【ヴォルニ戦記】 ─Sol─ Act1
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■シリーズシナリオ
担当:Urodora
対応レベル:11〜lv
難易度:普通
成功報酬:6 G 10 C
参加人数:12人
サポート参加人数:5人
冒険期間:04月11日〜04月17日
リプレイ公開日:2008年04月23日
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●オープニング
─歌、君、再び─
「しっかし、いい天気」
彼は青空に仰いだあと、伸びをした。
青年というには、まだどこか幼い面立ちの彼。
広場で欠伸を一つ街の雑踏へ歩き出す。
行き交う人々の顔にもどこか明るさが満ち、歩む足取りも軽い。
季節はそろそろ春。
肌寒さを感じないわけではないが、ときおり突風が運んでくる陽気な気分、それも心地よい。
四方を壁に囲まれた街。観よりも実をとったこの街の名はヴォルニフという。
狼の名を元につけられた街とも言われているが、定かではない。
青年の名はジル・ベルティーニ。流星の狩人の二つ名をもつ男。
だったはずなのだが、もう昔の話になったようだ。
ジルがキエフに旅立つ前、彼の仲間であるニーナにジルは釘を刺される。
「いいかげん大人にならないと、見捨てられるデスよ」
「誰に?」
「みんなに、だからこれは」
ニーナは彼の心の友である、一冊の本をいつの間にか奪っていた。
「しょぶんデス」
「な、なんで、そこには俺が今まで集めた。秘蔵の情報が、あるんだぞ!」
「そういう事ことばかりやっているから、アレクに先を越されるの、分かる?」
真面目な口調でニーナに言われると、普段の十倍ほどの影響力やら深刻さを感じる。
確かにアレクはもう大人の男だ、色々な意味で、
「わかったよ、妥協。譲歩して半分だけ残す」
「だめ」
ジルの願いを届かない。
こうしてニーナの手により、彼ご自慢の秘密メモは暖炉の灰と化した。
何かを失ってしまったような感じ、彼にとって秘密メモはお守り代わりのような存在だったのもあるせいだろう。
手持ち無沙汰のような、落ち着かないように気分でジルは途中、アレクの村に立ち寄った。
元々ジル自身が住んでいた場所、旅に出る前に荷物を取りに寄ったのもある。
「よう、アレク。元気そうじゃん」
アレクは黙々と自分の仕事をしていた。真面目なのは相変わらずのようだ。
「ジル? 元気! ひさしぶりだ」
汗を拭いたアレクが妙に所帯じみた空気をかもしだしているの見て、いまだに冒険者をしている自分の浮世稼業っぽさを、ジルは目の当たりした気分だった。
「仲良いよな、お前ら」
アレクの傍らにはオーガが堂々といる。
「ずっといっしょだから。お姉ちゃん、じゃなくて・・・・・・が、帰ってくるまではまつもん」
独り照れているアレクを見たジルは、
「待つ男ですか? 若いのに大変ですね。あーまったく、ちくしょー!」
ジルは、例の漠然とした世の不条理を感じた。
モテル男など、結局二種類しかいない。
誠実な男か、そうでない男か。
そのどちらかだ。
どちらにも成り切れない、中途半端なジル・ベルティーニがモテル? わけなどない。
そのような経緯があり、ヴォルニフに来たため、落ち着かない。
旅といっても、特に目的がある地があるわけでもないのだ。
ヴォルニフの町並みをぼんやりと眺めながら、うろうろとしていると、
「何ぼーっとしてるの? ここ道だよ。真ん中で、ぼんやりとしてると、邪魔、邪魔」
声をかけられた。
「アレク?」
一瞬、なぜか知らないが、目の前の人物と赤毛の少年がだぶって見えた。
「え? 誰」
何度か目をこすると、不思議そうにこちらを見ている少女がいた。
「あ、人違いです」
「へんなの。ちょうどいい、聞きたいことがあるんだ。このあたりで、一番大きい冒険者ギルドってどこかな」
ジルの前に立っている少女は自分よりは年下だろう。
やや短めさっぱりとした感じの金髪に青い瞳、少女というよりも少年に近い雰囲気をどこか感じる。
黙っていればそれなりに整った容姿のため、きっと可愛い女の子で通るだろう、なのに話し出すと台無しだ。
「キエフかも、ちょっと遠いよ」
「遠いの? 一人じゃ無理か・・・・・・よし! 君を雇うよ。その格好、冒険者だよね、そこまでの護衛をたのむ」
ジルは、あまりの思い切りよさに驚きを通り越し、唖然としつつ少女を見る。
こういうタイプは確か、身近に一人いた気がする。
それに関わったせいで、とんでもない目にあった気が──とてもする。
