正義のヒーロー3『王様の鼻は豚の鼻』

■シリーズシナリオ


担当:紅茶えす

対応レベル:6〜10lv

難易度:普通

成功報酬:4 G 9 C

参加人数:8人

サポート参加人数:4人

冒険期間:07月12日〜07月18日

リプレイ公開日:2005年07月20日

●オープニング

 キャメロットから南西二日ほどの所にギルフォードという街がある。
 街の周辺には農耕や狩猟を中心とした小さな村が点在しており、森林地帯が多い。
 領主である紅茶男爵の方針で、森林開拓や街道の整備に力を入れているのが特徴のひとつである。
 道を作るのに必要な物のひとつが『石』だ。

 オーガ山賊団エヴォリューションの秘密アジトにて。
「首領、コボルト怪人ボルツもやられたって本当でヤンスか!?」
「ええい、うるさい馬鹿者! 忌々しいギルセイヴァーΧめ‥‥」
「ブヒヒヒッ、お困りのようですなぁ、首領」
「オーク怪人デイブか、貴様が居ると暑苦しくてかなわん!」
「たいそう苛立ちの御様子で‥‥その原因、わたくしめが解消して御覧に入れるブヒ」
「行け! 失敗は許さぬぞ!」

 採石場。そこは様々な用途に使われる石を削りだすギルフォード重要地点のひとつ。
 ギルセイヴァーΧによって取り戻された平和の元、今日も人足達が仕事に精を出している。
 だが再び、この地を狙う悪の影は、すぐそこまで迫っていた。
「ブヒヒヒッ、たった今より、この採石場はオーガ山賊団エヴォリューションの物ブヒ!」
 覆面ゴブリン(通称ひらりん)を多数引き連れて現れたのは、かなり肥満の進んだ肉体に、豚のような覆面をした男だった。
「この世で最も美しい進化を遂げたオークの名を持つわたくし、最高の美を誇るオーク怪人デイブ様の前に平伏すが良いブヒ!」
「は‥‥なんだって?」
 デイブの常軌を逸した発言に、思わず間抜けに聞き返してしまう採石場責任者ロック。
「わたくしの美しさに言葉もない御様子ブヒ」
「‥‥」
 展開に着いていけず、目頭を押さえる人足達。
「さあ、貢ぎ物としてギルセイヴァーΧを差し出しなさい。さすれば、貴方達全員を栄光あるオーガ山賊団エヴォリューションの一員にして差し上げるブヒ」
 なおも宣うデイブを後目に、呆れた様子で避難所へと去っていく人足達であった。

 ここは冒険者ギルド。
 冒険者達が仕事の斡旋を求めて集う場所である。
「諸君、事件だ!」
 いつもと違う口調で冒険者ギルドのおやっさんが依頼書のひとつを見せる。

『ギルセイヴァーΧ宛
 採石場に再び、オーガ山賊団エヴォリューションが現れました!
 オーク怪人デイブと名乗る輩で‥‥その、何というか、かなりの危険人物なのです!
 どうか、デイブを倒し、採石場に平和を取り戻して下さい!
 ギルフォード採石場責任者ロック』

「敵は、『貢ぎ物としてギルセイヴァーΧを差し出せ』などと、ふざけた要求してきたそうだ。
 諸君! オーク怪人デイブに正義の制裁を下すのだ! ギルセイヴァーΧ出動!」
 ノリノリのハイテンションで、冒険者達を送り出すおやっさんであった。

●今回の参加者

 ea0029 沖田 光(27歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea1450 シン・バルナック(29歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea2207 レイヴァント・シロウ(23歳・♂・ナイト・エルフ・イギリス王国)
 ea2699 アリアス・サーレク(31歳・♂・ナイト・人間・ノルマン王国)
 ea2889 森里 霧子(30歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea2929 大隈 えれーな(30歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea4137 アクテ・シュラウヴェル(26歳・♀・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)
 ea9420 ユウン・ワルプルギス(20歳・♀・ウィザード・ハーフエルフ・ロシア王国)

