<ごるびー奮闘記>まとりょーしか

■シリーズシナリオ


担当:ゆうきつかさ

対応レベル:2〜6lv

難易度:やや易

成功報酬:1 G 69 C

参加人数:12人

サポート参加人数:-人

冒険期間:09月05日〜09月10日

リプレイ公開日:2004年09月08日

●オープニング

 ごるびーは見世物小屋で働くカワウソである。
 彼を捕獲した見世物小屋の主人は、ごるびーの稼いだ金で私腹を肥やし、芸者遊びに精を出す助平な親父。
 そんな事など露知らず、ごるびーは愛するそれん(イタチ)ちゃんのため、今日も働き続けるのだ!

「お前達を呼んだのは他でもない。新しい依頼を頼もうと思ったからだ。ここから数日ほど歩いた場所に見世物小屋があるんだが、経営不振に陥り動物達を手放す事にしたらしい。この小屋では『まとりょーしか』と呼ばれるオコジョが活躍していたのだが、他に売りがなかったため経営が悪化していたらしいんだ。そこでオコジョだけでもわしの小屋で働かせてやろうと思っている。オコジョの故郷は高い山の上だから、故郷に帰してやるのは難しい。‥‥となると野良になるしかないからな。わしが飼ってやった方が奴のためにもなるだろう」
 上機嫌な様子で酒を呑み、依頼主の男が豪快に笑う。
 ミンメイから有力な情報でも得たのか、何故か妙に機嫌がいい。
「そこでお前達の出番だ。まとりょーしかを受け取りに行って欲しい。見世物小屋の近くにある森には、一角蜥蜴と呼ばれる恐ろしく凶暴な蜥蜴がいるらしいが‥‥まぁ、大丈夫だろう。多分、死ぬような事はないと思う。‥‥多分な」
 話の途中で一角蜥蜴に襲われた村人達の話を思い出し、依頼主が気まずく視線をそらす。
 一角蜥蜴は頭に角が生えており、素早い身のこなしで獲物に突進し、弾き飛ばしてしまうほどの力を持つ。
 ‥‥かなり危険な蜥蜴である。
「ただ心配なのは見世物小屋の主人だな。廃業した事があまりにショックだった為かボケちまったらしいんだ。蜥蜴が現れるからオコジョを外に出すな、と注意しておいたが‥‥。巷じゃ、トカゲに追われているオコジョを見たとか、見ないとか‥‥」
 乾いた笑いを響かせ、依頼主がコホンと咳をした。
 どうやらオコジョが逃げてしまったらしい。
「と、とりあえず店の主人に会って真相を確かめてきて欲しい。もしもオコジョが逃げだしていたのなら回収しなきゃならないしな。一角蜥蜴をぱぱっと倒して帰ってこい」
 そしてた依頼主の男性は逃げるようにして奥の部屋へと姿を消した。

●今回の参加者

 ea0023 風月 皇鬼(31歳・♂・武道家・ジャイアント・華仙教大国)
 ea0031 龍深城 我斬(31歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea0443 瀬戸 喪(26歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea0567 本所 銕三郎(35歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea0868 劉 迦(29歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)
 ea0912 栄神 望霄(30歳・♂・僧侶・人間・ジャパン)
 ea0946 ベル・ベル(25歳・♀・レンジャー・シフール・モンゴル王国)
 ea2473 刀根 要(43歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 ea3535 由加 紀(33歳・♀・忍者・パラ・ジャパン)
 ea4162 フィール・ヴァンスレット(30歳・♀・クレリック・パラ・フランク王国)
 ea5523 高野 鬼虎(27歳・♂・僧兵・ジャイアント・ジャパン)
 ea5927 沖鷹 又三郎(36歳・♂・僧兵・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

