The Letter 〜Episode 3〜

■シリーズシナリオ


担当:やなぎきいち

対応レベル:4〜8lv

難易度:難しい

成功報酬:2 G 88 C

参加人数:8人

サポート参加人数:1人

冒険期間:07月08日〜07月13日

リプレイ公開日:2005年07月17日

●オープニング

●シフール飛脚は何を運ぶ?
「しふしふ〜♪ しふーる便のお届けだよ〜!」
 元気の良い挨拶と共に現れたのはシフール飛脚。太陽を背負って飛ぶシフールはいつにも増して元気が溢れているようだ。
 自分の体と比較するほどの大きさの羊皮紙を手渡す姿は愛らしさを禁じえない。
 お疲れ様、と受取人は再び太陽を背負って飛び立つシフール飛脚の少年へ手を振った。

 さて、預けた手紙をほぼ確実に相手へ届けてくれるシフール便。
 大変に便利だが、常日頃から毎日毎日届くようなものではない。
 今日のシフール便は誰からのものだろう。
 イギリスへ旅立った友人からだろうか。
 それとも、郷里の親からだろうか。
 遠く離れた恋人からだろうか。

 丸められた羊皮紙を紐解こうとし、封蝋にしるされた印に気付いた。
「これは‥‥」
 見覚えのある封印。グリフォンを模したその印を用いる人物に、心当たりがあった。

 ──ゲーニッヒ・フォン・シュヴァルツ。

 先日、とある依頼で知り合った貴族だ。
 一抹の不安を覚えながら、丸められた形状のままに癖のついた羊皮紙を広げた。

 突然の非礼の詫び、そして先日の邂逅の礼。
 丁寧な文面に好感を持ちつつも、どこか嫌な感覚は拭えなかった。

 そして、読み進むにつれて‥‥表情が険しくなってきたのは仕方のない話だった。

 そう、それはギルドを通さない依頼。
 レイ・ミュラーの目に届かないよう出された手紙。

『アイシャのことは良いきっかけだった。
 彼と話し、また彼の行動を見て、是非とも息子として迎え入れたいと思うに至った。
 想う相手がいるのなら、アイシャと連れ添ってくれなど言う気はない。
 何かのためにシュヴァルツの名を使うという、そのためだけでも良い。
 レイを説得し、私の元へ連れてきてもらえないだろうか』

 そして同時に、決して少なくはない報酬が記されていた。
 しかし‥‥友人を天秤に掛けるその依頼に、目の眩むような夏の日差しも、どこか遠く感じられるのだった。

●今回の参加者

 ea4335 マリオーネ・カォ(29歳・♂・ジプシー・シフール・ノルマン王国)
 ea4532 レティシア・ハウゼン(25歳・♀・神聖騎士・人間・ノルマン王国)
 ea6690 ナロン・ライム(28歳・♂・神聖騎士・人間・イギリス王国)
 ea7864 シャフルナーズ・ザグルール(30歳・♀・ジプシー・人間・エジプト)
 ea8866 ルティエ・ヴァルデス(28歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・ノルマン王国)
 ea9909 フィーナ・アクトラス(35歳・♀・クレリック・人間・フランク王国)
 eb0631 ヘルガ・アデナウアー(18歳・♀・バード・ハーフエルフ・フランク王国)
 eb1566 神剣 咲舞(40歳・♀・浪人・ジャイアント・ジャパン)

●サポート参加者

ゴールド・ストーム(ea3785

●リプレイ本文

●シフール便は何を報ず?
 突然のシフール便を受け取ったナロン・ライム(ea6690)が先ず思い浮かべたのは、イギリスに置いてきてしまったある人物だった。
「‥‥そんなはずないのにね」
 蝋に残された印に自嘲じみた苦い笑いを浮かべ、鍋を置いて封を切る。
 風を受けて羊皮紙が本来の姿を取り戻すと、料理人は再び鍋を手にし、振るいながら記された文面に目を通す。

