大和の沖田

■シリーズシナリオ


担当:ゆうきつかさ

対応レベル:11〜17lv

難易度:難しい

成功報酬:3 G 74 C

参加人数:10人

サポート参加人数:-人

冒険期間:07月15日〜07月18日

リプレイ公開日:2006年07月20日

●オープニング

●沖田と思われる男
 大和の地で沖田を見たという報告が増えている。
 沖田は大和各地で暴れている黄泉人達を退治しているようなんだが、何処か様子がおかしいようだ。
 そのため、こちら側から何度か沖田に接触を図ろうとしたのだが、黄泉人に襲われて命を落とすか、沖田らしき人影を見ただけで終わっている。
 最悪の場合、沖田の姿を真似した第三者である可能性もあるため、お前達で沖田と思われる男の正体を探って欲しいんだ。
 あの辺りには黄泉人も沢山いるから、くれぐれも注意して欲しい。

●今回の参加者

 ea0012 白河 千里(37歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea0020 月詠 葵(21歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea0021 マナウス・ドラッケン(25歳・♂・ナイト・エルフ・イギリス王国)
 ea0085 天螺月 律吏(36歳・♀・侍・人間・ジャパン)
 ea1661 ゼルス・ウィンディ(24歳・♂・志士・エルフ・フランク王国)
 ea1774 山王 牙(37歳・♂・侍・ジャイアント・ジャパン)
 ea3108 ティーゲル・スロウ(38歳・♂・神聖騎士・人間・イギリス王国)
 ea4141 鷹波 穂狼(36歳・♀・志士・ジャイアント・ジャパン)
 ea8802 パウル・ウォグリウス(32歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・ビザンチン帝国)
 eb1935 テスタメント・ヘイリグケイト(26歳・♂・神聖騎士・ハーフエルフ・ノルマン王国)

