ミンメイの婚約者
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■シリーズシナリオ
担当:ゆうきつかさ
対応レベル:フリーlv
難易度:普通
成功報酬:0 G 78 C
参加人数:6人
サポート参加人数:-人
冒険期間:01月27日〜02月01日
リプレイ公開日:2007年01月31日
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●オープニング
●ミンメイの婚約者
「はぁ‥‥はあ‥‥。よ、ようやく見つけたぞ、ミンメイィィィィ!」
虚ろな表情を浮かべながら、ショボウが雄叫びを上げる。
‥‥月道を越えて放浪する事、数週間。
噂話を頼りにミンメイの事を捜して、ようやく江戸で彼女の店を発見した。
色々と‥‥大変だったと聞いている。
脳裏に過ぎるのは、彼女の笑顔。
最後の会ったのは‥‥、いつだか覚えていない。
「ミ、ミンメイィィィ」
荒々しく息を吐きながら、ショボウがミンメイ堂の暖簾をくぐる。
「いらっしゃいませアル〜。お客サン、ここには何をお求めアルか?」
途端に能天気な声が響き、ミンメイが揉み手で接客し始めた。
あの頃と変わらぬ笑顔。
‥‥ショボウはちょっとムラムラした。
「会いたかったぞ、ミンメイィィィィィィィィィィィィ! 子供は何人欲しい。名前はヘイハチとエダジマ! これで決まりだなァ!」
ケダモノの如く勢いでミンメイに飛びつき、ショボウが興奮した様子で雄叫びをあげる。
それと同時にミンメイの悲鳴が響き、何者かによってショボウがボコボコにされた。
「うぐ‥‥あああ‥‥」
そして、ショボウの意識は深いところに落ちていく。
「ここは‥‥」
‥‥気がつくと、ショボウは布団に寝かされていた。
近くにはミンメイが座っており、『何かしたら、これで殴れ』と書かれた壺を抱き締めている。
「久しぶりだな、ミンメイ」
彼女の怪しまれないようにするため、爽やかな笑みを浮かべるショボウ。
そのせいで警戒を強めるミンメイ。
ふたりの間には、とても深い溝があった。
「あ、あの‥‥。どなた様アルか?」
ぎこちない笑みを浮かべ、ミンメイが壺を振り上げる。
本当ならこのまま壺を振り下ろしたい心境だが、理性が留め金になって実行には至っていない。
「俺を忘れたのか、ミンメイ! 俺は‥‥お前の婚約者だ!」
その言葉を聞いて、再びミンメイが悲鳴をあげた。
それからショボウの昔話が始まった。
ミンメイとショボウが幼馴染だった事。
家が近所だったため、日が暮れるまで遊んでいた事を‥‥。
‥‥そんな時だった。
ショボウは彼女に告白したのは‥‥。
「えーっと、覚えていないアル‥‥」
さらりと答えるミンメイ。
運命とは時に残酷である。
ショボウは彼女の言葉を信じて、わざわざ月道を越えてジャパンにやって来たと言うのに‥‥。
「い、いまさら何を言っているんだぁぁぁぁぁぁぁ! 俺はこの時まで他の女には目もくれず、お前だけの事を考えてぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
殺気に満ちた表情を浮かべ、ショボウが彼女の胸倉を掴む。
そして、再びショボウの後頭部を激痛が襲う。
‥‥覚えているのはそこまでだった。
そんな事を繰り返しながら、ミンメイとの話し合いは続けられた。
その結果‥‥。
「ショボウにはワルイけど、ワタシには婚約者がいるアル」
トドメの一撃が放たれる事になる。
しかし、ショボウもここで諦めない。
「う、嘘だ! 絶対にそんなヤツは存在しない!」
ミンメイの言っている事をキッパリと否定し、ショボウが強引に婚姻話を進めていく。
もちろん、彼女にとっても決して悪い話ではない。
ショボウと結婚すれば、莫大な金が手に入るのだ。
「まぁ‥‥、すぐに返事をしろとは言わない。結婚式の日までに覚悟を決めておけ。俺が必ず幸せにしてやるから!」
そう言ってショボウがミンメイ堂を出て行った。
その後、冒険者ギルドにミンメイの依頼が貼られる事になる。
『助けてぷりーず』と書かれた切羽詰った文章が‥‥。
●リプレイ本文
●ショボウ
「ミンメイちゃんが無理矢理結婚させられるだと!? 絶対にそんな事ァさせないぜ! 俺とミンメイちゃんは赤い注連縄(極太)で結ばれた間柄だからな! ミンメイちゃんは渡さねえ!」
ミンメイの手をギュッと握り締めながら、朝宮連十郎(ea0789)が怒りの炎をメラメラと燃やす。
