●リプレイ本文
●水浴び
「しふしふですよ〜☆ ごるび〜ちゃんはどこですかぁ〜?」
引越しを終えたごるびーに会うため、ベル・ベル(ea0946)が仲間達と共に螺簾湖の畔にやって来た。
螺簾湖の畔にはごるびー達の姿があり、アルシャ達の存在に気づいて頭をピカリッと輝かせる。
どうやら、また‥‥ハゲたらしい。
頭のてっぺんだけが、つるりんと‥‥。
「‥‥目印代わりにはイイ頭ですね」
ごるびーの頭をヨシヨシと撫で、アルシャ・ルル(ea1812)が触り心地を堪能する。
ごるびーの頭は生卵で磨いているのか、ツルツルテカテカすべすべだ。
「えっと‥‥、ごるびー様とは‥‥初めてお目にかかります‥‥。よろしく、お願いいたします‥‥。今回は、ごるびー様と遊んで親しくなれれば‥‥と、そう思います‥‥」
ごるびー達にぺこりと頭を下げた後、アルシャが引っ越し祝いの水引を掛け、街で購入したイカを贈呈した。
「きゅきゅ♪」
アルシャからイカを受け取り、しばらくじぃーっと見つめた後、ごるびーがブンブンと首を振ってそれんに渡す。
ごるびー達は湖で生活を始めてから寒さのせいで食料が不足しているため、出来るだけ栄養のあるものをそれんに食べさせているらしい。
「きゅ♪」
しかし、それんはごるびーから受け取ったイカを半分にすると、大きい方を迷う事なく手渡した。
「‥‥あらあら、彼女持ちなんて羨ましいわ。ふたりで仲良く食べなさい」
ごるびーの頭をヨシヨシと撫で、レイル・セレイン(ea9938)が優しくニコリと微笑んだ。
「それにしても‥‥、随分と物騒なところで生活を始めたな。ここって‥‥出るんだろ?」
おどろおどろしい表情を浮かべ、真音樹希(eb4016)が螺簾湖をそっと指差した。
螺簾湖は大量の藻が発生しているため、まるで沼のようになっており、ときどき妙な泡が立っている。
「螺簾湖の怪物ラッシーですか‥‥。まぁ、何かあったらみんなもいますし、大丈夫でしょう」
のほほんとした表情を浮かべ、神楽聖歌(ea5062)が湖に手を入れた。
湖の水は思ったよりも温かく、藻さえ気にしなければ遊ぶ事が出来そうだ。
「さっそく一緒に遊ぶですよぉ〜」
満面の笑みを浮かべてごるびーの背中に降り立ち、ベルが湖の中に入っていく。
それと同時にベルの表情が変わり、慌てた様子で鼻をつまむ。
「うっ‥‥、何だか妙な臭いがするですよぉ〜」
ごるびーの身体からオッサンのような臭いが漂ってきたため、ベルが申し訳無さそうに呟いた。
「とりあえず身体を洗った方がいいようね。‥‥ちょっと臭うわよ」
苦笑いを浮かべながら、レイルがごるびーを抱き上げた。
ミンメイと別れてから全く風呂に入っていなかったらしく、ごるびーの身体にはたくさんのノミがついている。
「あらあら、随分と変わったお友達(注:ノミ)が増えたんですね。でも、悪いお友達とはお別れしないと駄目ですよ」
天使のような笑みを浮かべ、アルシャがごるびーを抱き上げ、手桶を使って水をかけた。
「ごるびー様、痒い‥‥所は有りません‥‥か?」
ごるびーの身体をシャカシャカと洗い、アルシャが念のため痒いところを聞いてみる。
ごるびーは何の事だが分かっていなかったようだが、アルシャが頭をもきゅもきゅと揉んでくれたため、何とも言えない幸せそうな表情を浮かべている。
「まるで借りて来た猫みてーだな」
苦笑いを浮かべながら、樹希が水鉄砲に水を入れていく。
すると、ごるびーがきゅっと鳴き、樹希の水鉄砲に興味を示す。
「‥‥ん、これか? これは水鉄砲って言うんだぞ。やってみるか?」
簡単な説明をした後、樹希がごるびーに水鉄砲を手渡した。
「きゅきゅ?」
不思議そうに首を傾げ、ごるびーが水鉄砲をペタペタと触る。
残念ながらごるびーの梅干大の脳味噌では水鉄砲の原理を理解する事が出来ないため、口の中に入れて味を確かめたりしているようだ。
「おいおい、噛むなよ。そういや俺からもプレゼントがあったんだ。‥‥大事にしろよ」
プレゼントを持ってきていた事を思い出し、樹希が毛皮の敷物をプレゼントした。
