【蒼の仇討ち】獣人挽歌

■シリーズシナリオ


担当:U.C

対応レベル:2〜6lv

難易度:やや難

成功報酬:2 G 24 C

参加人数:8人

サポート参加人数:8人

冒険期間:09月19日〜09月25日

リプレイ公開日:2004年09月28日

●オープニング

「‥‥で、こいつはできたのか?」
 暗い室内に、男の声が響いた。
 野盗集団を率いる首領、人狼のザムゥの声が。
「ヒヒヒ‥‥ああ、もうじきだとも」
 一転して、しわがれた、それでいてカン高い声が聞こえる。
 ザムゥの前に、白衣を着た小柄な老人の姿があった。
「ワシの理論は完璧だ。あとはこいつらに魔力の供給さえ行えば、無敵の兵隊の出来上がりじゃて。ヒヒヒヒ‥‥」
 目を見開き、歯を剥き出して笑う老人の顔は、一見してまともとは言い難い。
 だが、既に慣れているのか、ザムウは顔色ひとつ変えず、老人の前にある”もの”へと視線を転ずる。
 そこには‥‥木でできた大きな人型が2体、横たわっていた。
「いつ動かせる?」
 と、ザムウが聞く。
「そうじゃな、順調に行って、あと1週間といった所か」
「‥‥2日で仕上げろ」
 短く告げた。
「ほう‥‥」
 それを聞いて、はじめて老人がザムゥに振り返る。
「どうやら、招かれざる客人が来るようじゃな。なんとかなるとは思うが‥‥急ぎならば、それ相応に報酬を上げてもらわねば割に合わんぞ」
「好きにしろ。とにかくやれ。いいな」
 じろりと見返して‥‥ザムゥはその小屋を後にする。

「‥‥動くのか、アレは?」
 入口から出ると、そこに待っていた配下のウィザードに声をかけられた。
「さあな、動かなけりゃ、あのジジイも動かなくしてやる。それだけだ」
 あっさりとそうこたえるザムゥ。
「ウッドゴーレム、か。そんな人形が役に立つとも思えんがな」
 ウィザードと同じく、その場にいた騎士が、言った。
「まあ、用心のためだ」
 ぐるりと、ザムゥが周囲を見回す。
 ここは、彼が率いる一党の本拠地だ。
 山の斜面に位置するここには、あちこちに簡素な小屋があり、見張り台もある。
 上には大岩を転がす仕掛けも用意させた。そう簡単にここが落とされるとは思わないが‥‥。
「複数の冒険者が相手となると、なんとかなるのはお前等と俺くらいだからな。後は時間稼ぎくらいにしか使えねえ奴等ばっかりだ。人形の方が、まだマシさ」
 薄く笑って、そう呟く。
「しかし、相手があの山猫の娘とはな。やはり猫というのは、執念深いようだ」
「ああ、違いねぇ。だが、それもここで終わりだ。冒険者の奴等共々、今度こそここで引導を渡してやろうじゃねえか」
「‥‥そう簡単に行けばいいがな」
 と、呟く騎士の肩に、ザムゥはぽんと手を置き、
「行くさ。間違いなくな」
 薄く、笑う。
 ‥‥まあ、いざとなったら、俺はさっさとずらかるがな。
 心の中では、まるで違った台詞を言いながら‥‥。


 ‥‥いよいよ、次は一党の本拠地だ。
 ここは、山の斜面の木々を切り払い、陣地としたもので、簡素な小屋がいくつかと、木を組んで造られた見張り台が建てられている。陣地の大きさは、大体直径50m程の円形。確認された人員は、首領のザムゥと配下のウィザード、騎士、及びその他の手下が7〜8名といった所だ。さらに、ここ数日で、斜面の上から岩を転がすような仕掛けも作られている他、ゴーレムの研究している者を新たに仲間に引き入れたという情報もある。造られているゴーレムは、ウッドゴーレムが2体だそうだ。
 この陣地の周囲は森なので、一定距離まで近づくのは容易だろう。ただし、向こうも警戒しているであろうから、まったく気付かれずに陣地内に侵入するのは不可能だと思った方が良い。昼でも、夜でもだ。
 具体的な戦術は、無論諸君に任せるので、無事帰還を果たして欲しい。
 そして‥‥この依頼の依頼主の件に関してだが、彼女もまた人獣だったとの報告を受けた。
 調べたのだが、これまでに彼女が他者に対して危害を加えたという事実はないようだ。
 が、なんと言っても相手は人獣である。依頼遂行後、その身柄をどうするかも、諸君等の判断に任せるものとするので、その点も念頭に入れた上、現地に赴いてもらいたい。
 ‥‥以上である。

