イギリス『二丁目』のママ伝説 その参

■シリーズシナリオ


担当:やよい雛徒

対応レベル:3〜7lv

難易度:普通

成功報酬:2 G 4 C

参加人数:8人

サポート参加人数:7人

冒険期間:12月26日〜12月31日

リプレイ公開日:2005年01月05日

●オープニング

 聖夜祭は二丁目でも祝うらしい。ただしなんと、一週間聖夜祭記念営業をやるといった。具体的にはメニューが期間限定だったり、衣装がさらなる仮装だったり、特別プレゼントがあったりと言う感じだが、今回の二丁目は輝いていた。虎夢ママをはじめとした二丁目の主人クラスママが総出でお客様をもてなすのである。虎夢ママ、有樹ママ、蘇芳ママ、板長ママ、魅夜ママ。皆さん勢揃いだが、実はちょっとしたイベントにお呼ばれしていた。
「応援ねぇ」
 チャーミングな男女達を競うコンテストがとある村で開かれるという。彼らはそのコンテストにおいて幸運をもたらす守り神的な役目を果たしてくれないかという要請を受けた。一風変わったコンテストであるため、二丁目の皆さんが大抜擢を受けたのだ。
「けれどお店は放っておけませんよ?」
「そりゃ折角の聖夜祭期間で売り出してるから、うーんと」
 んじゃまた呼びましょうか。
 皆さん暗黙の了解で冒険者達をギルド経由で呼ぶことにした。ママ達はお店を離れることが出来ないので、代わりにコンテスト会場に行き、二丁目のアピールもしてきて欲しいという。念のため出張に長けた魅夜ママが同行することになった。
「実はですね、追加でコンテストの選手達のお疲れさま会もここでやりたいと村長がおっしゃってますね。ただ貸し切りには出来ませんから相席になったりもしますが」
「いいんじゃないですか?」
「上手くやってくれるでしょう。あの子達なら」
 あはははは、と響く笑い声。絶大な信用を勝ち取っているらしい冒険者達。ママ達もママ達で、お手伝いに来てくれた冒険者達に聖夜祭プレゼントでも用意しておこうか、それとも後日呼び出して騒ごうかと色々秘密の計画を練り始めた。

 さて冒険者の皆さん、コンテストで盛り上げ二丁目のアピールを行い、その後は選手と一般客の皆様をもてなすというハードスケジュールだ。
 がんばれ二丁目、がんばれママ達。
 今日も楽しく働きましょう、食うために。

●今回の参加者

 ea0127 ルカ・レッドロウ(36歳・♂・レンジャー・人間・フランク王国)
 ea1314 シスイ・レイヤード(28歳・♂・ウィザード・エルフ・ロシア王国)
 ea3777 シーン・オーサカ(29歳・♀・ウィザード・人間・イギリス王国)
 ea3947 双海 一刃(30歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea4099 天 宵藍(31歳・♂・武道家・人間・華仙教大国)
 ea4600 サフィア・ラトグリフ(28歳・♂・ファイター・人間・イギリス王国)
 ea4756 朱 華玉(28歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)
 ea7804 ヴァイン・ケイオード(34歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)

●サポート参加者

フローラ・エリクセン(ea0110)/ トア・ル(ea1923)/ 葉隠 紫辰(ea2438)/ 橘 瑛蓮(ea5657)/ セレス・ハイゼンベルク(ea5884)/ ルイーゼ・ハイデヴァルト(ea7235)/ ミィナ・コヅツミ(ea9128