 記された文面に、シャフルナーズ・ザグルール(ea7864)は怪訝な表情を浮かべた。
「んー‥‥どういう事なのかな、これは」
 単に前回話さなかった事、話せなかった事を話そうというならば判らなくもない。しかしそれなら、何故レイ・ミュラーに直接連絡をとらず、わざわざ冒険者へと話を持ってくるのだろうか。

 ただ、一つ判っていること。
「厄介なことになってきたけれど‥‥このまま、というワケにも行かないよねぇ?」
 空を見上げるように髪を掻き上げ、ルティエ・ヴァルデス(ea8866)はどこか割り切った笑みを浮かべた。

 けれど、神剣 咲舞(eb1566)はどこか愉しそうな笑みを口元に湛えていた。
 明確に頼まれている事は『レイを説得し、私の元へ連れてきてもらえないだろうか』ということ。『息子となるように説得しろ』と書かれていないようにも読める。
「我ながら、屁理屈にも程があるわね」

「家柄、家名‥‥それは必ずしも必要なものでしょうか‥‥‥」
 羊皮紙を広げたまま、レティシア・ハウゼン(ea4532)は表情を変えずに呟き、もう一度文面に目を通す。
 もう一度会ったとしてもレイは養子になるつもりはないだろうし、レティシアもそれでも良いと考えていた。
 ──が、万が一ゲーニッヒ卿が本当に父親なのだとしたら?
「真実を確かめず、永遠に機会が失われてしまうのだけは避けたいですが‥‥」

 そう、レイの返事は判りきっているからこそ‥‥問題も生じる。
「どうしたものかしらね‥」
 シフール便から上げた目に珍しく迷いを浮かべて、フィーナ・アクトラス(ea9909)は胸に下げた十字架に触れた。
 冒険者ならば必ず訪れるその選択が、今フィーナの許へと訪れていた。それは、タロンの使徒としても潜り抜けねばならぬ試練の一つだった。

「冒険者なんだし、ギルドを通してないからこそ、依頼は確実にこなさにゃいけないでしょ」
 顔の化粧を掻きながら、マリオーネ・カォ(ea4335)はそう零した。
 マリオーネはレイが自分のことをどう思っているか知らないし、それはどうでも良いとすら思っていた。
「でも‥‥ホントに家に戻って欲しいんなら自分で説得しろッてんだ」
 ──『隠し事』なんてせずに、全てを投げ出して。

 難しい現実を突き付けられても迷いを抱かなかったのは、ヘルガ・アデナウアー(eb0631)唯一人だった。
「レイさんはレイさんの望むようにすればいいのよ。あたしがとやかく言う事じゃないわよね」
 自分にできるのは、流されやすい性格のレイをしっかりガードすることだけだと現実を見つめた。
 そして、そう決めるが早いか、早速ゲーリッヒ卿に宛てた丁寧な断りの返事をしたため始めたのだった。