「きゅっ」
ごるびーはマント代わりに羽織ろうとしていたが、あまりにも大き過ぎて持つ事も出来ず、敷物の下敷きになってきゅーきゅーと悲鳴を上げている。
「あんまり悪ノリはしちゃ駄目ですよ」
動物の敷物を持ち上げ、聖歌がごるびーを助け出す。
ごるびーはホッとした表情を浮かべ、聖歌の身体にべったりとくっついている。
「‥‥あれ? 何だか妙な気配がしない?」
背後に異様な気配を感じ、レイルがダラリと汗を流す。
「あ、あれは‥‥ヌシ!? う、動かないでくださいっ!」
ハッとした表情を浮かべながら、聖歌がレイルに対して警告した。
「わ、分かったから、早く‥‥きゃあ!?」
必死になって悲鳴を堪え、レイルが悲鳴を上げて飛び上がる。
‥‥どうやら尻を噛まれたらしい。
「ごるびー様、やはりここはごるびー様がらっしー様を倒して、名実ともに‥‥この螺簾湖の主として君臨するしか無いと思うのですよ‥‥」
ごるびーの肩をぽふりと叩き、アルシャが沼を指差した。
「ごるびー、あんまり無茶はするなよ。何かあったら俺も協力してやるからさ」
そう言って樹希がごるびーに優しく声をかけ、冗談まじりに微笑んだ。
が、しかし‥‥。
「ご、ごるび〜ちゃん!」
‥‥結果は惨敗。
ベルの悲鳴が辺りに響く。
●ヌシ
「‥‥ごるびーの奴、結局あの沼に棲む事にしたのか。別にミンメイも迷惑に思っていたわけじゃなかろうになあ」
しみじみとした表情を浮かべながら、龍深城我斬(ea0031)がごるびーの尻尾に似せた擬似餌を垂らし、湖のヌシを釣ろうとする。
ヌシの正体は大ナマズだと言われているため、針に取りつける餌はミミズにした。
「まぁ、ごるびーさんにも考えがあっての事でしょうし、生暖かく見守ってあげませんと‥‥」
のんびりと釣り糸を垂らし、琴宮茜(ea2722)がニコリと微笑んだ。
ちなみに釣り餌は生イカの刺身とスルメの2種類。
この時点でヌシを釣るより、ごるびーを目的にしている事が分かる。
「‥‥おや? あっちでごるびーさんに似たカワウソが巨大な何かに襲われていますね‥‥」
湖の畔を指差しながら、大宗院透(ea0050)が不思議そうに首を傾げる。
ごるびーらしきカワウソは巨大なナマズの化け物に襲われており、円らな瞳をウルウルさせて透達に助け求めているようだ。
「‥‥と言うか、あれは間違いなくごるびーですね。てっぺんがピカピカと輝いてますし‥‥」
太陽の光を反射させ『ヘルプサイン』を送ってきたため、茜が薄っすらと目を開け確信した。
残念ながら湖には浮遊物が多いため、舟を出して助けに行く事が出来ない。
「とにかくごるびーを助けてやろう。こっちに泳いできているようだし‥‥」
ヌシの興味を逸らすため、我斬が素早く釣竿を振り下ろし、擬似餌を投げ入れる。
しかし、ヌシは擬似餌に反応せず、迷わずごるびーを追いかけていく。
「忍びとして、暗殺だろうが、何だろうが、任務を果たすまでです‥‥」
すぐさまヌシに狙いを定め、透が真っ直ぐ釣竿を振り下ろす。
「本当なら船を出せるといいんですが‥‥」
困った様子で湖を見つめ、茜がごるびー救出用の網を用意した。
逃げる、ごるびー。
‥‥迫るヌシ。
それはまるでジョーズに追われる観光客。
「よしっ! 捕まえたっ!」
ようやく釣竿に引きがあったため、我斬が気合を入れて引っ張り上げる。
それと同時にごるびーが宙を舞い、太陽の光を浴びてごるびーの頭が輝いた。
「‥‥って、何でお前が餌に食いついているんだっ!」
すぐさまごるびーにツッコミを入れ、我斬が呆れた様子で溜息をつく。
「いまのうちにヌシを捕まえてしまいましょう‥‥」
勢いよくヌシが飛び上がったため、透が手裏剣を放って息の根を止める。
「きゅっ‥‥」
ホッとした表情を浮かべ、ごるびーが茜の胸元で眠りにつく。
ハゲを皿で蓋をされ‥‥。
●ごるびー
