山稜を越えて #1
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■シリーズシナリオ
担当:若瀬諒
対応レベル:8〜14lv
難易度:難しい
成功報酬:5 G 97 C
参加人数:8人
サポート参加人数:1人
冒険期間:05月07日〜05月14日
リプレイ公開日:2007年05月21日
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●オープニング
●守備と譲渡
「‥‥なあ、ライル」
「はい?」
リバス砦の改修もほぼ(?)無事に終え、一段落したカーチスの執務室で、その会話は交わされた。
ちなみに、「ほぼ」なのは、築城技師のゴーヌが予算無視して様々なギミックを組み込もうと未だに無茶を言ってくるからである。
『城門をゴーレム機器動力にして素早い進軍撤退を可能にする』
‥‥まあこれは判らないでもない。
『砦をゴーレム化させて合体変形』
‥‥狂ってるとしか言いようがない。
まあ、それはともかく――
「俺たちは何故まだ、ここにいるんだ?」
執務室の机に肘を突き、長い指を軽く組ませて部下に話しかける。
「それは‥‥改修を無事終えた褒美に、あの砦を正式に賜ったからでは?」
冬場のうちに、雪の深いあの地で改修作業を的確に終え、春の雪解けに備える。麻薬の蔓延という問題も冒険者達の活躍で無事に鎮め、無事、砦を再建させた手腕は評価されてしかるべきものだ。
あの砦が落ちた時に、前任者は戦死している。なんの問題もない‥‥はずだが――
「あんなものはいらん」
「‥‥は?」
カーチスの言葉に、思わずライルは問い返した。
「ライル。お前は、二度同じ事を――」
「い、いえっ。言葉の理解はしてます。してますが‥‥」
何故――というのが正直なところだろう。
砦一つとはいえ、賜ったのだ。
勿論、砦が自給自足できるわけもなく、領地を賜り領主となったわけでは決してない。
だが、凡百の騎士から比べればよほどの出世である。
「ライル。お前はあの砦が欲しいか?」
戸惑うライルに対し、口の端だけゆがめて笑って、カーチスが問う。
「はあ‥‥頂けるなら欲しいですが」
「なら、やろう」
「‥‥は?」
「守りなんて面倒なことはやってられん。お前に任せる」
封蝋に使う印の掘られた指輪をライルに放り投げ、とっとと出ようとするカーチス。
「ま‥‥待ってください! そんな我が儘が通るわけ無いでしょうっ!?」
ライルは慌ててその後を追った。
●野望と告発
「‥‥とまあ、冗談は置いといて、だ」
「冗談だったんですか‥‥」
執務室のすぐ外、廊下の壁に寄りかかって、ライルを出迎えたカーチスは、小さく口元を歪ませる。
「守りだけでは、俺の野望に届かん」
「野望ってなんですか? 王様にでもなります?」
「ああ」
「‥‥」
‥‥。
「‥‥は?」
「男と生まれたからには、王を目指すのが当然だろう?」
無茶を言う男が一人。
「‥‥すみません。内乱を起こす前に今から告発しに行っていいでしょうか?」
「それはごめん被るな」
「なら、止めてください」
ライルの真剣な願いに、カーチスはにやりと笑って言った。
「領主になるには何が必要だと思う? ライル」
「は?」
「いいから答えろ」
「領土、でしょうか」
「ああ。だが現在のメイに空いている領土は存在しない。新たな領主となるには、手柄を立て、先日のベノン子爵のような空きが出来るのを待つか、土地を耕し荒れ地に新たな領土を築き上げるか‥‥」
「どちらも似合いませんね」
『カーチス』と『地道な努力』の間に、等号は成り立たない。
「だが、とりあえず封建領主に成らねば、それより上は目指せない。違うか?」
「それはそうですが」
何が言いたいのかさっぱりだ。
「なら、奪うしかないだろう?」
「‥‥やはり告発しに行ってまいります」
「まてまて」
一度告発したせいか、遠慮というものが欠けはじめている上司と部下である。
「わざわざ身内から奪わずとも、奪える土地ならあの向こうにあるだろう‥‥?」
「え? ‥‥まさか」
「向こうはこちらが守ることしか能がないと思っている。この利を逃すことはないと思わないか?」
カーチスが指さす先には、暮れゆく西の山稜が連なっていた。
●潜入と調査
「つまり‥‥どういうこと?」
――カオスの地へと潜入し、地形調査をしてきて欲しい。
ライルは冒険者ギルドの仲介人、ローザにそう語った。
「なんでも『メイの国制覇のための、カオスの地完全征服のための、カオスの一領地征服のための、リバス砦の西へ攻め込むための、下準備その1』だとか‥‥」
