ミンメイ

■シリーズシナリオ


担当:ゆうきつかさ

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:0 G 78 C

参加人数:10人

サポート参加人数:-人

冒険期間:04月18日〜04月23日

リプレイ公開日:2006年04月25日

●オープニング

●新たな拠点
 ニュースアルッ! ニュースアルッ! 大ニュースアルゥ!
 あの、ごるびーちゃんが、長老河童の難題を解決し、見世物小屋を借りたアルッ!
 これは‥‥チャンスかも知れないアルね。
 ごるびーちゃんがミンメイ堂にいる間の宿泊費を請求していないわけだし、こういう時は持ちつ持たれつの関係アル!
 このまま何か理由をつけて、そのままゴロンと転がり込むアルゥ!
 ワタシだって雑用くらいは出来るし、いつまでも清十郎のイカ臭い家には住めないアルよぉ!
 あんなケダモノの家に住むくらいなら、ケモノの家に住んだ方が精神的にも安心するし‥‥。
 だ、駄目アルかねぇ‥‥?

●今回の参加者

 ea0248 郭 梅花(32歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)
 ea0282 ルーラス・エルミナス(31歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea0489 伊達 正和(35歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 ea0789 朝宮 連十郎(37歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea1628 三笠 明信(28歳・♂・パラディン・ジャイアント・ジャパン)
 ea2480 グラス・ライン(13歳・♀・僧侶・エルフ・インドゥーラ国)
 ea2724 嵯峨野 夕紀(30歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea4927 リフィーティア・レリス(29歳・♂・ジプシー・人間・エジプト)
 ea5298 ルミリア・ザナックス(27歳・♀・パラディン・ジャイアント・フランク王国)
 ea5927 沖鷹 又三郎(36歳・♂・僧兵・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

●ミンメイ
「よ、ミンメイ久しぶりだなっ! 今日は引越し手伝いに来たぜっ! ちなみに、この猫はうちの五徳だ。ヨロシクなっ!」
 引っ越しの手伝いをするため、伊達正和(ea0489)が飼い猫の五徳を連れて、ミンメイの家(正確には清十郎の家だが‥‥)を訪れた。
 彼女の家では既に引っ越し作業が始まっており、朝宮連十郎(ea0789)が爽やかな笑みを浮かべてミンメイの荷物を運んでいる。
「相変わらず大変な事になっているわね? どうせマトモなものを食べていないと思って、差し入れを持ってきたわ」
 ミンメイが引っ越しをするという噂を聞きつけ、郭梅花(ea0248)が自分の作った料理を手土産に持ってきた。
「ううっ、持つべきものは朋友アルね。あ、ありがとアル」
 ウルウルと瞳を潤ませ、ミンメイが梅花に抱きつき微笑んだ。
「ちょっ、ちょっと、ミンメイちゃん!?」
 ハッとした表情を浮かべながら、梅花が恥ずかしそうに頬を染める。
 いきなりミンメイが抱きついてきたため、ちょっと驚いているようだ。
「ミンメイちゃん、俺も〜」
 満面の笑みを浮かべながら、連十郎がドサクサに紛れて抱きつこうとした。
「連十郎君はこっちね」
 すぐさま鍋を前に出し、梅花が連十郎の頭を殴る。
 一応、笑顔は浮かべているが、梅花の持っている鍋は的確に連十郎の頭を捉えている。
「うぐっ‥‥、俺はただ‥‥ミンメイちゃんと‥‥仲良くなりたい‥‥だけ‥‥なのに‥‥」
 魂の抜けた表情を浮かべ、連十郎がグッタリとした。
 多少は邪な気持ちはあったが、比率としては7:3くらいである。
「と、とにかく有難うアル。も、もちろん、連十郎も‥‥」
 心配した様子で連十郎を見つめながら、ミンメイが気まずい様子で汗を流す。
 連十郎に悪気がない事くらいは分かっているが、だからと言って同情する気にはならないようだ。
「まぁ、気にするな。ミンメイの不幸っぷりを見てると応援してやらないといけないなーって気持ちになるからさ」
 自分も不幸体質であるため、リフィーティア・レリス(ea4927)が苦笑いを浮かべて頬を掻く。
「それにしても、相変わらず嫌なニオイのする家だな、清十郎の家は‥‥。茅場町の俺の家が極楽に思えるほどだ‥‥」
 家の中に染み付いた妙なニオイに眩暈すら感じながら、正和がゲホゲホと咳き込み荷物を運ぶ。
 ミンメイの住んでいる家は、もともと清十郎が住んでいたため、壁にまで妙なニオイが染み付けいている。
「それじゃあ、俺はミンメイちゃんを運ぶんで、あとはヨロシクなっ!」
 お姫様抱っこでミンメイを抱き上げ、連十郎がスタコラサッサと逃げていく。
「こらこら、待てっ! まさか、おまえだけラクしようって訳じゃないだろうな?」
 連十郎にむかって何個も石を投げ、レリスが呆れた様子でツッコミを入れる。
「いや‥‥、俺にはミンメイちゃんを守るっていう重要な任務があるからさっ! んじゃ、任せたぜっ!」
 妙に爽やかな笑みを浮かべながら、連十郎が頭からダラダラと血を流す。
「ひょっとして、もう一発喰らいたいの?」
 連十郎の肩をぽふりと叩き、梅花が鍋を構えてニコリと笑う。
「い、いや‥‥、それだけは遠慮しとく」
 引きつった笑みを浮かべながら、連十郎が激しく首を横に振る。
 これ以上、鍋の一撃を喰らったら、顔の形が変わってしまいそうな気がするため、梅花に愛想笑いを浮かべて荷物運びを手伝った。
「それじゃ、ごるびーの見世物小屋に直行するか。‥‥面倒な事にならなきゃいいんだが‥‥」
 そう言ってレリスが荷物を載せた荷車を引いていく。
 色々な意味で嫌な予感を感じながら‥‥。

