●リプレイ本文
●主役
ロイ・ファクト(eb5887)
エリヴィラ・アルトゥール(eb6853)
●お客さんたち
シシルフィアリス・ウィゼア(ea2970)
所所楽柳(eb2918)
アレーナ・オレアリス(eb3532)
シャリオラ・ハイアット(eb5076)
ルカ・インテリジェンス(eb5195)
アーデルハイト・シュトラウス(eb5856)
マクシーム・ボスホロフ(eb7876)
イルコフスキー・ネフコス(eb8684)
●式の前
どうやら、式だ。
葬式ではない。
結婚式のようだ。
主賓がやってくるまで、まだいくらか時間がある。
よって、最初に個人の目的を片付けておこう。
リュミエール、いやいまはソフィアと呼ぶべきか? 彼女に疑問というより、解明されることのなかった謎をぶつけた男がいる。
オヂサン。いや、マクシームだった。
「いまさら聞いてどうなるというもんでもないが、なんだか釈然としないんでね、結局のところ『箱と鍵』とはどういったものだったんだ? 」
マクシームは下記のように質問した。
「ひとつは、愚者の魔剣−箱(神の塔)−ナタリーの十字架(鍵)のようだが、ふたつめ、領主の宝石−箱(幻影の洞窟)−???(鍵)」
「推測だけど、鍵はきっと共通じゃないかな。そして領主がもっていた杖が、剣の対の器だと思うよ、箱と宝石は二色、二つあるとして、あの宝石自体は器の力を制御するものらしいから、鍵をもって真の力を解放して、封印の宝石で制御するので力の理で、それを無視して無理矢理に解放すると、自らを喰らって暴発するのだと思うよ」
ソフィアが言うに、ヴォルニ領主になるためには、形式的に器と二色の宝石。
ここでいう剣と杖の二対の武具と、箱の宝石を継承の儀式のさいに使うようだ。
継承といっても、そう頻繁に起こるものでないため、両者ともに普段は遺跡に安置されていた。
それが神の塔と悪魔の門らしい。
この後の話は、余談であり、誰が知るものでもない。知るとすれば愚者だ。
領主であるアレクサンドルは継承後、器を背景に暴走を始めた。
よって弟であったテオドールを旗頭にした一部が反旗を翻し、剣を奪い去るが、反乱自体に失敗して、逃走。
だが、テオドールは幼少の頃に人間であることから、ヴォルニフを一時的に追放され、アレクの住む村の周辺で育ったため、そのあたりの詳しい事情を知らなかったらしい。
最後にマクシームは言った。
「もう眼帯をつけることも無いのだろうが研究はつづけるのかい? そうなら何か手伝えることもあるかもしれん。手がいるようならいつでも声をかけてくれ」
「しばらく、大人しくするよ」
ソフィアは笑って式の会場へ向かい、マクシームは料理の準備に入った。
シャリオラは・・・・・・。
愚者に引導を、それが世界の意志ならば。
だ、そうだ。
愚者、テオドールの元にやってきた金髪は、なんだかよくわからないが凄い勢い、剣幕でつめよる。
びしっと指差して、てめ、この何様だ、おらおらおら。
と、いわんばかりの態度で、
「本当は、お兄ちゃ、いえ、ある人に頼んで、貴方におめおめと生きている事を後悔するほどの屈辱を与えてもらおうと思いましたが、止めて置きます」
それは、きっとあの気障っぽくて、俺最強といいまくっているシスコンの兄のことだろうか、まったく人騒がせな兄妹だ。
「その代わり何発か殴らせなさい。それでチャラにしてあげます」
「好きにしろ」
すかした態度に、シャリオラのむかつき度はあっぷしたが、殴らせてくれるのだ。やるしかない、いきなり、馬乗りになって駄々っ子パンチ。
「自分が愚かだと認識できる奴は愚者なんかじゃないんだよ! 愚者気取りやがって、このスットコドッコイ! あんたの所為で! あんたの所為で! あんたの所為でぇぇぇぇ!!! シャリオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ」
かなり逆恨みのような気がするのは、気のせいだろうか? まあいい。
こうして宿願を果した女は、その勢いで朴念仁を罵倒しにはせ参じるのだった。
さて、アレーナの質問に簡単に答えよう。
元愚者 「死ぬ気だったけど、生きている」
イレーネ 「愚者の愛人1 双子の姉。 ライトニング使う方」
遥風 「愚者の愛人2 双子の妹。 トルネード使う方」
