♯少年冒険隊コンチェルト♭ OP.1♪

■シリーズシナリオ


担当:Urodora

対応レベル:1〜5lv

難易度:やや難

成功報酬:2 G 4 C

参加人数:8人

サポート参加人数:2人

冒険期間:02月14日〜02月21日

リプレイ公開日:2007年02月20日

●オープニング

●雪の道

 例えば、誰にも言えない過去を背負って生きていくとしよう。
 その過去がなんであるかは、このさい何でも良い。
 誰しもそれを忘れる努力をするだろう。だが、拭い去れない記憶は深き奥底にしまわれ少しずつ蝕んでいく。いや、蝕ばまれたことさえ忘れていつしか当たり前になっていること気づかないのかもしれない。
 そんな過去を背負った男が一人、雪の道を進んでいた。
 ずっと眠っていたかった。それが残された最後の安らぎだったから。
 けれど、願ったところで戻ることはできない。狂気に染まった手に握るのは片道切符、帰り道はない。それなら移ろうものみな滅ぼして、自分も・・・・消してしまおう。
 面影は、遠いあの日に聞いた子守歌。残った物は。
 −−それだけだ。
 この世界のどこにも生きた証が無いのなら、もう何も欲しいとは思わない。
 黒いフードが風に揺れた。 
 きっと欲深き神はどこにいるのでもない。自らの中とそして天にただ居るだけだ。



●プレリュード

 それは、ある雪の日のことでした。
 キエフから少し離れたこの村に旅人が訪れたそうです。
 彼らのみすぼらしい姿を見た村人たちは、警戒しつつも招き入れたといいます。
 その旅人は生まれたばかりの幼子を連れていて、村の教会に。

「ね、母さん」
「何?」
「どうしていつもその話をこの時期にするの」
 癖のある赤毛に何度か手をやった後、その少年は不思議そうに母親に聞いた。
「アレクは、いつもここまでは聞くけど、後は飛び出していくじゃない。ここからがいいところなの」
「ふーん。でもボクこれからジルと一緒に出かけるんだよ。だから今年も聞かなーい」
 笑顔でそう言うなり少年は、駆け出していく。
「やれやれ、誰に似たのだろうね」 
 
 教会に迎えられた旅人たちは、とても弱っていました。理由は分かりませんが、何者かに追われたのでしょう。旅人は最後の力を振り絞ってこう言いました。
 この子を頼む・・・・と。
 息を引き取った旅人は、近くの村の出身であることが分かりました。それなのに、彼については誰もその村の人たちは詳しく語りません。
 そして月日は流れ、その旅人の連れていた幼子はキエフに裕福な家庭に引き取られたそうです。その時、旅人が残したロザリオ。悲しい逸話を残しつつも、このバレンタインの時期にだけに飾られる十字架。その元で祝福を受けた恋人・家族・仲間たちには強い絆が生まれる。そんな逸話が生まれたそうです。
「よくある話。でも、縁起ものかしらね」
 そう呟いて眺めた窓の外には、雪の世界が広がっていた。

 裏山、はしゃぐ子供たちの姿がある。
「それにしても、寒いよね」
 頬を赤くしたその赤毛の少年は、作ったばかりの雪だるまに目を書き入れたあと言った。
「冬だから寒いにきまってんじゃん。当たり前のことを聞くなんてバカだな、バカ」
 それを聞いた、ハーフエルフの少年はおどけた調子でからかう。 
「ひどいよジル、バカなのはわかってるもん」
 からかわれた少年は、ふくれっ面でジルと呼ばれた少年を睨んだ。
「お、ふくれましたね。アレク君。かわいー」
「かわいくないよ・・・・ボク、男だ」 
「よしよし、アレク君も男の子だもんね、ってかどんなのが好みなわけ」
「どんなのって?」
「俺はでかいのだな。やっぱり大きいのに限る?」
 きょとんして、何ことか理解できないアレク。
「そうデス、ボンボンドンデス」
 会話に、割り込んできたちっこい少女は、なぜか胸を張っている。
「・・・・いや、ぺったんこでしょニーナちゃん。一般的男子はそういうのにはあんまり興味ないわけで」
「エロイムエッサイム」
「何だよそれ?」
「お祖父ちゃんに聞いた胸が大きくなる呪文」  
(あの爺さん、孫娘に何を教えているんだ)
 そんなジルの疑惑をよそに、何を想像したのかは分からないが赤面しているアレクである。
 と、相変わらずの少年冒険隊。
 その頃村では、とある事件が巻き起こっていたのだが・・・・。

