●リプレイ本文
●序文
窓を開く朝の涼しさが入って来る。
うなじにかかった金の糸、ほつれた髪を数度梳き彼女は欠伸を一つすると言った。
「おはようございます」
鳥が数羽さえずるだけで、通りには人影はまだない。
朝の光の中、爽やかな笑顔を浮べたシシルフィアリス・ウィゼア(ea2970)は伸びをすると出発の準備を始めた。
「朝から礼拝とは、あなたに神のご加護がありますように」
祈りを捧げることに彼が何の意味を感じているかは別として、礼拝を終えた少年は問題の起点である場所を訪れることを思う。
彼の名は、ジェシュファ・フォース・ロッズ(eb2292)という。
「色々あったわけだね」
所所楽柳(eb2918)はキルトの話を聞いたあと、そう言った。
「ですわ、いずれにせよ風は吹く先に答えを求めるだけです」
「嬢の言ってることは、僕には分かるようで分からないけどね。貴重な情報をありがとう。じゃ、柚・・・・・・って、なぜ転ぶ」
何もないところで、人はなぜ転ぶのだろう。柳は柚の手を取ると助け起こした。
「転ばないほうが凄いです」
「とりあえず行こう」
柳は柚を引きつれリュミエールの元に向かう。
シェリル・オレアリス(eb4803)は人妻だ。
その彼女は、ある青少年を探していた。その彼に関しては触れると長くなるので、細かいことは飛ばそう。
「え、今さっき出発した? すれ違ったかしら」
ギルドで話を聞いたシェリル。その目算は崩れたようだ。
(こうなったら、速攻で捕まえるしかないわね。待ってなさい)
彼女は、いったい何を聞く気なのだろうか、ともかくジルという名の青少年を捕捉するためシェリルは移動を始めた。
ルカ・インテリジェンス(eb5195)を訪れたのは、彼女の元部下? 馬である
「姐さん」
「調査の結果はどうだった? 使えない男が嫌いなの、知ってるわよね」
「そんなに激しい性格でしたっけ・・・・・・」
「そう? これでも大人しくなったつもりだけど、細かい事を気にしてない。さっさと報告しなさい」
「まったく人使いの荒いことで」
ルカは彼の話を聞いたようだ。
レイブン・シュルト(eb5584)は愛蜥蜴を撫でたあと言った。
「それじゃ、行ってくる、元気で待ってろよ」
反応しているのか、反応していないのかく分からないが、首をふりふり彼を見送るペット。その姿を満足そうに見つめ頷くとレイブンは、ドアを開いて街へと向かって歩き出した。
アーデルハイト・シュトラウス(eb5856)は、匂いたつような紅茶が注がれたカップをテーブルに置くと、傍らに控える男に言った。
「後は頼むわね」
「行ってらっしゃいませ、お嬢様。こたびお帰りは何時頃になるでしょうか?」
「分からない。全て終るまでかしら・・・・・・」
「たまには、家の方にも顔を出されますと、皆様お喜びになります」
「そうね。でも、あの堅苦しさ、苦手よ」
「ですが、やはり血の絆からは逃げられぬものです」
男の言葉を背にして、アーデルハイトは風を切り門扉を出でる颯爽と。
ロイ・ファクト(eb5887)とエリヴィラ・アルトゥール(eb6853)は、ぎこちない様子で歩いている。
お互いの続く先にあるものがなんであれ。彼と彼女の物語もまた新しい章を迎える。
触れた指先、繋いだ手、いつもの見慣れた光景もどこか違く見えた。
「ロイさん」
「なんだ」
話を続けようとするエリヴィラに対して、ロイは、やはりそっけない。
「なんでもない」
「そうか」
ロイがそういう性格だと知っていても、エリヴィラはちょっと物足りない。
相変わらず進展しているようで、進展していないようにも見える二人。けれど、この二人には、それが似合っているような気もする。
「どうぞ、開いてるよ」