これは危険だ。
また何かに巻き込まれる。
直感的に彼は悟り断ろうと、
「え、待て、誰も受けるなんて、それに見ず知らずの」
するが・・・・・・
「駄目、関係ない。あたしがそう決めたから。さあ、いこう」
無理。
戸惑う彼の態度など気にもせず、少女は言い切った。
「断る権利はないのかよ、せっかく気楽な一人旅なのに」
「ない。それより君、名前は?」
「ジル」
「あたしはソレイユ。よろしくね、ジル」
事を理解する以前に、トラブルに巻き込まれたのは必死。
爽やかな彼女の笑顔と対照的に、ジルはいいしれぬ不安感に襲われていた。
どうして自分は、こういう融通の効かない強引な奴らばかり縁があるのだろう。
だが、振り切って逃げられるほど・・・・・・ジルは強くもなく。
引きずられるようにキエフに戻ることになった。
道中、ジルは彼女の目的を聞いた。
「探し物?」
「そう探し物。何か必要なんだって、こう見えても、結構いいとこの生まれで凄いの!」
本当かどうかはしらないが、確かに向こう見ずな度胸だけはすげー。
これが世間知らずってやつなのか? そうジルは思った。
その夜。
彼女はジルに一つの歌を披露した。
月影おちる暗の陽
空に浮かぶ雲をはなれ
想いはとどかぬ宙にちる
光は闇
二対揃いて懇情の
別れを告げる世の無情
互いに互いは印の片
刃は杖に絡みぬき
杖を刃を断ち切らん
二対揃いし終の宵
解ける帳を消えゆけば
昇りて陽は輝くだろう
「その歌は?」
「家に代々伝わってる歌かな、意味はよくわからないけど。みんな必ず最初に教えられる物の一つなんだ」
歌い終えたソレイユ。
彼女がどこか手の届かない、遠い場所。
その風景をじっと見つめているようにジルは感じた。
──穹。
羽ばたきは一音、影は一片。
参じた物は、咥えた杖を床に添えた。
身震いをした後、眠るもの、眠りを妨げるために。
黒い体。
獣のごとき艶やかな肢体を休めたあとで、それは動きを止め。
「呼応するが機知か」
人の言葉でさえあるか分からぬ音を、それは発する。
破壊の徴はこの地に現れた。
もはや何者も免れないだろう。
災厄と王。
その欠片はいずれ降り注ぐ。
翼を休めたそれは、蟠り、淀み、たゆたう闇へと進んでいった。
─Sol─
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●目的
ソレイユは、あるものを探しています。
特に隠す必要も無いので言うと月側と同じく、二対の器、封印の箱と鍵です。
こちら側はアドバンテージは、剣が存在すると思われる場所の候補をいくつか
知っているということです。
鍵はナタリーが今現在も所持しているため、特に探す必要もないです。
元々鍵はある意味、起動と終了のスイッチのようなものなので、
暴発させるか、止めるか、その目的でなければ、特に問題ないですし。
箱の一つは、ソフィアがギルドに預けました。
もう一つは不明です。
●候補の場所については解説にあります。
距離は遠い場所で、徒歩二日くらいです。
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●リプレイ本文
夢について一度描いた。
語ることは、この世界で二度とない。
今あるのはただの陽光。
全てが色褪せてしまう前に表す謝辞。
別れとするもの。
冒険と聞くと心が躍る。
手に入らないもの、見つけられないものを探すことができるから、ジルが冒険に出かけたのもそんな理由。
探したいものがあったからだ。
彼は、前回の旅の途中、ずっとアレクに嫉妬を感じていた。表に出す事はそれほどなかったが。
その後、アレクは自らの目的を果し旅を終えた。
ジルはだからアレクの真似をした。
事前に起きた出来事から、彼なりに考えた結果であったが、動機が動機のため、結果は伴わない。
出会った少女ソレイユによって半ば無理矢理ではあったといえ再度、彼の冒険は始まった。
探したいもの、大切だったもの。
それはきっと君たちの内にもあるだろう、忘れてしまったもの。見つけられなかったもの。
この旅はその何かを探すための。
最後の旅だ。
●キエフ
ラスティ・セイバー(ec1132)はギルドに居た。
キエフギルドにギルド員は数いれど、サボリというと彼、
「情報? 自分でさがしなよ。今忙しいんだ」
そう返す男。名を中年。
「俺は、出来ることを順にやるだけだ。さっさと答えてもらおう」
「答えといわれてもね、依頼人はあの通り女の子だし、訳ありなんじゃないのか」
「訳が知りたい」