「ロザリオを盗まれただと!」
 バレンタインパーティーを間近に控えた村。そこで起きたのは、祭りの象徴である十字架を盗まれたという事件だった。どうやら盗人はよりにもよって湖の忌むべき遺跡へと逃げこんだらしい。
「今年はパーティーは無しかあ。いやこういう時こそ冒険者だな」
 ということで、ギルドに早馬が走る。
 そしてそれ聞いて、のほほんとしている少年冒険隊では無かった・・・・。


 冒険へGO
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●目的

 遺跡にある地下迷宮に逃げ込んだ盗人からロザリオを取り返す&探索している冒険者のお手伝いを
 少年冒険隊と一緒にします。

●場所

 遺跡と迷宮は、徒歩で一日半程度の村の近くにあります。
 中は結構広い玄室なのでたいていの魔法は使用できます。
 ちなみにこちらの目的は探索ではないので、ロザリオを取り返して門を開いたら深入りする必要はありません。

●用意したほうが良いもの

 遺跡探索ですので、それに応じたものを用意しましょう。
 中はそれほど寒くないので防寒着はそれなりで大丈夫。
 テント・食料・灯りは補充できないため必携かも。

●関連事項

 このシナリオは「悪魔の門」とリンクしています。
 今回、両方成立した場合、あちらのメンバーと合流して別れたところから始まります。
 悪魔の門の地下一階は門を開くために二組いたほうが便利なため、右と左どちらかを個々に担当することになります。こちらの担当は逃げこんだと思われる右です。
 こちらだけ成立した場合は門を開く必要はありませんただその場合は奥に逃げ込んでいる可能性もなきにしもあらず。 
 悪魔の門について興味がある方は、あちらを参照して見てください。 
 少年冒険隊&悪魔の門メンバーとは入口で合流したことになります。

●その他

 村でバレンタインパーティーがあるようです行ってみたらどうでしょうか? ただロザリオが無いとパーティーというよりお通夜になります。頑張りましょう。
 
 ※登場人物

 ■アレクセイ・マシモノフ 人・12歳・♂
  へなちょこファイター。人を疑うことをあまり知りません、素直で直情型です。

 ■ジル・ベルティーニ  ハーフエルフ・16歳・♂
  それなりの実力をもつレンジャー。
  深刻な感情を内に秘めつつも、前向きになろうとしているひねた青少年です。

 ■ニーナ・ニーム エルフ・10歳・♀
  風魔法使いの女の子。ウインドスラッシュ・レジストコールドが使えます。
  脳内は、少しまともなお花畑のようだ・・・・。
 

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●今回の参加者

 eb0516 ケイト・フォーミル(35歳・♀・ナイト・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb4721 セシリア・ティレット(26歳・♀・神聖騎士・人間・フランク王国)
 eb5663 キール・マーガッヅ(33歳・♂・レンジャー・ハーフエルフ・ノルマン王国)
 eb5874 リディア・ヴィクトーリヤ(29歳・♀・ウィザード・ハーフエルフ・ロシア王国)
 eb9900 シャルロッテ・フリートハイム(26歳・♀・ナイト・ハーフエルフ・ノルマン王国)
 ec0856 ミリッサ・ヴェルテッス(21歳・♀・ナイト・エルフ・ノルマン王国)
 ec1053 ニーシュ・ド・アポリネール(34歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・ノルマン王国)
 ec1182 ラドルフスキー・ラッセン(32歳・♂・ウィザード・ハーフエルフ・ロシア王国)

