【ヴォルニ戦記】 ─Sol─ Act2

■シリーズシナリオ


担当:Urodora

対応レベル:11〜lv

難易度:やや難

成功報酬:9 G 49 C

参加人数:11人

サポート参加人数:3人

冒険期間:05月23日〜05月31日

リプレイ公開日:2008年06月06日

●オープニング

●前回までのまとめ

 二つの器のうち、剣はエステバンにて発見された。
 しかし、エステバンはすでにデビルの手によって占拠されており。
 探索に向かったメンバーは、彼らの手によって襲撃される。

 エステバンは、主に

 【外部】

「城門、中庭」

 【内部】

「広間、二階、宝物庫」

 の区画に分かれている。

 宝物庫への扉は太陽と月を象った扉が二つあることを確認した。


 ソレイユの歌にはこうある

 月影におちる闇
 空に浮かぶ雲に離れ
 想いはとどかぬ宙にちる
 
 闇は闇
 二対揃いて懇情の
 別れを告げる世の無情

 互いに互いは印の片
 杖は剣に絡みて
 剣は杖を断ち切る

 二対の揃いし終の宵 
 解ける帳は消え行けば
 陽は昇り輝くだろう


 この歌に何か意味があるのか謎である。

 同時に、古びた教会で手に入った綴り。
 その言語は古代魔法語であった。


●兆し

 アレクが異変に気がついたのは、久しぶりに村の周辺を散歩していた時のことであった。
 不死者の洞窟と呼ばれ、道化の悪魔が眠っていた場所。
 ふと懐かしさを感じその森を訪れた彼を襲ったのは狼のズゥンビだった。
 撃退したあとで、なぜか彼は言い知れぬ不安を感じる。
 神の塔と呼ばれる場所を訪れたのは、一人の青年。 
 黒いローブを羽織った彼は、塔の頂上まで昇ると台座を探す。
 台座を探し当てた青年は、持参した杖を設置すると、無表情のまま立ち去る。
 同時に悪魔の門の最下層にて異変が起こる。
 ちょうど遺跡を訪れていたソフィアは、地の底で何か音を聞いた。
 
●ヴォルニフ近郊 

 その日。
 アスガルズ家を訪れた訪問者は、旧知、縁のあるものである。
 女は自ら名は明かさない。
 館の主の鎮座する間に通された女は、再会を喜ぶには冷ややかな視線で主をみつめた。
「崩れた均衡を戻す手段は、すでに失われたと思います」
 感情の抑揚の感じられぬ声色だ。
 聞いた主は淡々と答える、
「今まで黙認していたのは、守護者の役割を果すためです。従いなさい、家名を継がぬ貴女に選択の余地はないのですよ」
 艶のある耳触りの良い音、声だ。その裏にあるものが何だとしても、
「相変わらず、優しいようで冷たいのですね、全ての原因は誰にあると思っているのですか?」
 沈黙。
 切り出したのは主のほうだ。
「運命ならば仕方ないのです。選ぶの誰でもない神。そして自分の意思なのですから」
 主の整った顔には、綻び一つ浮かばない。
「私は貴女のそういう態度が許せません」
 女はそれだけ言い残すと、扉を閉じ去った。

●キエフ

 ソレイユがヴォルニフから送られた手紙を受け取ったのはそんな時のことだった。 
 内容は明かされてはいないが、ソレイユはジルにこう言った。
「時間がないって、急がないと」
「急ぐといってもさ、場所はみつかったんだし、そんなに」
 ジルはお気楽な様子でのほほんと答えたる
「君はだから駄目なの! 急ぐって言ってるんだから、急ぐ」
 そんな事を急に言われても、それなら自分で行けば良いのに。
 ジルはそう感じたが、とりあえず軽口を叩く
「はい、プリンセス。なんなりとご命令を」
「目が服従してない! そういう無駄口叩く暇があったら」
「ギルドに行けと」
「分かってるじゃないの」
 ソレイユの満足気な顔を見、相変わらず自分は不運。
 再確認したジルはギルドへ向かうのだった。