「聞け」
「役に立たない男だな」
その態度にセイバーは諦めた。
「それは、褒め言葉だよ」
中年は大きな欠伸を一つした。
シシルフィアリス・ウィゼア(ea2970)は、いつになく真剣な表情でその問いを彼女に発した。
沖田光(ea0029)、エリヴィラ・アルトゥール(eb6853)、マクシーム・ボスホロフ(eb7876)らも同様にそれについて問う。
「捜し物って、知っている物事の積み重ねで見つかる場合も多いんです、教えて貰えたら、それもきっかけの一つになるかなと思って・・・・・・実は、半分位好奇心なんですが」
沖田は問題の核心をそれほど知らないためか、どこか気楽のようだった。
しかし、他のメンバーは、ソレイユが探している物。
剣を見つけることが、いったい何を意味するのか? 身をもって知っているため、表情は険しい。
「ソレイユさん、貴女いったい何者なのですか? 答えによっては契約破棄して貴女と敵対しなくちゃならない」
シシルが言った。
「もしかして、あの男と同じく資格を持つ者なのか?」
マクシームも言った。
「なんであなたが、あの剣のことを知ってるの?」
最後に、エリヴィラがやや重苦しい感じで問う、
ソレイユはしばらく黙っていたが、軽く手を打つと、
「あ、分かった! もしかしてあの騒動に関わった人たちですか。それならそうと言ってくれればいいのに、私の名前はソレイユ・アスガルズ。アスガルズ家の者です。はじめまして、姉がお世話になりました」
元気よく一礼をする彼女。どうやら一部の人に有名なアスガルズ家は女系三姉妹の末。
魔女は長女、ナタリー母が次女、この子が末っ子だった気がする、定かではない。
最近まで、ノルマンに留学していたようだ。
母親と似ていないため、いかれた領主は目をつけなかったとも言う。
そしてなぜ、ソレイユがここにいるかというと、
「話をしているのを聞いたから」
というだけの理由だった。
みんな、あまりの無鉄砲さに放心というより、開いた口がふさがらなかった。
こうなるのが予想範囲内の展開であった女も、いることはいた。
名前? ルカ・インテリジェンス(eb5195)と言う。
なお、この件ついては多数が聞いたのだが、上記を抜粋した。
●丘の上の教会
フォックス・ブリッド(eb5375)が教会を訪れた時。
ちょうどナタリーは来客中だった。
来客は、小柄女のようだ、久しぶりに会いにきたらしい。
「セイバーをつれてきた! 遊ぼう」
という名目で遊んでいた。
セイバーといっても、最初に出てきたのとは違う、彼は人だが、ルーテことアスタルテがセイバーと呼んでいるのは犬だ。
ナタリーが来客中なのを知ったフォックスは、神父に詳しい話をした。
「分かりました。こちらのほうでも注意しておきましょう」
「よろしくお願いします」
フォックスはナタリーと会わずにそのまま立ち去った。
フォックスが立ち去ったあと、教会を訪れたものがいる。
だが、彼がそれを知る事はない。
●悪魔の門
悪魔の門の正式な名称は、剣の墓所という。
この名はヴォルニ家にしか伝わっていない呼び名のため、正式に文献に記されているわけではない。
愚者こと、テオドール・ヴォルニが幼少の頃、この辺境の地に送られた理由は、本来剣を守り、剣を用い、ヴォルニの刃となるための一族の末がこの地に住む縁からだ。
今現在、その血を引くものが誰なのかは想像のうちにしかなく、ここで語ることではない。
シシルの調べた情報はその片鱗であり、
沖田は、悪魔の門への途上。
マクシームにこの冒険で必要なことを色々聞いた。
「とりあえず、私のことはオヂサンと呼ぶように」
「どうしてですか?」
今まで起きたことやら、悪魔の門についての基礎知識を話した後、沖田の問いかけに、マクシームは。
「なんとなくだよ」
「なんとなくでいいのでしょうか?」
記念にやって来たアンリ・フィルス(eb4667)は、二人の会話をじっと聞いている。
記念でやって来るとは、なんというか変わった男だ。
白髪と名前からしてとニセ・アンリィ(eb5758)と血縁のようだ。
血縁が一緒になる時は、多分一言聞いたほうがいい。ギルドの人からの忠告。
先に結論を言おう。
悪魔の門に剣はない。
仮に自らが愚者であると仮定して、元々ここは剣を安置してあった場所であり、それは元々ヴォルニに伝わっている情報でもある。
彼の意思がどのあたりにあったのかは分からないが、剣を再度利用させる気はない可能性が高いだろう。
よって、簡単に存在を匂わせるような場所、そこに再度戻すような真似をあの男がするだろうか?
