四大精霊とカオスの魔物 1
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■シリーズシナリオ
担当:月原みなみ
対応レベル:8〜14lv
難易度:難しい
成功報酬:4 G 15 C
参加人数:6人
サポート参加人数:-人
冒険期間:08月26日〜08月31日
リプレイ公開日:2008年09月04日
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●オープニング
「『境界の王』か‥‥」
難しい顔でその名を呟くのは老齢のエルフ。
セトタ大陸の西、聖山シーハリオンに隣接する六分国の一つセレの筆頭魔術師として名高いジョシュア・ドースターである。
種族の実年齢にしてもう間もなく一六〇を迎えようという彼は、しかし凛とした佇まいから伝わる聡明な雰囲気が、いまなお現役である事を証明していた。
「‥‥どうした」
彼にそう尋ねるのは傍近くの椅子に腰掛けていた、優美な衣装に身を包んだ端正な顔立ちのエルフだ。
年齢でいえばジョシュアの半分にも満たないように思われるが、主従の差は歴然。
それもそのはず、彼は分国の王コハク・セレ、その人だ。
「其方、その名を聞いた事があるのか」
王の問いに、ジョシュアは苦渋に歪めた顔を左右に振る。
「先の大戦でもそのような名を耳にした覚えはございません。何より、此度の各地に出現したという壁、その壁に封じられていたアルテイラ‥‥、そのような異変は、少なくとも五十年前のあの時には起きておりませんでした」
ジョシュアは遠い日を思い出しながら語る。
メイに生まれた彼はおよそ五十年前に起きたカオス戦争をその身で体験しており、歴史としての結果は人の勝利で終わっていても、失った仲間が数知れない事を残酷なほど鮮明に覚えている。
その傷心を癒そうとウィルに渡った彼がセレに召し抱えられて後、数年前に勃発した第三次カオス戦争。
更には『境界の王』を名乗る魔獣が率いたカオスの魔物群の襲来と、謎の壁。
これまでに集めた情報によれば冒険者達の活躍によって『境界の王』は退き、壁に封じられていたアルテイラはその封印を解かれたと聞くが、魔物の滅亡が確認されたわけでないのなら必ず「次」が来る。
――戦が起きる。
この事実がジョシュアの、そして分国王の心を痛めていた。
「戦を止める術がないのなら戦力の増強は必須、か」
コハク王は瞳を伏せ、長い吐息とともに呟く。
カオスの魔物の狙いに人間もエルフもないのなら、これまでの雑事のように不干渉を決め込むわけにはいかない。
自国の民を守る事を考えるなら尚のこと、エルフの国も動かなければならない。
「‥‥ジョシュア」
「――はっ」
その意を決した呼びかけに、老齢の魔術師は膝を折り恭しく頭を垂れる。
セレは、動く事を決めたのだ。
●
数日後、一人のエルフがウィルの冒険者ギルドを訪れた。
彼女は自国の大魔術師が弟子を募集しており希望者を募りたいと語る。そしてその選考試験を兼ねて某モンスターを退治して欲しいのだと。
「とあるモンスターと申しますと?」
「ミノタウロスです」
あっさりと返したエルフの魔法使いに、受付係は瞠目。
「‥‥っ、ちょ、あなた先ほど何て仰いました? 確か今回の依頼はウィザード限定だと‥‥!」
「ええ、師はウィザードです。弟子となる者達もウィザードでなくてはなりません」
「ウィザードだけでミノタウロスと戦えと仰るんですか!?」
ジャイアントの身体に黒い雄牛の頭を持った非常に好戦的なオーガ族の一種。巨大な斧を振り回すだけでなく左右についた角の威力も相当なものであり、俊敏性も高い。
そのような敵をウィザードのみで倒せとは何と無謀な話だろう。