●今回の参加者

 ea0029 沖田 光(27歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea2970 シシルフィアリス・ウィゼア(20歳・♀・ウィザード・エルフ・ロシア王国)
 eb0516 ケイト・フォーミル(35歳・♀・ナイト・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb3532 アレーナ・オレアリス(35歳・♀・神聖騎士・人間・神聖ローマ帝国)
 eb4721 セシリア・ティレット(26歳・♀・神聖騎士・人間・フランク王国)
 eb5195 ルカ・インテリジェンス(37歳・♀・バード・ハーフエルフ・ロシア王国)
 eb5375 フォックス・ブリッド(34歳・♂・レンジャー・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb6853 エリヴィラ・アルトゥール(18歳・♀・ファイター・ハーフエルフ・ロシア王国)
 eb7876 マクシーム・ボスホロフ(39歳・♂・レンジャー・人間・ロシア王国)
 eb8684 イルコフスキー・ネフコス(36歳・♂・クレリック・パラ・ロシア王国)
 ec1132 ラスティ・セイバー(32歳・♂・ファイター・ハーフエルフ・イギリス王国)

●サポート参加者

鳳 令明(eb3759)/ ヤグラ・マーガッヅ(ec1023)/ 九烏 飛鳥(ec3984

●リプレイ本文

●暗雲

 凶事は相手の都合を考えず訪れる厄介な客である──。

 駆ける雲が空を覆った。
 温もりに包まれていた地を冷ややかな手が撫でる。大気の変化に気づいた村人達は足を早め、雨が来ぬ前に木陰へと向かった。
 休む彼らの視線の先にある城。
 森の中央にひっそりと立つ城は、この地に眠る何かを見張るために建てられたと言う。
 だが、いったい何を見張るためだったのか・・・・・・知るものは近隣の住民にもいない。
 元々、城には兵が詰めていたと聞く、今は無人だ。城が無人になったのは、一昔前、昔といってもかなり前のことらしい。
 その無人となったはずの城に何者が住み着いたのは、つい最近の事だった。
 稲光が天を裂いた。
 驟雨は激しさを増し、雷雲を連れて来る。轟きと閃光の交わりの中で、いななくの馬の声、答えるのは翼の羽ばたきだ。
「助力を請う」
 艶のある毛色、肉食獣のような体、鷹の如き翼を畳むとそれは言った。触りの悪い、耳にどこか残る声だ。
「私には私の目的があります。しかし貴殿がお困りなら手を貸しましょう」
 馬上の騎士は長槍の柄で地を突く、鎧装の騎士は暗き闇を纏い、面頬の奥、冷酷な輝きが宿っている。
 雲が晴れ、雨が止む。
 水滴が陽を映し、空が青に変わった時、影達の姿はもうそこには無かった。

●城


 門扉は軋み音を立てて開いた。
 見渡す庭に敵の姿は感じられない。
「デビルか」
 懐にしまっておいた石細工を取り出した沖田光(ea0029)は、独り言を呟いたあとで、手のひらの蝶を象った置物を置く。
 彼の守るかのようにケイト・フォーミル(eb0516)とエリヴィラ・アルトゥール(eb6853)が前衛に立った。
 雨で濡れた髪は渇いてはいない、肌に張り付く特有の感覚に、どこかおさまりの悪さを感じつつも、ケイトは得物を抜く。隣に立つエリヴィラは、動きやすくするためなのだろう、伸びた髪を後ろ手で縛っている。
「不安な要素は全部消しておかないとね」
 自分へ言い聞かせるように、エリヴィラは言った。
「そうだな」
 エリヴィラの声に返し、ケイトは剣を振り刀身の水滴を払う、
「みんなに祝福と幸運を」
 後方から、前衛の戦士達へと祝福を与えるためイルコフスキー・ネフコス(eb8684)が神に祈りを捧げ始める。詠唱が続き包まれた温もりは優しい。
「羽ばたきました‥‥‥‥来ます」
 沖田の表情が厳しくなる。
 彼がそう言った時、空に何かが見えた──。
 頭上から来る旋風はかなりの数だ。
 鏃が宙を走る、合図を見たアレーナ・オレアリス(eb3532)の乗馬が鳴き声ともに両足を上げる。
「この程度でうろたえるな! プロムナード、飛べ」
 アレーナが叱咤し手綱を操る間に灰色の雲の集合に見えたそれは、明らかに息づいている、身に輝きを纏ったアレーナが剣を抜く間に距離は迫る。
「デビルの巣ですか、面白い」
 沖田が息を吸った。己の魔力を火炎に変えて彼は身に包む、地を蹴り飛翔する不死鳥を見上げ、地を走る二人は選択を迫られていた。
 このまま? この場で、戦い続けることに意味があるのか? 
 結った髪が揺れる。
 女は屈み両脚を放つと跳ねる。大地のくびきから解放された身体は、自らの持つ剣の重さに引きずられる。女はそのまま力に任せて体を預け一気に──上段から切り落す。
 斬ると同時に鈍い衝撃が両手に響き、確かな手ごたえが返ると前に立つ悪鬼の一匹が消える。
 息を吐いたエリヴィラが気を抜いた一瞬。背後に新たな敵が現れた。
 振り返り、構えるより早く鉤爪が襲う‥‥‥‥だが、空より矢が飛来して両者の間に割った。
 フォックス・ブリッド(eb5375)は憮然とした表情のまま、放った矢を見つめていた。
 宙を駆ける、ペガサスと不死鳥を横目に、フォックスは次の矢をつがえると、次の標的に狙いを定め射るのだった。