●ごるびー
「さて、ごるびー一座の出発です。私達の力で良い一座にしましょうね」
 河童忍軍総首領の九千坊から借りた見世物小屋にペット達を呼び集め、ルーラス・エルミナス(ea0282)がまとりょーしかを筆頭にして訓練を始めていく。
 ごるびーは見世物小屋を手に入れた事で気合が入っているのか、まとりょーしかと並んで一生懸命になって訓練を続けている。
「ご、ごるびーさんが輝いているっ! 私達も負ける訳には行きませんねっ!」
 感動した様子でごるびーを見つめ、三笠明信(ea1628)が流星の調教を続けていく。
 流星は徐々に芸を覚えてきているため、このまま熱心に訓練を続ければ立派な芸人になりそうだ。
「ふむ、確かに‥‥。それにダラけ過ぎると再度九千坊殿らに会った際にどんなおしおきを受けるか分からぬし‥‥」
 青ざめた表情を浮かべながら、ルミリア・ザナックス(ea5298)が乾いた笑いを響かせる。
 九千坊の屋敷で芸を披露した時に、ちょっとしたミスをしたため、朱雀からキツイ御仕置きを受けたらしい。
「‥‥随分と大変だったようですね」
 苦笑いを浮かべながら、ルーラスがふたりに同情した。
 ルーラスは九千坊の屋敷には行かなかったが、五輪祭に参加した事があるため、朱雀の恐ろしさなら充分に分かっている。
「ですが、ごるびー殿がようやく芸に目覚めてくれたようなので、九千坊のところで芸を披露したのは正解だと思っています。あれで怠けているようでは、シャレになりませんからね」
 ホッとした表情を浮かべながら、明信がごるびーの成長ぶりに満足した。
「このまま平和だといいのだが‥‥」
 そう言ってルミリアがそれんの持ってきたイカを食べる。
 ブレンヒルト達も同じようにしてイカを齧っており、何とも言えないマッタリとした空気が漂っていた。