●今回の参加者

 ea0393 ルクス・ウィンディード(33歳・♂・ファイター・人間・フランク王国)
 ea1143 エイス・カルトヘーゲル(29歳・♂・ウィザード・人間・イギリス王国)
 ea2096 スピア・アルカード(29歳・♀・ファイター・人間・イギリス王国)
 ea2462 ナラク・クリアスカイ(26歳・♀・神聖騎士・エルフ・イギリス王国)
 ea3117 九重 玉藻(36歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea3647 エヴィン・アグリッド(31歳・♂・神聖騎士・人間・イギリス王国)
 ea3888 リ・ル(36歳・♂・ファイター・人間・イギリス王国)
 ea5892 エルドリエル・エヴァンス(22歳・♀・ウィザード・エルフ・イギリス王国)

●サポート参加者

ニューラ・ナハトファルター(ea0459)/ シャルグ・ザーン(ea0827)/ クラリッサ・シュフィール(ea1180)/ リオン・ラーディナス(ea1458)/ ザキ・キルキリング(ea3130)/ コルセスカ・ジェニアスレイ(ea3264)/ ヘヴンズゲート・ラ・シエル(ea5992)/ エルミーシャ・メリル(ea5998

●リプレイ本文

 ──夕暮れ。
 空と山が茜色に染まり、蝉の声が虫の音色に変わる頃‥‥彼らは動き始めた。
「‥‥ん?」
 ふと、ごつい男が足を止め、振り返る。
「どうした?」
 隣を歩いていた男も立ち止まった。どちらも盗賊である。
 ここは彼等の根城であり、山の斜面を切り開いて造られた陣地だ。あちこちに小屋や見張り台も建てられており、盗賊にしては本格的な山城、といった趣を持っている。彼らは今日の明かり番であり、あちこちに点在するかがり火に点火して回っている最中であった。
「いや、なんか動いたような気がしてよ‥‥」
 と、最初の男があたりを見回しながら言う。
 すぐ側には、彼等の身長よりもでかい大岩が、太いロープで編まれた特別製の網で包まれ、端は深く打ち込まれた杭に結び付けられて固定されていた。万が一ここが攻められた場合は、ロープを切って大岩を転がし、侵入者を巻き込むような仕掛けだ。
「気のせいじゃねえのか?」
「ああ、そうかも──」
 ──しれねえな。
 と言いかけた男の口が途中で止まる。
 低い唸り声が、聞こえた。
 すぐにそちらに目を向けると、岩の上に一頭の獣がいる。
「‥‥狼か」
 かがり日の明かりに照らされて浮かび上がったシルエットは、間違いなく狼だ。男2人を見下ろして、牙を剥いている。
「とっ捕まえて皮を剥いでやるぜ。ちょうど帽子が欲しかったんだ」
 男達は別に驚きもせず、武器を抜き放った。群れならともかく、一匹だけならさほど恐れる存在ではない。
 が‥‥。
「帽子よりも、お面の方がいいわね。その貧相な顔が隠せるから」
「なに!?」
 いきなり、背後から新たな声。だが、そちらには確かに誰もいなかったはずだ。
 すぐに振り向いたが‥‥やはり人影はない。
「ふふ、こっちよ」
 楽しげな笑い声が、彼等の上でした。
 顔を空に向けると、そこに誰かがいた。
 支えも何もなく直立した一本のロープに掴まり、2人の盗賊を見下ろしているのは、九重玉藻(ea3117)だ。
 立縄の術を用いているだけなのだが、それがとっさに理解できない盗賊達は、一瞬言葉を失い、あっけに取られた。
「‥‥どこを見ている」
 続けざまに、また違う声がする。今度は男だ。
「!?」
 盗賊達が愕然と向き直るのと、その片方のみぞおちにエヴィン・アグリッド(ea3647)が拳を叩き込むのとは、ほぼ同時だった。先程の狼は彼がミミクリーで変身した姿だったのだが、盗賊達には分かるまい。
「てめえ!」
 残った1人が山刀を振りかぶったが、その手めがけて上空から一筋の光が降り注ぎ、そいつは悲鳴を上げて武器を放り出す。空にはニューラ・ナハトファルターがいた。彼女のサンレーザーだ。
「はい、大きな声出さないでね」
 立縄の術を解除し、地面に降り立った玉藻が、最後に盗賊の首筋を手刀でトン、と叩くと、たちまち白目を剥いて気を失い‥‥それでおしまいだった。
「ではやるぞ。完全に日が暮れる前に、カタをつけよう」
 エヴィンが言い、大岩の仕掛けへと向き直る。
 玉藻とニューラが、無言で頷いていた。

