【ヴォルニ戦記】 ─Luna─ Scene1
|
■シリーズシナリオ
担当:Urodora
対応レベル:11〜lv
難易度:やや難
成功報酬:9 G 49 C
参加人数:8人
サポート参加人数:1人
冒険期間:04月11日〜04月19日
リプレイ公開日:2008年04月23日
|
●オープニング
─Europe─
月光に狼が吠えた。
二月動乱と称されるものより、数ヶ月。
ヴォルニは平穏を取り戻した。
しかし、ヴォルニ領主アレクサンドルの行方は以前不明であり、系統である弟テオドールは存在を正史より抹消され、亡き者とされた。
結果、ヴォルニは現在、ロシア王国の庇護下にある。
一見静けさを取り戻したかのように見えるヴォルニに、そこに帰還した一人の男がいる。
リューヌ・ヴァンガルド。
現在、ヴォルニ領主を代行する彼は、アレクサンドル腹心の部下と目される一人であった。
アレクサンドル在位中、事実上彼がヴォルニの政務を司っていたといって過言ではない
「ヴァローナ、ヴォルグ、バーバチカ全ての隊がほぼ壊滅状態ですか。バルタザール殿は失踪、ミハイル師は自爆? 彼は今回の事態中立を保っていたはずでは」
副官は、翳りの含んだ口調でリューヌに報告した。
「領主殿に、ご子息を人質にとられ、不本意ながら」
「終わってしまった事は仕方ありません、安らかな眠りを神の加護を祈りましょう。残されたご家族の今後は頼みます。だが、これでは継承の儀式を行うのは不可能というしかありませんね」
「血と器、そのどちらも失われた今となっては」
「まず器を見つけることが先決です。とはいえ表立って私が動くことは出来ません」
「それでは、いかがいたしましょう」
その時、リューヌの脳裏に一つの案が浮かんだ。
ヴォルニ家は、主に三家の血筋からなる。
正統であるヴォルニ家の下、アスガルズ、ヴァンガルドの両家を双翼とする。
下の二つ発祥は、欧北の流れと聞くが定かではない。アスガルズは祭祀の役、ヴァンガルドは武門を司る。
アスガルズの当主、ラリサは五十代半ば、かつては白聖の姫と歌われた、楚々とした容姿をもつ女性であり、ロシアにしては珍しく白の教義を信仰する。
ヴァンガルドの当主、リューヌは黒の教義を信仰する神官騎士である。彼は二刀の使い手であり、剣の腕も立つ、文武両道を持って鳴らす男だ。
両家ともに、ヴォルニ内に独自の所領をもち、自治権を認められている。
寸分の隙もなく優雅に礼をつくした後、リューヌは訃報を告げた。
「メティオスが? ゲオルグも不憫な事をしました」
「出奔のさい、死を覚悟しておられたのでしょう。ゲオルグについては私の不徳の致すところです」
「いえ、どちらも帰ってくるわけではありません」
「それでは、私は執務がありますので」
その言葉を残して去るリューヌを見送ったあとで、ラリサはある場所に使いを向かわせた。
数日後。
リューヌは極秘裏一つの布告を発し、Europeが結成されることになる。
指令
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
●訓示
部隊に所属するものには、実名の他、通称が当てられる。
以後その名で諸君の名となるため、申告するように。
諸活動において、隊の名を出す事は禁じる。
隊の機密を他言することも禁じる。
なお、禁を破るものには、制裁が加えられる。
指令については特殊な指示書をギルドに掲示する、確認して動くように。
●要点
立場的に、隠密、諜報員、情報屋? ようはシーフのような立場となります。
隊員同士は、お互いを知っていて構いません、連携する必要もあるでしょうから。
ただ、知り合いでないのならば、名前は通称、通り名のみ教えたほうが、雰囲気が出て良い気はします。
主に情報収集や交渉が仕事になるので、特に非道なことをするわけではありません。
しかし、こういう立場が時にどのような役割に立たされるのか、知っていたほうが良いとは思います。
