すねこすり

■シリーズシナリオ


担当:ゆうきつかさ

対応レベル:2〜6lv

難易度:易しい

成功報酬:2 G 3 C

参加人数:12人

サポート参加人数:-人

冒険期間:09月22日〜09月27日

リプレイ公開日:2004年09月30日

●オープニング

 ごるびーは見世物小屋で働くカワウソである。
 彼を捕獲した見世物小屋の主人は、ごるびーの稼いだ金で私腹を肥やし、芸者遊びに精を出す助平な親父。
 そんな事など露知らず、ごるびーは愛するそれん(イタチ)ちゃんのため、今日も働き続けているのだが、ライバルのえりつぃん君とまとりょーしか(オコジョ)ちゃんの人気がぐんと上がったため、新しい芸を模索中なのだ!

 すねこすりを知ってるか?
 コイツは白くて丸々とした猫のような姿をしている獣で、暗い夜道に現れては人の足元に纏わりついて転ばせる実に困った奴なんだ。
 そのため見世物小屋を訪れる客が激減し、このままでは店じまいをしなければならない。
 そこですねこすり達を何処かに追い出して欲しいんだ。
 奴らは『白い彗星』と呼ばれており、旅人達を転ばせる事に命を懸けている。
 暗い夜道を歩いていれば、あっちから襲ってくるはずだ。
 10匹近くいるらしいから、くれぐれも注意しておけよ。

●今回の参加者

 ea0443 瀬戸 喪(26歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea0567 本所 銕三郎(35歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea0901 御蔵 忠司(30歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea0946 ベル・ベル(25歳・♀・レンジャー・シフール・モンゴル王国)
 ea2473 刀根 要(43歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 ea3741 レオーネ・アズリアエル(37歳・♀・侍・人間・エジプト)
 ea3899 馬場 奈津(70歳・♀・志士・パラ・ジャパン)
 ea4331 李 飛(36歳・♂・武道家・ジャイアント・華仙教大国)
 ea5298 ルミリア・ザナックス(27歳・♀・パラディン・ジャイアント・フランク王国)
 ea5523 高野 鬼虎(27歳・♂・僧兵・ジャイアント・ジャパン)
 ea5927 沖鷹 又三郎(36歳・♂・僧兵・人間・ジャパン)
 ea5930 レダ・シリウス(20歳・♀・ジプシー・シフール・エジプト)