「師は即戦力を育てたいと申しております。ミノタウロス一匹を相手に後手に回るようでは、その後に課される事柄にも耐えられません」
「しかし‥‥」
「念のために鎧騎士数名が同行しますから、万が一の時には彼らが援護するでしょう。ウィザード限定でのミノタウロス退治、‥‥どうぞ冒険者を募ってください」
依頼主の言を、受付係はしばし無言で胸中に復唱していた。
これも依頼であり、受けるか否かは依頼書を見た冒険者の判断に委ねられる。危険と知りながらも行くと言うなら、それは受付係がどうこう言える話ではない。
「判りました、この依頼を貼り出しましょう」
ミノタウロスは力こそ凶悪だが、反して知能は低い。
その辺りを踏まえて臨めば、恐らくは――。
●リプレイ本文
地魔法の使い手、レン・ウィンドフェザー(ea4509)とシシリー・カンターネル(eb8686)。
風魔法の使い手、ティス・カマーラ(eb7898)とソフィア・カーレンリース(ec4065)。
そして水魔法の使い手、ディーネ・ノート(ea1542)とレイン・ヴォルフルーラ(ec4112)。
以上六名がセレの筆頭魔術師ジョシュア・ドースターに弟子入りすべく、ウィザードのみのミノタウロス退治に名乗りを上げた冒険者達であった。
ウィルを出立して二日目、いよいよ現地に向かうフロートシップの船内。
「『弟子入り』なのー、たのしみなのー♪」
陽気な言葉を紡ぐレンはエルフの少女は、幼い見た目に反した爵位と権力の持ち主であるが、今はこれから起きる事を無邪気に楽しむ子供そのもの。
「こちらに来たのも何かの縁ですし、初心に帰ってこちらで魔法を学びなおし、極めるとしましょう」
そう穏やかに呟くシシリーは、つい先日アトランティスの大地を訪れたばかりのジ・アース出身者。あまり人と顔を合わせないのは赤面症ゆえだろうか。
一方、既に何度も依頼で顔を合わせているディーネとソフィア、レインの三人に緊張感は見られない。特にセレへも既に何度か足を運んでいる十代の少女組は別に気掛かりな事もあるようで。
「大魔術師って、どんな人だろ〜? 頭の固い人じゃなければ良いけれど」
そんな事を呟くソフィアに苦笑するレインは、それにしてもと呟く。
「セレの村々を襲っていたオーガ族も、その変な壁に魔物が集っている事に関係していたんですものね‥‥」
「あの村はどうなったかな」
そんな会話を拾ったのは、ギルドに依頼を出し、冒険者達をセレまで送り届ける役を担うセレのウィザード、キャンティ・マックウェル。
もしも冒険者がドースター魔術師の弟子入りを決めれば、兄弟子となるエルフの女性だ。
「貴方達、もしかしてアベル卿が進言していた『暁の翼』のメンバーなの?」
知った名前を出されて目を丸くする。
「はい、そうです」
頷き返すレインに、キャンティは顔を歪める。
「ごめんなさいね。せっかくセレのために動こうとしてくれていたのに、こんな事になってしまって」
「こんな事?」
ソフィアが聞き返すと、彼女は言葉を濁しながら答える。
「‥‥現状、セレに余所者を入れるなというのがお偉方の大多数の意見なのよ」
詳細は語れない。
しかし行動範囲の広い冒険者ならば、方々から現在のセレを取り巻く状況は耳に入るだろう。
「一刻も早く決着をつけなければ‥‥」
まるで独り言のように呟かれた最後の言葉に、ソフィアとレインは顔を見合わせ、それまで黙って話を聞いていたディーネは誰にも気付かれないくらい小さな息を吐き、言う。
「この船はミノタウロスの出没地域に向かっているのよね?」
「――ええ、そう」
ハッと我に返って応えるキャンティに「そ」と一言だけ返したディーネ。
それは素っ気無いというのではなく、場の雰囲気を変えられれば彼女の目的は果たされたも同然だったからである。