●サポート参加者

逢莉笛 鈴那(ea6065)/ ラピス・リーフセルフィー(ea6428)/ 白野 弁十郎(ea7598)/ 神哭月 凛(eb1987

●リプレイ本文

「ギルセイヴァーΧを貢ぎ物にだと? オーク怪人デイブ、奴は何様のつもり‥‥ああ、王様のつもりなのか。オークロードだから」
 手を打ち、何か納得しているナイトのアリアス・サーレク(ea2699)。
「相変わらず相当頭が足りない輩のようですわ‥‥。ギルセイヴァーΧ、出動ですわね」
 出動を促すウィザードのアクテ・シュラウヴェル(ea4137)。
「イギリスって不思議なトコだよね、やっぱ。ギルフォードの平和は任せたよ!」
 アクテ達にお弁当を手渡す鈴那。
「ラッキーカラーは赤、皆様のご武運をお祈りします」
 占いの結果を告げ、SCROLLofクーリングで作った氷を入れた水袋を渡す凛。
「オーク怪人‥‥強そうだけど、美形を名乗ってるけど‥‥所詮はただの豚ですから、残念」
 アリアスを見送り、遠い目になるラピス。
「仮面を剥せば、貴殿好みの燻銀かも知れんじゃないか!」
 そう言って、忍者の森里霧子(ea2889)を励ます弁十郎であった。

 避難所にて。
「武器は隠し、リボンはすぐに解ける様にしてある」
 貢ぎ物らしく、仲間達をリボンで結ぶ霧子。人足達にも協力要請しておく。
「さあ、王者の投降だ。胸を張れよ諸君」
 頬と唇に紅を引き、堂々たるナイトのレイヴァント・シロウ(ea2207)。美を主張する輩と勝負しようという心意気らしい。

 そして、採石場。
「大丈夫‥‥きっとみんなが来てくれる」
 いつも遅れてばかりではいけないと、馬を飛ばして誰よりも早く到着していた志士の沖田光(ea0029)。だが、早すぎて孤立し、捕まっていた‥‥。
 そこへ冒険者達が、人足達に連れられる形で姿を現す。
「約束通り、ギルセイヴァーΧを貢ぎ物にしてきたブヒね。喜びなさい、貴方達は栄光あるオーガ山賊団エヴォリューションの‥‥」
 尊大に言うオーク怪人デイブを遮り、
「真に魅力ある組織ならば、一員に勧誘するよりもあちらから是非とも一員に、と言ってくるだろう。それまで私達がお遊戯してあげるよ」
 そう言って、人足達を退避させるレイヴァント。
「中座できたな? 今のうち退避してくれ。ご協力感謝する!」
 脱出してきた人足達を避難誘導する霧子。
(「‥‥邪魔な見張りは寝ててくれ」)
 『春花の術』で見張りのひらりんズを眠らせ、
「おまたせ♪ ラッピングに時間かかっちゃった☆ 超絶美形デイブ様、今迄遇った美形の誰より素敵! お土産よりも先に、私をあ・げ・る♪」
 そう言って登場してから、吐き気に耐える霧子。
「私は美しく寛容な男、遅れた事は許すブヒ♪」
 デイブは両手を広げ、女性陣を侍らせて喜んでいる。
「デイブ様がビューティーコンテストに参加すれば、ぶっちぎりで優勝だったのに」
 腹筋に力を入れて笑わないようにし、作戦コードH(褒め殺し)を発動するウィザードのユウン・ワルプルギス(ea9420)。
「勿論。私が最も美しいのは一目瞭然ブヒ♪」
「美しいだけでなく強さも兼ね備えたデイブ様がいるから、エヴォリューションは成り立っているんだよ」
「よくお解りブヒね♪」
「でも、あの覆面ゴブリン達はデイブ様の部下としては、あんまり美しくないね」
「そうなのブヒ。ひらりんズにも美しきオークの覆面をさせるべきだと‥‥」
「デイブ様の折角の美しさを邪魔してるんじゃないかな?」
「なるほど。ちょっとお前達、下がるブヒ」
 ユウンの口車に乗り、ひらりんズを下がらせて胸を張るデイブ。
 続いて、『人遁の術』で『親愛なるデイブ様にメロメロな酒場娘』という設定に変装した忍者の大隈えれーな(ea2929)が、うぞぞっとなるのを我慢して、
「ささ、グーッといってくださいませ、デイブさま★」
 禁断の壷に入った馬乳酒を勧める。ちなみに、彼女は食料を忘れるというアクシデントもあったが、弁当と仲間達の心遣いで空腹は免れていた。
「気が利くブヒ」
 褒め殺しと酒に気持ちよくなったのか、覆面と下着だけの姿になり、ぷるぷると贅肉を揺らすデイブ。
「デイブさま、お邪魔でしたらお持ちしましょうか?」
 さりげなくデイブの戦槌を預かり、こっそり隠すえれーな。
 こうしてデイブは、いつの間にか、完全に丸腰にされていたのだった。