‥‥事の始まりは数分前。
連十郎はミンメイから結婚する事を告げられた。
その瞬間、連十郎の心臓は確かに止まった、と後の告白本に書かれている。
彼にとってはそれほどショックな事だった。
「ミンメイ様、ご結婚おめでとうございます。これで高利貸しの方々と縁が切れますね」
そんな事なら露知らず、嵯峨野夕紀(ea2724)がトドメの一言を放つ。
デスワード。
連十郎の脳裏に不吉な言葉が過ぎっていく。
だが、しかし‥‥。
連十郎はめげなかった。
そして、今に至る。
「全く‥‥、相変わらずやっかい事に巻き込まれているようね。しかも金でミンメイちゃんを買うなんて、何ともミンメイちゃんらしいオチではあるけど‥‥。仕方がないから今回も助けてあげるわ」
苦笑いを浮かべながら、郭梅花(ea0248)がミンメイの肩を叩く。
しかし、ミンメイは結婚をしなければいけないというプレッシャーから、オロオロとしていて落ち着きがない。
「‥‥ミンメイ殿。人生の一大事であるな」
険しい表情を浮かべながら、ルミリア・ザナックス(ea5298)が口を開く。
彼女はパラディンの試練を受けるためインドゥーラに行くのだが、五輪祭で得た称号を朱雀が受け取る事はなかったため、そのままお守りとして持って行く事にした。
「そ、その通りあるよ! 何が悲しくてしばらく連絡の取れなかった幼馴染と結婚しなくちゃいけないアルか! しかも子供の頃の約束なんて、とっくの昔に忘れているアル!」
今にも泣きそうな表情を浮かべ、ミンメイがブツブツと愚痴をこぼす。
本当ならこのままどこかに逃げ出したい気分だが、その為に必要な資金がミンメイにはない。
「とりあえず朝宮さんを婚約者に仕立てるが問題ないか? さすがのショボウも婚約者がいる相手をむりやり連れていったりはしないだろう?」
猫のムーンを撫でながら、ゲレイ・メージ(ea6177)がパイプをふかす。
ゲレイは来月から蝦夷に旅立ってしまうため、江戸での依頼はこれで最後。
事件を解決して気持ちよく旅立ちたいというのが本音である。
「も、問題ないアル! 連十郎はショボウと違って、ワタシを守ってくれるアル」
すぐさま連十郎と腕を組み、ミンメイが力強くコクンと頷いた。
「おっしゃ、任せとけ! ‥‥話を聞く限り、いきなり包丁とか持ち出しかねない野郎だな。忘れたとは言えねェぐらい完膚なきまでに叩き潰すぜ!」
自信に満ちた表情を浮かべ、連十郎が拳をギュッと握り締める。
「それじゃ、連十郎くんがミンメイちゃんの婚約者として名乗り出るわけね?」
納得した様子で連十郎を見つめ、梅花が念のため確認を取っておく。
ちなみに連十郎の脳内では、ミンメイとの婚約が確定しているため、ショボウとの結婚がお流れになったとしても、婚約が『なかった』事にはならないようだ。
「とりあえずミンメイに対して変な事をするんじゃないぞ」
嫌な予感が脳裏を過ぎり、リフィーティア・レリス(ea4927)が連十郎を警戒する。
連十郎を信用していないわけではないのだが、状況的に考えれば暴走してしまう可能性が高い。
もちろん、その事を連十郎も自覚しているはずなのだが‥‥。
「ミンメイィィィィィィィィィ! 迎えに来たぞおおおおおおお!」
雄叫びを上げて入り口の扉を蹴り飛ばし、ショボウが勢いをつけて連十郎を踏みつける。
連十郎は背中に激痛が走ったのと同時に、何かがドシンと乗ったため、訳も分からず意識が飛んだ。
「‥‥ショボウ殿。結婚は夫婦の同意があってこそのもの‥‥、一方的な押し付けはいかんな」
険しい表情を浮かべながら、ルミリアがショボウを睨む。
「はっはっはっはっ! それなら何も問題ない! 俺達は赤い糸で結ばれている! それはある意味、運命ぃぃぃぃ!」
まったく動揺する事もなく、ショボウがキッパリと答えを返す。
そして、強引にミンメイの腕を掴むと、そのまま連れ去っていこうとした。
「お待ちください。ミンメイ様は高利貸しの方々から返済を迫られていますので、借金を完済するまでは結婚する気がないようです。やはり身の回りはきれいにしておきたいものですからね」
ミンメイに借金がある事を伝え、夕紀が結婚を諦めさせようとする。
本当はもう少し曖昧な言葉で誤魔化そうとしていたが、多少の事ではショボウが聞き流すためキッパリという事にした。
が、しかし‥‥。
「そんな事か。ちっちゃい、ちっちゃい! 俺がすべて払ってやるぅぅぅ!」
そう言ってショボウがミンメイを引きずるようにして連れ去った。
●結婚式
