─月蝕─ 「淡光」
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■シリーズシナリオ
担当:Urodora
対応レベル:11〜lv
難易度:難しい
成功報酬:14 G 11 C
参加人数:4人
サポート参加人数:2人
冒険期間:07月13日〜07月21日
リプレイ公開日:2008年07月22日
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●オープニング
●館
「この程度で我を倒そうとは笑止、器の違いを知るがよい」
ヴァンガルド家を訪れていた客人は、館の兵を率いて先陣を切る。
彼の剣が振るわれるたび、死体の山が築かれる。
圧倒的な強さの前に、率いていたデビルは力の差を知ると。
「退け、加勢に向かうぞ」
敗残の兵をまとめて、退却という名の進軍を始めた。
その先にあるのは、もう一つの館・・・・・・。
だが、それはいまだ始まっていない話。
●召集
ヴォルニフ自体が狙われていることを知った。リューヌは緊急でエウロペの召集をかける。
それは彼の館が襲撃される直前のことである。
現状、杖と剣は、デビルの手に落ちたと判断するが妥当だろう、
そこに何の意味があるのかはまた別として・・・・・・だが、再三の襲撃が意味するものは、事実を物語っている。
館にたどり着いた君たちにリューヌは、ヴォルニフ各地が襲撃された事実を語るだろう。そこにはアースガルズの襲撃の話もきっとある。
ここから先どうするか? それは彼ではなく──君たちの判断だ。
Europe
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●指令
自由行動。自分の最善と思う行動をとるように。
以上
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●リプレイ本文
●コードネーム
デュラン・ハイアット(ea0042)
「クロトワ」
ジョセフィーヌ・マッケンジー(ea1753)
「エース」
雨宮零(ea9527)
「ガーネット」
ルイーザ・ベルディーニ(ec0854)
「カッツェ」
と称する。
●館
エース、ガーネット、カッツェの三人はリューヌの元に赴いた。目的はヴォルニの騎士団の動員と謎の客人との接見である。
執務室で二人を迎えたリューヌは、即答した。
「それが最善でしょう。本来なら私も同行したいところですが、この状況では離れるわけに行きません」
リューヌの視線が同じく同室していたある男に向けられる。
視線の先にいた男、ガーネットはつかつかと歩み寄ると、
「初めまして」
男は無言のまま会釈して返す、
「事情は分かりません。僕は貴方のことをよく知らないし、無理は言えません。ただ、できることなら力を貸してほしい」
そこでガーネットは言葉を一旦切った。
エースはガーネットの行動にどう話を続けるか迷ったが、
「どうせ守るなら民草近いほうが大義ってことさね」
挑発するようにエースは呟いた。
「やられたら、やりかえす、そうじゃないと、ムカツクにゃ」
カッツェがなぜか憤っている。
「奪われた杖や剣のためだけではなく、あの悪魔達がしようとしていることはきっとこの地に住む人達が不幸になることだとおもう・・・・僕は、それを止めたい」
線の細い顎をふるわせながら、彼は言う、そこに込められた想いは届くのだろうか?
「よかろう、力を貸してやる。この地には借りがある」
立ち上がった男、リューヌは自らの双刀を捧げるように差し出すと。
「ご武運を」
受け取った男は、
「愚か者の末路をとくと見るがよい」
そう言った。
三人は自らの道を目指して歩み始めた。
さらに仮面の男がその様子をじとりと見つめていたのだが、それはそれだ。
●情報収集
ガーネットは三角地帯についての情報を再度集めた。
その結果。
三つの地点の中心であるヴォルニフの地下には何かがある。
という結論に至った。
中心点にある街を守るかのように、塔と城と遺跡が均等に囲んでいる。
これは何かしらの符号だろう。
「何かしらの力場を構成しているようにも見えますね」
推測するガーネット。
彼にその地点に何か重要な点があったとして、すでに──城は破られていた。
「やはり確認しにいくしかありませんか」
頷いた彼は、エースと供に軍を引き連れ塔に向かった。
悪魔の門には男がむかった、彼ならきっと問題はないだろう。
●戦闘
アースガルズ家の援軍に向かった仮面の男クロトワ。