大きく首を横に振ってライルが告げる。
「‥‥頭痛い」
何より、非常に壮大な妄想を繰り広げつつ、依頼自体はまとも‥‥という点が余計に頭が痛くなる。単に暴走しているように見えて、要求のゴーレム貸し出しなどを何とかこじつけようと王宮に申請をしに行ったりすると、既に上への根回しが全て済んでいたりする。そういう男だ。
「実は、我々を悩ませるためだけの大法螺だったり」
「‥‥本当にそうであってほしいわ」
いくら、今のメイは王位継承者が不在の状態だとはいえ、性悪カーチス新国王なんて冗談じゃない。
ローザは心底、そう思った。
【周辺地図】
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凹:リバス砦
凸:カオスニアン陣地
▲:通行困難な斜面
仝:通行可能部分(まばらな樹々)
∴:平地
¬:崖(絶壁のため崖下は空白表記)
?:未調査
●リプレイ本文
●序
今回、この地に集った冒険者は七名。
陸奥 勇人(ea3329)やカロ・カイリ・コートン(eb8962)、フィオレンティナ・ロンロン(eb8475)といった、それなりにお馴染みのメンバーが集まる中――今回、また一人『変なの』が増えていた。
「カーチス殿の先見の明、まさに黎明の閃き。ドミニク感服いたしました! 不祥の身ではありますが、その躍進の末席にお加えください」
一人熱血しているのは、ドミニク・ブラッフォード(eb8122)。メイの鎧騎士である。
「‥‥何のことだ?」
カーチスが思わず問い返したのも無理はない。
話を聞いてみるとどうやらドミニク、砦の合体変形に非常な感銘をうけているようである。
「そんなに『合体変形』に興味があるか?」
「勿論!」
「あ、私も私もー」
はいはいはーい、と手を振るフィオレンティナ。
「そうか。じゃあ付いてこい」
「は? ‥‥はっ!」
「はーいっ」
カーチスの執務室を出て歩くことしばし、たどり着いたのはとある部屋。
「あの、ここはいったい‥‥」
「ゴーヌ、いるな?」
カーチスは乱暴に扉を叩くと、奥から野太い声が帰ってくる前に、もう扉を開けていた。
「おお、珍しいの? 今日は何じゃ? この前のゴーレム砦の建設許可でも下りたのか?」
「降りるわけがないだろう? 必要な資金を十割全部、耳揃えて自腹で払えるようになったら上に掛け合ってやる」
「はぁ、あと九割七分か。遠いのう」
「‥‥あの天文学的な額の3%をいつの間にどうやって溜め込んだのかは聞かないでおいてやろう。それはそうと弟子を欲しがっていたな?」
「なんじゃ? くれるのか?」
「ああ、やる」
仏頂面と共に部屋の中に押し込まれるドミニク。ついでにフィオレンティナ。
「‥‥は? カーチス殿ぉぉ〜っ!?」
「頑張れよ」
「えっ? 今回はズッコケカオス陣地調査隊じゃー」
ドミニクとフィオレンティナの背後で、無情にもドアが閉められる。
「カーチスのおじさんは合体変形嫌いなのかな?」
「‥‥同族嫌悪、というやつでしょうかね。私から見れば合体変形も王位も同じくらい夢物語の浪漫に思えますが」
小首をかしげるフィオレンティナに、いつの間にか入り込んでいたアンドレア・サイフォス(ec0993)が答える。
「俺はカーチス殿の野望と合体変形、両方に感銘を受けたってのに」
「なんじゃ? お前らあの馬鹿思想に付き合うつもりか? やめだやめ。弟子入りは却下だ。突き返してやる」
‥‥似たもの同士なのは確かなようである。
●作戦
「それじゃ、今回は陽動と潜入の二班にわかれて行動だな。警戒されないよう、敢えてゴーレム無しを提案する」
「そんなところですね」
勇人の提案にアハメス・パミ(ea3641)が同意し、他の者も頷く。
今回の潜入に際しての一番の障害は、リバス砦を監視するように存在するカオスニアンの陣地である。彼らに気付かれないよう行動することが求められるため、陽動と潜入の二班に分けての行動となる。
それぞれの分担は以下の通り。
・陽動班:勇人、ドミニク、スレイン・イルーザ(eb7880)
・潜入班:アハメス、フィオレンティナ、カロ、アンドレア
綺麗に男女で分かれた形である。
ゴーレムを使用しない為、陽動班の戦力がだいぶ落ち込んでいるが、まあ仕方ないといったところか。
ともあれ、作戦決行は夜明け前と決まった。
●作戦開始
「カーチス殿がこられたからには我らが勝利は次の次で約束されたもの同然。イザ一段となり悪鬼に正義の鉄槌を!!」
「おおーっ!」
ドミニクのおだてに砦の兵が腕を振り上げる。
「いや、騒いだら向こうにばれるからほどほどにしとけな?」
ゴッッ!