●河童忍軍
「ちょ、長老河童は留守やとっ!? 一体、何処に行ったんや?」
 驚いた様子で目を丸くさせ、グラス・ライン(ea2480)が朱雀に文句を言った。
 朱雀は九千坊の代わりに屋敷を管理しているため、彼女がグラス達の対応に当たっている。
「分からないわよ。石版の欠片を持っているせいで、妙な奴らから命を狙われているんだから‥‥」
 困った様子で溜息をつきながら、朱雀が面倒臭そうに頭を掻く。
 九千坊は気分屋なところがあるため、朱雀であっても何処にいるのか分からない。
「せっかく土産(キュウリ)まで持ってきたのに‥‥。骨折り損のくたびれ儲けとは、この事やな」
 ションボリとした表情を浮かべ、グラスがガックリと肩を落とす。
 ここに来るまで随分と苦労したため、このまま帰るのはかなりツライ。
「そっちこそ、何か面倒な事でもあったの? 良かったら、相談に乗るわよ」
 キセルをプカプカと吹かしながら、朱雀がグラス達を見つめてクスリと笑う。
 最近、大した事件もないため、何か刺激が欲しいらしい。
「実は九千坊殿から借りている見世物小屋に、ミンメイ殿が住み込むつもりでいるようなので、どうしようかとここまで相談に来たのでござる」
 朱雀に詳しい話を説明し、沖鷹又三郎(ea5927)がニコリと微笑んだ。
「いいんじゃない? 従業員はいくらいても構わないし‥‥」
 ミンメイの事をよく知らないためか、朱雀がさらりと答えを返す。
「‥‥即答ですね」
 朱雀のいい加減さに呆れつつ、嵯峨野夕紀(ea2724)がクールにツッコミを入れた。
「当たり前でしょ。あの小屋はあなた達に貸しているのよ。毎月、家賃だって払ってもらわなきゃいけないんだから、少しでも稼いでもらわないとな」
 サディスティックな笑みを浮かべ、朱雀が指を使って丸を作る。
「うぐっ‥‥。あ、あの小屋はタダで貸してくれたのでは‥‥」
 最初に聞いていた話と違うため、又三郎が身体をビクッと震わせた。
「‥‥あら? そんな約束していたかしら? ひょっとして、獣だからってタダだと思った? 契約書を確認してごらんなさい」
 含みのある笑みを浮かべながら、朱雀が勝ち誇った様子で胸を張る。
 どうやら契約書の端っこに小さな文字で、月々の家賃が書き加えていたらしい。
「しょ、商売人やな、この女‥‥」
 ごるびーの笑顔を思い浮かべ、グラスがダラダラと汗を流す。
 十中八九、ごるびーはこの事を知らないため、来月から地獄のような返済生活が行われる事だろう。
「ま、まぁ、それならミンメイ殿が住み込んでも、問題はなさそうでござるな。‥‥借金の保証人として」
 容易にふたりの人生が見えるため、又三郎が乾いた笑いを響かせる。
「‥‥ミンメイ様にはまだまだ春が遠そうですね」
 そう言って夕紀がなむなむと両手を合わすのだった。