扉の先にいた眼帯の女に軽く会釈をしたマクシーム・ボスホロフ(eb7876)は、
「どうやら、仕事着に着替えたようだね」
見慣れた彼女の姿を見て言った。
「こっちのほうが、落ち着くってのもあるな」
「口に合うかどうかは分からないが、土産を持参した」
「そりゃまた、気が聞いてる」
リュミエールはマクシームの土産を受け取ると、彼と談笑を始める。
「例の魔剣と箱の関係だが」
「興味あるのかい?」
「少し」
「専門外だからね、推測を繰り返すことになるけど、愚者の発言からすると、封印の解けた剣は、使用者にも災いをもたらすんじゃないかな」
リュミエールは、チーズを頬張った。
「力の代わりに命を削るとか?」
「よく聞くのはそれ、どっちにしろあんまり良い感じはしない。魔剣というくらいだし」
「有名なのかい、その剣の話は」
「どうだろう、魔剣の伝承なんて、掃いて捨てるほどあるだろうから。ただ、何か出所はきっとあるはず。知らなければ探しようもないと思う」
●本文
いままでの冒険に関わった人物の情報を集め、似顔絵を作成したシシルは、パーティーメンバー全てとそれを共有した。
その結果、集まったメンバーは、過去におきた情報を知ることとなった。
シシルはその語エリヴィラと一緒にある村へ出発する。
『教会』
リュミエールの元を訪れ、教会への同行を求めた柳。ジェシュファ、、シェリル、ロイ、アーデルハイト、マクシームら、他のメンバーも独自に調査しているようだ。
集まった彼らに向かって、リュミエールは言った。
「しかし、盗まれるのは想定外だったよ。でも、奴の最後の言葉は確か『お前たちに預ける、きちんと保管しろ、しなかったら許さない』だっけ? というより、こんな姑息な手段は、どう考えても似合わないな」
ともかく、倉庫について情報を集めた彼らなのだが、分かったことはそれほど多くはないようだ。
「警備はそれほど厳重じゃかったようだね。目的のものしか盗まれていないことからして、はじめから箱を目的とした盗難。それなら箱の価値を知ってる誰かであることは確実かも」
ジェシュファは、話を聞いて言った。
どうやらその手口からして熟練の盗賊のようだが・・・・・・犯行の痕跡は、ほとんどない。
「箱の価値を知っているものの犯行だとして、彼らでなければ誰だろう?」
柳の疑問を聞いたアーデルハイトは、
「もし、第三者が介入しているのなら、これ以上聞き込みをしてもきっと無駄ね、戻りましょう」
なぜか、その場から離れたがっているアーデルハイト。
「どうしたんだい? アーデル嬢」
しばらく黙ったあと、アーデルハイトは、ぼそりと言った。
「苦手なのよ、教会」
『酒場』
酒場にやってきたレイブンは、一つの噂話を耳にした。
「何か、その筋で有名な賊がキエフにやって来たとさ」
「そういう噂は大半ガセだろ」
「まあね、その筋ってが、嘘臭さ満点だな」
(盗賊か・・・・・・何か関係あるのだろうか)
『通り』
シェリルは道で、アウトロー風の男に聞き込みをしていた。
「見かけない顔ねえ、いるいる」
「本当? 誰かしら」
「あんた」
それを聞いたシェリルは微笑む、しかし目は笑っていない。
「冗談は顔だけにしましょうね。命は大事にね」
「・・・・・・そういえば、裏通りに見ない奴等がしばらく住んでいた。けれどすぐどこかに去っていったよ」
恐怖を感じつつ、男は言った。
『ギルド』
ギルドにやって来たルカは、居眠りをしている中年ギルド員をみつけると言った。
「あら、まだ首になってないようね」
「ん、何度か見た怖そうな顔に傷のある、ねーちゃんだな。仕事ならないぞ」
「今仕事中、それで聞きたいことがあるのよ」
ルカの話を聞いたギルド員は