自意識と自己主張が一般人のレベルをかけ離れている。
「私は世に知れた世界の王クロトワ、魔術師は卒業して今は騎士、いうならばマジックナイト、もはやこの世界に敵などいない」
「もしもし・・・・・・あたま大丈夫ですかーにゃ」
呆れ側でカッツェが聞いた。
「そこの女、頭が高い」
「なにお、えい」
カッツェが引掻いた、仮面が取れかかる、
「何をする、私はクワトロ」
男はつづりを間違えた。
「名前間違ってるにゃ」
「そういう時もあるだろう」
とりあえず変わった男だが強い事は強い。
アースガルズ家に向かう彼らの前に立ちはだかったのは、あちら側にいる軍勢ではなく
「貴様ら、もう追いついたのか」
羽根の生えた獣であった。
自らに風を纏わせた男は、続けざまに暴風を生み、続いて雷鳴を轟かせる。
「吹き飛べ、地を這え、這いつくばれ」
態度はどこか傲慢だ。
続けざまに女豹、猫のような素早い動きで、女が翔ける両手にもつ剣を掲げて倒れた敵に
「ベルディーニソード! ぼっこぼこ、ぼっこぼこ」
ひたすら叩きつける。
「ボコボコも風流だな、しかしこの私が負けるわけにはいかないビッカビッカ」
詠唱を始めるクロトワ。
戦線的にも放置しておいても良さそうなので、次に行こう。
●神の塔
神の塔は、過去杖と剣の二つの神器の封印を解く宝石が隠されていた場所である。
そのさいの討伐で、無人の廃墟になっている? はずだった。
だが、たどり着いた軍の前に現れたのは、
「ここにもデビルが」
ガーネットのオッドアイに映ったのは、低級ではあるがデビルの姿だった。
「まったく、ご苦労様なことで、さてやるよ」
弦を引き絞り、矢を放つ、エースの撃つ矢は正確に敵を撃ちぬいていく。
「やりますね、僕も行きます」
握った剣。
走り出したガーネットも斬る。
空気を切り裂く音が数秒、追ってくる衝撃と打撃。
太刀筋は鋭い、触れた刃は相手の腕を・・・・・・落とした。
軍を引き連れている分、彼らのほうが有利だった。
しばらくするとデビルは塔の上階へと退却を始めた。
追撃するからの前にあったもの。
祭壇のようなその場所に飾られていたそれは、失われたはずの杖の姿。
しかし杖を包んでいる輝きは黒い。
疑念が浮かぶガーネット、
「こんなところに、なぜ? しかも禍々しい」
その質問にエースが答えようとした時、
「まだいる」
振り返ったエースが矢を放った。
●戦闘
「お前で最後だ」
「さいごにゃー」
二人の前には、翼の生えた悪魔がいる。
「私を倒そうと、すでに」
悪魔が語り始めた瞬間。
「黙れ」
クロトワが呪文を唱えた。雷撃が飛ぶ。
「うるさい、悪役の話はききたくないにゃ」
カッツェが切りつけた。
「貴様ら、セオリーというものを、ええいこんな奴らの相手をまともにしていられるか」
空に羽ばたくと、
「戦略的撤退だ、喰らうがいい」
漆黒の壁が二人の前に現れた。
「ふ、こんな壁は、これ以上進まなければ、良いだけだ」
「はやく逃げればー雑魚にゃん」
「貴様ら、覚えていろ」
逆上したデビルだったが、逃げていった。
彼らはそのまま、アースガルズ家の守備部隊と合流した。
そのさい、二人は出会った。
「御機嫌よう、同志汁。いやジルよ。素晴らしい☆は見つかったかね?」
「デ、デュランさん、また変態ごっこですか」
「失敬な変態は君だろう。そしてデュランではない、クロトワだ」
「ど、どっちでもいいですけど、あんまり変な事ばかりしてると妹さんが心配しますよ」
クロトワは痛いところを衝かれた。
「問題ない、お遊びだ」
たまには家族団らんも良いのではないか、そうジルは思った。
●黄昏を前に
杖を持ち帰ったガーネットとエース。
悪魔の門へ向かった謎の男もまた、デビルに襲撃されたようだが、退治した。
剣はどうやらその場所にあったらしく、彼が持ち帰った。
二つの器は揃った。状況的には芳しいとは思えない事態だが二つ器はそろった。
そして、これで無事解決──かと思われたのだが。
リューヌの元に、アースガルズ家の当主が失踪した報が届けられたのはその少し後のことである。
同時に、かつてヴォルニフ領主の館であった地下に封印されていた何かが蠢いた。
解けつつある封印の前に目を覚ましつつある。
涼しげに大気に混じり淀んだが流れ出る。
もはや肉体は半ば朽ちかけ、骨だけになったそれは、多量の死せるものども共に地に触れ出て湧き出すだろう。
「私を倒そうと、すでに」
翼の生えたデビルの逃げる前にその言葉を残した。
ヴォルニフに黄昏がやって来る。
夜が明ける前に訪れる闇は──濃い。
続