●リプレイ本文

●目撃情報
「一体、沖田組長は何の目的があって、大和に来ているんだろうな? 本当に黄泉人を退治して回っているのか、それとも偽者が何らかの目的を持って沖田組長に成りすましているのか、どちらかだとは思うが‥‥。まさかジェロニモと接触するための罠って訳じゃないだろ?」
 沖田に関する情報を集めるため、鷹波穂狼(ea4141)が冒険者ギルドにむかう。
 ギルドにはひとりの冒険者が待っており、穂狼達の姿に気づくと辺りを見回し酒場に移動しようと言ってきた。
「どちらにしても、我が行動が、思考が次へと繋がるよう、最善を尽くすまで‥‥」
 辺りの様子を窺いながら、白河千里(ea0012)が答えを返す。
 沖田を目撃した冒険者は必要以上の事は口にせず、酒場に入ると奥の席へと移動する。
「ここまでくれば大丈夫だ。最近、妙な奴につけられているんでな」
 苦笑いを浮かべながら、冒険者がようやく口を開く。
 冒険者の名前は狭霧。
 二週間ほど前に大和で沖田を見たらしい。
「ところで妙な奴って、ひとりだけ?」
 一瞬、ジェロニモの顔が脳裏を過ぎり、月詠葵(ea0020)がボソリと呟いた。
「いや、ひとりの時もあったが、複数の時もあったな。人数が多い時は強硬手段に出る事もあったから‥‥。情報を提供する代わりに冒険者ギルドに保護をお願いしたわけさ」
 襲われた時の事を思い出し、狭霧が身体をぶるりと震わせる。
 よほど怖い目に遭ったのか、必要以上の事は口にしない。
「‥‥なるほど。だから他の目撃者は行方不明になっていたというわけか」
 納得した様子で腕を組み、穂狼が狭霧の話を聞く。
 狭霧以外の冒険者は穂狼達と接触する前に行方不明になっており、沖田に関する情報を聞きだす事が出来なかった。
「あの様子じゃ、沖田って奴しか知らない『何か』があるんじゃねえか。奴等にとっちゃ、都合の悪い事かも知れないが‥‥」
 辺りの様子を確認した後、狭霧が一番高い酒を注文する。
「もっと詳しく話してくれないか?」
 狭霧に干菓子(落雁)を手渡し、千里が詳しい話を聞こうとした。
 しかし、狭霧は困ったようで干菓子を受け取り、腕を組んで『ウ〜ン』と唸る。
「暗闇で襲われたから、よくワカンねえよ。ジェロニモって男が助けてくれなきゃ、俺だってどうなっていたのか分からねえし‥‥」
 自信の無さそうな表情を浮かべ、狭霧が『ジェロニモ』の名前を口にした。
 ジェロニモは新撰組でも行方を追っている者なので、現在は沖田と同じく捕縛対象になっている。
「やはり、ここでもジェロニモが‥‥」
 納得した様子で狭霧を見つめ、葵が彼の話に食いついた。
 しかし、狭霧はジェロニモに関して何も知らず、本人が名乗っただけだと答えを返す。
「それじゃ、何処で新撰組の沖田さんだと分かったのか教えてくれ。あんたを疑っているわけじゃないが、こっちも証拠が欲しいんでな」
 狭霧の杯に並々と酒を注ぎ、穂狼が冗談まじりに微笑んだ。
「はははははっ‥‥、そんな事を気にしていたのか? それなら何も心配するな。これを見たから沖田って分かったんだよ。‥‥ちょっと雰囲気が違っていたけどな」
 懐から沖田の似顔絵が描かれている張り紙を取り出し、狭霧が上機嫌な様子で酒を飲む。
 どうやら狭霧は新撰組が貼り出していた人相書きを見て、自分の出会った相手が沖田であると確信したらしい。
「‥‥なるほどな。疑ってすまなかった。もう少し詳しい事を教えてくれないか? 出来るだけ詳しく‥‥」
 葵の描いた偽の人相書きを仕舞ったまま、千里が給仕に追加の酒を注文する。
「ああ、もちろんだとも‥‥。そのために此処に来たんだからな。あれは‥‥、俺が黄泉人退治の依頼を引き受け、大和に行った時の事だった。黄泉将軍が退治された後も、大和じゃ黄泉人に関わった事件がなくならなかった。それどころか最近、増えていると思えるほどだ。だから俺も黄泉人達を退治するため、仲間達と一緒に大和に行ったんだ。しかし‥‥、黄泉人達の強さはケタ外れだった。まったく傷つける事から出来ず、ひとり‥‥、またひとりと、仲間達が命を失っていったのさ。そんな時だった。アイツが現れたのは‥‥。沖田は目にも止まらぬ速さで黄泉人達を倒していき、何も言わずに俺達の前を去っていった。残念ながら俺の知っている事はそこまでさ」
 何処か寂しそうな表情を浮かべながら、狭霧が酒を一気に飲み干した。
「それじゃ、人相書きと雰囲気が違っていたって、どういう事なんですか?」
 一番肝心な事を聞いていなかったため、葵が詰め寄るようにして話を聞く。
「‥‥表情が暗かったんだよ。まるで魂が何処かに行っちまっているかのように‥‥」
 そう言って狭霧が険しい表情を浮かべるのであった。