「‥‥この螺簾湖にはこんな言い伝えがあるそうです。昔、股サブ郎さんという腕のたつ料理人がいました。ある日、股サブ郎さんは、お友達のごるびーさんと一緒に螺簾湖へ釣りにやってきました。ところが、股サブ郎さんが釣りに夢中になっている間に、ごるびーさんがおぼれてしまったのです。股サブ郎さんが悲しんでいると、湖の中から美しい女神様(某ea5557みたいな)が現れ、こう言いました。『あなたが落としたのは、このスッポンのごるびーさんですか、それとも天然ウナギのごるびーさんですか?』『いいえ女神様、ごるびーはカワウソでござるよ』『正直なあなたには、このスッポンのごるびーさんと天然ウナギのごるびーさんを差し上げましょう。おいしく戴いてくださいね。それではごきげんようッ』と言って、女神様はそそくさと水の中へ戻っていきました。股サブ郎さんはスッポン鍋と蒲焼をおいしく戴いたそうです。めでたしめでたし」
沖鷹又三郎(ea5927)がヌシを捌いている間、志乃守乱雪(ea5557)が螺簾湖に伝わる伝説を語っていく。
その伝説は物凄く胡散臭いものであったが、ごるびーは円らな瞳と頭をピカピカと輝かせ、乱雪の話に耳を傾けている。
「‥‥ちょっと待つでござる。本物のごるびーはどうなったでござるか‥‥?」
乱雪の話が気になったため、又三郎がツッコミを入れた。
「小さい事は気にしちゃ駄目です。あくまで伝説上のお話ですから‥‥」
気まずい様子で視線を逸らし、乱雪がコホンと咳をする。
どうやらそこは触れてはならない部分らしく、ごるびーのハゲを利用して又三郎の目を眩ませた。
「ふ、ふたりとも、ごるびーの扱いに慣れているね。い、色々な意味で‥‥」
引きつった笑みを浮かべながら、白井鈴(ea4026)が呆れた様子でツッコミを入れる。
ごるびーもふたりに遊んでもらっているのが嬉しいのか、自ら進んで頭を動かし太陽の光を反射させた。
「何だか盛り上がっているようやな? あんたが噂のカワウソ、ごるびーはんか〜。テカテカしていて元気ハツラツって感じかな〜。うちは獲物を求めて旅するハンター、ミケイトや。うちの事は短く『ミケ』って呼んでくれてもえぇで?」
満面の笑みを浮かべながら、ミケイト・ニシーネ(ea0508)がごるびーの頭をヨシヨシと撫でる。
ごるびーはペコリと頭を下げた後、何度か甘噛みする事によってミケイトに敵意がないか確認した。
「随分と人懐っこいカワウソやなぁ〜。まさかうちを食べ物と勘違いしているわけやないやろ?」
嫌な予感が脳裏を過ぎり、ミケイトがダラリと汗を流す。
「はははははっ、ごるびー殿に限って、そんな事‥‥あり得るかも知れぬでござる。し、しばし待たれよ。いまからヌシを使って最高の料理を作るゆえ‥‥」
だんだん気まずい雰囲気が漂ってきたため、又三郎がテントに戻って料理を始める。
ごるびーの頭を見る限り、再びストレスが溜まり始めているのは間違いないため、精神的に落ち着く事の出来るような料理を作るつもりらしい。
「それじゃ、僕らはごるびーちゃんのためにお家を作ってあげようか。工作はあんまり得意じゃないけど、愛情がこもっていれば問題ないよね?」
持参した木材を積んでいき、鈴が疲れた様子で汗を拭う。
ごるびーの事を考え、木材は上質なものを使っている。
「まぁ、どんな小屋が出来たとしても、いまよりマシなんやから文句は言わんといてな」
苦笑いを浮かべながら、ミケイトがごるびーの小屋を作っていく。
ごるびーはワケも分からず、手拭いを使って頭をキュキュッと磨いている。
「いっその事、ごるびー像も作りませんか? ここが観光名所となれば、ごるびーも寂しくありませんし‥‥」
ヌシを倒したカワウソとして売り出そうとしているため、乱雪が大胆な提案をした。
「そう言えば、ごるびーって芸達者なカワウソが売りだったものね」
以前までごるびーが見世物小屋で働いていた事を思い出し、鈴が苦笑いを浮かべて頭を撫でる。
「久しぶりに見てみたいのですね。ごるびー殿が芸をする姿を‥‥」
しみじみとした表情を浮かべ、乱雪が昔を懐かしむ。
「だったら、またやればええやろ。‥‥うちらでな」
ごるびーを抱きかかえ、ミケイトがニカッと笑う。
こうして動物劇団『ごるびー座』の団員募集が始まった。