●シフール便は恋を招く?
 レイを連れて行くとしても、理由を誤魔化してまで連れては行けない‥‥
「レイさん、ちょっと良い?」
 シャフルナーズがレイの家の扉を叩くと、「はーい」と愛らしい声がして満面の微笑みを浮かべたヘルガが出迎えた。
「あっ、シャフルナーズさん! あの、これは‥‥えっと‥‥つ、作りすぎちゃったご飯を届けに来ただけでっ!!」
 真っ赤に頬を染めるヘルガ。シャフルナーズが勘違いもせず状況を把握できたのは、レイを慕うヘルガの姿が目に焼きついていたからに違いない。
「判ってるよ、ヘルガ。レイさんは難しいターゲットだと思うけど、全力でぶつかる方があなたらしくて好きだよ♪」
 ──レイさんって、タイプじゃないしね。
 内心でそんな一言が付け加えられているとは思いもせず、ヘルガはもじもじとシャフルナーズを屋内へ案内した。
「あれ、皆も来てたんだ? 私が最後?」
「そうですね。でも、約束していたわけではありませんし、本題もまだですから、気になさらなくても」
 咲舞が筋の通ったような姿勢でその大柄な身体を椅子に収めたまま柔和な笑みを浮かべた。
 レティシアは、傍らのレイへいつもと同じ表情で語りかける。
「ゲーニッヒ卿から、レイさんをお連れするようにと依頼を受けました。‥‥本当の両親のことを知る手がかりがゲーニッヒ卿の下にあるかもしれません」
「どうも、前の奥さんとの間に双子を儲けたらしいんだよね。一人は死産、でももう一人は無事生まれたらしいんだけど‥‥あ、勿論それが即レイさんと繋がるって訳じゃ無いと思うけどね?」
 シャフルナーズは乱れた髪飾りと悪戦苦闘しながら、掻い摘んで事情を説明した。
 ふと立ち上がり、その髪飾りを優しい手つきで綺麗に整えるレイ。
「ゲーニッヒ卿へは、先日、あの席でお断りをしたかと思うのですが‥‥」
「その対応が気に入ったっていうんだから、皮肉よね」
 困ったように、フィーナが肩を竦めた。いや、彼女は実際レイの肩を持つ自分と、依頼を依頼として割り切らなくてはいけない冒険者としての自分との間に出来た大きな渦の中で、櫂を持たぬ小舟のように翻弄されていた。
「これは私の想像、ただの例え話なんだけどね」
 そう前置きをして、ルティエが一つの仮説を語り始めた。
「本妻の子であっても何らかの事情‥‥不義の子という疑いがあったのなら、放逐する事も考えるかもしれないね」
 母親と息子の一人が死んだのは事実だから、双子であった事を伏せれば、残る一人の存在を消すことも容易い。
「けれど不義の疑いが晴れ、ゲーニッヒ卿は罪悪感に苛まれる。だが最近になってアイシャ姫の件で偶然もう一人の息子──キミの居場所を突き止めた」
 仮定を口にしながらルティエはレイの表情を窺った。視線を僅かに落として宙をじっと見つめるレイ。そんな青年の頭上をマリオーネが陣取る。
「君に一度見て欲しい物がある。それはあの屋敷にあるんだ‥‥あまり良い気はしないかもしれないけど、もう一度あの家に行ってみてくれないか? 本当の事を知り、その上で決めるのが‥‥俺から君に対するお願い」
 どうしても、ゲーニッヒ卿が隠すように保管していた、あの肖像画を見せたかった。
「何なら『依頼』にしてもいいけどね? 2G程度は出すよん♪」
 おどけて言うマリオーネを、頬を膨らませたヘルガが軽く睨み付けた。
「んもう、マリオーネさんったら! レイさんは、どうしたいの? ううん、これから先、どうしていきたいの?」
 流されそうなレイを繋ぎとめるかのように、どこか幼さを残す手でレイの手を握るヘルガ。
 真摯に見つめる眼差しへ微笑みを返し、ゆっくりと、噛み締めるように頷くレイ。
「‥‥‥真実を、知りたいです。それが例え、辛い真実であったとしても」
「いつまでも悩んでたんじゃ、タロン様に示しがつかないわよね」
 気持ちはずっと固まっていたのだ。きっと、タロンは自分の気持ちを、相手を想う心を大事にしろと言っているに違いない‥‥そう信じたフィーナの手は、十字架のネックレスをそっと包み込んでいた。
「皆‥‥レイさんの気持ちを無視してまで、ゲーニッヒ卿の息子にさせる気はないんだね? 例えそれが、依頼の失敗に繋がったとしても?」
 ナロンなりの意見はあるが、一人でなんて結論は出せなかった。もう確かな答えなんて存在しないのだろうが、それでもナロンは他の人の意見を一度聞きたかったのだ。依頼を失敗に導いてまで貫きたい想いなのかどうか、その意思を確認したかった。
 心を決めた冒険者たちの表情は、とても晴れやかなものだった。