●サポート参加者

ラッカー・マーガッヅ(eb5967)/ 瀬崎 鐶(ec0097

●リプレイ本文

●オーヴァーチュア

 星空の向こうにある見果てぬ何か、明日という道がそこにあるのなら、振り返る必要はきっとないのかも知れない。だから今は、語りえないものを語るために、願った先にある光をいつか手に入れるために・・・・進みだそう。

「道がたくさんあるとしても、後悔だけしか無いかも」
 ハーフエルフの少年は言った。 
「今はそれで良い。問題は」
 そっけなく返した男、名をキール・マーガッヅ(eb5663)という。
「その先にどうやって進むか、ですよ」
 手にした杖で地を数度突いたあと、リディア・ヴィクトーリヤ(eb5874)は微笑んだ。
「こら! 子供だけでこんな危険ところにきちゃ駄目ですよ」
「あ、ピュアピュアティレット号デス」
「え、え、ニーナさん。どこでその名前を聞いたの?」
「お祖父ちゃんが言ってたデス、聖夜祭の時に変なレースがあって優勝した人がセシリア・ティレット(eb4721)、同じデス」
 驚くセシリー。そういえば、大分前にそんなレースがあったような気もする。
 道には別れがあり、出会いもまたあるもの。
「はじめまして!  ボク、アレクです」
 赤毛の少年が挨拶した先にいる彼らを紹介しよう。
「シャルロッテだ」
 彼女、シャルロッテ・フリートハイム(eb9900)は無頼系眼帯美形アネゴ戦士である。説明がよく分からない? とりあえずそういう感じである。
「ミリッサです。よろしく」
 ミリッサ・ヴェルテッス(ec0856)は、ややクールな雰囲気の女エルフ騎士。弓を使うということでキールと少し似た系統の彼女だが、これから先ちょっとした災難に合うらしい。
 そして色々と暴走しそうな人、NO.1は、この方。
「遥々ロシアの地まではせ参じました。Bonjour、Enchante! よろしくマドモワゼル&ムシュゥ! ノルマンはガスコーニュ出身の騎士、ニーシュ・ド・アポリネール(ec1053)と申します。これは、お美しいマドモワゼル!  後ほどお茶など。いえいえ、お代は・・・・」
 言葉につまったニーシュ。財布の中はちょっと軽いようだけれど、そんなに声を掛けまくって大丈夫なのだろか?
「だから男という生物は」
 そんなニーシュの言動をちょっと冷たい視線で見ている彼女は、ケイト・フォーミル(eb0516)、普段はクールだが、時々
「じ、自分は、ク、クールだからな。う、うん、ク、クールだ!」
 と、壁に隠れて主張する三十路越えのおっきなお姉さま戦士である。リディアとは色々あったが良いお友達になったようだ。
「これが俺の初めて冒険か、スタートとしてはいい感じだな。お前らちびっ子に負けないぜ!」
 そうだぜ、俺だぜ、行こうぜ、必殺マグナブロー! ラドルフスキー・ラッセン(ec1182)。彼の性格はまだ上手くつかめないが熱血、炎の魔法使いのようにも見えるが。まあ、そのうち分かるだろう。
 ということで、これからしばらくの間、少年冒険隊と冒険を共にするであろう仲間の紹介を終わる。

●悪魔の門に行く前に

「Mr.アハハウフフ対策について、皆の意見を聞こう」
 ケイトが提案した
「あ、あの」
「どうしたミリッサ君?」
 なぜかミリッサの様子がおかしい、キールがそれとなく気を配る
「そ、その黒の」
「アハハウフフさんのことでしょうか?」
「だ、だから」
 セシリーが続ける、泥沼である
「ノン、きっとミリッサさんは、Mr.アハハウフフに恋を」
「や、め、て」
 ミリッサ・ヴェルテッス。冒険へ行く前に撃沈である。ということで、黒の僧侶の通称は心の中にしまわれたようだ。彼の名前が分かるまでは普段は「黒の僧侶」だが心の中でMr.アハハウフフ・・・・ね。
 
