ごるびー

■シリーズシナリオ


担当:ゆうきつかさ

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:0 G 78 C

参加人数:12人

サポート参加人数:-人

冒険期間:03月04日〜03月09日

リプレイ公開日:2006年03月12日

●オープニング

●ごるびー
 ごるびー(カワウソ)の新しい棲み処で事件が起こっているらしい。
 事件の場所となっているのは、螺簾湖(らすこ)の畔。
 螺簾湖の珍獣『ラッシー』がごるびーの命を狙っているのだ!
 一説のよるとラッシーは大きなナマズで、沼の主として恐れられてきたのだが、今年になってからイギリスやノルマンから沢山の冒険者達が来たため、その場のノリでラッシーに改名されたらしい。
 この事に怒って暴れているのか分からないが、このままではごるびーが水浴びしている途中で食われてしまう。
 すまないがラッシーを釣り上げくれ。

●今回の参加者

 ea0031 龍深城 我斬(31歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea0050 大宗院 透(24歳・♂・神聖騎士・人間・ジャパン)
 ea0508 ミケイト・ニシーネ(31歳・♀・レンジャー・パラ・イスパニア王国)
 ea0946 ベル・ベル(25歳・♀・レンジャー・シフール・モンゴル王国)
 ea1812 アルシャ・ルル(13歳・♀・志士・エルフ・ノルマン王国)
 ea2722 琴宮 茜(25歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea4026 白井 鈴(32歳・♂・忍者・パラ・ジャパン)
 ea5062 神楽 聖歌(30歳・♀・侍・人間・ジャパン)
 ea5557 志乃守 乱雪(39歳・♀・僧侶・人間・ジャパン)
 ea5927 沖鷹 又三郎(36歳・♂・僧兵・人間・ジャパン)
 ea9938 レイル・セレイン(29歳・♀・僧侶・ハーフエルフ・ロシア王国)
 eb4016 真音 樹希(19歳・♂・僧侶・シフール・華仙教大国)