●リプレイ本文

 二丁目の日雇いママの皆さんは、本日チャーム大会に出張していた。
 緋色のドレスを纏ったルカ・レッドロウ(ea0127)は、寒い格好でも笑顔を絶やさずホットミルク配りに徹し、シスイ・レイヤード(ea1314)は襟元ふわふわのロングコート(まるごとメリーさんにあらず)の下に長袖の服のタイト膝上スカートで、足元はブーツと非常に寒そうだが、たき火の側でまだ来ぬ選手達に声援を送っていた。
 シーン・オーサカ(ea3777)は人に会いに行っているらしい。
 双海一刃(ea3947)はゆかりママ(葉隠)を引きずり回して、ギルドの記録係により臨場感が伝わるようコンテストの内容を覚えさせていた。妹に見つからないようにしているのか、ゆかりママの素行が妖しい。
 白地に紅梅柄の華国服と扇を手にした紅梅ママこと天宵藍(ea4099)は「どうぞこちらで暖をお取り下さいませ。梅紅と申します。宜しければ店の方もお待ちしております、奥様」と可能な限りの猫なで声でお店の宣伝に勤しんでいた。サフィア・ラトグリフ(ea4600)もまた同じ事が言え、「二丁目のサファイアです」といういかにもな声を出しながら、知り合いに会うことを恐れてびくびくしている節があった。
 朱華玉(ea4756)については会場におらず、何故かコースに潜んでいた。ある金髪青年を見つけた華玉は待ってました! とばかりに道へ転がり。
「そ、そこの殿方、助けてください、胸が苦しいのです」
「罠如きに遅れを取るとは不覚! どけ、私が先だ!」
 胸元をちらりと魅せた色香攻撃に全く動じず、一瞥もくれずに青年は疾走。「何苦しそうに倒れてる美少女無視すんねん!」と雪玉を去りゆく男にぶつけた。乙女心は複雑だ。
 ヴァイン・ケイオード(ea7804)は虎夢ママに借りた巫女装束に加え、華玉に化粧とリボンを頼み、ブーツを履いて現れた。何か吹っ切れたような顔をしていた。きっと何か悟ったのだろう。だが会場で知り合いを見つけ「良いか、趣味でやってる訳じゃないんだ、これは。可哀想な目で見たり、変な誤解するようなら簀巻きにして木に吊るすぞ?」と脅したかと思えば「僕だって好きで脱いだ訳じゃないんです」等と物陰で言い争う声が。
 そんなこんなで会場の熱気はふくれあがり、過ぎていった。優勝者は逃亡し、準優勝者のジャイアントに二丁目のママ御一行の『聖なる口づけ』ならぬ『祝福の洗礼』が起きた。
「ちょ、ま、まってくれ。そんな話は聞いてないぞ。私にそんな気は」
「‥‥まぁ‥‥内々で決まった‥‥からな」
「顔は他に担当が居るから、俺は手の甲にしてやろう、くっくっく」
「俺の濃厚なキッスをプレゼンツ」
「わしらも覚悟を決めたんじゃ‥‥逃がさぬよ?」
「いっ、う゛ぁ――――――――――――っっ!!!!」
 以上、お子さまにはショッキングと思われる光景を音声だけでお伝えした。
 さてさてその後出張した皆さんは酒場『二丁目』に戻ってきた。選手達の打ち上げ会が行われることになっているのである。選手達の一部が魂抜けているが其れはさておき、通常営業もかねているため店内は大騒ぎだ。
「おお! やっぱり師匠は何を着てもかっこいいな!」
「ハッハァ、あったりまえよ! いや、ちょい複雑」
 お客でやってきた知り合いも多いのだろう。顔見知りなのか、セレスは純粋な瞳をルカとシスイに向けた。ルカは強い酒を注ぎながら、大笑いしている。ノリは変わらず下手なコメディを披露しているわけだが、セレスが酔いつぶれた為シスイが別室へ運び出す。
「団長、ちょっと‥‥やすませてくる」
 会場の時とは違い、シスイはノースリーブで背中開きの腰まで深いスリットの入った黒ドレスという過激な格好に着替えていた。エルフ特有の白磁の肌が闇に際だつ。お兄さん顔負けの色香全開だ。ぽけぇっと視線が釘付けになる男達。
「やる気満々だなぁ、紫闇ママ。さすが最強プリンセスだ。さて、夜はこれからだ!」
 誉めるところがちょっと違う。マルコ・ゴールデンママはチャーム大会選手の泥棒の指名をうけ、彼も彼で忙しそうだ。何が起こっているかは‥‥いや、ふれないでおく。
「華玉はん、この注文どこのてーぶるなんー?」
「えー、あーそれ紅梅ママの所よ。んもー、レーヴェったら。なんで逃走するのよ」
