●リプレイ本文
●ごるびー
「ホンマにごるびー一座の旗揚げするねんなぁ〜。確かにニートはアカンわな。働かざる者(イカ)喰うべからずっつーし、ここは一旗上げるで〜?」
一座の旗揚げをするため、ミケイト・ニシーネ(ea0508)がごるびーの棲み処を訪れた。
ごるびーの棲み処はきちんと整理されており、ごるびーのヤル気が窺える。
「きゅっ!」
ミケイト達が来た事に気づき、ごるびーが髪形を七三訳にしてキリリッとした表情を浮かべて右手を上げた。
相変わらず頭のてっぺんがハゲているが、座長になった事もあり妙に気合が入っているようだ。
「はやや? 今度はごるび〜ちゃんが芸を覚えるですか〜。だったら、一緒に頑張って覚えさせるべく頑張るですよ〜☆ 取り敢えず、基本的な『お手』『おかわり』くらいは練習しなくても大丈夫そうですけど‥‥せっかくなので火の輪くぐりとかさせた方が良いでしょうかね〜?」
満面の笑みを浮かべながら、ベル・ベル(ea0946)がクルリッとまわる。
ごるびーは火が苦手な(貧乏生活を思い出す)ため、ベルの言葉を聞いた瞬間、青ざめた表情を浮かべて逃げていく。
「だったら水を生かさない手はねーよな」
新鮮なイカをチラつかせ、真音樹希(eb4016)がごるびーを湖まで誘導した。
「せやな。仮にも座長が何も出来んかったら、無論団員に示しが付かんやろし、ここは一座の看板川獺としてやって行く為にも特訓やで〜」
ごるびーの背中をポンと叩き、ミケイトがニコリと微笑んだ。
「そう言えば、ちょっと前に海で見たイルカさんみたいにジャンプするのも良いかもですよ〜☆ 後は、足を真横に開いたあと身体を反らせて『いなばうあー』って言うのも良いかもです〜」
まずは自分で見本を見せ、ベルがごるびーを見つめてコクンと頷いた。
ごるびーは『いなばうあー』を真似てみたが、日頃の運動不足が祟り、背中を曲げた瞬間ゴキッと嫌な音が辺りに響く。
「じょ、冗談やろ? そんなに身体が堅くちゃ、座長どころか、現役復帰も難しいでぇ? 幾らなんでもシャレにならん!」
驚いた様子で目を丸くさせ、ミケイトが当然のツッコミを入れた。
しかし、ごるびーは背中を曲げたまま元に戻る事が出来ず、困った様子でダラダラと汗を流している。
「はやや〜、運動不足でお腹がポヨポヨですよぉ〜」
ごるびーのお腹をむにっと掴み、ベルがダラリと汗を流す。
「こうなったら猛特訓が必要だな。まずは貝を割る練習だっ! ごるびー、その貝を割ってみろ。うまく割る事が出来たら、褒美にイカをあげるから‥‥」
呆れた様子で溜息をつきながら、真音が大き目の貝を放り投げる。
それと同時にごるびーが貝に飛びつき、血反吐を吐いて後ろにポーンと吹っ飛んだ。
「あ、悪夢や。悪夢が葱を背負って現れた気分やな。と、とにかく一から鍛え直さなアカンようや‥‥」
引きつった笑みを浮かべ、ミケイトがごるびーをジロリと睨む。
この様子ではごるびーが勘を取り戻すまで、しばらく時間が掛かりそうだ。
●ペット訓練
「ついに、ごるびー座の旗揚げでござるな。拙者の愛くるしいペットも団員として協力するでござる♪」
自分の飼っているペットを一座に仲間入りさせるため、旋風寺豚足丸(eb2655)が仲間達を連れて、とある山にやって来た。
豚足丸達のやって来た山は修行をするには最適の場所で、比較的に安全な場所のため、ペットが獣に襲われる心配もない。
「ごるびーさんの再出発、これは是非とも応援しないといけませんね」
まとりょーしかの頭をヨシヨシと撫でながら、ルーラス・エルミナス(ea0282)がニコリと微笑んだ。
ごるびーとは修行する場所が異なるため、一緒に訓練する事は出来ないが、それでも二匹はお互いを意識しているようである。
「勤労は良い心がけです‥‥。影凪さんも頑張って依頼を遂行しましょう‥‥」