バルタン 「生きています。そこでバクバク飯くっています」
メティ卿 「殉教」
こんな感じでよろしい? イレーネのほうが愚者は気に入っているらしい。
ちなみにそのうち子供が出来て、ジャパンに帰省するらしいよ。
双子を相手にするのか憧れる。どんな感じなのかな。
あ、これは記録係の声です。
ちなみにソフィア嬢と愚者の関係は、好奇心。
ついでに、本人達もよくわかっていない。
面倒な人間関係も書いておくが、書いてみてもよくわからない。
「愚者」 ←VS 「兄貴」 お人形→ 「ナタリー」
↓ 親友 ↓養子 ↓血縁
「アレク父」 「ゲオルグ」 「エフェミア」 不遇な三人
注、愚者、ゲオルグ、エフェミア、アレク父は子供の頃のお友達。
愚者とアレク父は、一番親しい幼馴染。
だったはず。
さて、ルカの元になぜかボリスがいる。ボリスがどんな奴か半ばみんな忘れている気もするが、たしか。
「おねーさま、呼んでいただいてありがとうございます」
「別に、本当の姉に挨拶してきたほうがいいのじゃないの軍人さん」
「そっけない、冷たいところがすてき」
こんな感じだった、気がする。
「あれ、久しぶりだね」
柳も久しぶりにボリスを見かけてやってきた、当初の目論見では機会があったら傷心の柳にボリスをあてがう予定だったなど、口が裂けてもいっているな。
いつもそういうことばかり考えているわけでは別にない。成り行きでそうなる確率が異常に多いだけだ。
いや、でも結婚式だからね、うん、いいじゃないめでたくて。
ルカはイレーネを眼見した、特に何の意味もないのだが、やはりそれなりに因縁があるせいだろう。
彼女はその後、柳共に、式の会場へ向かう。
ルカが楽器を演奏できたことに、今気づいた、いや、そういえばバードだったよ。
アーデルハイトはロイに言った。
「新郎はキエフでは『まるごと』を着て式に出席するのが常識なのよ」
ロイは戸惑った。
「どうする、着るの着ないの? 貴方が決めなさい」
アーデルハイトは誰にでも、結論を迫りたがる、そういうのが好きらしい。
「しかし」
まるごとを着るか否か? アーデルハイトは涼しい顔で見つめているが、腹の中では大爆笑だ。
「二人とも何をやっているのですか?」
通りがかったシシルは、
「まるごとを」
ロイがシシルに説明した。
「・・・・・・嘘を教えると、こーですよー」
アーデルハイトの近くの木が凍った、シシルマジックのようだ。
「そう、バレてしまっては仕方ないわ。今回のことも爺に報告しないと」
いったい、彼女は何を報告するつもりなのだろう。とりあえず、すたすたと立ち去っていった。
「ほら、新郎。朴念仁さん、服は服」
「そんなものはない」
「ないって、何考えているのですか!」
とりあえず、シシルの用意した礼服と、お色直しにアレーナの用意した着物がある。
それで回す事にしよう。
●式
司会は妙に嬉しそうな柳だった。彼女がエリヴィラの化粧やら諸々を準備した。
「それでは、指輪の交換です」
祭壇に立つイルコフスキーは、普段より緊張しているようにも見える。小柄な彼の前に立った二人は、どこかぎこちない。
「やれやれ、あれで上手くやれるのかね」
オヂサンが余計な心配をした。
「今晩って、そのですよね」
シシルが何気に爆弾発言をした。
「無理ね、あの男は寝ているだけでしょう」
アーデルハイトの意見は的確な気もする
「なんですか、そのしけた顔は。あの愚者気取りとそっくりですね、まったくこんな男に」
シャリオラは、確かクレリックだった気がするのだが。
「二人とも、末永くお幸せに♪ ふふっ 」
アレーナは、まともな人のようだ。
ルカは演奏で二人の様子どころでは、ない。
「ロイ・ファクト、エリヴィラ・アルトゥール、あなた方二人は、病める時も、健やかなる時も、濃い時も、悲しい時も、変わらぬ愛を誓えますか? 」
イルコフスキーが長い台詞を言い切った。
「・・・・・・。 ・・・・・・。・・・・・・。・・・・・・」
沈黙。
「ロ、ロイ・ファクト、ほら誓うって、言わないとおいら困るって」
イルコフスキーは困惑した。ロイは硬直している。
「ち、誓います!」
緊張に耐えかねたエリヴィラは、裏返る声で叫ぶ。諦めたロイはぼそぼそと。
「・・・・・・仕方ない、誓う」
溜息が混ざった拍手が起きる!