「貧乏浪人もいつの間にやら福袋成金に‥‥か」
 福袋の中に入っていた真鉄の煙管が妙に馴染んでしまったため、本所銕三郎(ea0567)が刀代わりに身に着けておく。
 愛馬サジマは眠そうに草を頬張っているが、未だに高級な草にはありつけていないらしい。
「ここがまとりょーしかの飼い主が住む家か。随分と取り立てが激しいようだな。まだ生きているといいが‥‥」
 屋敷に貼られた赤紙を見つめ、銕三郎が大粒の汗を流して戸を開けた。
 屋敷の中にはまとりょーしかの飼い主らしき老人が座っており、虚空を見つめて両手をプルプルと震わせている。
「お前さんは誰かいのぉー」
「俺は本所銕三郎という者だ。依頼主に頼まれ、まとりょーしかを受け取りに来た」
 ぼーっとしている老人の肩を叩き、銕三郎が真剣な表情を浮かべて口をを開く。
「‥‥まとりょーしか? なんじゃ、そりゃ。わしゃあ、そんなモンは知らんぞ」
 明後日の方を見つめて答えを返し、老人がモゴモゴと口を動かした。
「私は刀根要です。御爺様、初めまして」
 ペコリと頭を下げながら、刀根要(ea2473)がニコリと笑う。
「おお、要ちゃんか。大きくなったな」
 老人は要に素早く抱きつくと、嬉しそうに昔の事を語りだす。
「‥‥知り合いか?」
 雰囲気がおかしかったため、銕三郎が老人を指差し要を睨む。
「いや、初対面のはずですが‥‥」
 凄まじい力で抱きつかれ、要がブンブンと首を振る。
「ごめんねぇ〜長いこと顔出せなくってぇ〜」
 このままだと埒があかないと思ったため、高野鬼虎(ea5523)が身内に扮して抱きついた。
「おお、パピヨンか。相変わらずバタフライは元気かな?」
 老人は最初キョトンとした表情を浮かべていたが、すぐに誰かと勘違いしたのか鬼虎にむかって微笑みかける。
「パ、パピヨン‥‥?」
 突然、妙な事を言われたため、鬼虎が首を傾げて呟いた。
 一体、誰と勘違いをしているのだろう?
 ‥‥妙な疑問が脳裏をよぎる。
「そうそう、御爺様。まとりょーしかは何所にいるのですか。いつもの芸を見たいのですが‥‥」
 このままだと素敵ワールドに突入しそうになったため、要が土産の団子を手渡しお願いした。
「わしはまとりょーしかなんぞ、知らん。それよりも飯だ、かなえさん」
 団子の包みごと食べながら、老人が要の袖を引く。
 よほど要が気に入ったのか、決して離れようとしない。
「いや、私は要なんですが‥‥。本気でボケているようですね」
 今度は腕を食べようとしたため、要が大粒の汗を流して溜息をつく。
 どうやら真面目に対応しても損をするだけらしい。
「そういや、もう飯はもう食ったか? まだなら作ってやるから待っていろ」
 あまりにも行動が怪しかったため、銕三郎が要から老人を離す。
「はて‥‥? 飯はいつ食ったのかのぅ。昨日のような‥‥今日のような‥‥」
 大きなハテナマークを浮かべながら、老人が首を傾げて呟いた。
「ご飯はいつ食べていたんでしょうね。この様子ではしばらく食べていなかったようですが‥‥」
 お腹がグゥ〜ッと鳴ったため、要が食べ物を探しにいく。
「それじゃ、私が料理を作りますね。お寺を出て初めてだなぁ。こんな事‥‥」
 苦笑いを浮かべながら、鬼虎が家にあるもので食事を作る。
 ほとんどのものが腐っていたため、あるものを使って作ったのだが、鬼虎が僧侶であるため肉を使用しない雑炊に決まったようだ。
「おお、スマンのぅ‥‥。狸汁などひさしぶりじゃ」
 既に何を食べているのか分からないのか、老人が雑炊をすするようにして食べる。
「そうだ、まとりょーしかにも餌をやらなきゃな。何が好物だったかねぇ?」
 最後の望みをかけて銕三郎がまとりょーしかについて老人に聞く。
 先程とは違って腹も膨れているため、そろそろマトモな事を喋りそうな雰囲気だ。
「‥‥まとりょーしか。おお、わしの買っているイタチの事か。あの壷はいいぞ〜。とくに毛並みがな」
 微妙なボケた答えを返し、老人が豪快に笑う。
「少し心配な気もしますが、何とかなりそうですね。えっと‥‥、まとりょーしかの好物とかってありますか?」
 再び腕をかまれそうになったため、要が慌てて老人の傍から遠ざかる。
「しばらく餌をやっておらんからのぅ‥‥。なんでも食うじゃろ」
 寂しそうに要を見つめ、老人がジィ〜ッと腕を睨む。
「この様子じゃ、どんな餌でも引っかかりそうですね。私はもう少しおじいさんと一緒にいようと思います。このまま放っておくわけにも行きませんし‥‥」
 老人と一緒に縁側に座り、鬼虎が横笛の音色を響かせる。
「それがいいかも知れないな。かなり苦労しているようだから‥‥。きっとまとりょーしかの事も忘れたいのかも知れないな。仕事をしていた頃を思い出してしまうから‥‥」
 どこか寂しげな表情を浮かべ、銕三郎が大きな溜息をつく。
「御爺様、また来ますね」
 そして要は老人の背中を見つめ、優しく声をかけるのだった。