黒猫の影凪にサーカス的なアクロバットを覚えさせるため、大宗院透(ea0050)が合図を送る。
影凪は透を見つめてニャーンと鳴くと、木から木へと飛び移りクルリッと回って着地した。
「ふふふふっ‥‥、拙者も負けてはいられんでござる。出でよ、百太郎! 出でよ、捨て丸!」
豚足丸が掛け声を上げたのと同時に、股の辺りから蛇が姿を現し、襟首の辺りから妙な塊が顔を出す。
この時点で豚足丸の身体には無数のモザイクが掛かっているが、別にえっちな展開になっているわけではない。
「ごるびーちゃんの為に‥‥特訓‥‥がんばろうね、ラティ‥‥」
ボーダーコリーのラティに話しかけ、エスナ・ウォルター(eb0752)が特訓をし始める。
最初から難しい芸を覚えさせる事は出来ないため、簡単なものから少しずつ‥‥。
「みんな賢いペット達ばかりだね。僕も負けないように頑張らないと‥‥。これでも普段は教師をやっているから、教えるのは得意だよ」
自分の飼っているペット達を呼び寄せ、白井鈴(ea4026)がダンスを踊るようにしてピョンと跳ねる。
それと同時に虎丸(柴犬)と黒白(ボーダーコリー)が鈴の後を追い、同じようにピョンピョンと跳ねていく。
「その調子です。焦らず慎重に‥‥」
流星(鷲)と千代姫(戦闘馬)に簡単な芸を仕込むため、三笠明信(ea1628)が基本的な事から叩き込む。
いつの間にか、ごるびーも見学に来ていたが、明信からスルメイカを貰ったためか大人しい。
「そろそろ次のステップに行きましょうか‥‥。玉乗りに手品‥‥どちらがお好みですか?」
人が乗れるくらいに大きな玉と箱を用意し、透が影凪にどちらがいいか問いかけた。
すると影凪は不思議そうに首を傾げ、猫パンチを使って玉を転がすと、そのまま一心不乱に追いかける。
「駄目ですよ、まとりょーしかさん」
他のペットも大きな玉に興味を持ったのか、ルーラスの注意も聞かずに追っていく。
「仕方ありませんね。ここは、わたくしにお任せを‥‥」
すぐさま千代姫の背中に飛び乗り、明信が大きな玉の動きを止める。
大きな玉の上には流星が乗っており、明信を見つめてピィッと鳴いた。
「やっぱり、みんな遊びたいんだね。これじゃ、いきなり特訓をしても駄目かなぁ?」
困った様子で溜息をつきながら、鈴が虎丸の頭を撫で回す。
虎丸はチョコンと座って嬉しそうに尻尾をブンブン振っているが、黒白の方は落ち着きの無い様子で大きな玉のまわりを回っている。
「ラティも、ちょっと遊びたい‥‥?」
ラティが遊びたくてウズウズとしていたため、エスナが心配した様子で頭を撫でた。
するとラティは豚足丸の飼っている妙な塊に興味を持ち、ヒット&アウェイを繰り返して正体を確かめようと試みる。
「こ、こら、捨丸! ラティ殿は食べ物じゃないでござる」
慌てた様子で妙な塊を抱き上げ、豚足丸がダラダラと汗を流す。
妙な塊はラティにジャレたつもりのようだが、存在自体が色々な怪しい事もあり、襲っているようにしか見えない。
「‥‥ラティも食べちゃ駄目よ」
ラティのお腹がきゅーっと鳴ったため、エスナが恥ずかしそうに頬を染める。
妙な塊は存在自体が謎のため、ある意味食べ物かも知れない。
「と、とにかく何か芸を覚えさせておく必要がありそうですね」
苦笑いを浮かべながら、明信が流星の頭を撫でる。
「だったら虎丸に二足歩行でもさせてみようかな? 最近、流行っているみたいだし‥‥」
虎丸の前足を掴んで立たせ、鈴がゆっくりと手を離していく。
最初は虎丸もフラフラと歩いていたが、元々そういう機能(?)が備わっていないため、すぐにコロンとコケてしまう。
「後は営業先を見つけるだけですが‥‥、大丈夫ですかね?」
江戸の町がある方向を見つめ、ルーラスが心配した様子で溜息をつく。
どんなに素晴らしい芸を覚えたとしても、それを披露する場所がなければ意味がない。