「‥‥たくっ! ショボウの野郎! 俺を踏み台にしやがって! 絶対に許さねぇからな!」
不機嫌な表情を浮かべながら、連十郎が結婚式場にむかう。
ショボウは短気な性格のため、既に結婚式の準備が整っている。
「借金はすべてショボウが払ったのか。ますます面倒な事になったな。いまさら返すわけにも行かないし‥‥」
ミンメイ堂に届いた完済証明書をギュッと掴み、ゲレイがチィッと舌打ちした。
どうやらショボウは金にモノを言わせて、彼女の借金を完済したらしい。
「それにしても、結婚式の邪魔かぁ‥‥。よくあるパターンだと、神事中に『ちょっと待った〜!』って言って殴り込みをかけるのがお約束よね? もしくは、有無も言わさず奇襲をかけて一気に昏倒させるとか‥‥」
色々なパターンを考えながら、梅花が困った様子で腕を組む。
どちらにしても無関係な人を巻き込む事になるので、色々と後始末が面倒そうだ。
「つーか、何故か女装してショボウに迫れとか、そーいう指令が来てるんだが‥‥。これってやる事に何か意味があるのか? 大体においてショボウはミンメイがいいんだろ?」
魂の抜けた表情を浮かべ、レリスがはふぅ‥‥、と溜息をつく。
一応、女装はしてみたものの、ショボウが引っかかるとは思えないため、既にヤル気が失せている。
「とにかく試してみる価値はあると思いますよ。それじゃ、参りましょうか」
ショボウ達の結婚式場が見えてきたため、夕紀が仲間達にむかって合図を送る。
それに同時に連十郎が走り出し、結婚式場の壁をバーストアタックで叩き壊す。
「ちょっと待ったァー!」
連十郎の声に驚く参列者。
新郎のショボウもキョトンとした表情を浮かべている。
「ミンメイちゃん! あんたには本を作るという使命があったはずよ!」
大声を上げながら、梅花がミンメイの名前を呼ぶ。
その隙に連十郎が柴太郎と柴次郎を嗾け、ショボウの股間にポイントアタックを叩き込む。
「てめぇの縮こまった貧相なナニがミンメイちゃんに相応しいワケねぇだろーが! 男はデカさ、だ! 諦めな!」
ショボウに捨て台詞を言い放ち、連十郎がミンメイを抱き上げる。
「むぅ、連十郎殿。見事なお姫様だっこですな! 攻撃は見事に背中側で受け止めておられている! いっそ今すぐミンメイ殿と結婚しては?」
感心した様子でふたりを見つめ、ルミリアがパチパチと手を叩く。
それでもショボウは諦めず、ミンメイを追いかけようとしたが、女装したレリスが飛びついて邪魔をした。
「私との事は遊びだったのね」
参列者達に聞こえるように大声を出しながら、レリスが必死になってショボウを抱き締める。
「お、追え〜!」
殺気に満ちた表情を浮かべ、ショボウが追っ手を差し向けた。
こうなってしまった以上、意地でもミンメイには責任を取ってもらわねば、と思いつつ‥‥。
●追っ手
「この手の話で追っ手は定石よね〜」
ショボウが追っ手を差し向けてきたため、梅花が踵を返して龍叱爪を装着する。
しかし、追っ手して差し向けられた者達が一般人だったため、ここで本気を出せば相手を誤って殺してしまう。
「ならば、しばらくの間、眠っていてもらいましょうか」
すぐさまスタンアタックを放ち、夕紀が追っ手を倒していく。
それでも追っ手達はショボウにお仕置きされるのが怖いため、必死になって夕紀達に攻撃を仕掛けていった。
「よほど死にたいようだな。‥‥とは言え、素人相手に本気を出すわけにもいかないか」
面倒臭そうに溜息をつきながら、ゲレイがウッドゴーレムの木人1号を嗾ける。
木人1号は追っ手達の襟首を掴み、ポンポンと放り投げていく。
「おぬしらは相手を叩きのめす事しか考えていない、だから攻撃に重さが宿らぬのだ! 愛ある刃は防御不可能!」
雄叫びを上げて一気に間合いをつめ、ルミリアが追っ手達に当て身を放つ。
その一撃によって追っ手達は戦意を失い、グルグルと目を回しながら意識を失った。
「みんな‥‥、無事か? それにしても、子供の頃の口約束を信じてるバカが、この世に居るとはな‥‥。世の中変なヤツが多いから、これからは簡単にそういう約束とかするんじゃないぞ」
ようやくミンメイ達に追いつき、レリスがホッとした様子で溜息をつく。
しかし、ショボウが立て替えた借金があるため、いずれまた会う事になるだろう。
「まぁ、また奴が来ても俺が追い返してやるけどな。愛してるぜ、ミンメイちゃん。せっかくだから、このまま結婚をしちまうか!」
そう言って連十郎がミンメイにプロポーズをすると、優しく彼女に口付けした。