「老人と接触した人達は、あまり収穫がなかったようだね。その点、僕は大収穫だったけど‥‥」
 フィール・ヴァンスレット(ea4162)はふぃーるん親衛隊を作るため女性限定で聞き込み(ナンパ?)をしていたのだが、思った以上に収穫があったため上機嫌な様子で森を歩く。
 身体には数匹の虫が括りつけられているが、機嫌がいいためそれほど気にはしていない。
「やっぱり僕の考えは間違っていなかったようですね。だから放置しておけばいいと言ったのに‥‥。みんな優し過ぎるんですよ」
 餌代わりに使うかんざしをクルクルと回し、瀬戸喪(ea0443)がまとりょーしかを探してまわる。
「‥‥オコジョって確か、ごるびーさんとかと同じような体型をしていましたよね?」
 仲間達の周りを飛び回り、ベル・ベル(ea0946)が首を傾げて呟いた。
 依頼主から絵をもらった絵を見る限り、それほど違いはないようだ。
「‥‥なにやら、親近感の沸く子みたいですね」
 苦笑いを浮かべながら、栄神望霄(ea0912)が絵を覗く。
「ところで僕は何で縛られているんですか? どこぞの悪人でもないのにぃ〜」
 腰に縛られたロープを握り、フィールが龍深城我斬(ea0031)を見つめてニコリと笑う。
「方向音痴なんだろ。だったらしっかりと握っておかないとな。本当は首輪をつけてやろうと思ったが、途中で首が絞まって逝ってもシャレにならんしな」
 ロープの片方を握り締め、我斬が森の奥へと進んでいく。
「それじゃ、別のプレイですよ。あんまり変な事は考えないでくださいね」
 冗談まじりに微笑みながら、フィールがデティクトライフフォースを使用した。
 この近くにまとりょーしかがいるのか、それらしき反応がすぐに出る。
「か、勘違いするな。そんな事よりまとりょーしかだ。さあ探せ、今探せ、すぐ探せキリキリ探せ」
 気まずい様子でフィールを見つめ、我斬がコホンと咳をした。
 別にそういうつもりはなかったのだが、確かに勘違いされてしまう可能性も高い。
「そこ‥‥、くっつき過ぎだぞ」
 ジト目で我斬を睨みつけ、風月皇鬼(ea0023)が溜息をつく。
 フィールと皇鬼は恋仲なので、少し嫉妬しているようだ。
「違う! 勘違いするな。そんな事よりも、まとりょーしかを探すぞ!」
 妙な疑惑をもたれたため、我斬が激しく首を振る。
「まとりょーしか、出ておいで。ノルマン製のレースのリボン付けてあげるよ〜」
 可愛いリボンをヒラヒラと揺らし、望霄がキョロキョロと辺りを見回した。
 すると驢馬のはなが瞳をキラキラと輝かせ、望霄の袖を何度も引く。
「‥‥ん? はなちゃんも欲しいの?」
 驢馬の鬣の一部を三つ編みにしながら、望霄が丁寧にリボンを結ぶ。
 はなもリボンが気に入ったのか、上機嫌な様子で鼻を鳴らす。
「ところでまとりょーしかの餌はどうします? 保存食でいいのでしょうか‥‥? それとも食べ物以外のものを‥‥」
 何故かフィールの顔を見つめ、望霄がロープを指差した。
「さっそく引っかかったようですね。お尻に噛み付いています」
 まとりょーしかの首根っこをつかみ上げ、フィールがニコリと微笑んだ。
 よほどお腹が減っていたためか、フィールのお尻を桃と勘違いしたらしい。
「ほーら、食い物だぞ」
 保存食をブラブラと揺らし、我斬がまとりょーしかを誘う。
 しかし、まとりょーしかはフィールの方が興味があるらしく、保存食にはまったく興味を持とうとしない。
「うーむ、餌じゃ駄目か。‥‥なら、螺鈿の櫛は如何だ。ほーらキラキラと光って綺麗だぞ。それとも、こっちの簪の方が良いか? ‥‥ああ、この簪は痛いからやめような」
 手を変え品を変え色々な物を使ってみたが、やはりまとりょーしかが興味を持つ物は存在しない。
「なかなか贅沢なオコジョでござるな。玉乗りの玉には反応したようでござるが‥‥」
 大きな溜息をつきながら、沖鷹又三郎(ea5927)が玉を転がした。
「やっぱり僕の方がいいみたいですね。オコジョさん‥‥僕も君の事が‥‥」
