●リプレイ本文
●ミンメイ
「茶畑荒らしを働くとは‥‥まったく何を考えているんだかねえ。みっちりと懲らしめて、今後悪いコトをしないように改心させてあげるわ!」
苦笑いを浮かべながら、郭梅花(ea0248)がタダ茶畑に罠を作る。
彼女の用意した罠は殺傷能力が低いものばかりで、例え清十郎が罠に引っかかったとしても茶畑に影響が出る事が無い。
「貧乏冒険者の『心のオアシス』である茶畑を荒らすという所業は武士として許せませんね。冒険者を敵に回した事を後悔させてあげましょう」
清十郎に対して怒りを感じ、三笠明信(ea1628)が拳をギュッと握り締める。
茶畑は構造上、段々畑のようになっているため、上空から見張る事が出来れば容易に襲撃を阻止する事が出来そうだ。
「茶畑を荒らし江戸のタダ茶を無くすような事になれば、江戸中の冒険者の恨みを買うでござる。そうなれば商売どころではござらぬと思うのでござるが‥‥」
疲れた様子で溜息をつきながら、沖鷹又三郎(ea5927)が汗を拭う。
念のため清十郎の恋人に会おうと思い、酒場での情報を手掛かりにして、本人の家まで行ったのだが、そこに住んでいたのはまったくの別人だった。
「それにタダ茶が飲めなくなるなんて一大事じゃねえか。清十郎の野郎、フザけた真似をしやがって‥‥」
不機嫌な表情を浮かべながら、伊達正和(ea0489)が愚痴をこぼす。
まったくタダ茶が飲めなくなれば、冒険者達の財布にまで影響が出てしまう。
「確かにタダ茶が飲めなくなるのは、ちと困るな。しかしその清十郎とやら何を考えているのやら。‥‥茶畑を荒らして喜ぶ恋人って‥‥、まさか相手は悪徳商人か!?」
嫌な予感が脳裏を過ぎり、石動悠一郎(ea8417)がダラリと汗を流す。
「その可能性は否定する事が出来ないのが本音でござる。それにミンメイ殿とは、ごるびー殿の芝居小屋で一蓮托生の仲でござるからの。共に家賃を払って借金を返していかねばならぬでござる。その為にも清十郎殿に茶畑を荒らすような真似を断じてさせるわけにはいかぬでござる」
険しい表情を浮かべて腕を組み、又三郎が辺りを睨む。
「しかし、清十郎も相変わらずバカな行動に走るよな。お茶が無料でなくなっても俺は特に問題ないが、意外と困るヤツも多いだろうし、喪が行けなくなった分までしっかりお仕置きしておくか」
面倒臭そうに溜息をつきながら、リフィーティア・レリス(ea4927)が茶畑に罠を仕掛けていく。
清十郎は男色のケがあるため、茶畑に仕掛ける罠は漢の艶絵だ。
「ところで清十郎ってダレや?」
キョトンとした表情を浮かべ、グラス・ライン(ea2480)が不思議そうに首を傾げる。
「えーっと、江戸でもソコソコ名の知れた漢の裸体専門の変態絵師アル」
清十郎に対してあまり良い印象を持っていないため、ミンメイが彼のイメージを包み隠さず素直に答えた。
「まぁ、清十郎も悪い人ではないのですが、ミンメイさんに家を追い出された事から、新しい恋人こそ精神の救いと考えているのでしょう」
しみじみとした表情を浮かべながら、ルーラス・エルミナス(ea0282)がミンメイに5Gの入った袋を渡す。
「わわっ、こんなに貰えないアルよ。ワタシの方が依頼主サンからキチンとお金を貰っているので気にしちゃ駄目アル」
袋の中身を確認した後、ミンメイが慌てた様子で首を振る。
最近、ルーラスの羽振りが良くなっている事は知っているのだが、援助してもらう事で借りを作ってしまうため、ミンメイも遠慮がちになっているようだ。
「まぁ、困った時があったら声を掛けてくださいね。いつでも力になりますから‥‥」
彼女の気持ちを理解したのか、ルーラスがクスリと笑う。
「大丈夫っ! ミンメイちゃんは俺が守っているからなっ!」
満面の笑みを浮かべながら、朝宮連十郎(ea0789)がミンメイの肩を抱く。
ミンメイとは半同棲生活を始めているため、彼女に困った事があればいつでも力になろうと思っている。