 さらにキールの調査によって得られた情報は、ロザリオを盗んだのは、どうやら集団の仕業といういうことだった。
「あのロザリオは普通のロザリオ、確かに装飾は凝っていますが特別な価値は無いと思うのです。遺跡についてはそこへ逃げたという村人がいるだけで確証があるわけではありません」
 応対した神父はそう言った。どことなく不自然ではあるが、やはり現地に行くしかないのだろう。キールは調査を終えると、遺跡へ向かった。 
 その遺跡の入り口で出会った彼らとの話は割愛する。彼らの話を聞いた冒険隊の願いにより、こちらも手伝いをすることなった。ちなみに扉の近くにある仕掛けを動かすだけで開いた扉の先に無理をして行く必要は無いということだ。
 そう言えば、初日キールの親戚であるラク君が見送りに来ていて、なぜか知らないがキールに変な質問していった。
 キールの好物は、不味くない家庭料理。
 趣味は、普通の狩り・自然に囲まれた中、木の上のでひっそりとした昼寝。
 それを知って誰がどうするのかは知らない。 

●焚き火

 門の内部へ進み、そろそろ疲れが見え始めた冒険隊の様子を見た彼らは適当なところで野営をすることにした。
 焚き火の揺れる炎の中、皆はくつろいだ気分でいる。
「でも、ボクここにまた来ると思わなかった」
 アレクは懐かしそうに言った。
「そうですね、色々と私も懐かしいです。この遺跡に始めて足を運んだのは」
「確か去年の秋だ」
 リディアにキールが続ける。
「二人とも、これまで何かしらあったようですね」
 ミリッサがキールに尋ねる
「ああ」
「話して欲しいですね、色々と」
 だが、キールは無言のままだ。
「キールさんは無口だもんね。ボクともなかなか、ジルとはよくお話してるみたいだけど」

 ──そのころ噂のジルは

「今回結構メンバーが違うし、気を使うわけよ」
 と、こぼしつつ見回りらしきことをしていた。
「おどけた態度のわりに、意外と小心者だな」
「だ、誰?」
「シャルロッテお姉様」
 そこには、どこかすました感じのシャルロッテが立っていた。
「シャルロッテさん・・・・何かイメージ違うんですけど」
「私としては最大限の癒しのつもりだが?」
「慣れないことはしないほうが」
「はは、そうだな。しかし何だ? 辛気臭い顔をしているな」
「ですかね、いつも俺はこうですけど」
 ちょっとふてくされた感じでジルは返した。
「よし、先輩として一つ良いことを教えてやろう」
「良いことですか?」
「なに、簡単なことだ。どんな窮地に立たされようとも、どんな絶望にも『それがどうした』と笑い飛ばす。それだけさ」
 シャルロッテは隠れていない片目を軽く閉じたあと、豪快な感じで笑った。
「それができたら苦労しないですよーったく」
「運命などと言うものに振り回されるな。頑張れ若造」
 そう言うと、手を振りシャルロッテは焚き火のほうに戻って言った。
「ちぇっ、自分も十分若いじゃんか」
「うんうん、青春ですねー。若いって素晴らしい」
 そう言って拍手をしながら出てきたのは。 
「求めに応じて何処にでも、女性の下へは直行便。ニーシュ・ド・アポリネール参上!」
「あの、誰も呼んでないですけど、それにその名乗りはなんですか?」
「ノンノン、ジル君。細かいことは気にしない演出です。今回は君に女性指南をするために登場しました」
「はぁ・・・・」
「ジル君!『大きいのに限る』とは、まだまだですよ。なんとなればそう、女性への等しき愛情こそが肝要なのですから!」
 ニーシュは力強く断言する。
「どうして俺の趣味を知ってるんですか」
「ノルマン人は地獄耳なのです」
「そ、そうなんですか?」
「それよりも、女性というものは・・・・ゴフ」
 どうしたのだろう、ニーシュが沈黙した。   
「ジル。じ、自分たちと一緒に話をしよう、く、来るんだ」
 ケイトキックを喰らったニーシュは沈黙したらしい。
「・・・・負けませんよ、ケイトさん」 
 去っていく二人と倒れつつ呟くニーシュ、何の勝負なのかは不明だ。