●リプレイ本文

「『白い彗星』の名をもつ『すねこすり』ですか。これはまた、面白そうな生き物ですね。相手を転ばせる事に生きがいを感じるなんて、是非話をしてみましょう。そして、その技をごるびー君に教えてもらい、新技のヒントにしてもらいたいですね」
 暗い夜道を提灯で照らし、刀根要(ea2473)がすねこすりの姿を探して歩く。
 この辺りで被害に遭った旅人が多いため、すねこすりに遭遇する可能性が高いのだが、なかなかそれらしいモノが見つからない。
「こんどは『すねこすり』さんですかぁ? しかも真っ白でふわふわしたネコみたいな妖怪さん!? ‥‥私、それ捕まえて触ってみたいですぅ〜☆ もふもふしたいですよ〜☆」
 興奮気味に瞳をキュピーンと輝かせ、ベル・ベル(ea0946)が上空からすねこすりを探す。
 辺りが暗いため簡単に見つける事は出来ないが、もふもふしたい一心でベルが必死に探している。
「ふわふわを触ってみたいの、挑戦してみたいの。気持ちよさそうじゃ」
 ベルの後に続いて飛び上がり、レダ・シリウス(ea5930)がニコリと笑う。
 耳を良く澄ましているため、小さい音も聞き逃さない。
「相手が相手だけに今回はあまり酷い事をしたら、可愛そうな気がしますね。ただ人を転ばせるだけであってそれ以外の事をしているわけではないですし、夜道を歩いていれば確実に現れるようなのでそれまで待ちますか」
 忍び歩きで街道を進み、瀬戸喪(ea0443)が辺りを睨む。
 すねこすりがどんな歩き方を好んでいるか分からないため、色々な歩き方をしてみる価値がありそうだ。
「すねこすり達を退治‥‥‥‥なんて可哀想な事はしないわ。だって、今回の私の野望は『10匹近いねこすり達で、ふかふかに埋もれてみる事』だもの」
 幸せそうな表情を浮かべ、レオーネ・アズリアエル(ea3741)が妄想を膨らませる。
 本当なら連れて帰りたい気分だが、怒られるかも知れないので我慢しているらしい。
「すねこすりを捕まえて、その転ばせ技をごるびーに習得させるのじゃ!」
 おきあがりこぼしを街道に仕掛け、馬場奈津(ea3899)がプレスセンサーを発動させた。
 すねこすり達は相手を転ばせる事に命を懸けているため、おきあがりこぼしを仕掛けておけば何度も転ばせなくてはならないため、まったく身動きが取れなくなる。
「新たな芸を模索中‥‥か。何か力になれれば良いのだが‥‥」
 親友ごるびーの手助けをするため、本所銕三郎(ea0567)が愛馬サジマの背中に乗って提灯で照らす。
「これだけおきあがりこぼしを仕掛けておけば、すねこすりの方からわしらの前に現れるはずじゃ! こりゃ、悪戯はいかんぞ」
 おきあがりこぼしと戦っているごるびーを見つけ、奈津がジト目で睨んで摘み上げる。
「‥‥妖怪退治か。腕試しには丁度良い。我が拳の威、見せてくれようぞ。‥‥で、その『すねこすり』とは、どの様な代物なのだ?」
 拳を力強く握り締め、李飛(ea4331)がすねこすりが何なのか仲間に聞く。
「僕も興味がありますね。すねこすりの事は何も知らないので」
 すねこすりの絵を見つめ、御蔵忠司(ea0901)がボソリと呟いた。
 一応、村人達に絵を描いてもらったのだが、これだけだと犬だか猫だか分からない。
「‥‥猫じゃ」
 キッパリと答え、奈津がごるびーを抱き上げる。
「‥‥!? い、今『猫』と言ったか!?」
 油汗を浮かべつつ、飛が奈津に確認した。
「なんじゃ、怖いのか?」
 飛があまりに動揺したため、奈津がニヤリと笑って肘でつく。
「‥‥い、いや何でも無い‥‥牛も倒したこの俺が、猫ごとき恐れはせん! 根拠の無い言い掛かりはやめて貰おうか!? 一度受けた依頼を反故には出来ん。猫だろうがすねこすりだろうが、この手で葬り去ってやろうぞ!」
 腰の引けた様子で首を振り、飛が拳をギュッと握り締める。
「実はネコ、大好きなんですよねぇ私‥‥」
 すねこすりが猫だと分かり、高野鬼虎(ea5523)がてへっと微笑んだ。
「ね、猫が好きだと! い、いや、何でもない」
 あからさまに驚きながら、飛がげふんげふんと咳をする。
「すねこすりは毛並みがふわふわと愛らしくその姿も大層可愛らしい生物だと聞いているでござる。ぜひ撫でて触って愛でたいでござるよ」
 そして沖鷹又三郎(ea5927)はすねこすりの事を考えながら、しばらく悦に浸るのだった。