「ああいうのは拳で黙らせるのが一番です」
「あ、ああ‥‥」
注意した勇人に意見しつつ、しれっとした顔で拳を拭くアンドレア。
ある意味、この中で一番怖い。
「美人潜入工作員、オーキス・ギール参上! 大き過ぎるのが難点だけど、今日も頑張る潜入調査。大佐、指示を寄越すぜよ! ‥‥アホな事やっとらんで行くか」
「ズッコケカオス陣地調査隊、しゅっぱーつ!」
「ほんとうに置いていかれますよ?」
カロとフィオレンティナのボケに、アハメスが声をかける。
「あっ、あっ、おいてかないでー」
「正直、空元気でも出さんと憂鬱ぜよ」
「無理しないようにいくか」
それぞれの思いを抱きつつ、彼らは砦門脇の小扉から外へ出る。
――夜明け前。
黒々と広がる闇の向こうは、カオスに占領された混沌の地。
「いずれあの地は奪い取る。今回はくれぐれも暴発だけはするな」
「判っているぜよ」
カーチスの言葉に皆が頷く。
「よし、行ってこい!」
冒険者はそれぞれ、二手に分かれて砦を後にした。
●戦闘前
「ここまでは問題なく来れたな。向こうの班も上手くやってるといいが」
双眼鏡を使って遠目に陣を観察しつつ、勇人が呟く。
「大丈夫だろう。問題があれば陣に動きがある――かもしれない」
「最後の一言はどうなんだろうな」
ドミニクの言葉にスレインが突っ込む。
頭がいいように見えて、どこかネジが抜けているドミニクである。
「そろそろ夜明け‥‥もう隠れて動くには厳しいな。行くか?」
目立たないよう染めたマントを外し、いつもの姿へと戻る。
こちらを発見してくれなければ陽動の目的が達せられない。
「丁度いいのが出てきたぞ」
偵察だろう。ぼんやりと薄明るくなってきた空の下、一騎のカオスニアン兵が駆けてくる。
「あのカオスニアンに『見つかる』のが一番だろうな。――根拠はないが」
ドミニクはその一言が余計だ。
「さて、連中がまたティラノを連れて来ない程度に注意を引き付けるとするか」
「ああ」
三人は各々の獲物を持って動き出した。
●陽動
「‥‥そろそろ始まりますかね」
陽動班とは反対側、砦の南側で身を潜めていたアンドレアが呟く。周りには他三名も一緒だ。
「それで、あの歩哨がいなくなってくれるといいのですが‥‥」
呟くアハメスの視線の先には、一騎のカオスニアン兵。あれのせいで、彼女らは先ほどから一歩も前進できずにいた。
「これで動かなかったら、無理矢理通るしかないかなー?」
「叫ばれるとか、警戒行動を取られる前に仕留めるのは難しいですね」
そうしている間にも、徐々に夜は明けてくる。
進むも留まるも死。
ジリジリと待つ中――
「動いた!」
微かに聞こえる、けれど派手な剣戟。陽動班とカオスニアンが接触したのだろう。歩哨のカオスニアンが砦の北側へと恐獣を駆る。
「今のうちに行くぜよ!」
カロの声に、四人は素早く移動し始めた。
「くっ、一匹ならなんとでもなっても、二匹、三匹と増えると流石に辛いな」
ぼやきながら魔槍スラウターを操る勇人。
正直、倒すだけならさほどの手間はない。
先手を取って一撃。それだけで、相手は地に伏し、二度目の一撃で瀕死の状態まで追い込めるだろう。
ヴェロキラプトルとカオスニアン、双方合わせても二十秒あればカタが付く。
問題は、それでは騒ぎが大きくならない点。また、せっかくゴーレムを封印したのに、個人で同程度以上の脅威を与えてしまってはまるで意味がないという点だ。
故に、ある程度時間を稼ぎつつの戦闘となるが――
「‥‥くうっ、ヴェロキラプトル一体でこれほどとは‥‥!」
「ぎりぎりだな」
ドミニクとスレイン、二人がかりで抑えるが、それでもやっと。
初撃で重傷を負わせ、なんとか立ち回れているが、正直、勇人のように『倒さずに派手な戦いを演出する』余裕など無い。初撃で確実に重傷を与え、反撃の間を与えず倒す必要がある。
一人で受け手に回れば最後――装備を軽量にまとめ、攻撃回数に特化したドミニクでさえ――足りない。
「く――っ! 一匹目!」
ズシャアッ!