●シフール便は何処へ導く?
 そして、一向は再びゲーニッヒの屋敷を訪れた。
 レティシアが代表し、改めてレイをゲーニッヒへと紹介する。
「では、レイ君は‥‥我が家に息子として入ることに同意してくれたんだね?」
「卿、その前に聞きたいことがあるんだ。『エリーゼ・ゲーニッヒ』さんって誰ですか?」
 わざとらしいほどににっこりと微笑み、二人の間に割って入ったのはマリオーネだった。
「どうして、エリーゼの名を」
「彼の母親ですよね、兄か弟かは分からないけど彼と双子のもう一人の。あの顔、髪はきっとそうだ。‥‥証拠ともいえるあの絵を、彼になぜ見せない?」
 碧の炎を宿す小さな道化師に気圧され、ゲーニッヒは沈黙してしまった。
 マリオーネの言葉に、レティシアも同意するように頷き、自らの言の葉を重ねる。
「そしてレイさんを養子に求められる理由を聞きたいです。ただ気に入ったというだけではないはずです‥‥」
 子供に言い聞かせるように、心に染み入るように、ゆっくりと、疑念を重ねてゆく。
「それに亡くなられた前の奥方様との間に死産されたお子さんとその双子のもう一人がいらっしゃったという話があること耳にしました、では実の子供がおられたはずなのにどうされたのですか?」
「‥‥‥‥」
 沈黙を守るゲーニッヒ。
「お願い、ゲーニッヒさん。本当のことを聞かせてください。何故我が子を手放す様な事をしたのか。レイさんは本当に息子なのかどうか。その真実をはっきりさせて、その上でどうするかをレイさんに決めさせてあげて欲しい」
 シャフルナーズは、ゲーニッヒを見つめ、真っ向からストレートに想いをぶつけた。
「‥‥依頼人に無責任な事言ってるのは分かってる。それで得られる事はレイさんにとってとても辛い事実かもしれないんだし。でも、もし推測が事実だったら。実の親子が誤解したまま離れ離れだなんてのは、淋しいから‥‥」
 感極まってしまったのだろう、じっと見つめる印象的な瞳が揺らぎ、涙が浮かんだ。
「すみません、私のために辛い思いをさせてしまって‥‥」
 その涙を隠すようにレイはシャフルナーズをそっと抱きしめ、涙を拭った。落ち着かせるように背中を軽く叩き、呟くように、囁くように、言葉を漏らした。
「本当は‥‥私が自分で聞かなければいけないことだったんですよね。ありがとうございます、シャフルナーズさん」
 ──おかげで、目が覚めました。
「ゲーニッヒ卿、色々と詮索するような真似をした無礼をお許しください。その上でなお私を息子と呼ぶのなら、真実の話を聞かせてください。」
 レイが初めて、ゲーニッヒへ自らの希望を告げた。
 沈黙を守っていたゲーニッヒは、レイの希望に頷き‥‥一行を促した。
「判った、すべてを話そう。来なさい、こちらへ」