「すねこすりさんは何処ですかね〜☆ 真っ白だから夜でも目立つと思ったんですが〜☆ でも‥‥泥とかで汚れていたら、イタチさんとかごるび〜さんに間違えちゃうかもですよ〜」
 なかなかすねこすりが見つからないため、ベルが困った様子で辺りを飛ぶ。
 くまなく辺りを探したが、それらしきモノは見当たらない。
『やはり我等が囮になるしかないようだな』
 転んでも素早く動けるように身軽な格好に着替え、ルミリア・ザナックス(ea5298)が街道を進む。
 すねこすりが転ばせやすいようにするため、あまり警戒する事もなく無防備なまま街道を進む。
「来るなら来てみろ。文字通り一網打尽にしてくれるわ!」
 網で使用する投網を肩から担ぎ、飛がルミリアの後に続く。
「すねこすりを捕まえるまで何度でも往復しますよ! 気合を入れて勝負です!」
 大き目のザルと四尺ほどの縄紐を用意し、鬼虎がすねこすりの襲撃に備える。
「その様子ではすねこすりに遭遇しなかったようですね」
 街道の途中で鬼虎達と合流し、忠司が大きな溜息をつく。
 反対側からプレスセンサーを使って、すねこすりを探していたのだが、やはり見つからなかったようだ。
「すねこすりは何が好物なんでござろうな。それが分かればもっと探しやすくなるのだが‥‥。やはり猫と同じで魚でござるかな?」
 猫の好む餌を用意し、又三郎がすねこすりを探す。
「とにかくやれるだけの事をやってみるしかありませんね」
 自慢の横笛を吹き、鬼虎がすねこすりを誘き寄せる。
「‥‥ん!? なんだサジマ? 真直ぐ歩け!」
 サジマの様子がおかしかったため、銕三郎が慌てて辺りを見回した。
「むむ‥‥こ、これは‥‥」
 暗闇に蠢く生物を注視し、銕三郎が唾を飲む。
「らっきー?」
 以前見かけた手品師(耳がデッカクなるネタが得意)の持っていた作り物のイタチとダブらせる。
「この俺をサジマから下ろすとは‥‥やるな、らっきー」
 サジマからゆっくりと降り、銕三郎がニヤリと微笑んだ。
「ぐ‥‥こ、このふわふわした軟弱な姿はまさしく、猫!? だ、ダメだ‥‥俺は、この何とも言えん軟弱な姿を見ていると、背筋がぞわぞわして力が入らなくなるんだっ! ま、まさか、にゃーにゃーとか鳴いたりはしないだろうなっ!?」
 脂汗をダラダラと流し、飛がぜーはーと息を吐く。
「きゅ?」
 うるるんと瞳を潤ませながら、すねこすり達が飛の足に擦り寄った。
「こうなったら! 痛みであの背筋を走るぞわぞわ感を忘れさせる!」
 自分で自分の足を突き、飛が悶え苦しみながら、何とか網を放とうとする。
「きゅう?」
「だああああ、駄目だっ! 俺には出来ない!」
 何度もすねこすりに転ばされ、飛が滝のような涙を流す。
『すねこすりの魔力に屈したか。‥‥仕方ない。ここは我が』
 わざとすねこすりに襲われ、ルミリアが転んですねこすりを胸に抱く。
『(ううむ、ふわふわモコモコで実に心地良いな‥‥♪)』
 一瞬、頬擦りしながら一緒にゴロゴロ転がりたい衝動に駆られ、ルミリアが必死な様子で誘惑に耐える。
 何度か甘い誘惑に心を奪われそうになったが、わずかに残った理性で何とか押さえ込む。
「ほほう、これがすねこすりか。確かにふわふわしていて気持ちがいいのう」
 すねこすりの背中に飛び乗り、レダが至福の時を過ごす。
「ずるいですぅ〜。私もすねこすりさんと遊びますぅ〜。きゃう☆」
 嬉しそうにすねこすりに飛びつき、ベルが幸せそうに微笑んだ。
「レダさん達はあなた達と遊びたいだけですから食べては駄目ですよ」
 ベル達が襲われないようにするため、要がオーラテレパスを使ってすねこすり達に注意する。