「よし、アレク。俺にお前の冒険談を話してみろ」
 食事の後ラドルフスキーは、アレクに今までの冒険について聞いていた。
「じ、自分も聞きたいな、どうして冒険者になったのか」
 二人の問いにアレクは今までの冒険についていくつか話をした後、首を何度かひねり
「ボクは、何かを守る力がほしかったんだ。だから・・・・何もできなかった時くやしかったから・・・・友達も守れなかったから。でも、まだよくわかんない冒険することが本当に良いことなのか、リディアさんの言うこともわからないし、でもボクは誓ったから」
 視線の向こう、リディアが頷いたように見えた。
「子供とはいえ、俺よりも色々成長してやがるな。負けた気分だぜ」
「そんなことないよ」
 ラドルフスキーの言葉にアレクは、はにかんだ
「俺も立派なウィザードを目指さないとな」
「なんであれ夢があることは良いことだと自分は思う。これからも皆頑張れ」
 そういうとケイトはアレクを頭を撫でた
「ケイトさんくすぐったいって」
「ま、まだ若いとはいえお前達は立派な冒険者だ。頼りにしているぞアレク」
 そういえば、セシリーとニーナが何事か二人で話していたようだが、いったい何を話していたのだろう? 気になる。こうして安らぎの時間は過ぎて行った。


●言葉は何も救わない

 運命なんてものは、いつでも残酷なものだ。
 分かっていても待ち構えていた牙にどうすることもできないこともある。
 リディアの考えていたとおり、これは罠だ。そして罠であることに全く意味がない罠だった。

「ようこそ、愚民たち。半人狩り、その一時の娯楽へようこそ、どうやら見知った顔もいるようだが」
 前には、真新しいズゥンビたち、後ろには彼。前後を挟まれた。
「さて、この危機をどうやって乗り切るかね? 求める十字架、そして門への扉は死霊たちの宴の先だ。その怒りに満ちた顔、良い、とても良い」
「よく喋る口だな、今すぐ閉じさせてやる」
 後衛であるシャルロッテとニーシュは黒の僧侶へ向かい剣を抜き構えた。
 上がった火炎の柱、ラドルフスキーがズゥンビの群れに唱えた呪文が始まりだ。リディアも近距離ゆえ、僧侶に魔法を使えないことを見越すとズゥンビを焼き尽くすことに転換する その後、前方へ突撃したケイトとセシリー、援護射撃を始めるキール。
 ジル、ニーナ、ミリッサは後方の擁護に回り、アレクもまた因縁の相手へと進む。
「もし、良ければ質問をいくつか。何が貴方をそうも猛らせるのか。聞かせて頂けませんか?」
 間合いを計るニーシュは彼に向かい問うた。
「見たことのない顔だな、お前も半人か・・・・。憎しみに理由が必要なのか? ただ、憎い。消してしまいたい、それだけだ。だからお前も消えろ、濁った半人」
「母の愛と、父の力は表裏一体。神の教えの基本の基本をお忘れとは、哀れな」
「ニーシュ! 油断するな」
 シャルロッテの一喝、右から襲ってきた獣を回避したところに、それは来た。
「移ろい行くものたちよ・・・・消えよ! 滅びよ! 否、死をもって贖うほどのことも無し、お前たち如きはこれで十分だ」
 彼のもの黒き涙にて惑う心に進むの一筋の黒光、輝きは黒く圧する深く重く、命の源を元に・・・・。
 黒光に覆われ、肩膝をついたニーシュ。それを守るかのよう、シャルロッテの剣が獣を斬る。

 さあ、レクイエムは誰がために奏でられる? 