「始まった。こっちも行こうぜ」
 突然巨石トラップが作動し、悲鳴と怒号が飛び交う盗賊の陣地を目にして、リ・ル(ea3888)が口を開いた。
 陣地よりやや離れた森の中に、残りの冒険者達と依頼人であるラウラが既に待機していたのだ。
「‥‥前にも言ったけど、これだけはもう一度繰り返しておくわ」
 ラウラが、低い声で言う。ただ前方のみをみつめていた。
「獣人相手に、一切遠慮はしない事。隙があったら、一気に片付ける‥‥そのつもりでいて頂戴。たとえ依頼人のあたしが奴の側にいようがいまいが、そんな事は関係ないわ」
 迷った様子もなく告げられた言葉は、静かだが、強い響きがある。
 冒険者達は、すぐには何もこたえなかったが‥‥。
「まぁ俺はあんまり頭良くねぇから、とりあえず分かりやすい悪を倒す」
 ロングスピアを手にしたリルが、そう口にする。
「じゃあ、俺からも一応言っておこうか」
 続いて、ルクス・ウィンディード(ea0393)が、依頼主の少女に向き直った。
「迷うな、見据えろ、背けるな、必ず仕留めろ。この仕事の決着はあんたがつけなマイマスター? 俺らは露払いをしてやる、お前を導くために。それと約束してくれ、成功した暁には全員で酒でも飲みにいこうぜ?」
 と告げた後、チラリと別の1人に目を向け、
「エルちゃんのおごりな?」
 そう、付け足す。
「‥‥あのね。勝手に決めないでよ」
 視線の先では、エルドリエル・エヴァンス(ea5892)が、口をへの字にしている。
「捨て駒になるつもりはない。だが、貴方を仇まで連れて行く」
 一転して、真面目な顔でこたえるのは、スピア・アルカード(ea2096)だ。
「‥‥プライドの問題だ。このままじゃ傭兵としては失格だからね」
 真面目、というより、どこか割り切れない顔をしているが‥‥それも仕方のない事かもしれない。
 獣人同士の争い、プライド、作戦内容の模索‥‥そんなものが、ぐるぐると彼女の頭の中で渦巻いている。
 が、スピアもプロだ。ひとたび剣を抜けば、顔にも口にも、そんな事を出しはしない。仕事は仕事として、完遂を目指すのみである。
「これを持っていてくれないか?」
 ふと、ナラク・クリアスカイ(ea2462)が、ラウラに何かを差し出した。勲章だ。
 それとナラクの顔を見比べたラウラは、眉一筋動かさず、
「お守りなら、いらないわ」
 ぶっきらぼうに、言う。
「いや、そうではない」
 苦笑しつつ、なおも手を引っ込めないナラク。
「これは私の誇りだ。そして、進呈するのではない。仕事が終わったら返してもらう。その時、無事に返せば代わりに良いものをやろう」
「‥‥」
 ナラクがなんのつもりで言っているのかは、ラウラには分からない。が、誇りの品とまで言われて、それを断る程、彼女は不躾ではなかったようだ。
「無事に返せる保証なんかないわよ」
「それで結構」
 ラウラは勲章を受け取り、懐にしまった。
 ‥‥君の勝利を信じている。私も、仲間も‥‥君の母親も。
 声には出さず、胸の内でそんな言葉を呟くナラク。
 準備は‥‥整った。
「‥‥では‥‥はじめる、か‥‥」
 エイス・カルトヘーゲル(ea1143)が言い、全員が動き出す。

「来やがったか。いきなり懐に入られるとはな。まったく、恐れ入ったぜ」
 轟音を上げて斜面を岩が転がっていく大岩と、混乱に陥る盗賊達の様子を眺めつつ、首領のザムゥは薄く笑っていた。無論、自分は最初から安全圏にいる。岩の転がるコースなど、とうに予想済みだ。
「‥‥先手を取られたな」
 一方、隣には、少々硬い声の騎士の姿。
「なに、心配する事はねえさ。俺達は無事だ。それに‥‥」
 と、顔を横に向けた。
 そちらの方向から、ローブを纏った男がやってくる。
「人形の準備は整ったそうだ。すぐに出せと言っておいた」
「‥‥よし」
 ウィザードの台詞に、小さく頷く。
「やるぞ! 皆殺しだ!」