ドミニクの刃が下から掬い上げるようにヴェロキラプトルを斬り裂き、スレインが搭乗するカオスニアン兵に重傷を与える。
「下がろう。城壁前なら弓の援護も期待できる! そこでもうしばらく粘って撤退だ」
二体の騎兵が新たに砦から現れるのを見て、勇人は自らの相手を袈裟掛けにしつつ、二人に指示を飛ばす。戦い筒の撤退は至難だった。仮にも騎乗恐獣。ヴェロキの移動速度は洒落にならない。まして――
「‥‥ゴーレム無しは流石に、無茶だったかな」
いつの間にか空に現れた翼竜の姿と、招集の音だろう角笛のような響きに、思わずドミニクが呟く。
作戦は間違っていない。潜入班が無事に成し遂げれば、この行動は今後のプラスにきっとなるだろう。
が、今回、このメンバーで行うには――恐らく、傷は避けられまい。
●混沌の地
「これが、混沌の地――」
「だにゃあ‥‥」
眼下に広がる景色に、思わず呟いたアンドレア。
潜入した先、切り立った崖の向こうにその地は広がっていた。
その景色は一見、山脈の東と何の変わりもない普通の土地である。
ただ一点、違うのは――地平の先に近い遠方に広がる、黒い染みのような地域。
「おかしいですね」
その光景を見て、アハメスが小さく呟く。
「おかしいってー?」
フィオレンティナの問いに、アハメスは小さく首を振った。
「いえ、私も直接見たわけではないのですが――馬連隊の皆さんが見たという光景より、黒い土地が広がっているような――」
「まさか‥‥」
他の三人も慌てて視線を西に戻す。ここではないだろうが、馬連隊が登ったのもやはりこの近郊。見え方にそう違いがあるわけがない。
「拡がっている‥‥というのですか」
確信はない。
この中に馬連隊に望み、直接その光景を見た者はいないのだから。
だが――
「いずれ、あの黒き地は山を越え、メイまで埋め尽くす‥‥」
「砂漠が拡大して砂に埋もれるのが先かもしれません」
アンドレアの言葉にアハメスが応じる。
「それは、なんとしても避けねばならんきに」
「ええ。あの土地は我らの物。‥‥返して、貰わねば」
拳を握りしめて呟くアンドレアに、小さく頷くカロ。
と、一転して苦笑いを浮かべた。
「といっても、この先は元々、メイの地じゃないんじゃき」
「え? そうなんですか?」
「この山脈の向こうは元々、ヒの国の土地ぜよ。リバス砦が遙か昔から存在しているのも、この先の地図がまともに無いのも、元々、この先は他国故‥‥ぜよ」
「カロもたまには貴族っぽく見えるねー」
フィオレンティナの言葉に、カロが苦笑いする。
「どちらにしても、私達人間のものには変わりはありませんね」
「ああ。いずれ、返して貰うとするぜよ」
アハメスの声にカロが、そして皆が頷く。
「さあ、行きましょう。気付かれないうちに崖を降りるルートを探らないと。アンドレア殿はここまで、ですね」
「ええ。これ以上は私の装備では無理です。手薄になった陣を偵察して、後はタイミングを見計らって誘導班に合流しましょう」
「気をつけて」
「そちらこそ」
小さく頷くと、彼女らはそれぞれの戦場へと散っていった。
●帰還
「ふうー、帰還ぜよ! って、二人とも酷い有様だにゃあ」
翌日、未明。
帰ってきたカロがまず目にしたのは、怪我を負ったスレインとドミニクの姿だった。
「まったく、ヴェロキラプトル相手に持久戦はやるもんじゃないな。あれは見つけ次第、一撃で倒すに限る。――かもしれない!」
「まさか、こちらが二回攻撃する間に、四回も攻撃してくるとは‥‥」
「まあ、無事でなによりだった」
一番激しい戦闘を繰り広げたにもかかわらず、一人、無傷なのは勇人だ。
「で、そちらはどうだった?」
「‥‥ああ、酷い様子だったぜよ」
カーチスの問いに、カロが答える。
「カーチス先生、はいっ!」
帰ってきてから速攻で地図を描き起こしていたフィオレンティナが、インクの乾ききってない羊皮紙を見せる。
カオスニアンに占拠された村、崖下へのルート、滝や洞窟‥‥白い噛みに様々な情報が描き込まれている。
「予想よりカオスニアンが多くて、近場の調べが足りないかもしれません。砦から離れた箇所は結構楽でしたけど。それから、一度だけカオスニアン兵に見つかってしまい、殺害しました。野生動物に襲われたように偽装はしましたが‥‥」
「ふむ、まあそのくらいは仕方あるまい」
地図に目を通しながら、アハメスの報告に頷くカーチス。
「よくやってくれた。疲れただろう、食事も用意してある。十分に休んでくれ」
カーチスはそう言って冒険者達をねぎらった。