●交渉
「ゴルビー様、就職おめでとうございます。‥‥行き倒れていたり、太ったりしていらしたのが、遠い昔のようですね」
 ふたりの意見をきちんと聞くため、夕紀が仲間達を連れて見世物小屋にやってきた。
 見世物小屋は思ったよりも広く、舞台ではペット達が熱心に訓練を続けている。
「噂には聞いていたけど、随分と賑やかな所なんやなぁ」
 ペットの多さに驚きながら、グラスが感心した様子で溜息を漏らす。
 座長である、ごるびーが真面目に訓練をしているためか、他のペット達も気合が入っている。
「これからごるびー殿や皆のペット、動物達の芸をたくさん見て心が癒されていけば徐々に皆立ち直っていくでござろう。その為にも日々精進でござるよ、ごるびー殿。ごるびー殿は過去のツラい出来事を忘れた訳ではまさかござるまいの。見世物小屋がつぶれた時、ミンメイ殿の家が火事になった時。今日は良くても明日は何が分からぬのが人生。何も起きないよう用心して、何が起きても大丈夫なよう。毎日精進して行かなければならぬでござるよ?」
 しみじみとした表情を浮かべながら、又三郎がごるびーの肩をぽふりと叩く。
 ごるびーも又三郎の言葉を心に刻み、元気よく『きゅっ』と返事をする。
「よう、大した御大尽っぷりだな。ごるびー」
 そんな事など露知らず、連十郎が見世物小屋にやって来た。
「みっなさぁ〜ん、お久しぶりアルよぉ〜」
 満面の笑みを浮かべながら、ミンメイがごるびーの顔に頬擦りする。
 どうやら彼女は見世物小屋に住み込むため、籠いっぱいのイカを土産として持ってきているようだ。
「ひょっとして、キミが物書きのミンメイさんかいな? なんか頭の悪そうな娘やなぁ‥‥。ちゃんと中身が入っとるんか?」
 ミンメイの頭をぽふぽふと叩き、グラスが不思議そうに首を傾げる。
「し、失礼アルネ! これでもワタシは天才アルよ! えっと‥‥、とくかく凄いアル!」
 恥ずかしそうに頬を染め、ミンメイが必死になって言い返す。
「ミンメイ様、春になった事ですし、気分を一新していきましょう」
 色々な意味で同情しながら、夕紀がミンメイの肩をぽふりと叩く。
「春だからって妙な事を言っている訳じゃないアル! えっと‥‥、ここに住ませて欲しいアル!」
 いまさら回りくどい話をしても無駄なため、ミンメイがごるびーを見つめて頭を下げる。
「ごるびー殿のマネージャーとして聞くのでござるが、ミンメイ殿は一座でどんな仕事を希望されているのでござるかな?」
 家賃の問題もあるため、又三郎がゆっくりと口を開く。
 どう考えても、ごるびーだけでは家賃を払っていけないため、ミンメイに何か出来る事があるのなら一緒に住まわせても問題ない。
「えっと‥‥、歌って踊れて‥‥、何となく文字も書けるアル‥‥」
 最近、本を出していなかったため、ミンメイが申し訳無さそうに視線を逸らす。
「まぁ、あんだけミンメイちゃんに世話になっておいた上に俺でも出来ねー同棲権を得ようってんだから、嫌がる筈はネェよな?」
 天使のような笑みを浮かべ、連十郎がドスの利いた声を響かせる。
「情けは人のためならずともうしますがカワウソにとっても同じ事だと思いますが‥‥」
 クールな表情を浮かべながら、夕紀がコッソリとごるびーに耳打ちした。
「こ、こらっ! 余計な事を言っちゃ駄目アル」
 あたふたとした様子で、ミンメイが夕紀をジト睨む。
「申し訳ありませんが、ここにミンメイさんを住ませる訳には行きません。元々、ここの主は河童忍軍総首領である九千坊さんの持ち物なので‥‥」
 厳しい表情を浮かべながら、明信がミンメイにむかって答えを返す。
「いや、その事でござるが、今一度ごるびー殿が貰った契約書を見てくだされ」
 気まずい様子で頬を掻き、又三郎が契約書の入った箱を指差した。
「ちょっと待ってくださいね」
 箱の上に乗っていた茶色筋の雛鳥を退かし、ルーラスが契約書を取り出し中身を読んだ。
「えーっと、なになに‥‥。つ、月々の家賃がこんなにっ!?」
 ハッとした表情を浮かべながら、ルーラスが家賃の金額に驚いた。
「ミンメイ殿が不要な本を処分すれば、何とかなりそうな金額だな。‥‥どうする? これでも一緒に住むか?」
 すぐさま契約書をつきつけ、ルミリアが疲れた様子で溜息をつく。
「迷っている暇はないだろ? 多少なら俺達も協力してやるつもりだしな」
 ごるびーと一緒に訓練を始めた五徳を見つめ、正和がミンメイの事を応援した。
「うぐっ‥‥、仕方ないアルねぇ。わ、分かったアル‥‥」
 気まずい様子で汗を流し、ミンメイが仕方なく条件を飲んだ。
 これからしばらくは借金生活が続くのだと思いつつ‥‥。