●シフール便に描かれぬ肖像
 向かった先は、マリオーネも訪れた廊下の突き当たりだ。何も言わず、ゲーニッヒが重厚なカーテンを引くと‥‥
「‥‥レイさんにそっくりね‥」
 咲舞が漏らした言葉の通りで、そのカーテンの下から現れたのはうっすらと煤を被った肖像画──そこに描かれているのは、黒い髪を持つ、レイに似た面立ちの女性だった。
「エリーゼ、私の妻だった女性だ」
「亡くなられた方ですね」
「ああ。アレは生来丈夫な方では無かった‥‥双子の出産に耐えられず、死んだのだ。一人の息子と共に」
 咲舞に促され、ゲーニッヒは頷いた。
「私は‥‥生まれたばかりの子を憎み、恨んだ。子供が一人であれば、あるいはエリーゼは耐えたかもしれん、と」
 ──そして、生まれたばかりのその子供を手放した。最愛の妻の面影を色濃く残す、その赤ん坊を‥‥捨てたのだ。
 彼女を愛するが故の、悲しみに束縛されることを嫌って。
「アイシャの想い人を探し‥‥君を見つけたときには驚いた。息子かもしれないと、そう思った」
 レイをじっと見据え、ゲーニッヒは言葉を紡ぐ。
「キミの育った孤児院は私が息子を捨てた孤児院ではなかったし、面影以外に‥‥証拠は何もない。キミが息子であることを受け入れられないといえば、諦めるつもりだった」
 けれど、それは‥‥レイの行動で掻き消えた。
 騎士として、貴族として恥ずかしくないだけの精神を養った青年。
 それは、自らの理想とする息子そのもので‥‥
「レイさんが息子であっても、息子でなくても‥‥罪滅ぼしのつもりで‥?」
 レティシアの言葉に、ゲーニッヒは小さく首を振った。
「例え近くに置かなくとも‥‥憎しみと共に、愛情が常にあった。証拠と呼べるものは何もない。けれど、もし彼が息子であることを受け入れてくれるのなら‥‥我が子として、我が子の分まで、愛したい」
 父性というのもまた、迸る愛情を持っているものなのだ。行き場をなくした愛情は憎しみへと転化され‥‥けれど、憎しみというものはいつか薄れるもので。そのときに残るものは、ただ、愛情だけ。
「私はこんな男だ‥‥それでも構わないといってくれるのであれば。父と呼んではくれないだろうか‥‥」
 レイは、噛み砕くように、ゲーニッヒの言葉を反芻する。
「レイさん‥‥答えは、決めてきたんですよね」
 ナロンの言葉に振り返ったレイは、その横に佇むフィーナと目が合った。
「やっぱり決めるのはレイさんだけど‥‥私は、今のままでいて欲しい、って思ってるわ‥‥」
「私も、私のままでありたいと思います。嘘偽りのない自分自身で‥‥」
 それはそのまま、ゲーニッヒへの答えとなった。

●シフール便は風に吹かれ‥‥
「本当に、どうもありがとうございました。ゲーニッヒ卿‥‥素直に父と呼べる日が来るのかどうか判りませんが、冒険者として暮らしながら、少しずつ言葉を交わし、絆を深めていこうと思います」
 レイはそう延べ、深々と頭を下げた。
 どこか自分と姿を重ねていたルティエは安堵の溜息を吐き、不透明なものを残しながらも親子として歩む決意をしたことでレティシアやシャフルナーズ、咲舞の表情も晴れやかなものになった。
 マリオーネはどこか釈然としないものを感じながらも、それでも、レイの決断に異を唱えることはしなかった。
「‥‥シフール便でも送ろうかな」
 ナロンは異国へ置いてきた人物へ、想いを馳せた。きっと驚き、そして喜んでくれるに違いない。
 そしてレイは、ヘルガとフィーナへ向き合った。
「ヘルガさん、フィーナさん。ゲーニッヒ卿‥‥父からの報酬、本当に受け取らなくて良いのですか? ただ働きになってしまいますよ?」
「あたしは最初から依頼を受けていないもの。もらう道理がないわ」
「私も、依頼放棄した身でそんな都合の良い事はできないわね」
 ヘルガとフィーナはそう言って満足気にくすくすと笑いあった。
 世の中にはきっと、形の無いとても大切なものがたくさん溢れているのだ。
 それは友情とか、恋心とか、親子の情とか‥‥目には見えない絆のようなものなのだろう。
「それでは‥‥今度、お二人にお食事でもご馳走させてください。私からの、感謝の気持ちとして」
 それが一番嬉しいと、二人はそれぞれの理由で満面の笑みを浮かべるのだった。