「そんなに特徴的な奴等なら憶えていると思うのだけどな。そういや、ヴォルニ領に行く仕事ならこの前あったよ。隊商の護衛だったかな」
「護衛?」
「別に怪しい点は、ほとんどなかったと思うが」
「そう、ありがとう」
帰り道、ルカはふと自らの属していた団のことを思い返す。
傭兵団壊滅? あのジジイ死んでるし・・・・・・殺しても死なない奴だと思ってたけど、いなくなると、ちょっとだけ寂しいかもね。
『村』
道中、シシルとエリヴィラは仲良く一緒に歩いていた。
「それでシシルさん、彼とは最近どうなの?」
「エリたんこそ、結婚式はいつなんですか」
「け、結婚て」
「柳さんが、記銘、記銘言ってましたよ。私も教会へ見に行っちゃおうかな」
「・・・・・・シシルさんがいじめる」
その様子をにやけて眺めるシシルであった。
さて、村についた二人は早速、情報収集を始めた。
その途中。
「あれ、エリヴィラお姉ちゃんだ! 来てたんだね」
なんだかどこかで見たような、赤毛の少年がやって来た、
「あ、アレク君、久しぶり、元気だった」
「うん、シシルお姉ちゃんも一緒なんだ」
「アレク君、少し背が伸びましたか? そうだ、ちょうど良いので手伝ってください」
再会を喜んでいる暇もなく、シシルはアレクにお手伝いを頼むであった。
シシルとエリヴィラの調査によって分かったことは。
「風の旅団? ああ、村を救ってくれたあの人たちか。しばらく滞在して復興を手伝ってくれてたけど、どうやらヴォルニ本領の方に向かったみたいだな」
「そういや、君の持っている似顔絵、その僧侶風の人は、どこかで見たことがあるのだよな・・・・・・昔本領で見た気がする」
などである。
●末文
水竜の看板が掲げられた酒場にで合流した面々。各々好きな物を頼み、今回得た情報の交換をしていた。
「箱は、キエフを出たと私は思うな、箱について知る者」
マクシームは集められた情報と、行ったダウンジングの結果を加味して言った。
「詳しい場所はどこなんだ?」
地図を見ていたロイが聞く。
「ダウンジングの結果からすると、キエフの西かね。それと、メティオス卿についてだが、その名前の貴族が昔いたようだ」
「偶然にしては出来すぎてるけどね、とある地方領主の配下。今では引退してるらしいよ。彼が昔住んでいたのは、やっぱり西だって」
マクシームの言葉を柳が引き継ぐ。
「あの箱について知っている人は、少ないよね。関係者が限られるのだから、必然的に今ある情報との関連精度があがる、かな?」
「西か」
ロイの視線の先、地図の西にあるのは・・・・・・。
シェリルは、出発前話した会話を、思い出していた。
「びっくりした。シェリルさん、どうしたんですか?」
「たいしたことじゃないわ、ジル君は、気になる子とかいるのかな」
シェリルの問いにジルは驚いたが
「いきなりですね・・・・・・俺、そういうの考えたことないかな」
足元に視線を移したあと、ジルは言う
「どうして?」
「その資格がない。それだけだから」
ジルは黙った。
夜も更けた。
酒場は賑わっている。お互いの交わりによって話を続ける。
その最中、男は眼帯の女に近づき問う。
「一つ疑問だが、いいか」
聞くロイにリュミエールは。
「何?」
「盗まれた箱。本物か? 」
リュミエールは、一瞬驚いたが、すまなさそうな表情で言った。
「・・・・・・戦士にしておくには惜しいね。鋭い。でもあの箱は残念だけど本物」
「そうか、油断したな」
「もう少ししたら、もっと立派なところに預ける気だったのだけどね、もしくは自分で保管するべきだった。盗まれるとは思わなかったよ・・・・・」
「失敗を挽回すれば良いだけど。次は頑張れ」
「そうだね」
その後、催された大宴会?
リュミエールの財布の中身を軽くなったを通り越し、からっぽになったとも聞く。
続