 
 


●悪魔の門

 ──門の村についた一行は、ミーティーングのようなものを? 開いた。

「それにしても、ソレイユさん一人なんて、私の計画が」
 シシルフィアリス・ウィゼア(ea2970)が呟いた。どうやらソレイユは珍しく一人のようだ。
「事情はだいたい察したけれど、今はそういう事をしている場合じゃないわね」
 ルカ・インテリジェンス(eb5195)が、シシルの態度を見て言った。
「ルカ姉さん何を言ってるんですか! ラヴのない冒険なんて、ズゥンビのいない墓みたいなものなんです!」
 シシルは何を目的にして冒険をしているのだろう。そして例えはよく分からない。
「‥‥‥そういうもんかね、セシリーさんはどう思う?」
 マクシーム・ボスホロフ(eb7876)は、首を傾げると、そういう質問をしてはいけない人に聞いた。
「え、わ、私ですか」
 セシリア・ティレット(eb4721)は動揺した。色々言いたい事はあるが、あまり触れないことにしておこう。
「お姉さんは禁忌ですから」
 シシルはどこか底意地の悪い笑みを浮かべた。
「人によって嗜好は色々あるもの」
 ルカは突き放すように言った。
「まあ、人生色々という奴ね、そういえば」
 オヂサンは何かを悟った。横にいたラスティ・セイバー(ec1132)に視線をやる。
「セイバー君。君も赤毛のようだね」
「ああ、そうだが」
 マクシームが何を言っているのかセイバーは理解できなかったが、とりあえず肯定した。
「いや、この地方には一つの伝説がある。赤毛は勇者に成れるという伝説がね」
 そんな伝説を作ったおぼえはない、きっとマクシームの即興だろう。
「勇者か、俺には縁のない話だな」
 セイバーは黙った。
「何、みんなで話してるの? 面白い話ならあたしも混ぜて、混ぜて」
 ソレイユが首を突っ込もうする。シシルがセシリーについて説明しようとしたため、
「だ、駄目です! なんでもないんだから」 
 必死になってセシリーは止めた。
 その後、セシリーは、ことあるごとにからかわれるわけだが、彼女は自分でそういう星を選んだ。それは一つの運命なのである。

 
 橋を渡って、遺跡の地上部分。そこはある意味書斎のようなものができていた。
 机と思しき場所で、羊皮紙に何事か書き込んでいた女は、やって来た彼らの姿を見ると
「あれ、また懐かしい顔ぶれね。今日は何の用なの?」
 と、懐かしそうに言った
 ちなみにマクシームの疑問であるソフィアの生活、
「あの人は遺跡の側なんかで一体どうやって暮らしてるんだ?」
 だが、遺跡の中で自炊をしているようだ。地上部分は意外と住み心地が良い、湿気さえ気にしなければの話である。
 一行は、例の文字についてソフィアに聞いた、
「解読は別に良いけれど、また余計なことに首を突っ込んでいるのね。そういえば、最下層には今は行けないよ。行けないわけではないけれど、すぐには無理かな」
 ソフィアが言うには、落盤が起きてそれを取り払わなければ進めないらしい。
「人的、作為的?」
 シシルは記憶を手繰る。
 遺跡の内部はそう簡単に崩れるないようなも気もする。岩肌を露出しているようなものではなく、内部はそれなりに頑丈な作りだったはずだが。
「行ってみるしかない・・・・・・か、まったく愚者もいちいち面倒な事を」
 ルカが言った。
「あまり良い予感はしないがね」
 マクシームの呟きを聞いて、セシリーとセイバーが頷いた。

 

●城

 躍動する力を両手に込め、軸足に体を沈めて構えた刀は中段、放ち振り抜き一閃の軌跡を追い、前にたつ石像は音を立てて崩れた。
 休む間もなく反転し、ケイトは次に備える。
 城の内部にはエリヴィラとケイトが切り込みイルコフスキーは援護に回ったようだ。
「もう大丈夫だよ」
 張った結界の中でイルコフスキーはエリヴィラの治療を終える。
「ありがとう、それにしても‥‥まだか」
 広間を守る石像は半数以上が崩壊している。
「みんな無事だといいね」
 扉の外、見えない庭を眺めてイルコフスキーは、そう呟いた。