●黄泉人
「‥‥大和に出現した沖田組長らしき人物は、恐らく黄泉人が化けているのであろうな。‥‥本人か、それともジェロニモさんか、どちらにしても、誰かを誘き寄せる事が目的だろう」
 黄泉人達の襲撃があった村に向かい、テスタメント・ヘイリグケイト(eb1935)が明かりを照らして生存者を捜す。
 冒険者ギルドに報告が入ってから、しばらく時間が経っているため、あちこちに村人達の死体が転がっている。
「再び始まった黄泉人の暗躍‥‥。沖田様も心配ですが、それ以上に罪なき民が、黄泉人によって苦しめられるのは、見過ごせませんね。‥‥微力ですが、罪なき民を助ける為、剣を振るわせて貰います」
 険しい表情を浮かべながら、山王牙(ea1774)がブレスセンサーを使う。
 村人達が生き残っている可能性が低いため、動くモノがあれば黄泉人である可能性が高い。
「‥‥村人をじわじわ嬲った挙句に殺害するとは、黄泉兵はどうやらよっぽど此方の怒りを誘い――否、誰かを誘き出したいと見えるな」
 黄泉人に襲われた村人の死体を抱き起こし、天螺月律吏(ea0085)が拳をぶるりっと震わせる。
 村人達は身体を切り刻まれており、見せしめとばかりに吊るされている者もいた。
「‥‥どうやら確かめてみる必要がありそうだな」
 建物の影に誰かが隠れているのが見えたため、パウル・ウォグリウス(ea8802)がハッとした表情を浮かべて明かりを照らす。
「ひぃ、ひぃ! 殺さないでくれ! 俺は化け物なんかじゃない!」
 怯えた様子で悲鳴をあげ、村人達がパウルに驚き尻餅をつく。
 ずっと何処かに隠れていたのか、村人の服は汚れてボロボロになっている。
「‥‥くだらん。フォン・ヴァイス」
 デティクトライフフォースを使って村人を確かめ、テスタメントがフォン・ヴァイス(チャージング+シュライク)を仕掛けていく。
 村人はチィッと舌打ちして飛び上がり、テスタメントの攻撃を軽々とかわす。
「‥‥やはり罠か‥‥」
 日本刀を構えて間合いを詰め、律吏が黄泉人にむかって斬りかかる。
 次の瞬間、土の中から黄泉人達がゾロゾロと現れ、次々と律吏達に攻撃を仕掛けていった。
「そう、愚痴るな。俺達も覚悟はしていた事だろ」
 オーラパワーを使って仲間達の武器を強化し、パウルが黄泉人達を倒していく。
 黄泉人達は唸り声を上げて刀を振り回してきたが、その攻撃がパウル達に当たる事はない。
「黄泉人覚悟、罪無き人々の恨み、晴らさせて貰います」
 スマッシュとソードボンバーの複合技を使い、牙が衝撃波を放って黄泉人の身体を切り裂いた。
 しかし、黄泉人達が続々と現れるため、牙達の表情にも疲労の色が見えてくる。
「ハァハァ‥‥。これじゃ、キリがありませんね。やはりアレを使うしか‥‥」
 覚悟を決めて深呼吸をした後、牙がスマッシュ+ソードボンバー+カウンターアタックを使い、襲い掛かってきた黄泉人達を倒していく。
「‥‥朱に染まれ」
 クールな表情を浮かべて刀を収め、テスタメントが背をむける。
 黄泉人はテスタメントのシュライクを喰らい、崩れるようにして倒れていった。
「‥‥終わったな。沖田組長は現れなかったか」
 ゆっくりと辺りを見回し、パウルが残念そうに溜息をつく。
「一体、沖田組長は何処に‥‥」
 何処か悲しげな表情を浮かべ、律史が夜空に向かって問いかけた。
 もちろん、その問いに答えるものは、誰もいない‥‥。