「ところで捕まえたすねこすりはどうしましょうか?」
 自分を転ばせにやってきたすねこすりを抱き上げ、喪が首を傾げて呟いた。
「何処か別の場所に運びましょう。それが依頼主からの希望ですし‥‥」
 ようやくすねこすりを捕まえ、鬼虎がホッとした様子で溜息をつく。
「やはり遠くに連れて行くのでござるか。‥‥少し残念でござるな」
 すねこすりの顔をマジマジと見つめ、又三郎が寂しそうな表情を浮かべる。
「我慢、我慢。らっきーだって分かっているさ」
 懐の中にすねこすりを放り投げ、銕三郎が再びサジマに飛び乗った。
『見世物小屋でヒトを転ばせるのを芸とし、エサ代を稼ぐ気は無いか?』
 オーラテレパスを使ってすねこすり達に話しかけ、ルミリアが見世物小屋に来ないかと誘い込む。
 しかし、すねこすりは瞳を潤ませるだけで、ルミリアの問いには答えようとしない。
「お主私の騎乗動物にならぬか? お主のそのふわふわ具合気に入ったのじゃ}
 すねこすりを手放すのが惜しくなったため、レダが身振り手振りを使って会話が出来るか試みる。
「それは無理のようですね。言葉が通じていないようですし‥‥」
 残念そうに首を振り、要がレダを引き離す。
「‥‥無理か。残念じゃのう」
 しょんぼりと肩を落とし、レダが大きな溜息をつく。
「とりあえず別の場所に連れて行きましょう。これ以上、被害者を増やさないようにするためにも‥‥」
 すねこすり達を抱き上げ、喪がレダ達を見つめて頷いた。
「そうもいかないようね。あれを見て。すねこすり達のリーダーよ」
 左目の上に稲妻型の傷跡があるすねこすりを指差し、レオーネが警戒した様子で間合いを取る。
 雷電達はリオーネ達の頼みを受け入れるつもりはなく、転ばせる事によってここから追い出すつもりでいるようだ。
「見せてもらおうじゃないかしら。『白い彗星』のすねこすりの実力とやらを」
 不敵な笑みを浮かべながら、レオーネがすねこすり(以下雷電)を挑発した。
 雷電はレオーネを転ばせるために両足を狙い、フェイントしながら横に飛び彼女にむかって飛び掛る。
「捕まえた♪ かわいいいーーー、ふかふかーー」
 転ぶフリをして雷電を捕まえ、レオーネが必要以上にもふもふした。
「コイツが他のすねこすり達を指揮していたのじゃな」
 雷電の顔をマジマジと見つめ、奈津がごるびーを嗾ける。
「きゅ〜」
 ごるびーは雷電めがけてすねこすり技を放ったが、何度も返り討ちに遭ったため木の裏に隠れて涙を流す。
「どうやら雷電の勝ちでござるな」
 ごるびーの事を慰め、又三郎が苦笑いを浮かべる。
 雷電は他のすねこすり達とは違う事を証明したいためか、角のように尖った癖毛を強調した。
『ただのすねこすりとは違うのだと主張する姿勢は気に入った。ガンバレ』
 そう言ってルミリアが雷電にグレートマスカレードを渡す。
 雷電はグレートマスカレードを受け取ると、見事なすねこすりを炸裂させルミリアの事を転ばせた。
「やはり説得は難しいようじゃな」
 あきらめた様子で首を振り、奈津が雷電達の説得を止める。
「それじゃ、どこか別の場所に運ばないとね。うー、寂しい」
 雷電達が見世物小屋に来ないようだったため、レオーネが残念そうにため息をつく。
「‥‥仕方ありませんね。彼らにとって人を転ばせる事が仕事なんですから。それに見世物小屋に彼らを運んだら、僕達の依頼主がすねこすりを嗾け旅人達を襲わせていたのだと勘違いされてしまうかも知れませんし‥‥」
 そして忠司はすねこすりを連れ、江戸郊外へとむかうのだった。
 その後、ごるびーは奈津によってスパルタ教育を受け、瞳ウルウル攻撃をマスターしたらしい。