 まとりょーしかと見つめ合い、フィールが恥ずかしそうに頬を染める。
「おまえ‥‥まさか‥‥」
 バラの花に包まれているふたりを見つめ、皇鬼がまとりょーしかに対抗意識をメラメラと燃やす。
 この様子では『オコジョと危険な三角関係』に雪崩れ込もうとしているらしい。
「何だか変な蜥蜴さんがいますね。まさかあれが一角蜥蜴さんですか?」
 奇妙な蜥蜴と目が合ったため、ベルが大粒の汗を流す。
『オコジョさんを食べたら駄目なのですわ〜〜』
 華国語で一角蜥蜴に警告し、劉迦(ea0868)が石を放り投げる。
「流石に、人にまで襲い掛かるような凶暴な動物ならば放っておけんよな‥‥。殺したくはないが仕方がない。喰う事で供養させてもらおう」
 一角蜥蜴を睨みつけ、皇鬼が大きな溜息をつく。
 すると蜥蜴は皇鬼を威嚇し、警戒した様子で間合いを取る。
「どうやら倒すしかないようですね。オコジョはご馳走のようですし‥‥」
 怯えるまとりょーしかの頭を撫で、喪が日本刀を引き抜いた。
「トカゲなら‥‥ぱくりってしていいって、ガマ‥‥」
 大ガマの術を使い、由加紀(ea3535)が大ガマを召喚する。
 さすがに大ガマは苦手なのか、一角蜥蜴がたじろいだ。
「それじゃ、私が囮になりますですぅ〜」
 一角蜥蜴のまわりで飛び回り、ベルが自ら囮になる。
「まとりょーしかや。迎えにきたぞい」
 場違いな声を上げ、老人がニコリと笑う。
 どうやら記憶を思い出し、まとりょーしかを迎えに来たらしい。
『おじーちゃま。ここは危ないわよ。もう少しお家で待っていてね』
 老人に危険が及ぶと思ったため、迦が優しく声をかける。
「さきほどまで寝ていたはずでござるが‥‥。今頃‥‥なぜ?」
 不思議そうに老人を見つめ、又三郎が首を傾げて呟いた。
「わしは帰らんぞ! やつを倒すんじゃ」
 棒切れを拾い上げ、老人が一角蜥蜴に勝負を挑む。
「ガマ‥‥やっちゃって‥‥」
 何だか面倒になると思ったため、紀がガマを使って老人に体当たりを食らわせた。
「お、落ち着くでござる! だ、大丈夫でござるか?」
 紀の事を取り押さえ、又三郎が老人にむかって声をかける。
「‥‥はて? わしは何をしていたんじゃ?」
 すると老人はキョトンとした表情を浮かべ、トボトボと屋敷のある方へと戻っていく。
「これで安心して戦う事が出来ますね」
 苦笑いを浮かべながら、望霄が一角蜥蜴と間合いを取る。
「蜥蜴風情が俺に当てようなんざ生意気なんだよ!」
 一角蜥蜴の突進をオフシフトでかわし、我斬がポイントアタックで目を狙う。
「とりあえず動きを封じ込めておきますね」
 コアギュレイトを使って一角蜥蜴の動きを封じ、望霄がホーリーを使って牽制する。
「これで突進される心配はないな」
 一角蜥蜴が動けなくなった隙を狙い、皇鬼がストライクを叩き込む。
「あれ〜? 何だか蜥蜴さんが怒っていますよ〜」
 戒めから逃れた一角蜥蜴に驚き、ベルが慌てて逃げていく。
「こんな時のために飛蝗を捕まえて来たでござる」
 ベルが丸呑みされないようにするため、又三郎が大量の飛蝗をばら撒いた。
「何だか飛蝗が好物のようね。喜んで食べているわ」
 一角蜥蜴の背後から回し蹴りを放ち、迦が華麗な着地を決める。
「早く倒しちまおうぜ。俺達が怪我をする前にさ」
 再びポイントアタックで目を狙い、我斬が刀についた血を払う。
「それもそうだな」
 ストライクを放って角をおり、皇鬼が蜥蜴を挑発する。
 蜥蜴は角が折れた事で怒り狂い、物凄いスピードで後を追う。
「そこでジャンプでござる」
 皇鬼にむかって声をかけ、又三郎が一角蜥蜴を落とし穴に落とす。
 蜥蜴はすぐに這い上がってきたが、大ガマに丸呑みされてしまったため、もがき苦しみながら息絶えた。
「おいしくなかったの‥‥ガマ。それは‥‥残念ね‥‥」
 そして紀は吐き出されたトカゲを見つめ、大ガマの頭を優しく撫でる。
 その後、まとりょーしかは冒険者達によって依頼主の元に届けられ、ごるびー達に波乱と恐怖を与える存在になるのであった。