 冒険者達は、全員が貢ぎ物のフリをしていたわけではなかった。
『待てぇぇぇい!』
 悪事を咎める叫び声!
 背を向けて崖の上に立つ複数の影!
「オーク怪人デイブよ! 『美』とは一人一人の内なる心の動き、ならばそれは、何人も他者によって侵され変えられることはない!」
 『オーラエリベイション』を発動させ、ビシィっとデイブを指差すアリアス!
「権威と暴力を持ってひらりんズに己を賛美させる愚か者、人、それを『裸オークの王様』という!」
 ひらりんズを二刀流でバッタバッタと切り払う!
「まだ残っていましたかギルセイヴァーΧ! ブヒヒッ、すでにこちらの皆さんは私の美しさにメロメロ!」
 そう言って、ひらりんズに命令するかのように、貢ぎ物となった冒険者達に指示を出すデイブ。
「って、メロメロなわけあるかっ! オークもそこまで巨デブちゃうわ! 真の美形は配下すら華麗にバク転するものだ! 居眠りせずにな!」
 ひらりんズを『春花の術』で眠らせる霧子!
「君の美は確かに愛に満ちていた。だがしかし、その愛は侵略行為! 覚悟完了、当方に迎撃の容易有り!」
「中身の伴わない美しさは、本当の美しさとは言えない‥‥オーク怪人デイブ、お前に今偉大なる先人の言葉を教えよう『飛ばないオークは只の豚』だッ!」
 レイヴァントと光が宣言する!
 そして、登場したのは仲間達だけではない!
「来ませい、ギルシャドウムーンが愛馬! 火駆・天・王!!」
 ウォーホースを呼び、
「君が美しさを誇るならば、私も一つ誇ろう。この気高さと勇気。頑強なる骨と優雅に伸びた四肢。豊かな胸と美しい尾! 火駆天王よ、我が愛馬よ! 誇れ。汝は美しい!」
 飛び乗るレイヴァント!
「煌めく神秘ギルジルコン、腐女子の美学によって成敗いたす! 来いフレンダ〜!」
 愛犬を呼んで、武器を受け取る霧子。そして『分身の術』発動!
「いくぞ、『結晶!』‥‥ギルフォード戦隊行動隊長、ギルクリスタル!」
 『クリスタルソード』&『フレイムエリベイション』を発動する光!
「勘違いした怪人がどいういう反応を示すのかという疑問も綺麗に解消! 悠久の探求者ギルトパーズ!」
 言いたい放題のユウン!
「黒き衣にエプロン着けて、今日のおかずはトンカツです!? ヒレかロースか、このギルジェットにおまかせですわ!!」
 どこからともなくシークレットダガーを出すえれーな!
「悪を切り裂く一輪の花、ギルガーネット参上! 豚が美しさを語るなんて百万年早いですわ。本当の美しさを貴方に教えてあげましょう」
 道中に摘んだ赤い野薔薇を投げ、『フレイムエリベイション』を発動するアクテ!
「野に咲く花、空を飛ぶ鳥、そしてそこに転がる石ころさえ、それぞれたった一つの美しさを持っている、それが判らず『美しい進化』と言う貴様に、勝ちは無い! 銀の月龍ギルムーン、ここに光臨!!」
 小太刀を鞘に戻して『オーラシールド』を発動するアリアス!
「さあ行くぞ諸君。Ahead Ahead Go Ahead だ! 銀の剣で夜を斬り、金の翼で騒々しく夜明けを告げ、百鬼夜行をJUSTに斬るぞ! 返事はどうした!」
『イエッサー!』
 ギルシャドウムーン=レイヴァントの号令に、ギルセイヴァーΧ戦闘開始だ!