 ──ゴォン!
 ひとつの小屋の扉が、音を立てて内側から弾け飛ぶ。
 その奥より、ぬっと出てくる人の姿をしたもの‥‥ウッドゴーレム。
「出やがったな! あそこか!」
 すぐに、リル達が向かった。
「ヒヒヒ‥‥来おったな冒険者どもめ!」
 2メートル程の木人形が2体。その間に、小柄な老人の姿もある。
「こいつらはワシがとある遺跡でみつけ、蘇らせた最高の作品だ! さあ、行け! 行って奴等を蹴散らしてしまえ!!」
 両手を掲げ、老人はゴーレム達に命じた。
 が、2体の木人形はあたりを窺うように、その場で首と上半身をぎこちなく動かすのみだ。
「ええい何をしておる! 命令が聞こえぬのか貴様等!」
 すぐそこまで迫った冒険者達を前にして、後じさりながらヒステリックに叫ぶ老人。
 ようやく声が届いたのか、ゴーレムが揃って彼へと向き直る。
 そして片手を上げ‥‥無造作に振り下ろした。
 ──ズン!
 木の拳が地面にめり込む。拳の下には、老人の体‥‥。
 ズン、ズン、ズン‥‥。
 重い音が連続し、その度に血飛沫が飛んだ。たちまち2体のゴーレムが赤く染まっていく。
「‥‥どうやら、躾の仕方を間違ったようだな」
 やや顔をしかめるナラク。
「狂ったお人形か。モノ相手なら、何の遠慮もいらねぇな。ブッ壊して薪にしてやるぜ」
 ロングスピアを手にしたリルが、目を光らせる。
「お行きなさい! エリザベーーース!!」
 全ての罠を動かし終えた玉藻も、こちらに回ってきた。高笑いと共に大ガマの術で巨大ガマを召喚。
 逃げ出す盗賊は捨てておき、向かってくる者のみ、リオン・ラーディナスが斬り伏せていた。

「ハァ〜イ。これ私からのプレゼント♪」
 ウインクと同時に放たれる、エルドリエルのアイスブリザード。
 周囲にいた盗賊達が、巻き起こった吹雪に巻かれ、悲鳴を上げて散っていく。
 その間を抜けて、エヴィンとクラリッサ・シュフィール、やや遅れてヘヴンズゲート・ラ・シエルが、目的の相手へと向けて突進した。
 姿形がまったく同じローブ姿が4人、ややばらけて立っている。
 その内の1人に向けて、シエルがダーツを投擲した。
 相手は避けもせず、当たると同時に灰となって霧散する。アッシュエージェンシーによる身代わりだ。
 別の1人に、エルドリエルがウォーターボム。命中、灰。
「貴様か!」
 さらに別の1人に、エヴィンがミミクリーで伸ばした手による剣の一撃。これも命中、そして灰。
 ‥‥残るは最後の1人。
 全員がそちらに向き直った時、
「‥‥甘いな」
 物陰に潜んでいた『本物』のウィザードから、ファイヤーボムが放たれた。

「よう」
 一方、騎士の方には、ルクス・ウィンディード(ea0393)が片手を上げながら近づいていく。まるで友人に会うみたいな気安い表情と足取りだ。
「初めましてクソッタレなナイト様? 主君に別れは済ましたかい? 戦う悦びは残ってるか? 俺を飽きさせないよう手加減なんてするんじゃねぇぞこの野郎?」
 ぶん、と一振りした槍には、シャルグ・ザーンがオーラパワーをかけていた。
「‥‥威勢のいい若造だな」
 騎士はその場から動かず、片手に剣を抜き、もう片方の手にオーラソードを出現させる。
「来い」
「おおよ、言われなくても行ってやるぜ!」
 魔法の力を帯びた槍と剣が噛み合い、火花を散らせた。

「どけぇ!!」
 一刀の下に、盗賊の1人を切り伏せるスピア。
 横合いから近づいてきた別の奴には、エイスがウォーターボムを撃ち込んで後方に弾き飛ばしていた。
「‥‥やれやれ、しつっこいな、てめえらもよ」
 彼等の前には、薄笑いを浮かべた1人の男。手には炎を宿した剣を手にしていた。ウィザードにバーニングソードの魔法をかけさせたようだ。
 人狼にして盗賊の首領、ザムゥ。冒険者達を前にして、焦る様子もまるでない。
「そっちの姉ちゃんはいい女だな。俺の下に付く気はねぇか? いい思いさせてやるぜ」
 と、スピアに剣の先を突きつける。
「断る」
 返事は短い。
「ああそうかい。そりゃ残念だ。ならここで死にな」
 ザムゥの方も、あっさりしていた。顔は笑ったままだ。
「‥‥今度こそ、ここで終わりにしてやる」
 対照的に、殺気を隠そうともせず、人狼を睨んでいるのがラウラだった。
 彼女とスピアが直接攻撃、エイスとザキ・キルキリングが魔法による援護、その魔法使いの護衛に神聖騎士のコルセスカ・ジェニアスレイが側に付き、上空にはシフールのニューラがいる。
 相手の築いた陣地内という事で、地の利は向こうにある。
 が、実力者のウィザードと騎士には別の仲間が当たっている今が、倒せる最大のチャンスでもあった。仲間がその者達を撃破してこちらに回る事ができれば、可能性はさらに上がるだろう。そのあたりの見極めが、勝敗の鍵だ。
「ゆくぞ!!」
 両手に短剣を構え、風を巻いて疾り出すラウラ。
「私は傭兵だ‥‥剣を振るってこその存在‥‥今の私はこれが全てだ!!」
 そして、スピアも一気に距離を詰める。命の削り合いに望む刹那、彼女の心は白く染まった。余計な事を考え、悩んでいては死ぬ‥‥それは、幾多の戦いの中で彼女の身体に染み付いた本能とでもいうべき反応である。
 2人の武器もまた、ザムゥと同じく、炎の衣を纏っていた。ザキの施したバーニングソードの効果だ。これならば、獣人相手にもダメージを与えられる。
 炎の斬撃の軌跡が赤い線となって空気に刻まれ、それが交差した空中で、激しい金属音がこだました。