●リプレイ本文

●水浴び
「しふしふですよ〜☆ ごるび〜ちゃんはどこですかぁ〜?」
 引越しを終えたごるびーに会うため、ベル・ベル(ea0946)が仲間達と共に螺簾湖の畔にやって来た。
 螺簾湖の畔にはごるびー達の姿があり、アルシャ達の存在に気づいて頭をピカリッと輝かせる。
 どうやら、また‥‥ハゲたらしい。
 頭のてっぺんだけが、つるりんと‥‥。
「‥‥目印代わりにはイイ頭ですね」
 ごるびーの頭をヨシヨシと撫で、アルシャ・ルル(ea1812)が触り心地を堪能する。
 ごるびーの頭は生卵で磨いているのか、ツルツルテカテカすべすべだ。
「えっと‥‥、ごるびー様とは‥‥初めてお目にかかります‥‥。よろしく、お願いいたします‥‥。今回は、ごるびー様と遊んで親しくなれれば‥‥と、そう思います‥‥」
 ごるびー達にぺこりと頭を下げた後、アルシャが引っ越し祝いの水引を掛け、街で購入したイカを贈呈した。
「きゅきゅ♪」
 アルシャからイカを受け取り、しばらくじぃーっと見つめた後、ごるびーがブンブンと首を振ってそれんに渡す。
 ごるびー達は湖で生活を始めてから寒さのせいで食料が不足しているため、出来るだけ栄養のあるものをそれんに食べさせているらしい。
「きゅ♪」
 しかし、それんはごるびーから受け取ったイカを半分にすると、大きい方を迷う事なく手渡した。
「‥‥あらあら、彼女持ちなんて羨ましいわ。ふたりで仲良く食べなさい」
 ごるびーの頭をヨシヨシと撫で、レイル・セレイン(ea9938)が優しくニコリと微笑んだ。
「それにしても‥‥、随分と物騒なところで生活を始めたな。ここって‥‥出るんだろ?」
 おどろおどろしい表情を浮かべ、真音樹希(eb4016)が螺簾湖をそっと指差した。
 螺簾湖は大量の藻が発生しているため、まるで沼のようになっており、ときどき妙な泡が立っている。
「螺簾湖の怪物ラッシーですか‥‥。まぁ、何かあったらみんなもいますし、大丈夫でしょう」
 のほほんとした表情を浮かべ、神楽聖歌(ea5062)が湖に手を入れた。
 湖の水は思ったよりも温かく、藻さえ気にしなければ遊ぶ事が出来そうだ。
「さっそく一緒に遊ぶですよぉ〜」
 満面の笑みを浮かべてごるびーの背中に降り立ち、ベルが湖の中に入っていく。
 それと同時にベルの表情が変わり、慌てた様子で鼻をつまむ。
「うっ‥‥、何だか妙な臭いがするですよぉ〜」
 ごるびーの身体からオッサンのような臭いが漂ってきたため、ベルが申し訳無さそうに呟いた。
「とりあえず身体を洗った方がいいようね。‥‥ちょっと臭うわよ」
 苦笑いを浮かべながら、レイルがごるびーを抱き上げた。
 ミンメイと別れてから全く風呂に入っていなかったらしく、ごるびーの身体にはたくさんのノミがついている。
「あらあら、随分と変わったお友達(注:ノミ)が増えたんですね。でも、悪いお友達とはお別れしないと駄目ですよ」
 天使のような笑みを浮かべ、アルシャがごるびーを抱き上げ、手桶を使って水をかけた。
「ごるびー様、痒い‥‥所は有りません‥‥か?」
 ごるびーの身体をシャカシャカと洗い、アルシャが念のため痒いところを聞いてみる。
 ごるびーは何の事だが分かっていなかったようだが、アルシャが頭をもきゅもきゅと揉んでくれたため、何とも言えない幸せそうな表情を浮かべている。
「まるで借りて来た猫みてーだな」
 苦笑いを浮かべながら、樹希が水鉄砲に水を入れていく。
 すると、ごるびーがきゅっと鳴き、樹希の水鉄砲に興味を示す。
「‥‥ん、これか? これは水鉄砲って言うんだぞ。やってみるか?」
 簡単な説明をした後、樹希がごるびーに水鉄砲を手渡した。
「きゅきゅ?」
 不思議そうに首を傾げ、ごるびーが水鉄砲をペタペタと触る。
 残念ながらごるびーの梅干大の脳味噌では水鉄砲の原理を理解する事が出来ないため、口の中に入れて味を確かめたりしているようだ。
「おいおい、噛むなよ。そういや俺からもプレゼントがあったんだ。‥‥大事にしろよ」
 プレゼントを持ってきていた事を思い出し、樹希が毛皮の敷物をプレゼントした。
「きゅっ」
 ごるびーはマント代わりに羽織ろうとしていたが、あまりにも大き過ぎて持つ事も出来ず、敷物の下敷きになってきゅーきゅーと悲鳴を上げている。
「あんまり悪ノリはしちゃ駄目ですよ」
 動物の敷物を持ち上げ、聖歌がごるびーを助け出す。
 ごるびーはホッとした表情を浮かべ、聖歌の身体にべったりとくっついている。
「‥‥あれ? 何だか妙な気配がしない?」
 背後に異様な気配を感じ、レイルがダラリと汗を流す。
「あ、あれは‥‥ヌシ!? う、動かないでくださいっ!」
 ハッとした表情を浮かべながら、聖歌がレイルに対して警告した。
「わ、分かったから、早く‥‥きゃあ!?」
 必死になって悲鳴を堪え、レイルが悲鳴を上げて飛び上がる。
 ‥‥どうやら尻を噛まれたらしい。
「ごるびー様、やはりここはごるびー様がらっしー様を倒して、名実ともに‥‥この螺簾湖の主として君臨するしか無いと思うのですよ‥‥」
 ごるびーの肩をぽふりと叩き、アルシャが沼を指差した。
「ごるびー、あんまり無茶はするなよ。何かあったら俺も協力してやるからさ」
 そう言って樹希がごるびーに優しく声をかけ、冗談まじりに微笑んだ。
 が、しかし‥‥。
「ご、ごるび〜ちゃん!」
 ‥‥結果は惨敗。
 ベルの悲鳴が辺りに響く。