「そう言えば、柴太郎君と柴次郎君がグッタリしているようアルが、何かあったんアルか?」
心配した様子で連十郎のペットを見つめ、ミンメイがボソリと呟いた。
「いや、清十郎の家でゲットしたイカ臭いブツを嗅がせてヤツを追おうと思ったんだが‥‥、どうやら刺激が強かったらしい」
気まずい様子で頬を掻き、連十郎が視線を逸らす。
「と、とにかく清十郎が来るまでどこかに隠れていましょうか? 清十郎がいくらアホでも、ここまで堂々としていたら警戒すると思うので‥‥」
苦笑いを浮かべながら、飛麗華(eb2545)が仲間達を茂みの傍まで連れていく。
まんまと罠に誘き寄せられ、清十郎が茶畑にやってくるのを待つために‥‥。
●清十郎
「‥‥清十郎様にも困ったものです。自分がどれだけ変態でも構いませんが、よもや犯罪にまで手を染めるとは‥‥」
呆れた様子で溜息をつきながら、嵯峨野夕紀(ea2724)が清十郎との待ち合わせ場所まで歩いていく。
清十郎はすっかり骨抜きにされているため、恋人に唆されて自分が犯罪に手を染めているとは思っていない。
「えっと‥‥、茶畑の害虫駆除をするお仕事ですよね? それって悪い事なんですか?」
驚いた様子で夕紀を見つめ、糺空(eb3886)がダラリと汗を流す。
清十郎に騙されて依頼を引き受けたため、夕紀の言葉に少なからず驚いているようだ。
「本当に害虫を駆除するだけなら構いませんが、私達が相手にするのは同業者です」
クールな表情を浮かべながら、夕紀がさらりと答えを返す。
いまさら嘘をつく必要も無いため、迷わず本当の事を語ったようだ。
「ど、同業者って、それじゃ僕達は騙されているって事ですか?」
ようやく自分達の置かれている立場を理解し、空がハッとした表情を浮かべて汗を流す。
「ふたりとも何をやっているのじゃ? わしはこっちじゃぞい?」
ふたりにむかって声を掛け、清十郎が元気よく手を振った。
「さぁてと、どこから荒らそうかなっと」
ゆっくりと茶畑を見回した後、清十郎がニカッと笑う。
「おっ‥‥、おおっ! これはガチムキマッチョの艶絵じゃないか! 腹筋が‥‥イイッ!」
ウットリとした表情を浮かべ、清十郎が艶絵を拾って頬ずりする。
それと同時に清十郎めがけて弓矢が飛び、一瞬にして彼の持っている艶絵を貫いた。
「だ、誰じゃ、わしの艶絵を射抜いたヤツはっ!」
不機嫌な表情を浮かべながら、清十郎が辺りを見回し犯人を捜す。
「そこまでだっ!! 天が呼ぶ地が招く人が乞うっ!! 正義を成せと俺を呼ぶっ!! 俺は正義の剣士、伊達正和っ参上っ!!」
格好良くポーズを決め、正和が清十郎を睨んで名乗りを上げる。
「惜しかったアルね。‥‥外したアルか」
残念そうな表情を浮かべた後、ミンメイが再び清十郎の眉間を狙う。
「ま、待つのじゃ! わしの話を聞いてくれ! これには深い訳があるのじゃ。頼む、見逃してほしいのじゃ」
青ざめた表情を浮かべながら、清十郎が必死になって両手を合わす。
「ミンメイさんに朱雀さんに目をつけられたんが運のつきやな。志姫、暴走アタックや! 迷わんように成仏させるんよ」
すぐさまヒポグリフの志姫を嗾け、グラスが清十郎の逃げ道を塞ぐ。
「のっ、のわあっ! どうして、わしの邪魔をするのじゃ! この人でなしがぁ!」
大粒の涙を浮かべながら、清十郎がグラス達を非難する。
「人でなしはどっちよ。他人の茶畑を荒らしたりしている癖に‥‥」
呆れた様子で溜息をついた後、梅花が清十郎をジト目で睨む。
「そ、それは‥‥言っちゃあいけないのじゃ。まぁ、世の中に渦巻く悪事に比べたら、わしのやっている事などちっちゃい、ちっちゃい」
まったく悪びれた様子も無く、清十郎が右手をパタパタとさせる。
「残念だが、そうもいかないんでね。ホントなら敵にはトドメを刺して抹消したいところだが‥‥、知り合いって事でサービスしてやるよっ!」
一気に間合いを詰めてサンレーザーを放ち、レリスが清十郎の動きを封じ込めようとした。
しかし、清十郎は寸前の所で攻撃をかわし、茶畑の中を掻き分けながら逃げていく。