「よーし、次! 誓いの口づけ、さあいってみよう」
柳は異常にテンションが高い、よほど楽しいようだ。
視線が二人に行く。
ロイはどうするか迷った。
彼のマインドで言うと愚者と戦った時よりもこれは危険だ。危険というより、逃げ出したほうがマシ、かなり追い詰められている。
「新郎から動かないと」
イルコフスキーが小声で助け舟を出すが、ロイは固まっている。
エリヴィラは一歩前に出た、彼と彼女の間にあるのは身長、年齢、種族の差など色々ある。しかし、それを打ち破るかのように彼女は踏み出してみつめた。
ロイは決心した。
右手をエリヴィラの顎に添えたあと、体を傾ける。
近づく二人、聴衆は声援を送った。
一瞬の沈黙の後、そっとそれは互いに触れた。
決して長くはなかったが。
「今、ロイ・ファクト、エリヴィラ・アルトゥール、あなた方二人は夫婦となりました 」
イルコフスキーが宣言した。
「おめでとー!」「おめでとう」「めでとん」「おめでとうございます」
柳が自ら楽器を取り出した弾き語りはじめた
マクシームはアレク母に料理の駄目だしを喰らいつつも作った手製の料理を配る。
「えー、結婚というのは、二人で一緒に手に手をとってですねー」
シシルが先輩としての発言をしている。
しかし、シシルに生活感があるかというと?
そんな中。
「テオドール! 勝負 今度は絶対に逃げちゃ駄目だよ。あんたは強くないと、あたしは許さないのだから、さあ。お手合わせ願おう」
エリヴィラは式の後ではなく、今を選んだ。
「女。しとやかなのは、見かけだけのようだな。結婚早々やもめ作りたいとは、よかろう相手になってやる。来るがいい」
彼は、愚者口調に戻った。
ということで、エリヴィラとテオドールは真剣に戦いました。
「うう、負けたー! 負けたよ、くそ」
だって、一人で勝てるわけないって。
「大丈夫か? エリヴィラ」
「ロイ、負けたよ」
「それでもいい、ずっと俺の傍に居ろ、エリヴィラ」
ロイはエリヴィラにだけ聞こえるように呟いた。
つもりだったのだが。
「きいちゃった」
アレーナがそれを耳ざとく聞きつけた。
「ずっと俺の傍に居ろ、エリヴィラだって、いいなあ。お姉さんも言われてみたい」
「俺の傍に居ろ、エリヴィラ、だって、だって、だって。似合いませんね」
シャリオラがここぞとばかりに、ちゃかした。
とりあえず、赤面したロイとエリヴィラは逃げて。
式は盛り上がった。
ちなみに、夜はどうなったかは知らない。
想像してみると何か面白いが、ここで書くと色々問題がありそうなので、やめておこう。
あとは、子供ができるの待つだけである。
●一部その後
アレクと彼とは出会った。しかし、互いに関係を認識するのは大分先のことになる。
どちらも似たもの同士なのも関係しているかも知れない。
イルコフスキーはあえて何も言わず、アレクと共にその場を去った。
ルカは相変わらず戦場を探している。いつになったら落ち着くかは分からない。
柳は、ジャパンに戻ることに決めた。その後、彼女がどうするにせよ、この地での旅は終わった。楽士にもどるだけだ。
シシルは、一冊の彼女が集めた情報を記した本をアレクの母に預けた。記念に夫妻の似顔絵描いた物もつけた。
そこに記してある事実をアレクが成長した時に教え、渡して欲しいという言葉を残して。
アーデルハイトは帰る間際、赤毛の少年を呼ぶと宣告した。
「別れに言葉は要らないわ。剣を取りなさい」
「でも」
「この先も戦場に立つ気が有るのか、ないのか試してあげる」
彼女は無言のまま剣を振った。
「『こちら側』は私達の戦場よ。帰りなさい、貴方の居るべき戦場へ、もう逢う事もないでしょう。」
打ちのめされた彼は、この村に留まる事を決める。
目的はすでに果したのだ。彼に戦う意味もない。
それがアレクにとって幸せなのかどうかは、いつの日かきっと分かるだろう。
世界は日常に戻り、時を静かに刻みはじめた。
変わらぬ平和を映す今、それが。
とても心地よい。