 ──庭。

 一際目立つ、何かが城壁より下りてきたのその頃だった。
 視認したフォックスが矢を射るが
「小賢しい生物ども闇に堕ちるがいい」
 瞬間、獣はフォックスと目を合わせる。
 その時、彼の心に浮かんだのは、教会だ。
 神父に言葉を伝え、去ってきた丘の情景が心をよぎる。状況を伝え、彼女のもつ鍵を預かるべきか、問いただした後で、
「すべてが終わったら必ず会いにきます。」
 残した言葉。残すべき相手を引き裂かれる姿を心に映された時、平常を保つ事ができるほど・・・・・・。
 きりもみ下降していく彼の姿を一瞥し獣は、
「脆いな、さて次は誰だ?」
 吠えた。


●悪魔の門

 それは異形だった。
 異形は一軍を率いている。率いるのは下級のデビルや、ゴブリンなどの雑兵だが数は多い。
 仕掛けを作動させ、地下二階へ進んだ彼らの前に現れたのは、馬上の騎士だ。
「約定を果すのは定め。貴殿らとは縁も所縁もないが、ここから先を進むこと叶わぬ」
 騎士は穂先を指すと、兵は統率の取れた動きで進撃を始めた。
 鈍い音とともに盾が軋む前に立った戦士は一人、傍らにメイスを構えたセシリアがいるが、明らかに多勢に無勢。通路の狭さもあり、包囲されることは無いが消耗戦に成れば不利だ。
 シシルは統率していると思われる騎士の動きを止めるため、詠唱を始めるが、一度目の氷の戒めは弾かれる。続けて彼女は水球を放つことに変えた。
 その間、セイバーが勢いに押され、後方へ少し下がる。
 一撃を放つかセイバーは迷った。放てば確かに広範囲の敵を一掃する可能性もある。しかし仮にそれが失敗した時、待っているのは、無数の打撃だろう。
 彼がいなくなれば、後ろに盾はもう無い。
「どいつもこいつも邪魔ばかりしやがって」
 ルカが吐き捨てるように言った後、マクシームとシシルに耳打ちし、前衛の二人にも小声で囁く、すぐ様シシルとマクシームは頷くと準備に入り。
「撤退、開始」
 ルカの合図とともに、彼女は詠唱を始め、暗闇を張る。突如包まれた闇に動揺する敵を尻目に前衛は後方へと下がると、シシルの氷の嵐とマクシームの矢が浴びせかけられた。
 彼らはある程度ダメージを与えた後、その場を離れた。

 その後、悪魔の門の村で、赤毛のアレクに聞いた情報は、死者の洞窟の近辺でズゥンビが現れたという話だった。
 シシルは死者の洞窟に向かったが、この場所も悪魔の門と同様に途中落盤が起きており進めない、なお塔に行く時間は今回無かった。


 ●城

「この程度」
 誘惑に耐えたアレーナを見た、獣は内部へと一旦戻る。
 城の中では剣の安置している部屋に三人がたどり着くところであった。その頭上を羽ばたき、獣が自ら開いた扉、彼らが走りこむ。その姿を見た獣は言った。
「お前、どこかで会ったことがあるな?」
 視線の先にはエリヴィラの姿がある。
 無言のまま駆け込むエリヴィラとケイトよりも速く、
「無駄足、ご苦労」
 獣は剣を咥えると、窓から飛んだ。
 逃げる獣をアレーナが追いかける。しかしそれを阻むかのように城の残された最後の射手が矢を撃ち始めた。
 狙われたアレーナは手綱を絞る。
 ジルはアレーナを援護するかのように、矢を放った。
 逃がしたことを悔む暇もなく、エリヴィラとケイトの二人は城内に残る残敵を掃討へ向う。
 ──。
「羽ばたきは消えました」
 傷だらけの沖田が言った。
 夕日が城の尖塔に射し始めている。周りには生物の気配はもう無い。
 剣を奪われた脱力感よりも、疲労感のほうが皆大きい。
 無言のまま彼の言葉を聞いている。
 静寂が満ちた城、怪我の治療に走り回るイルコフスキーは、皆無事で誰も犠牲者がなくてよかった。独りそう思うのだった。

 この後、彼らはとある客人を迎える事になるのだが、それはまた違う話である。


 続