「そのミノタウロスの出現場所ってどんなところなのかな」
次いで質問を投げ掛けたのはティス。
地理データがなければ作戦を立て難いという基本的な判断からだが、キャンティは「お教え出来ません」と即答。
「皆さんは、常に地理の情報を得た場所で敵と戦うのでしょうか? ましてや自我のあるミノタウロスが、常にこちらが指定した場所にいると思いますか?」
「――」
言われて見れば確かにその通りなのだが。
「‥‥待って。ということは今現在ミノタウロスが何処にいるかは判らないの?」
ディーネの確認にも、やはり即答。
「これから皆さんをお連れする地域にいることは間違いありません。近くの村からミノタウロスに攫われて暴行を受けた女性が二名、殺された者が三名。この死者は村人達が山狩りを行った際の犠牲者です」
「山狩り‥‥」
復唱するシシリーに、続ける。
「セレは国土の半分が木々に覆われた緑豊かな土地です。エルフの民は樹上に暮らし、人の民は地上に暮らす。川が流れ、泉の湧く森には様々な動物達が生息し、同様にモンスターも潜んでいる――それ以外は皆さんがその目で確認しなければなりません。ミノタウロスの所在についても同様です」
もちろん地形の把握などを兼ねて現地を歩いて調査するつもりではあったディーネも、この大雑把な話には頭を抱える。
「んー‥‥しつもんなのー。ペットに協力してもらっても良いのなのー?」
ウィザードのみという指示があった事は承知しているが、やはり前衛のいないパーティでは心許ない。
頼れる相棒、忍犬協力の可否を確認するレンに、キャンティは眉を顰めた。
「最初にお願いしているはずですよ。ウィザードのみで依頼の達成を、と」
この時点でレンのペットはフロートシップに待機する事が決まる。
「もう間もなく現地に到着します」
操縦席に座る鎧騎士の一人から、そう声が掛かった。
「判ったわ。――それでは皆さん、準備を。どうぞよろしくお願い致します」
セレのウィザードが丁寧に一礼する。
既に魔術師への弟子入り試験は始まっていた。
●
「さて、と‥‥、ちょっと参ったわね」
地上に降り、冒険者達を乗せてきたシップが空に遠ざかるのを見送って呟いたのはディーネだ。
周囲には仲間のウィザード五人と、万が一の時には援護してくれるという六名の鎧騎士。
「私達の事はいないと思って下さって結構です」というのが彼らの言葉だ。
ウィザード達は辺りをぐるりと見渡す。
シップが着陸するために開けた場所を選んだだけあって、此処は視界が広く開けた平地だが、その先は森。
逆側には人の村と思われる民家が並び、ミノタウロスに攫われた二人の娘の内、一人が生まれ育った土地でもあるそうだ。それらを考えると、この平地に敵を誘き出すのは気が引けた。
「他のモンスターなら誘き出すのに餌を利用する手も取れるんだけどね」
ティスが残念そうに言う。
相手が単なる肉食の獣であれば有効な手段だが、相手は牛の化物。
人が準備した不自然な餌だけで誘き出されるか分からないし、何より一同の正面に広がる森は広大だ。
魔法で細かく調べていく事は可能だが、探査範囲に制限がある術でどれだけの効果が望めるだろう。
「あとおびきよせられるといったら女の子なのー」
モンスター知識を豊富に持つレンの視線がディーネ、シシリー、ソフィア、そしてレインを巡る。
ミノタウロスは非常に好戦的で人と見れば襲ってくるが、種族に雄しかいないというハンデがあるため、子を成すためにしばしば女性を攫っていくのだ。
「でもそれってとても危険なのー」
レンの言う通り、そうなった場合の囮役たる女性陣は無意識に身を縮める。
そんな中で口を開いたのはレイン。
「あの‥‥例えば餌、興味を引くように牛さんには届かない高さに生る木の実なんかも地面に転がして、戦うのに適した場所まで誘き出すというのはどうですか?」