 男装したシーンが料理を届けに走る。華玉はよからぬゲームの計画を立てていたらしいが、知り合いの対象者がコンテスト会場で逃走した為に実行ならず。
「シーンさん、かっこいい。ママさん達、男の人なのに綺麗‥‥」
 招かれたフローラは自信喪失していた。もう一人、ミィナという娘が居るのだが、彼女は現在裏方で掃除やお運びに専念していた。シーンがカウンターに戻ってくる。
「なーに、沈んでるねん。華玉はん、あんたに任せて、うちちょっと休んでええ?」
「いいわよー。私はルイーゼと話してるから。ルイーゼ、お酒どうする?」
 華玉がシーンに手を振る。「私は客である前に1人のメイドですので、自分でやります」と華玉に招かれたルイーゼがふくれる。シーンは笑顔の後に気むずかしそうな顔をした。
「おおきに。ふらん、折角や、少しは楽しんでな。ホントは、プッちーやヴァーナはんも呼びたかったんやけど、プッちーどこにいんのかわからんし。なぁ、ずっと夢を見ているのと夢を見れないのは、果たしてどっちがより不幸やろかな」
 色々思い詰めているらしいシーン達とは対照的に、一部のテーブルは盛り上がっていた。
「うふふお兄さま、此処であったが百年目。そして紫辰いえゆかりママ、裏切りましたね」
「お、お、お、落ち着け。は、俺は板長ママの手伝いに行かねば! ポチよ、まかせた!」
「何!? 我が義妹よ、視線が冷たいのは気のせいか!?」
 一刃こと黒耀ママは葉隠と共に実の妹に狙われて、ゲームと称して命を狙われていた。
「ええと涼ちゃん、最初に会ったときより凄みが出てきてて‥‥てーか育て方間違ってるよ、兄!」
 たまに睨まれる魅惑のナマ足を持つサファイアママが紅梅ママテーブルから傍観する。
 しゃれにならない兄妹げんかだ。さらにシーンが食べ物を運んだテーブルでは紅梅ママが淑やかにを心がけて、時折蘇芳ママと舞のサービスしながらお客に接していたのだが。
「わ! あ、スカートの裾から手が! あわわ!」
「ってトア殿! わらわが目を離した隙に親父行為は止めんかっ!」
「ふふふ。こうしてみると女の子なのにねぇ」
 男装して訪れたのは紅梅ママの悪友だそうで、先ほどから忙しそうに入れ替わるママにちょっかいを出していた。女帝全開にしながら紅梅ママは対処に追われる。ナマ足サフィアが顔を真っ赤にしてスカートを押さえた。「瑛蓮ちゃんの接待いってきます」とよれよれ立ち去っていく。トアがちぇっと名残惜しげに眺めたのを見やり、紅梅ママが言った。
「どうせならぬしも一緒に。いや、お客人も皆共に如何じゃ? 踊り明かすも楽しい夜ではないかの」
 一方、紅梅ママのテーブルから逃れたサファイアママは、チャーム出場者が馬鹿騒ぎしているテーブルに向かった。瑛蓮も一時的に其処にいたからである。テーブルにはヴァインが筆頭となって、マルコ・ゴールデンママ、紫闇ママ、黒耀ママ、ゆかりママとかーなーり賑やかで混沌としていた。なんていうか色んな意味で阿鼻叫喚に近かった。原因は。
「もう私達が来るのも最後です。いつも以上にパーッと行きましょう、パーッと!」
 常識が解放されると恐ろしいほど効果が出るらしい。出場者に誕生日が近い者もいたからだろう、虎夢ママのサービスで高い酒も振る舞われた。
「シェアムママ、逞しくなったよな。さて皆さん、息抜きに女王様ゲームでもーっ!」
 サフィアは何かが外れたヴァインを通して遠くを見ていた。そして、自分も。

「虎夢ママ達も色々ありがとうございました。これからもお元気でお店続けていってくださいね」
 こうして二丁目のママ伝説は年とともに終わった。前回もきた者には追加給料が支払われたらしい。皆様々な伝説を残しているわけだが、一部の固定客にはあだ名で呼ばれるようになったとか。華玉は戦友達に卒業記念としてかんざしをプレゼントした。たぶん女装に磨きをかけてゆけ、と言う意味かもしれない。
 尚、虎夢ママが年明けに一人の男の置き手紙を発見する。
「‥‥幾ら最後とはいえ、大事な物を捨て過ぎた気がします‥‥」
 何かを悟った男の涙のアトがあったとかなんとか。

 キャメロットの秘境、酒場『二丁目』。
 個性豊かな接待役を取りそろえて今日も開店。年中無休でございます。