その選択を選んだとしても、遺跡の入口を二度と入れないように破壊する程度のことは、きっと行うだろう。
マクシームの推論は当たっている。
内部で戦闘らしきものはあった。
だが、相手は彼らにとって敵と認識するほどの物ではない。
そして、ここに住んでいるというよりも、先に調査に来ていたのは、凛々しげ容姿に涼しげな目元、冷たい空気をまとった女。
「どこかで見たことがあると思ったら、頭数揃えて何しにきたの? もうここに用はないと思うのだけど」
ソフィアという女性と銀髪の女だった。
●廃教会
フォックスは矢をつがえたあと、放つ。
裂く風の数に応じて、死せぬ病魔に犯された者の動きが止まる。
目的の建物は、曇り空の中で崩れた壁を晒していた。
だが、歩み寄る命なき者どもの群れは輪を確実に狭めてくる。
イルコフスキー・ネフコス(eb8684)は祈り、結界を張る。
戦術的に彼らのとった方法は正しいだろう。
数の差は絶対的で、襲いかかって来るものを退治していたほうが効率が良い。
フォックスとイルコフスキーによって、ある程度の数が浄化された後。
豪放、轟きのような叫びをあげ、ニセは群に飛び込むと蹴散らし始めた。
セイバーは、ニセの切り開いた道をさらに広げ、教会までの道は出来る。
人気のない聖堂に入ったとき、彼は殺気を感じた。
咄嗟に剣と一体化した盾を構える。
衝撃が襲う。
痺れにも似た感触。
セイバーの前に立つのは、巨大な何かがアンデッド化したものだった。
後方駆けつけてくる足音を聞きながら、彼は呟いた。
「とんでもない事に巻き込んでくれたよ・・・・・ヘリウッド」
巨体が動き。
腕が振るわれた。
●エステバン
肌寒い中、山道を少し進むと、それはある。
城といっても、本当に小さなもので、一見すると館のようだ。
正門はそれなりに立派なもので、手入れがされているところを見ると人は住んでいるのだろうか?
──その道中。
セシリア・ティレット(eb4721)がソレイユに言った。
「なぜか、ソレイユさんを見ていると既視感を感じます。どうしてなのか分からないけれど」
何を言われているかソレイユは理解できなかったが、
「とにかくよろしくね! セシリーさん」
「あれでしょ、きっと赤毛二号だからだよ。向こう見ずで頑固なあたりが、ばっちし」
ソレイユに向けて、ジルは憎まれ口を叩いた。
「・・・・・・自分で何も決められない人に言われたくない」
当然言い返される。
「暴力女」
「優柔不断男」
言い合う二人。
「変わらないよね、ジル君」
エリヴィラは、言い争いをしている二人を眺めていた
「う、うむ。こ、こういうのも平和で自分は良いと思うぞ、それよりも、新婚なのにいいのか」
「大丈夫、大丈夫。弱い女よりも強い女のほうがあの人は好みだよ、きっと」
ケイト・フォーミル(eb0516)にエリヴィラは微笑んだ。
城門を通った時。
殺気にも似た感覚を最初に感じたのはルカだった。
彼女は、手でこれ以上進まぬように示唆した。
しかし数秒ばかり遅く、歩むソレイユを標的にした、衝撃が飛んだ。
駆けるエリヴィラが盾になるよりも、早くソレイユは大地に叩きつけられた。
揺れる視界に少女が意識を失う頃。
ケイトが剣を抜き周囲を探る。
無数の気配。
ジルはセシリーにソレイユを任せると、城上階に見える影へ矢は放つ。
あくまで敵は、接近戦持ち込む気はなく、遠まわし、嬲るように痛めつける。
「このままでは拙いわね」
ルカが呟いた。
すでに囲まれていることに気づいた彼らは、前に進むか、後ろに戻るか? その二択を選ぶことになる。
迷った末。
距離的に近い門、城の入口を選んだ彼ら。
開く門の向こうに立っていたのは、無数の彫像。