自分の主義に反することを断る権利はあります。
ですが、意思に関わらずやらなければ駄目な時もあるでしょう。
遊びではなく、仕事、義務ですから。
普段は、日常生活や、冒険を普通にしていて何の問題ないです。
仕事のときのみ召喚されるため、裏稼業のようなものです。
通称は必要ならば称号化しますので、お望みの方は一言どうぞ。
●作戦情報
リューヌが探しているものは、一振りの剣と杖、そして二つの箱です。
これが何なのかを特に考える必要はありません。探すのが仕事です。
現状調査分かっていることは。
杖を所持していたのは元ヴォルニ領主。
剣を所持していたのは、ヴォルニ家の一人。
杖は領主が二月動乱で行方不明になったさいに、紛失しました。
これは未確認情報ですが、大型の猫のような獣が咥えてどこかに去っていったという報告もあります。
剣は所持していた人物が、どこかに隠したようです。
彼を知る人物は、何人かいますが、知りたければ調べるしかありません。
●場所
ヴォルニフで聞き込みをするか、キエフで聞き込みをするか
そのどちらかが初回ですし無難でしょう。
どのように聞き込みをするかは、自身の選択です。
ヴォルニフまでは、徒歩で片道二日半程度です。
●重要な人物
『ヴォルニ血縁』
「アレクサンドル・ヴォルニ」
元ヴォルニ領主、生死は不明です。
「テオドール・ヴォルニ」
剣を所持していたヴォルニ家の者です。行方は分かりません。
「エフェミア・アスガルズ」
アスガルズ家の後継者でしたが、失踪しています。
『旧ヴォルニ近衛三軍』
「ヴァローナ隊長」
ミハイル・ナルニコフ。
死亡しています。息子が一人いるようです。
「ヴォルグ隊長」
バルタザール。
失踪しました。キエフにいるという話もあります。
バーバチカは、リューヌが元隊長です。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
●リプレイ本文
名を呼ぶ前に。
名無野如月(ea1003)
ジョセフィーヌ・マッケンジー(ea1753)
カイザード・フォーリア(ea3693)
雨宮零(ea9527)
アーデルハイト・シュトラウス(eb5856)
アリサ・フランクリン(ec0274)
ユリア・サフィーナ(ec0298)
ルイーザ・ベルディーニ(ec0854)
エウロペでの彼らの名は以下と成す。
フェブ
エース
シュバルツ
ガーネット
セイバー
シュナイダー
エクレーシア
カッツェ
問題の核心というものは、たいてい巧妙に隠されているもので、それに気づいた時は、すでに手遅れになる場合が多い。
ここで言う手遅れというものが何を意味するのかは別として、核心を探すことが彼らの仕事であり、それに異を唱える事は許されていない。
執務室のドアが叩かれた。
リューヌの秘書官である男が訪問者の来訪を告げる。
訪れたのはシュナイダーだ。
かなり大柄女。
大柄というよりも巨体といったほうが良いだろう。
なぜならば、彼女はジャイアントなのだから。
執務を中断したリューヌは、何用か彼女に問うた。
「服を仕立てさせてほしいだけさ」
真剣な面持ちで彼女は言った。何を意図しているのか、リューヌは計りかねていたが、
「良いでしょう。女性の願いを断るのも無粋です。一着仕立ててもらいましょう」
シュナイダーはその名のとおり、服を仕立てる。
彼女が何のためにそれを行ったのかは、彼女しか知らないだろう。
さらに彼女は以下の質問をした。
●テオドールが居た村(名前は?)について質問する
(周辺には何があるか? 半年以内に起きた大きな出来事は?)
村の名前は無い。
遺跡の村とも言う。
周辺には、噂によると遺跡があるらしい。
その村の付近に先代の領主が軍を送ったことがある。
軍はヴォルグなので、バルタザールの隊。
●ヴォルニ、アスガルズ家の血縁が他にもいるか? また所在は?