「食らえ!」
 リルのロングスピアが、ゴーレムの腹に突き立った。
「今よ、エリザベス!」
 玉藻の号令が飛び、動きが止まったゴーレムめがけて、大ガマが体当たりを敢行。大きさで勝る大ガマに押し倒される形で、木人形はその場に崩れた。さらに休む事なく、ガマは木製の頭部に張り手を食らわせる。バキッっと乾いた音がして、表面に大きく亀裂が走ったが‥‥。
「避けなさい! エリザベス!」
 主の命令と、大ガマのゲェコ、という悲鳴が、ほぼ同時に上がった。背後から近づいたもう一体のゴーレムが、ガマの巨体に渾身のパンチを打ち込んだのだ。ガマは飛び上がり、慌てて離れていく。
「なんて事するのよ!!」
 玉藻の放った手裏剣が頭に食い込み、ナラクのディストロイが胴体に命中して木の破片を宙に散らせた。衝撃でバランスを失って倒れたが‥‥すぐにまた起き上がってくる。
「動きは鈍いが、さすがにタフだな、こいつら」
 軽く舌打ちをして、リルが言う。
「ああ、しかも、別に起動のための紋章やらマーキングが必要、というわけでもないらしい。頭を潰しても、あまり意味もないようだしな」
 ナラクは、落ち着いた様子でそう分析していた。
 ウッドゴーレムの身体には、魔法的に意味があるような意匠などなかったし、妖しげな部分も特に見当たらない。まさに木を繋ぎ合わせて造った無骨な人形、といった風体である。しかも、片方の奴など、頭を半分吹き飛ばされても平気で動いていた。そこを壊せば動きが止まる、というような弱点など、どうやらなさそうだ。
「擬似生命体‥‥たいしたものだ。造った奴は、神にでもなったつもりかな」
「動かそうとしたジイサンは、潰されて仏になっちまったがな。来たぜ!」
 ゴーレムが2体並んで、ゆっくりと近づいてきた。
「どうする、それこそバラバラにするしかないようだが?」
「よっしゃ、ならそれでいこう!」
 ナラクの言葉にリルが頷き、方針があっさり決まった。
 まずはリルとリオンが前に出る。ゴーレムの腕の一撃をオフシフトでかわしたリオンが、すれ違いざまにその腕をロングソードで斬りつける。
 間髪入れず、反対の腕にはリルがダブルアタック。
 さらにそれを見て接近したナラクが、至近距離からのディストロイを足に叩き込んだ。
 小気味良い音が連続し、木の腕が飛び、足が折れ、無数の破片が周囲に舞う。
「今です! 止めを刺しなさい!」
 最後に、さっき殴られてちょっとご機嫌斜めっぽい大ガマのエリザベスが玉藻の命に従って飛びかかり、押し倒して、両前足による殴打、殴打。
 片腕を失い、足も片方動かない状態では、もはや反撃もままならないだろう。
「よし! まずは一体!」
「ふふ、あんまり目立ってないけど、モテる男になるためには、謙虚さも必要かな、と」
 小さくガッツポーズを決めるリルの隣で、リオンが髪を掻きあげる。
「‥‥なんでもいいが、もう一体いる事を忘れるなよ」
 ナラクの目は、片割れが倒されても何も動じる様子がなく、こちらへと向かってくる残りのウッドゴーレムを捉えていた。恐れも、ためらいも何もない‥‥それが、この人形の一番の強みだろう。
 とはいえ、こちらも負けはしない。
 背後では、相変わらず大ガマのエリザベスが張り手の猛打でゴーレムを木片に変えていた。