「また凝った歓迎ね」
ルカが吐き捨てるように言ったあと、それは動き出した。
●目覚め
──悪魔の門。
「私は行くわ、もう此処に用はない」
銀髪の剣士はそう言うと立ち去っていった。彼女の名はアーデルハイトと言う。
見知った顔がなぜここにいるのか、両者ともに疑問を抱いたが、何も言わず別れた。
「ありがとう、助かった」
去っていく女にソフィアは礼を言った。
シシルは、声をかけようとしたが、何も女剣士は言わず去っていった。
「相変わらず無愛想よね、あの子。私がここに来たのは、例の剣もだけれど、大昔は竜を祭っていたところらしいのよ。上の遺跡の碑文にあったと思うけれど」
ソフィアは、自分がここにいる理由を説明した。
その言葉にシシルは何事か気づく、彼女も碑文を読んだことがある。
「碑文はニバスの話では?」
シシルの問いにソフィアは頷いた後、
「そうよね、けれど元々この遺跡を守護するものがいた。その事自体おかしいと思わない? 剣の守護者ならば、モンスターである必要はない。といっても私は考古学の観点から興味で見に来ているだけなのだけど。どうやら新しい仲間も増えたみたいだし、初めまして」
ソフィアは、エセと沖田に挨拶をした。
マクシームが何を答えようか考えている時。
「のんびりしている暇もないで、ござ候」
敵を見つけた彼は、なぜか嬉しそう言うと、武器を構えて輝きを点した。
振り返ったその先にいたのは何かの影。
「あれは?」
「デビルね、下位だけど」
沖田の問いにソフィアが答えた。
沖田は、こうしてロシア名物デビルの洗礼を浴び。
マクシームはなぜか、溜息をついた。
──廃教会。
「大丈夫? セイバーさん」
イルコフスキーは傷ついたセイバーの治療を始めた。
教会の中には、剣らしものは無い。腐臭だけが漂っている。
獲物を数度振ったあと、ニセはツマラナサソウに欠伸をした。
「モウオワリカヨ」
「終わりではないようですよ」
フォックスの視線の先にあったのは、何事か記された文字であった。
しかしそれを解読できるものはここにはいない。
よって記して彼らは立ち去った。
──太陽の城。
セシリーは、ソレイユを抱き。
その階段を登った。
登りきった広間の中央に捧げられていた物、それは輝く剣のように見えた。
だが、剣を抜くこと叶わない。
近くにあって遠くにあるもの。
見えていての届かないもの。
「セ、セシリー、逃げるぞ」
剣を収めたと、ケイトが叫んだ。
エリヴィラは退路を保つため、一人後詰めに回っている。
敵はそれほど強力ではないが、数が多い。
あまり長期間はさすがの彼女でもきついだろう。
剣は見える。
だが、人が通れる隙間ではなく小さな穴、壁の向こうにそれが見えるだけだ。
ルカが戻るように叫ぶ。
ジルが矢を放った。
セシリーの腕の中で、ソレイユがうわごとのように、何か呟くのを聞きながら。
彼女はその場を立ち去った。
エフェミア・アスガルズは、庭先で空に昇った太陽を見つめていた。
アスガルズ家の三女であるソレイユがやってくるのは、その少し後である。
そこで彼女達が何を話したかよりも、問題は城にある剣をどうするかだろう。
剣の居場所は見つかった。
太陽が昇ったあと、月がそれを追うだろう。
どちらが、初めでどちらが終わりか、いまだその答えは出ていない。
もしも。
何かを守るため、犠牲を必要とする時、君はどうするだろう。
今はいい。最後に答えが知りたいだけだから。
ここは暗闇だ。
ここは暗黒だ。
それは目を覚ました。
山を崩し、地を轟かす。
答えは自分の内を探すしか、ない。
太陽は全て慈しむ育てるが一度荒ぶれば、何かも焼き尽くす。
業火。
続