完全重装備で迎え撃つコロス!
「勿論だ! ぬぅん!」
 ジャイアントソード一本で肉体を誇示する筋肉騎士!
「何でも使いこなすことこそ流派レオンの真髄。緋色のアレクサンドル‥‥参る!」
 チェーンホイップとパリーイングダガーを手に迎え撃つ!
「戦いは力だけじゃないって事を見せてあげるよ♪」
 ウェイトレスの衣装を脱ぎ捨て、普段の魔法少女ルックで舞台へ上がるティズ!
「筋肉騎士団、知り合いに聞いた事がある」
 ガインと相手は両者素手。どうやら両者はオーラを得意とするようだ。
 ネイラと相手も同じく素手。こちらは純粋に格闘戦。ガッチリ組み合っての力比べ!
「ぬおおっ!」
 おおっと筋肉騎士が打撃で攻める!
(「そうだ、筋肉バトルは避けちゃいけない。己の肉体を誇示するためなら、どんな攻撃も受けきってみせる!」)
 見事な心意気のネイラ!
「ショット2連撃4段‥‥8発の魔弾を耐え切ったらあんたの勝ちだ、いくぜ!」
 高速詠唱を交えたガインの『オーラショット』連射!
 筋肉騎士も『オーラショット』を撃ち、お互いに炸裂する乱打戦!
「ディマーナクの名剣の威力、試させてもらうぞ!」
 魔剣トデス・スクリーで攻め立てるレナン!
「正面から叩き潰すッ! ムウン!」
 『スマッシュ』と『フェイントアタック』を織り交ぜるコロス!
 身の丈の倍はあろうかというラージクレイモアを振り回すティズ!
「ティズちゃ〜ん!」
 その萌え萌えな戦闘スタイルには密かに固定ファンが出来つつあるようだ。
(「む‥‥。ノリが大切ということで努力してみたが、やはり性格的に無理が」)
 パリーイングダガーで受け流しつつ、そんな事を考えているアレクサンドル。
「瞬殺なんて事が許される、武闘大会にでも出ていた方がよかったかもねえ‥‥」
 苦しいながらも隙を窺い、防御に徹するネイラ。
「良い攻撃だが‥‥効かぬな」
 今度は『ダブルブロック』と『ガード』を駆使して守勢に回ってみせるコロス。
 見事な戦いぶりに、店内のテンションも最高潮を迎えようとしている!

 一足早く試合開始していたゴルスは、筋肉騎士の攻撃をシールドで見事に捌き続け、ついに『スマッシュ』で一本!
 それを皮切りに、
(「すこぶる頑丈そうだし大丈夫だろ」)
 そう判断したレナンも大技『スマッシュEX』で一本!
 アレクサンドルもチェーンホイップで絡め取り、『スタンアタック』で一本!
「ムオアァァッ!!」
 コロスも『スマッシュ+フェイントアタック』で一本!
 続いて、ティズの『スマッシュ+バーストアタック』を受けた筋肉騎士の剣が折れ、これまた見事な一本勝ち!
「メイドの凄さを思い知った?」
 子供の様に跳ねて、アピールするティズ。
「タイガースープ・レックス!」
 続いて、筋肉騎士が攻め疲れた一瞬の隙を見逃さず、見事な『スープレックス』を決めるネイラ!
「こら、注文はジャーマンスープだ!」
 笑いながらツッコミいれるレックス。そんな愛嬌もみせ、
「さすがだな、是非とも筋肉騎士団に‥‥」
 最後は握手‥‥という所で、筋肉騎士がふらつく。
「っと、申し訳ない。凄まじいスープレックスだったのでな」
 何かを掴んで持ちこたえた筋肉騎士の手には、ネイラの衣装の一部が‥‥。
「なんでこうなるの!」
 期待通りの結果に、お客さん達の盛り上がりも最高である。
「筋肉騎士団、またおぬしらとは刃を交えてみたいものだな」
 対戦相手と握手するコロス。
「すまん、どうにも加減が利かなくてな」
「それはお互い様だ。良い勝負だったぞ」
 オーラショットの撃ち合いに勝ったガインは、予想以上にダメージを負った筋肉騎士にヒーリングポーションを提供する。ここにもひとつ、友情が芽生えていた。
 筋肉騎士団員の神聖騎士の『リカバー』によって、筋肉騎士達と冒険者達はダメージを残すことは無かった。
 全員、冒険者側が勝ってしまったのは商売的には少し勝ちすぎだが、潔く負けを認めた筋肉騎士達は、熱心に冒険者達を筋肉騎士団へと勧誘するのだった。

 その後、レックスと筋肉騎士団は親睦を深め、
「そうだ、我々の大好物を使って、何か筋肉料理を作れないだろうか?」
 彼らの持ち込んだ鴨肉を使った新作スープも試作された。
「舌に馴染んできたよ、ここの味」
 筋肉騎士団隊長ネルソン考案の『フルネルソンスープ』に舌鼓を打つレナン。
 ちなみに、レックスのアレンジ版『ハーフネルソンスープ』も同時に試作されている。
「料理も覚えることにしたさっ‥‥もうちょっと乗馬が上手くなってからだけど」
 見よう見まねで挑戦したレナンのスープを味見をした全員の表情が強張る。
「‥‥あれ? やっぱまずかったか」
「料理修業がしたくなったら、いつでも来い」
 頭を掻くレナンに、レックスはそう言ったのだった。
「あっ、何か筋肉ついちゃってるよ!」
 腕を見て、泣きそうな顔をするティズ。これも成果のひとつだろうか?
「楽しい仕事だったけど、もう脱ぐのは嫌だよ」
 そう言うネイラだが、
「ネイラやティズ目当てのお客も増えてきていたから残念だ。気が向いたらいつでも手伝いにきてくれ!」
 レックスにそう言われると悪い気はしない。いずれ彼女達が看板娘になっている姿も想像に難くない。

 キャメロットへの帰路。
「そう言えば、儂の弟子がケンブリッジに支店を出したいと言っていたな。本店ともども、宜しく頼むぞ!」
 ポージングして冒険者達を見送るレックス。
「しかし、筋肉料理人に筋肉騎士団か‥‥色々な御仁がいるな」
 アレクサンドルが呟く。
「いずれは俺の手で‥‥楽しみにしているのだな」
 意味ありげに言うコロス。
 帰りの食料を用意し忘れていたティズに、食料を分ける仲間達。
 拭いきれない確執もあるが、概ね、友情が芽生えたと言って良いだろう。
 レックス亭と筋肉騎士団、そして冒険者達に栄光あれ!