発案するのは植物知識に関して秀でているレインだ。
「牛さんの背丈って二メートルより少し高いくらいだと言いますし、十五メートル以上の高さにしか生らない木の実なら珍しがって罠に掛けられないでしょうか」
「んー、この時期ならどんな木の実があるのかしら」
「そうですね‥‥エノキとか‥‥スダジイも、もしかしたらあるかも」
ディーネとレインの遣り取りに、木の実採りなら手伝えるよと挙手するのは風魔法リトルフライを習得しているティス。
「開けた場所にテントを張って火を焚いて、人がいるように見せかけておいて僕達は周りに隠れていると言うのはどうですか〜? 肉と魚も用意したので、それと木の実を撒いて」
「では、その周囲三六〇度に‥‥加えてかなりの広範囲に餌を散らせて来なければなりませんね」
ソフィアの提案にシシリーが応え、だが途中でミノタウロスと接近しては危険過ぎる。
バイブレーションセンサー、ブレスセンサーと、遠くの振動・呼吸を察知する事が出来る術士が分かれることで手数を広げる事にした。
万が一、ミノタウロスと遭遇した場合には即座に仲間を呼ぶよう徹底。
「単独行動は絶対に厳禁よ」
ディーネが念を押し、ソルフの実を所持していない仲間に三個ずつ配布。
まずは戦闘に適した場所を皆で決めようと、一路、森の中へ。
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レンとシシリーで一組。
ディーネとソフィアで一組。
そしてティスとレインで一組になったウィザード達は、ミノタウロスらしき気配を感知しないまま順調に計画を進めていた。
周囲に散らす餌には、ミノタウロスでも手の届く木の実と肉、魚を一緒に落としておいて食べ物であるという事を印象付けるといった小技も効かせるなど守備は上々。
問題は、ミノタウロスがいつこちらの罠に誘き寄せられるかという点だ。
一日掛けて周囲を歩き回り、この森の近くに点在する村々の位置なども把握した上で戦闘地点を決定したが、ただ待つと言うのはしんどい。
かと言って、不用意に敵の射程に入ってしまえば、平均して体力の低いウィザードは一撃で中傷以上の大怪我だ。
行動力を奪われ魔法を使えなくなれば致命的。
それを考えれば森を歩き回るのは利巧と言えない。
「もう少し作戦を煮詰めておくべきだったわね」
無人の野営地を囲むように木々の合間に身を隠しながら反省の言葉を口にするのはディーネだが、恐らく皆が共通の思いだっただろう。
陽精霊の時間が過ぎて辺りは暗くなる。
こちらには夜目の利くウィザードが数人いるが、オーガ族はどうか。
来るかもしれない、来ないかもしれない。
周囲探査の魔法を繰り返す、振動を聞き分ける。
気の抜けない時間がただ過ぎてゆく。
――それが来たのは四日目の朝方だった。
●
ズン‥‥ズン‥ッ‥と遠くから聞こえて来た地響きに真っ先に反応したのは五感に優れたディーネ、続いてティス、ソフィア。
ブレスセンサーを発動させて知る、二メートルを越える巨大な固体。
その距離およそ三十メートル。
驚くほど近くまで来ていた。
「急がなきゃ!」
ソフィアは立て続けに魔法詠唱、ヴェントリラキュイで木の枝の向こうに伝える。
『来ました!』
「っ!」
ガクッと身体に衝撃を走らせて顔を上げたのはレイン。
徹夜を得意としないのは彼女ばかりでなく、皆が目の下にクマを作っていたが敵が近いと聞けば一瞬にして戦闘態勢。
全員が意識を集中させたのを見て取り、ディーネはごくりと息を飲む。
「いくわよ」
素早く無人のテントに近付き、その影に隠れる。
ミノタウロスは腰を屈めながら地面に点々と転がっていた餌を口に含み、荒い呼吸を繰り返しながらその場所に近付いていた。