「ええい、裏切り者ともども抹殺するブヒ!」
「「「ゴブ〜」」」
 デイブは慌てて、ひらりんズに命令するが、自ら遠ざけてしまったため反応が遅い。
「ファイヤー・ギルローズ! 花々の、自然の美しさを知り自らを省みなさい! 貴方達に美しさなど欠片も無い」
 たいまつの炎を『ファイヤーコントロール』で薔薇の形にした後、拡散させてひらりんズを蹴散らすギルガーネット=アクテ!
 デイブは丸腰のまま、あっさり孤立してしまった。
 そこへ『フェイントアタック』を仕掛けると見せかけ、覆面を剥ぐギルジルコン=霧子!
「私の真に美しい顔を晒してしまうとは。さあ、平伏すが良いブヒ!」
 それでも尊大な態度のデイブ!
(「‥‥万一を期待した私が馬鹿だった」)
 その場の全員が「剥ぎ取る前とどこが違うんだ!?」と思ったに違いない。
 戦槌も無く、『スマッシュ』も撃てないデイブは苦し紛れに拳を振り回す!
 ギルセイヴァーΧ、怒りのラストアタック!
「当たらなければ意味はないよ。ギル・インビジブルアーム!」
 デイブの拳に『サイコキネシス』で干渉するギルトパーズ=ユウン!
「美しさとは声高に叫ぶものではなく‥‥『魅せる』ものだ! ソードエンド・ムーンセイヴァー!」
 ギルムーン=アリアスの『カウンターアタック』!
「紅のオークと染まりて、天高く飛べ‥‥ファイナルギルフレアー、エクスプロージョン!」
 ギルクリスタル=光の『ファイヤーボム』!
「今だ! みんな!」
 その声に、ギルジェット=えれーな、ギルシャドウムーン=レイヴァントが切り込む!
「ファイナルギルローズ! 花に代ってお仕置きですわ!」
 そして、ギルガーネット=アクテの『ファイヤーコントロール』で操る炎がデイブを崖に追い詰める!
「身の程知らずを地獄で某美形に詫びて来い!」
「ブヒ〜ッ」
 既視感を覚えつつ、『微塵隠れ』でデイブを吹っ飛ばすギルジルコン=霧子!

 こうして悪は滅び、採石場に平和が戻った。
 結局、デイブには格好良い最後は許されず、丸焦げで残っていた。
「焼き豚‥‥、屋外バーベキューに良い季節ですけど、これはさすがに食べる訳にはいきませんわねぇ」
 溜息をつくギルガーネット=アクテ。
「恐ろしい敵だった‥‥ジャパンの諺に『豚鬼もおだてりゃ木に登る』というのがあるんですが、オークっておだてるとほんとに木に登るんでしょうか?」
 勘違いならば、ギルクリスタル=光も負けてないかも?
「こんな一文がある。『美を知る者は孤独なり。徒党を組めばやがて馴れ合い腐りゆくまで』とね。もう少し、胸の中に己だけの美を持つべきであったね」
 そう締めくくるギルシャドウムーン=レイヴァントであった。
 頑張れ負けるなギルセイヴァーΧ!
 ギルフォード戦隊に栄光あれ!

●ピンナップ

アクテ・シュラウヴェル(ea4137


PCグループピンナップ(3人用)
Illusted by 泉