アスガルズ家は三姉妹で、次女が行方知れずになっている。
ヴォルニ家は、アレクサンドルとテオドールの他直系は存在しない。
●テオの肖像画の写しの借用も願い出る
許可された。
そこにいたのは、やや陽気な感じの女。
そこにいたのは、どこか陽気な感じの男。
男は、なぜかしきりに足を掻いていた。
「そういうことなんですよ」
男は鋭い目、まるで狐のように眼差しで女を射抜いた。女は女でそんな彼の視線を気にもせず。
「それで、私はここにいるわけだ。また面倒というか、後始末ってやつだね」
フェブは、半ば天の意思でここにやって来た。その意思がどこにあるかは別として、彼女は重大な情報を男から聞いた。
「いようご同輩! 元気してたかい?」
突然、呼ばれた女は、エースだ。
少し深めに被っていた帽子のひさしを指で上げると、かけられた声の主に向かって返した。
「また会うとは、悪縁ってやつ? イスパニアに骨をうずめると思っていたのにね」
「久しぶりにあったのに、ひどい言い様だね。人には色々理由があるものさ。それにしてもエースのジョーか。いや、ふさわしい二つ名だと思うよ」
フェブのエースは指で挨拶を返すと、リューヌの執務室へと向かって歩いていく。
見送ったフェブは狐目の男から、さらに詳しい話を聞いた。
執務室を訪れたエースはリューヌに聞く、
「ねぇ、リューヌの旦那。ヴォルニの関係者に獣を使うような技術なんかを持ってる人物はいなかったの?」」
エースの問いにリューヌは答えた。
「獣ですか。そういえばかなり前の報告になりますが」
リューヌは、辺境の村で起きたとある事件について語る。
そこに登場するのは、羽の生えた獣の話だった。
「その村で、確かなのかい?」
エースの言う村は・・・・・・。
ヴォルニの辺境に一つの村がある。
その村の近くにある一つの遺跡にセイバーは居た。
「また、ここに来る事になるとは、運命というのは皮肉なものね」
呟くと自嘲のようなものが、なぜか女の胸に沸き起こった。
それが何なのか理解する前に、
「? あれ確か」
どこで聞いたことのあるような声に、彼女は振り返ると
「久しぶりって、ほどでもないか。ほら私、リュミエール。ああ、今はソフィアだった」
見知った顔があった。
セイバーは目的を曖昧にしつつ、剣を探していることをあえて隠さなかった。ソフィアは特に疑念も持たず、
「きっと無いと思うわよ、ここが剣の安置場所なのは、あの領主も知っていたはず。ということはヴォルニ家にそういう古文書があるだろうから、仮に隠したとしたら真っ先に探しにくるでしょう」
「とにかく、捜してみるわ」
「ちょうどいいから、護衛、護衛。さすがに私一人だと色々大変だから」
セイバーはこうして、ソフィアの護衛として悪魔の門へもぐった。
途中、弱小モンスターが出現するが、顔色一つ変えず彼女は切り捨てたという。
シュバルツは安楽貴族のような男だ。
というよりも、そういうフリを演じているようだ。
貴族のサロンは退廃的な雰囲気が漂う場所。
ときおり杯を傾けて彼は話に興じている。
その中で、
「ヴァンガルドの名を出すとは、また面白い方もいらしたもので、ヴォルニは、ある意味鬼子のようなものですからな」
「鬼子?」
シュバルツに、その貴族は言った。
前ヴォルニ領主であるアレクサンドルは狂気の男。
かつて起きたラスプーチンの反乱のさい、キエフに向かって自らも軍を侵攻した。
それはエウロペの飼い主であるリューヌの尽力によって問題はもみ消されたのだが、やはり評価は、それ相応でもある。
「テオドールという名を聞いたことはないだろうか?」
「テオドール? ああ狂気の領主の弟殿ですかな。不運な方のようで、幼少の頃。辺境の領地に流された後、反乱を起こして出奔されたと聞きます。今はどこでどうしているのやら、そういえば」
「そういえば?」
「彼を知るものが、キエフにいたという話があります」
「何方ですかな?」
「キエフの外れに住む、老齢のドワーフと聞きますが」
話は、バルタザールに繋がった。
シュバルツはその後、バルタザールの元に向かうが、面会は断られた。
テオドールの名を出したのが逆効果だったようだ。
ガーネットはヴォルニフにいる。
彼は事件の概要について知る者から聞いた。
しかし、話を聞いた相手がセイバーだったため。
「愚者という男が、魔剣を手に入れて、ヴォルニ領主を倒した。
その男が暴走する前に、私たちが倒した。それだけよ」
単純すぎて、分かったような分からない内容だ。
ということで、いまいち内容を理解しないままに、ガーネットは情報の収集を始めた。
彼が目的としたのは教会等である。
「ヴォルニに伝わる剣と杖ですか?」