「ふん、他愛もない」
 爆炎と爆風が広がる様を見ながら、ウィザードが呟いた。
 そのまま背中を向け、立ち去ろうとしたが‥‥。
「‥‥どこに行くつもりだ」
 低い声が聞こえ、弾かれたように振り返る。
 立ち込める煙が薄れてくると‥‥いくつかの人影が浮かび上がってきた。
「まったく、レディにいきなり何てことするのよ! この後の髪のお手入れが大変じゃないの!」
 髪に櫛を入れつつ、怒った顔をしているのは、エルドリエル。
「この前は油断した‥‥と言えば言い訳になるが、とにかく、借りは返させてもらうぞ」
 静かな声で言うのは、エヴィンだ。クラリッサと、シエルの姿もある。全員、無事である。
「‥‥レジストファイヤーか」
 炎のウィザードは、さすがにすぐ理解したようだった。
 ファイヤーボムの至近弾を受けた時には、既に全員がエルドリエルから炎の耐性魔法を受けていたのだ。
 後は、伏せるなり、物陰に飛び込むなりして、爆風をやり過ごせば良いだけだった。
 さすがに完全に無効化したわけではなかったが、煤だらけになり、軽い火傷を負った者が出たくらいで、大した被害はない。
「レジストファイヤーだけではないぞ! その身で味わうがいい!」
 エヴィンとクラリッサが剣を手に、ウィザードへと迫る。
「ぬぅ‥‥!」
 目を険しくさせた炎の術士は、瞬時に自分の周りに煙幕を張り、身を隠した。高速詠唱で発動させたスモークフィールドだ。広範囲に威力が及ぶ攻撃魔法は、接近されてしまえば自分も巻き込むので使う事ができない。目くらましをして、その間に距離を取るつもりだろう。
 しかし‥‥!
「そちらのペースにはさせないわよ!」
 煙が広がる一瞬前、シエルがシューティングPAでダーツを投じた。
「ぐっ!」
 視界が閉ざされた煙幕の中に、押し殺した男の苦鳴が上がる。
「そこね!」
 目標を定めたエルドリエルが、ウォーターボム。
 その前に、突如として炎の壁が出現した。ウィザードがファイヤーウォールを張ったのだ。
 水球が炎に挑み、双方が大きく弾けて四散した。
「終わりだ!」
 そこに、クルスロングソードを持ったエヴィンの手が、ミミクリーの魔法でぐんと伸び、まっすぐに突っ込んでいく。
 クラリッサによってかけられたオーラパワーの力が篭った剣の一撃は、炎の魔術師の胸を貫き、その場に崩れさせた。
 炎の壁を迂回したクラリッサは、まだ抵抗するようなら止めを‥‥と思ったが、その必要もなかったようだ。
 彼女が側に寄った時、ウィザードは既に事切れていたのである。

「うぉぉぉ!!」
 怒号と剣戟の音が響く。
 ルクスのロングスピアを騎士の剣が弾いて流し、返す刀で繰り出されるオーラソードを、同じ闘気魔法で生み出されたシャルグのオーラシールドが受け止める。
 2人を相手にしても、騎士は退かず、互角に渡り合っていた。
 ただ、一撃一撃が双方にとってギリギリの応酬であり、鎧が、衣服が、その下の肌が、武器の一振りごとに確実に浅く傷付けられていく。それほどまでに接近し、相手の動きを見極めねば、こちらの攻撃も当たらない‥‥そういう戦いであった。
「意外とやるねえ‥‥誉めてやるぜ」
「その台詞、そっくり返すぞ。ただの腑抜けかと思っていたのでな」
 一旦距離を置いて止まり、そんな言葉を交わすルクスと騎士。あまりにも激しい動きに、互いに汗まみれであり、肩で息をしていた。浅い傷が無数に身体に刻まれ、所々出血も見られる。
「ああそうかよ。それじゃあ最後は俺を尊敬してあの世に行くんだな!」
 そう告げて、再び槍を構え、騎士へと突っ込むルクス。死と隣り合わせの激闘に望むというのに、その顔はどこか嬉しそうにも見えた。
 鋼が噛み合い、カン高い音が上がる。
 一度、二度、三度、四度‥‥果てもなく続くかに思われる金属の悲鳴は、どんどん加速していく。
 と──ルクスの足が、不意に力を失ったかのようによろめいた。
 無論、騎士はその隙を逃がす筈もなく、手にした長剣を打ち込んでくる。
 ギィィン、と、一際高い音が上がった。半ば強引に身体を割り込ませたシャルグが、ルクスに代わってその斬撃を巨剣で受け止めたのだ。
 しかし、騎士にはまだ、反対の手にオーラソードがある。
「まず1人、もらったぞ!」
 それを、騎士はシャルグの首筋に突き立てようとして‥‥。
「今だ!」
 そのシャルグが、明後日の方向に声を投げかけた。
「なに‥‥!?」
 騎士は、気付いていなかった。あまりにも激しい戦いだったが故に、この場に冒険者達の第3の仲間がいた事に。
「了解ですぅ!」
 ひょっこりと岩の影から顔を出したのは、エルミーシャ・メリルだ。
 直ちに騎士は目標を変え、メリルに斬りつけた。オーラソードが岩をすり抜け、彼女の首筋へと一直線に迫る。
 しかし‥‥その魔法の刃は、メリルに届く数センチ手前で、ふいに消失してしまう。
 騎士が目を見開き、メリルはきゃっと叫んで尻餅をつく。
 何が起こったのか、騎士には一瞬分からない。メリルがニュートラルマジックで、オーラソードを消したのだ。
 激闘の中で自分達に集中させ、メリルのこれに賭ける。それが、冒険者達の策であり、ルクスが足を乱れさせたのは、それを決行する合図だったのである。
 もちろん、騎士が新たにオーラソードを造り出す間など、与える気はない。
「騎士様も犬に飼われちゃおしまいだよな‥‥閃光殺(フラッシュ)ルクス・ウィンディード、参る!」
 十分に距離を取ったルクスが、ロングスピアを構えて疾駆した。
 騎士の身体は、シャルグががっしりと押え、固定する。ジャイアントの巨体と力は、そう簡単には外れない。
 そして‥‥チャージングのスピードから、さらに繰り出されるスマッシュEX。
 圧倒的な破壊力は、騎士を捕まえていたシャルグごと、数メートルも後方に押しやる程であった。
 悲鳴すら上げる事を許さず、ただ赤い飛沫が上がる。
「楽しかったぜ‥‥? また来世で会おう」
 呟いて、ルクスはその場に大の字に倒れた。
 今ので、胸の中の酸素をすっかり使い果たしている。
 が、休んでいる暇はないぞ、と告げるシャルグに、荒い息をつきながら、うるせーと言い返す余裕はあったようだ。