●ヌシ
「‥‥ごるびーの奴、結局あの沼に棲む事にしたのか。別にミンメイも迷惑に思っていたわけじゃなかろうになあ」
 しみじみとした表情を浮かべながら、龍深城我斬(ea0031)がごるびーの尻尾に似せた擬似餌を垂らし、湖のヌシを釣ろうとする。
 ヌシの正体は大ナマズだと言われているため、針に取りつける餌はミミズにした。
「まぁ、ごるびーさんにも考えがあっての事でしょうし、生暖かく見守ってあげませんと‥‥」
 のんびりと釣り糸を垂らし、琴宮茜(ea2722)がニコリと微笑んだ。
 ちなみに釣り餌は生イカの刺身とスルメの2種類。
 この時点でヌシを釣るより、ごるびーを目的にしている事が分かる。
「‥‥おや? あっちでごるびーさんに似たカワウソが巨大な何かに襲われていますね‥‥」
 湖の畔を指差しながら、大宗院透(ea0050)が不思議そうに首を傾げる。
 ごるびーらしきカワウソは巨大なナマズの化け物に襲われており、円らな瞳をウルウルさせて透達に助け求めているようだ。
「‥‥と言うか、あれは間違いなくごるびーですね。てっぺんがピカピカと輝いてますし‥‥」
 太陽の光を反射させ『ヘルプサイン』を送ってきたため、茜が薄っすらと目を開け確信した。
 残念ながら湖には浮遊物が多いため、舟を出して助けに行く事が出来ない。
「とにかくごるびーを助けてやろう。こっちに泳いできているようだし‥‥」
 ヌシの興味を逸らすため、我斬が素早く釣竿を振り下ろし、擬似餌を投げ入れる。
 しかし、ヌシは擬似餌に反応せず、迷わずごるびーを追いかけていく。
「忍びとして、暗殺だろうが、何だろうが、任務を果たすまでです‥‥」
 すぐさまヌシに狙いを定め、透が真っ直ぐ釣竿を振り下ろす。
「本当なら船を出せるといいんですが‥‥」
 困った様子で湖を見つめ、茜がごるびー救出用の網を用意した。
 逃げる、ごるびー。
 ‥‥迫るヌシ。
 それはまるでジョーズに追われる観光客。
「よしっ! 捕まえたっ!」
 ようやく釣竿に引きがあったため、我斬が気合を入れて引っ張り上げる。
 それと同時にごるびーが宙を舞い、太陽の光を浴びてごるびーの頭が輝いた。
「‥‥って、何でお前が餌に食いついているんだっ!」
 すぐさまごるびーにツッコミを入れ、我斬が呆れた様子で溜息をつく。
「いまのうちにヌシを捕まえてしまいましょう‥‥」
 勢いよくヌシが飛び上がったため、透が手裏剣を放って息の根を止める。
「きゅっ‥‥」
 ホッとした表情を浮かべ、ごるびーが茜の胸元で眠りにつく。
 ハゲを皿で蓋をされ‥‥。