「それじゃ、私達はお客さんを歓『迎』できるくらいには『芸』を磨きましょう‥‥」
そう言って透が影凪の頭を優しく撫でた。
ごるびー一座の正式な旗揚げまで、あと少し‥‥。
それまでにペット達の芸を完璧なものにしなければならない。
●興行場所
「ごるびー殿もようやくヤル気を取り戻してくれたようでござるなぁ。ごるびー殿が働く事に前向きになるのは良い事でござるよ」
ごるびー一座の興行を手伝うため、沖鷹又三郎(ea5927)が江戸の町にやってきた。
相変わらずミンメイ堂の再建が遅れているため、興行を行う場所を探す必要がある。
「しかし、新しい娯楽を提供するには、いささか時期がよろしくないですね。多少暖かくなってきて、出足も増えるとはいえ、皆さんの関心はほとんど桜の開花に向かっていますから‥‥」
物凄く不吉な台詞を呟きながら、志乃守乱雪(ea5557)が見世物小屋を回っていく。
ほとんどの見世物小屋が経営不振によって閉鎖されていく中、わずかに残った興行場所も自分のところで精一杯なため、簡単に借りる事は出来ないようだ。
「やはりミンメイさんに頼んだ方がいいんじゃないですかね? たぶん収入が入るツテもないでしょうし、ミンメイ堂の再建プランとして劇場にするという案を出せば‥‥」
なかなか興行場所を確保する事が出来なかったため、琴宮茜(ea2722)がミンメイに頼る事を提案した。
「ミンメイさんもお金が無いようですからね。ある程度の資金が溜まれば、協力してくれるとは思うんですが‥‥。あと心当たりがあるといえば、裸興行が行われていた見世物小屋ですが‥‥、御上の取り潰しにあって廃墟になっているようですし‥‥」
以前の依頼で訪れた事のある見世物小屋の前に立ち、乱雪が困った様子で頬を掻く。
心当たりのある場所はだいたいまわってみたのだが、何処もあまりいい返事が聞けなかったため、早くもピンチに陥っている。
「残っているのは、ごるびー殿が以前まで仕事をしていた場所でござるが、新しい持ち主が見世物小屋をやっている可能性が低いでござるからなぁ‥‥」
しみじみとした表情を浮かべ、又三郎が疲れた様子で溜息をつく。
せっかくごるびーがやる気になっているのに、これではまったく意味がない。
「とにかく手当たり次第に声を掛けてみるしかありませんね」
このままだと一座の旗揚げだけで終わってしまうため、茜が次第に条件を下げていきながら興行場所を探していく。
「ひょっひょっひょっ、随分とお困りのようじゃのぉ‥‥」
含みのある笑みを浮かべながら、年老いた河童が茜達にむかって声を掛ける。
河童は地面につくほどの顎鬚を蓄えており、杖をカツカツと鳴らして親しげに近寄ってきた。
「あ、あなたは‥‥?」
‥‥茜の言葉に微笑む河童。
「わしの名は九千坊。まぁ、何処にでもいるしょぼくれジジィじゃ。お前らは興行場所を探しているんじゃろ。だったら、わしの屋敷に来るが良い。最近、物騒な事件ばかりが起こっているせいで、他の河童達がビクついてしまってのぉ‥‥。昔のように活気がなくなっておるのじゃよ‥‥」
それほど困っていないのか、九千坊がケラケラと笑う。
「‥‥元気の無くなった河童達のために芸をしろ、というわけですか。何だか胡散臭い気もしますが、断る理由もありませんしね」
これ以上、迷っている暇が無いため、乱雪が仕方なく依頼を引き受けた。
「まぁ、お前達の芸が面白かったら、資金の方も援助する事が出来るから、そんなに心配する事はない。それじゃ、よろしくな」
ニンマリとした笑みを浮かべ、九千坊が屋敷の場所が書かれた地図を渡す。
随分と上質な紙を使っているため、九千坊と名乗る河童が金持ちである事が分かる。
「何だか拙者も心配になって来たでござるよ」
そう言って又三郎がダラリと汗を流すのだった。
この時は九千坊の正体にも気づかずに‥‥。