●沖田
「さて‥‥、そろそろ終わりにしたいものだな」
 険しい表情を浮かべながら、ティーゲル・スロウ(ea3108)が溜息をつく。
 近藤局長に頼んで押収された沖田邸の火事に関する資料の閲覧を嘆願したのだが、調査上の問題から最後まで許可は出なかった。
(「‥‥俺達もグルだと思われているのかも知れないな」)
 と、スロウは思う。
 知っている情報は全て報告しているつもりだが、沖田と接触させるため泳がされている節がある。
 それが何故なのかまでは分からないが、何かを知っているのかも知れない。
「しっかし、まぁ‥‥、踊らされていると分かった上で動くのは、あまり気分の良いものでもないな。ここらで一つ‥‥先手を取りたいもんだ」
 新撰組の名前を使わず自分名義で宿を借り、マナウス・ドラッケン(ea0021)が畳に座って溜息を漏らす。
 ‥‥ずっと誰かにつけられていた。
 新撰組の隊士か、それ以外の誰か、よく分からないが‥‥。
 沖田と接触した事で何か知っているのかも知れないと思われている可能性も高いのだが、相手の正体が分からない以上は断言する事が出来ない。
「まぁ、もう少し泳がせておきましょう。敵も私達が気づいている事を理解していないようですし‥‥。それよりも興味深い事が分かりました。沖田さんと思われる人が倒したと言われている黄泉人達の残骸を調べたところ、沖田さんと同じ流派である可能性が高くなってきました。‥‥とは言え、沖田さんであると断言するだけの証拠もなく、わざと真似ている可能性も捨てきれないのですが‥‥」
 今まで集めて情報を元にして、ゼルス・ウィンディ(ea1661)が自分の思った事を口にする。
 証言の中には多額の報酬をアテにして嘘をついている場合もあったため、確認を取るのに随分と時間が掛かってしまったが、そのおかげである程度の情報を絞り込む事が出来た。
「場合によっては罠という事か。‥‥だとしたら沖田組長か、ジェロニモを誘き寄せるため、故意に流派を真似たと考える事も出来るな」
 誰かに盗み聞きされていないか警戒しながら、スロウが警戒した様子で口を開く。
 時間が進むにつれて沖田の扱いが微妙になって来たため、慎重に行動しなければスロウ達まで罪人として扱われてしまう。
「消去法で考えてみたのですが、もし謎の人影の正体がジェロニモさんの場合、沖田さんの姿を真似る必要が思いつきません。私達や他の隊士の注意を引くためであれば、ご本人そのままの姿で十分ですし、黄泉人に対してもそれは同様でしょう。‥‥となると、本人か罠か、どちらかしかありません」
 淹れ立てのお茶を口に含み、ゼルスがボソリと呟いた。
 色々と引っかかる事は多いのだが、断言するには証拠が少な過ぎる。
「だが、本物だとしたら不用意過ぎる‥‥。不意に足取りを捕まれたならともかく、こうあからさまに姿を見せるってことはかなり怪しいしね。過去の報告書じゃ、黄泉大神が神聖黒魔法を扱っていたから、高位の者が使えたとしても不思議じゃない。ミミクリーって可能性も在るしな。後は黄泉人達が同士討ちしてでも、得たいモノがあるって事が分かれば完璧なんだけど‥‥」
 今までの考えが正しかったとしても、黄泉人達が同士討ちしてでも罠を張る必要性があるのか説明する事が出来ず、マナウスが困った様子で腕を組む。
 罠を張るだけなら噂だけを流せばいいため、わざわざ同族で殺り合う必要は無い。
「次に考えられるものとして、黄泉人が私達をおびき出すための罠の線がありますが、これも不自然です。もし罠なら、先のジェロニモさんの名を語った時の黄泉人達のように、一箇所で待ち伏せをするのが最も効果的です。なのに、人影は大和の各地で目撃されている。つまり、移動を繰り返しているのですから、少なくともそうしなければならない理由があるはずです」
 未だに納得する事が出来なかったため、ゼルスが仲間達に自分の疑問を投げかける。
「どちらにしても本人に会ってみる必要がありそうだね。要人暗殺だって黄泉人と入れ替わった要人を暗殺していただけかも知れないし、彼らを邪悪と認識したのも納得する事が出来るから‥‥」
 仲間達の話を聞きながら、マナウスが今までの出来事を思い出す。
 しかし、肝心の資料は新撰組が保管しているか、マナウス達が閲覧する事が出来ない場所にあるため、彼らに確かめる手段は無い。
「そう言えば、黄泉女神が『憎しみがワラワの糧になる』と言っていたが、これが事実なら‥‥沖田組長による平織公暗殺事件や今回のものも沖田組長という『敵』をつくる事が目的なんじゃないのか?身内からの攻撃は組織同士の衝突を生む。この国の内乱のように、京都自身を恨みや憎しみで包む事により黄泉人が力を得ると‥‥」
 そう言ってスロウが険しい表情を浮かべるのであった。