「ザムゥーーーーーッ!!」
 ラウラの蒼い短剣が、炎の尾を引いた。
「そんなモンかよ山猫が!」
 ザムゥの剣が、それを弾く。
 入れ替わるように、スピアがロングソードを打ち込むが、やはり身を捻ってかわされた。速い。
 合間を縫ってエイスがウォーターボム、ニューラが空からサンレーザーを撃つが、これも狙いが上手く定まらない。
 ザムゥは口では挑発の言葉を吐くものの、自分からは決して積極的に攻めなかった。冒険者達の攻撃を適当にあしらいつつ、じりじりと下がっていく。
「まずいぞ! 奴を森に入れるな!」
 スピアが、叫ぶ。
 人狼は逃げるつもりなのだろう。森ならば木が遮蔽物となり、それだけ逃亡が容易となる。
「‥‥あっち‥‥だ‥‥!」
 エイスが、とある方向を指差した。陣地の片側の隅が、切り立った崖となって落ちている。そこに追い詰めれば、もう逃げ場はない。だが、そんな事はザムゥも承知している。果たして、そう上手く行くかどうか‥‥。
「あぁぁぁーーーッ!!」
 突如、ラウラが声を上げ、姿勢を低くして突っ込んだ。
「馬鹿な! 無茶だ!」
 すぐにスピアがフォローに入るが、スピードは全力を出した獣人が勝る。
「死ぬ気か? いいぜ、殺してやらぁ!」
 容赦のないザムゥの剣が‥‥馬鹿正直に正面から向かってくる少女へと振り下ろされた。
 ‥‥刃が肉と骨に食い込む、鈍い音‥‥。
 ラウラは、ザムゥの一撃を右肩で受けていた。そして左手で人狼の腕を掴み、爪を立てる。
「てめえ‥‥」
 ザムゥも、それで少女の考えを理解したようだ。
 しかし、
「今だ! やれーーー!!」
 ラウラの叫びの方が、早かった。
「‥‥っ!」
 一瞬だけ躊躇したが、前回の轍を踏まず、エイスがウオーターボムを撃つ。動きの止まった相手ならば、当てる事はたやすい。
「うぉっ!?」
 人狼と少女、2人がまともに魔法の直撃を受け、後方に飛ばされる。
 地面に転がったザムゥへと、スピアが走った。一番避け難い体の中心、胴体へと向けて横薙ぎに振るわれるバーニングソードの効果を受けた一刀。
 ──ギン!
 倒れたまま、無理な姿勢で受けようとしたザムゥの剣が宙に舞う。
 手ごたえはあった。しかし‥‥浅い。浅すぎる。
 身を捻って立った人狼の腹に、一筋の傷。
 ツゥと流れる血を指で取り、それを舐め上げた顔は‥‥笑っていた。
「面白ぇ‥‥本気で相手してやろうじゃねぇか‥‥」
 呟いた顔の中で、血走った瞳が禍々しい光を帯びる。
 ──Woooooooooooo!!
 天に両手を突き上げ、吼えた。
「気をつけろ‥‥ここからが、本番だ‥‥」
 ラウラも立ち上がった。ダラリと垂れた右腕には、既に力が入らないらしい。指先から、幾筋もの赤い雫が地面へと落ちている。
 ザムゥの体は急速に変化していた。濃い獣毛が身体を覆い、メキメキと音を立てて骨格そのものが人間以外の形を造っていく。
「これが‥‥人‥‥狼‥‥」
 エイスの声も、どこか遠い。
 やがて‥‥完全に姿を変えたザムゥが、狼の顔で一同を見回す。人の時の面影はどこにもない。ただ血に飢えた人外の獣がそこにいた。
 ──ザンッ!!
 地を蹴り、人狼が跳ぶ。高く、そして速い。
「く‥‥っ!」
 舞い降りた先で、スピアが迎え撃つ。が、剣の閃きは、長く伸びた獣の爪でたやすく迎え撃たれ、流された。
 獣は止まらず、ジグザグに地を駆ける。エイスのウォーターボムも、ニューラのサンレーザーも当たらない。全て残像を貫くのみだ。
 人狼がラウラに向かい、片手を振り下ろす。握られているのは、彼女の母親から奪ったもう一本の蒼い短剣。
「‥‥!」
 ラウラは、とっさに短剣で受けるのが精一杯だった。衝撃で跳ね飛ばされ、地面を転がる。
「好き放題させないわよ!」
 追い討ちをかけようとしたザムゥの前に、冷気の魔法が広がった。エルドリエルだ。
「テメェの自我欲望で他人を不幸にしてんじゃねぇぞ雑種!!」
 ルクスも、走ってきた。
「根性見せてやりなさいエリザベス!!」
 玉藻と、大ガマも現れる。
「大‥‥丈夫‥‥か?」
 よろけつつ立ち上がるラウラに、エイスが声をかける。
 ナラクとリルが、その前に壁として立った。
「あいつを‥‥止める」
 傷だらけの少女の瞳は、相変わらず強い光を帯びている。まったく闘志の炎が消えてはいないようだ。
「‥‥今更何も言うまい。だが、どうする?」
 ナラクの問いにこたえたのは、リルだった。
「俺に考えがあるぜ」