 振るった剣、返す刃でもはや原型を止めていないそれから剣を引き抜き、ケイトとセシリーは振り返った。
「ケイトさん!」
「くっ、しかし、自分では・・・・小柄なお前なら割り込めばなんとかなる、後は任せて行け」
 セシリーは駆け出した、果たして間に合うのだろうか。

 少年は剣を握り震えていた。目の前の獣と黒い僧侶がいる、この恐怖は二度目。けれど、今は守らなければいけないものがあるから。
「ここは、通さない!」
「面白い、面白いね、滑稽だよ。小僧、命が惜しくないのか? 奴らのように血反吐を吐きたいわけ・・・・」
 彼の言動を遮ったの、二本の矢。
「少しは黙ったらどうですか? おしゃべりな男はもてませんよ」
「同感だ」
 ミリッサとキールが放ったそれは彼の腕を狙ったものだ。
 無造作に刺さった矢を引き抜くと彼は笑いを浮かべて言った。
「ショーはここまでか・・・・それでは本気を出させて貰う。逝きたいのは誰だ?」
「残念ですが、それはきっと黒の僧侶さんのほうです」
 盾を構えたセシリーが割って入り込んだ。
「苦戦はしたが、そろそろ幕だ。大人しくレクイエムを聴くがいい、剣が奏でる鎮魂歌をな」 
 傷つきつつもシャルロッテが言った。
「やれやれだぜ、逃げるなら今の内って奴だな悪役さん。まあ、俺の火柱と」
「私の火炎球が、当然お見舞いされますけどね」
 余裕のラドルフスキーとリディア、どうやらズゥンビは全てケイトの手によって倒されらしい。
 黒の僧侶は自分の不利を悟った。ここで無駄な怪我を負う必要もない。目的を果たすまでは命を失うわけにはいかないのだから。
「負け、負けだ。しかし、私も馬鹿ではないのでね」
「何故我々ハーフエルフをそこまで憎むのです、その憎しみ・・・・貴方はハーフエルフに何かを奪われたのですか?」
 リディアの問いに
「語ること。言葉では何も救えぬ。力なき言など風に散る葉のごときもの」
 彼はそういうと指を鳴らす。
「因縁というやつだろう。来るがいい約束の地へ。待っているぞ、お前達」
 その捨て台詞を契機に、彼は獣の背負った袋から何事か取り出すと投げた、それに一撃を加えると辺りを白塵が包む、僧侶はこうして三度、逃げた。


●エピローグ

 その後、ロザリオを取り戻し仕掛けを動かした彼らは門の奥へ進むことを諦める。
 ニーシュが怪我をしていたこともあり、村へと早々に帰還することにしたのだ。 
 そしてパーティーは盛大に行われた。

 会場より少し離れた場所。
「ねえ、キールさん」
「なんだジル」
「どうしてハーフエルフは忌み嫌われるのだろうね」
 キールは少し考えていたが
「差別はどこにでもある、それだけだ」
「そっか」
「ジル君、男と女が愛し会う事に種族は関係無い。私はそう思いますよ」
「そうだよね・・・・でも」
 ジルはどこか寂しそうに俯いた。

 アレクはミリッサと一緒にいるようだ。
「アレク君。騎士たるもの、彼のようになってはいけません」
「どうしてミリッサさん?」
「怪我を押してまで、女性に声をかけまくるなぞ、騎士の風上にもおけません」
「でも、騎士って女の人を口説くのが仕事って、ニーシュさんは言ってたよ」
「・・・・」
「あと、Tous pour un un pour tous!!だって」
「なんですかそれは?」
「皆は一人の為に、一人は皆の為に?」
「態度に似合わず良いことを言います。では、私は新しい時代の希望に」
「乾杯!」
 ミリッサは杯を掲げるのだった。
 
 ☆恋愛おまじないコーナー☆

「ぶー、ほとんど出番がなかったデス、ついでに煙が小麦粉って詐欺デス」
「それより私の誕生日記念に、あれを報告しましょう」
「はぁい、セシリー」
「今回のステキな恋が見つかるおまじないは」
「エロエロエッサイム!」
 ・・・・微妙に間違えてるけど、ピンクのデビル召喚とかしないよね。
 
 続