「はい、どのようなものなのかなと、ちょっとした好奇心です」
ヴォルニで一番古く歴史を誇る、黒の教会で、彼はその話に突き当たった。
「逸話というか、伝説のようなものですが、一つお話しましょう」
墓所に剣が眠り、塔に杖に翳されたという。
その半ばに城がそびえ、静かに眠りを見届けるだろう。
眠れるものは、牙を剥かぬ、だが、目覚めた者は。
「目覚めた者は?」
言葉を切った神父にガーネットが問うが
「分かりません。この先は伝わっていないのです」
ガーネットはその話を憶えた。
そこに何の意味があるのかを考えるのは、得た側の問題である。
エクレーシアは、今は亡き近衛三軍の団長の一人、ミハイル・ナルニコフの遺児のもとを訪れていた。
ミハイルの息子は、まだ五歳ほどのため、妻が応対に出、その事実を彼女は知った。
「山中に城があるのですか?」
「はい、息子が監禁されていた場所です」
この情報により、エクレーシアは、城のだいたいの場所を把握した。
「ただ、気をつけてください」
「何をでしょうか?」
「あの城は、魔窟です」
エクレーシアが先を問う前に、重い沈黙が訪れた。
エースとカッツェは、路地裏を追われていた。
「にゃー、どうして、追われてるわけ」
「こんな時に減らず口、叩いてる暇があるなんて、な、殴り倒、す」
エースは振り返って矢をつがえるが、放つ暇がない。
追っ手の距離は縮まるばかりで、撃っていては捕まる。
「うっし、まかせて、猫の引掻く速さをみせるにゃ」
緊張感があるのか、ないのかよく分からないが、カッツェは拳を握った。
「いらっしゃーい。ボッコボコにして、あ・げ・る」
振り上げた両手の拳は月光を浴びて光り、挑発するように手招く。
追っ手はどうやら? 普通の物ではないようだ
「デビル? なんでこんなところにいる・・・・・・が、雑魚か。矢がもったいないから後頼む」
思わず、エースは矢を惜しんだ。
「ボッコボコ、ボッコボコ」
楽しげにカッツェは殴り続け、不運なデビルは絶命する。
しかし、なぜデビルが?
エースの疑問に答えるものは、いない。
エフェミア・アスガルズの住むという家の場所を知り訪ねる前に、シュナイダーは一人の少年と出会った。
「こんなところでお客さん、なんてめずらしいね」
少年の傍らには人鬼、オーガが寄り添っていた。
シュナイダーも大柄の女だが、さすがに相手が本物の鬼では、比べるのは失礼というものだ。
「あ、あたしは・・・・・・なにも悪い事をしてないよー」
突然現れた鬼に気が動転したのか、彼女は走り去って行った。
エクレーシアは、白の教義の信者ゆえ、攻撃的な視線を向けた。しかし、彼女一人で何が出来るかというと、
「今日は良い天気です。そのままだと、そこの君、食べられてしまいますよ」
冷静な会話だ。
「大丈夫だよ」
なぜか仲の良いオーガと少年二人に違和感を感じつつ、逃げたシュナイダーを追ってエクレーシアも森に行ったのだが・・・・・・。
──道に迷った。
ここは別名迷いの森と呼ばれている。
奥に住む女は、会いたい人物にしか会わない、招かざるものは決して彼女に会うことはできないのだ。
ぐるぐると何回転かした後、彼女達は気づいた。
「迷ってない?」
「迷っていますね」
顔を見合わせた二人。
「そのままじゃ、無理なのに」
声の先を振り向くと、先ほどの少年が笑顔を向けていた。
丘の上に立つ教会を訪れた女は、一人の少女を目的としていた。
「たのもう」
「何の用ですかな?」
扉をあけた神父は、不信感をあらわにした。
「ここにナタリーという女の子がいるって聞いてきたんだけどね」
「今は出かけていて、いません」
なぜか神父は冷たい。
フェブはさらに聞き込むのだが、神父の態度は変わらない。
その理由がなぜなのかは、先に訪れた羽帽子の男に起因している。
●まとめ
カッツェとエースは杖についての情報をその後集めた。
杖を持ち去ったという猫についての二人の調査によって一つの事実が判明した。
「猫が城に行った?」
カッツェが聞き返したのだが、城が何を意味するのかは現在の彼女には理解できなかった。
エフェミアを訪れた二人は、実際たいした事を聞けなかった。
それがなぜなのかは一つ、テオドールの名前を出した。
そのことにある。
「要点」
バルタザールの居場所を発見したが、テオドールについての情報は得られなかった。
悪魔の門で門を探索するパーティーと出会った。
彼らがなぜそれを探しているのかは分からない。
山中にあるという城の情報を手に入れた。
「墓所に剣が眠り、塔に杖に翳されたという。
その半ばに城がそびえ、静かに眠りを見届けるだろう。
眠れるものは、牙を剥かぬ、だが、目覚めた者は」
月影に眠るもの。
その目覚めは近い。
続