「ヴー‥‥、ヴフー‥‥ッ」
ズンッ、ズンッ‥‥接近する足音。
近付く息遣い。
ミノタウロスはテントに気付く、消えかけた火に気付く。
そして。
「‥‥っ!」
ディーネが出た、牛の化物の視界に。
「ヴォオオオオオオオ!!」
ブンッ、と振り回した巨大な斧が風を切り、更に激しい振動を伝えながら駆ける、直後。
「アグラベイション!」
「ヴォオッ」
レンの行動抑制魔法に戸惑いの声が上がり。
「ライトニングサンダーボルト!」
真っ先にミノタウロスを撃ったのはソフィアの放った雷光。
次いでシシリーのグラビティーキャノン。
「ヴォヴォッ!?」
足場を崩されて転倒するミノタウロス、その隙にディーネは距離を取って詠唱開始。
その間にも魔法攻撃は続く。
二度目の雷光はティスの風魔法。
レインの吹雪の扇。
「ヴォオオオオオオッ!!」
「なんて頑丈なヤツ!」
これだけ間髪を入れない連続攻撃を受けて尚、こちらを敵と認識し襲い掛かってこようとする気力。
一筋縄でいかない相手であることは間違いない。
「ウォーターボム!」
ディーネの水魔法に怒りの形相を向けるミノタウロス。
「ヴォオオオオオオオオオ!!」
削げない気迫。
しかし術士達も退かない。
二周目の術の掛け合い。
不足した魔力をソルフの実で補充し、三周目。
「アイスブリザード!!」
レインが放った雪の扇が消えたその時、ミノタウロスは膝を付いた。
「グガッ‥‥!」
一際激しい地響きと共に地に伏せたミノタウロスを、術士達は肩で息をしながら見守る。
まだ、動くか。
確認の為に止まった時間は、実際にはわずか数秒。
しかしそれを非常に長く感じながら、一人、また一人と警戒を怠らず広場へ進み出る。
「‥‥呼吸は止まってます」
ソフィアがブレスセンサーで確かめ、仲間達に報告した。
「倒した‥‥んでしょうか‥‥?」
そっと近付いたレインが指先でその身体に触れた、直後。
「わっ!」
「きゃあっ!」
突然の大声に驚いて飛び上がったレイン。
「なっ‥‥」
「誰ですか!」
ディーネとソフィアも驚いて大声を上げ、声のした方を振り返る。
すると何時から其処にいたのか、誰にも気付かせなかったエルフが二人。
一人は冒険者を此処まで連れて来たキャンティ。
そしてもう一人は見事としか言い様のない立派な髭をたくわえた老齢のエルフ。一目見て言葉を奪われるほどに威厳のある姿は、とても若い娘相手に「わっ!」なんて驚かせて楽しむようには見えないのだが。
「――大魔術師さん、ですなの?」
「そう呼ばれる事が多いな。ジョシュア・ドースターと申す」
レンの問い掛けに好々爺な笑みを浮かべる。
「たまに「どーしたー師匠」と呼ぶ者も居るがな?」
「――」
ほっほっほぉっ、と笑う老師に一同絶句。
唯一、キャンティだけは(「誰も呼んでない!」)と胸中に反論するが、実際に声に出す事はなかった。
生じた沈黙をどう取ったのか、構わず続ける老師。
「しかしまぁ、運が良かったとしか言わざるを得ない部分も多かったが運も実力の内と言う。詠唱時間をずらしての連続攻撃はなかなか見ていて良いものだった」
「じゃあ‥‥」
まだ不安そうに口を開くティスに、魔術師は笑う。
「うむ、合格だ」
「まぁ」
シシリーの反応を皮切りに盛り上がりを見せる若きウィザード達へ、ジョシュア・ドースターは笑みを深めた。
「そなた達には、これまで私が研究し蓄えてきたものを受け取るに足る器かを確かめさせてもらう事になる。――が、まずは自己紹介から始めてもらおうかの」
「はい!」
「はいなの」
元気の良いウィザード達の返事が、青空に響き渡る。
若干の不備があったとはいえ、ウィザードのみでミノタウロスを倒すという課題をクリアした冒険者。
次なる課題はウィザードとしての知識を試すものである。