「決着をつけるぞ! 人狼ーーーッ!!」
 叫びと共に、ラウラ、リル。やや遅れてナラク、エイスの布陣でザムゥへと駆ける。
 彼らへと振り返った人狼の顔に、笑みが浮かんだように思えた刹那、ザムゥもまた、走り出した。待ち受けるのではなく、迎え撃つつもりのようだ。
 人狼は迷う事なく、手負いのラウラに狙いを定め、向かってきた。
 その2つの影が交差する瞬間、
「ちょっと手荒いが、行くぜ!」
 ラウラの背後に回ったリルが、ロングスピアを『彼女の背中に』繰り出した。
「!?」
 さすがにそんな行動は、ラウラも、周りの冒険者達も予想していなかったろう。
 彼の考えとは、魔法効果の一切かかっていない普通の槍でラウラと人狼をまとめて串刺しにして動きを止め、その間に魔法をかけたもうひとつの武器で攻撃する、というものだったのだが‥‥それにはひとつ、致命的な勘違いがあった。
 人獣は通常武器でダメージを負っても無効なのではなく、通常の武器では傷ひとつ付ける事ができないのだ。この場合も然りであり、リルのロングスピアは、ただラウラの背中を非常に強く押しただけであった。
 前のめりになり、つんのめるラウラ。
 しかし、幸か不幸か、いきなりの不規則な動きはザムゥですら予測の外であり、彼が横殴りに振った刃が、ラウラの頭上を通り過ぎる。
「だぁぁぁぁーーーっ!!」
 その一瞬に、ラウラは人狼の懐に飛び込み、魔法効果を与えられた蒼い短剣を、ザムゥの胸に打ち込んだ。
 が、ザムゥもすぐに、ラウラの背中に短剣を突き立てる。
 周囲の冒険者達から魔法が放たれ、衝撃で2人はまとめて飛ばされ、崖へ。
 片方は崖下へとそのまま落ちていき、片方は途中で止まった。
「‥‥やっと‥‥取り返せた‥‥‥‥母さん‥‥」
 自分の背中に刺された短剣の柄に手をかけ、小声で呟くラウラの顔は、年相応の少女に見える。
 その襟首を、崖に大きく身を乗り出したナラクの手が掴まえていた。
「約束だ‥‥これをやろう」
 ナラクが差し出したのは、子供の玩具みたいな、小さなねこじゃらしだ。
「あたしは‥‥猫じゃない‥‥」
 少しだけ顔をしかめて言うと、ラウラはそのまま、気を失ったようだった‥‥。

 ‥‥翌朝にはラウラも6割方回復し、崖下を探したのだが、ザムゥの死体は発見できなかった。
 川に流されたか、あるいは動物のエサにでもなったのか‥‥それはわからない。
 生きている可能性もあるので、ラウラはまだしばらく放浪を続けるそうである。
 母親のように剣を造るようになったら、自分達にも造ってくれと言う冒険者達もいたが、それは約束できないと、真面目な顔で彼女はこたえたようだ。
 ただ、最後に彼女は、別れの言葉の代わりに、彼らにこう告げたという。
 ‥‥ありがとう、と。

■ END ■