「今度の依頼はまじでしくじれないな、ある意味世界の危機だ。来いっ、電・撃・号っ!!」
険しい表情を浮かべながら、正和が清十郎の後を追う。
清十郎はわざと茶畑を荒らすようにして走っていき、必死になって正和達を撒こうとした。
「逃がしませんよ、絶対に‥‥」
先回りをして清十郎を待ち伏せし、ルーラスがジロリと彼を睨む。
「のわあああああっ! しまったのじゃ!」
ルーラスと鉢合わせとなり、清十郎が悲鳴を上げて飛び上がる。
「我、武の理を持て打、を撃ち放つ‥‥飛打!」
鋭い目つきで清十郎を睨みつけ、悠一郎がソッニクブームで峰打ちを狙う。
しかし、清十郎が茶畑の間を移動している事もあり、迂闊に攻撃する事が出来ない。
「ぬわわっ、早く助けてほしいのじゃ!」
大粒の涙を浮かべながら、清十郎が夕紀達に助けを求める。
「さて‥‥、何の事やら‥‥」
清十郎の助けに入らず、夕紀がキッパリと答えを返す。
最初から清十郎の手助けをするつもりが無かったため、彼が苦戦していても他人事である。
「‥‥悪い事は駄目ですよ」
瞳をウルウルとさせながら、空がボソリと呟いた。
「うっ、裏切り者ぉ〜。死んだら化けて出てやるのじゃ」
空達に悪態をついた後、清十郎が茶畑に隠れて逃げていく。
「‥‥たくっ! いい加減に諦めやがれっ!」
面倒臭そうな表情を浮かべながら、連十郎が清十郎の股間にスマッシュを放つ。
「のぎゃああああああああああああああああああああ」
‥‥そして清十郎の悲鳴が響くのだった。
●捕縛
「こ、股間を狙うなんて‥‥卑怯なのじゃ‥‥」
両手で股間を押さえて連十郎をジロリと睨み、清十郎が前のめりに倒れ込む。
よほど連十郎の一撃が効いたのか、顔から血の気が引いている。
「もしかして‥‥、峰撃ちでなく本気で殺害するつもりでやっても平気な類の相手なのだろうか?分類上人間ではなく魑魅魍魎にいれても良いくらいに‥‥」
唖然とした表情を浮かべ、悠一郎が清十郎の傍に駆け寄った。
「仕方ないだろ。お前が素直に捕まらなかったんだから‥‥。俺だって辛いんだぜ」
わざとらしく涙を浮かべ、連十郎がミンメイの胸でオヨオヨと泣く。
「こ、こいつ‥‥、わしをダシに使ってそういう事を‥‥」
連十郎の計画を一瞬にして理解し、清十郎がギチギチと歯を鳴らす。
「それはお互い様でしょ。死ななかっただけでも、良かったと思わなきゃ」
苦笑いを浮かべながら、梅花が清十郎の肩を叩く。
「本当なら八つ裂きにされていてもおかしくはないんですからね。しかも松之屋さんの看板娘さんを怒らせるような真似をするなんて‥‥」
連十郎の身体を縄で縛り、ルーラスが彼を叱りつける。
「結局、犯罪者にならなかったわけですし、清十郎様にとっても良かったんだと思いますよ」
全く言葉に感情を込めず、夕紀がボソリと呟いた。
「うぐっ‥‥、じゃがのぉ‥‥。これじゃ、うちに帰れんのじゃ」
納得のいかない様子で視線を逸らし、清十郎がブツブツと愚痴をこぼす。
「その様子じゃ、恋人に騙されている事にも気づいていないな」
清十郎の顔をマジマジと見つめ、正和が呆れた様子で溜息をつく。
「騙されているじゃと? 何を言っているのじゃ! わしと彼はラブラブじゃ」
不機嫌な表情を浮かべ、清十郎がキッパリと答えを返す。
「残念でござるが、それは有り得ない話でござる。清十郎殿の恋人が住んでいたと部屋には数年前から別の人が住んでいるし、彼が言っていた事も大半は嘘アル」
残念そうに首を振り、又三郎が真実を語る。
「つまりあなたは騙されていたというわけですよ」
清十郎の肩をぽふりと叩き、麗華がキッパリとトドメをさした。
「おいおい、真っ白になっているぞ。せっかくこれからだって言うのに‥‥」
困った様子で溜息をつきながら、レリスが清十郎の頭をぺちぺちと叩く。
「これを作っておいた甲斐がありましたね」
清十郎の身体の上に墓を置き、明信がなむなむと両手を合わす。
「迷わず成仏するんやでぇ〜」
‥‥そう言ってグラスが仲間達と一緒に合掌した。