●ごるびー
「‥‥この螺簾湖にはこんな言い伝えがあるそうです。昔、股サブ郎さんという腕のたつ料理人がいました。ある日、股サブ郎さんは、お友達のごるびーさんと一緒に螺簾湖へ釣りにやってきました。ところが、股サブ郎さんが釣りに夢中になっている間に、ごるびーさんがおぼれてしまったのです。股サブ郎さんが悲しんでいると、湖の中から美しい女神様(某ea5557みたいな)が現れ、こう言いました。『あなたが落としたのは、このスッポンのごるびーさんですか、それとも天然ウナギのごるびーさんですか?』『いいえ女神様、ごるびーはカワウソでござるよ』『正直なあなたには、このスッポンのごるびーさんと天然ウナギのごるびーさんを差し上げましょう。おいしく戴いてくださいね。それではごきげんようッ』と言って、女神様はそそくさと水の中へ戻っていきました。股サブ郎さんはスッポン鍋と蒲焼をおいしく戴いたそうです。めでたしめでたし」
 沖鷹又三郎(ea5927)がヌシを捌いている間、志乃守乱雪(ea5557)が螺簾湖に伝わる伝説を語っていく。
 その伝説は物凄く胡散臭いものであったが、ごるびーは円らな瞳と頭をピカピカと輝かせ、乱雪の話に耳を傾けている。
「‥‥ちょっと待つでござる。本物のごるびーはどうなったでござるか‥‥?」
 乱雪の話が気になったため、又三郎がツッコミを入れた。
「小さい事は気にしちゃ駄目です。あくまで伝説上のお話ですから‥‥」
 気まずい様子で視線を逸らし、乱雪がコホンと咳をする。
 どうやらそこは触れてはならない部分らしく、ごるびーのハゲを利用して又三郎の目を眩ませた。
「ふ、ふたりとも、ごるびーの扱いに慣れているね。い、色々な意味で‥‥」
 引きつった笑みを浮かべながら、白井鈴(ea4026)が呆れた様子でツッコミを入れる。
 ごるびーもふたりに遊んでもらっているのが嬉しいのか、自ら進んで頭を動かし太陽の光を反射させた。
「何だか盛り上がっているようやな? あんたが噂のカワウソ、ごるびーはんか〜。テカテカしていて元気ハツラツって感じかな〜。うちは獲物を求めて旅するハンター、ミケイトや。うちの事は短く『ミケ』って呼んでくれてもえぇで?」
 満面の笑みを浮かべながら、ミケイト・ニシーネ(ea0508)がごるびーの頭をヨシヨシと撫でる。
 ごるびーはペコリと頭を下げた後、何度か甘噛みする事によってミケイトに敵意がないか確認した。
「随分と人懐っこいカワウソやなぁ〜。まさかうちを食べ物と勘違いしているわけやないやろ?」
 嫌な予感が脳裏を過ぎり、ミケイトがダラリと汗を流す。
「はははははっ、ごるびー殿に限って、そんな事‥‥あり得るかも知れぬでござる。し、しばし待たれよ。いまからヌシを使って最高の料理を作るゆえ‥‥」
 だんだん気まずい雰囲気が漂ってきたため、又三郎がテントに戻って料理を始める。
 ごるびーの頭を見る限り、再びストレスが溜まり始めているのは間違いないため、精神的に落ち着く事の出来るような料理を作るつもりらしい。
「それじゃ、僕らはごるびーちゃんのためにお家を作ってあげようか。工作はあんまり得意じゃないけど、愛情がこもっていれば問題ないよね?」
 持参した木材を積んでいき、鈴が疲れた様子で汗を拭う。
 ごるびーの事を考え、木材は上質なものを使っている。
「まぁ、どんな小屋が出来たとしても、いまよりマシなんやから文句は言わんといてな」
 苦笑いを浮かべながら、ミケイトがごるびーの小屋を作っていく。
 ごるびーはワケも分からず、手拭いを使って頭をキュキュッと磨いている。
「いっその事、ごるびー像も作りませんか? ここが観光名所となれば、ごるびーも寂しくありませんし‥‥」
 ヌシを倒したカワウソとして売り出そうとしているため、乱雪が大胆な提案をした。
「そう言えば、ごるびーって芸達者なカワウソが売りだったものね」
 以前までごるびーが見世物小屋で働いていた事を思い出し、鈴が苦笑いを浮かべて頭を撫でる。
「久しぶりに見てみたいのですね。ごるびー殿が芸をする姿を‥‥」
 しみじみとした表情を浮かべ、乱雪が昔を懐かしむ。
「だったら、またやればええやろ。‥‥うちらでな」
 ごるびーを抱きかかえ、ミケイトがニカッと笑う。
 こうして動物劇団『ごるびー座』の団員募集が始まった。