●リプレイ本文
「‥‥変漢? そんな奴ぁ初耳だが、もしミンメイの言う通りの男達なら止めさせるべきだな。仲間うちでやるならイイが、若い娘達の前でやるこたないだろ」
呆れた様子で溜息をつきながら、鷹波穂狼(ea4141)がざっと資料に目を通す。
変漢に関してはかなりの情報があるものの、その資料が膨大で似通った内容が多いため、調査にはかなりの時間がかかっている。
「奇声を発し衣を脱ぎ踊り出すとは‥‥阿呆じゃ。しばき倒すのが良いのだろうが、事の起こりを突き止めねば、解決にはならぬやもしれん。漢どもは正気なのか操られているのか‥‥探るかのぅ。一体何者?!」
変漢達を操る黒幕がいるのではないかと怪しみながら、緋月柚那(ea6601)が険しい表情を浮かべて辺りを睨む。
変態と変漢の境が紙一重である事もあり、両者を見極める事は非常に難しい。
そのため両者の違いを見極めてみる事にしたのだが、変態は無差別に女性を襲っているのに比べ、変漢は何か目的を持って女性を襲っている事が判明した。
「ジャパンの文化は俺にも分かんない事が多いから、変漢というものが実際どんなものだか全く想像つかないんだよ。どんなものか見てみたいような、見てみたくないような気分だな」
仲間達から詳しく話を聞いてみたものの、余計に混乱してしまった事もあり、リフィーティア・レリス(ea4927)が困った様子で溜息をつく。
変漢をよく理解するためには実物を見た方が分かりやすいのだが、その事によって物凄く後悔してしまう気もするため、複雑な心境に陥っているようだ。
「まあ、実際に変漢がいるかどうかは別として、変な知識を広げられるとジャパンには変人しかいないって勘違いされかねん」
心配した様子でミンメイを見つめ、西中島導仁(ea2741)が汗を流す。
ミンメイが間違った資料を集めている事もあり、華国の一部ではジャパンが変態国家として認識されている可能性が高い。
そんな間違った知識を直すため、ミンメイには早く誤解であると気づいて欲しいのだが、何だか間違った方向に突き進んでいるため、彼女の考え方を修正するにはかなりの時間がかかるだろう。
「このゴルドワ、ジャパンにやってきて時も経ち、スモーに開眼するほどのジャパン通を自負していたが、最近その自信が揺らいで来ておる‥‥。ミンメイと共に真のジャパンとは何か見直す必要があるのであろうか‥‥?」
何処か遠くを見つめながら、ゴルドワ・バルバリオン(ea3582)が溜息をつく。
ジャパンに来てからキワモノばかり見ていたため、自分に自信をなくしているらしい。
「今回もミンメイちゃんのお手伝い〜っと☆ ジャパンの風習を知識としてため込むわよ〜☆ で、今回は‥‥変漢‥‥? へぇ〜ジャパンにはこんな事をする男がいるのねぇ‥‥初めて知ったわ」
モザイクまじりに資料を見つめ、郭梅花(ea0248)がニコリと笑う。
資料の大半はミンメイの手によってスミ塗りされている事もあり、細かいところは自分の妄想を膨らませて判断するしかないようだ。
「それにしても‥‥スミ塗りしている部分が絶妙よね。妄想を掻き立てる文章というか‥‥なんというか‥‥」
恥ずかしそうに資料を見つめ、梅花が困った様子で汗を流す。
ミンメイは意識していないのかも知れないが、スミ塗りした事によってエッチ度数がグンと上がったような感じがする。
「あたしは、愛ロバの『すにーくすたぁ』と一緒に冒険をしているかわいい女の子。でも実は忍者の里の抜け忍びだったりするの。温泉教団にかくまってもらいながら、軽業師として働く日々にはもう飽き飽きだわ! だから多少の危険を冒しても、冒険に出る事にしたの。‥‥よろしくね」
愛ロバ『すにーくすたぁ』から飛び降り、如月あおい(ea0697)がミンメイと固い握手をかわす。
「よろしくアル。ワタシはジャパンのコトはほとんど知らないアルよ。色々と教えて欲しいアルね」
満面の笑みを浮かべながら、ミンメイがあおいにギュッと抱きついた。
(何だか百合の匂いがぷんぷんするだかや。こりゃあ、目が離せない展開になりそうだべ)
その表情からは全く想像もできない事を考えながら、愛ロバ『すにーくすたぁ』がふたりを睨む。
ミンメイは全く意識していないようだが、あおいは何処か恥ずかしそうな表情を浮かべている。
「ミンメイって華国の人なんだよな? 何か素敵だ‥‥」
ウットリした様子でミンメイを見つめ、緋邑嵐天丸(ea0861)が彼女と厚い握手をかわす。
ミンメイも少し戸惑っていた様子だが、危険がないと分かったため優しくニコリと微笑んだ。
「それにしてもミンメイってかわいいなー。付き合っているヤツとかいるのか?」
ミンメイの肩を抱きながら、嵐天丸が彼女と仲良く話をする。
「勝手に触れるんじゃねぇ! ミンメイちゃんが男性恐怖症になっちまったらオオゴトだろ! ‥‥ミンメイちゃん。身の安全と精神衛生は俺が護るから安心してくんなっ!」
嵐天丸をポカンと殴り、朝宮連十郎(ea0789)がミンメイにビシィッと親指を立てた。
「イテッ‥‥、何をしやがんだ!」
大きなタンコブが出来たため、嵐天丸が連十郎を激しく睨む。
「お前が変漢かも知れないだろ! ミンメイちゃんにもしもの事があったら大変だからな!」
胡散臭そうに嵐天丸を睨みつけ、連十郎が大きな溜息をつく。
「連十郎は‥‥変漢とは違うアルか? もし‥‥そうなら、ワタシ泣いちゃうアルよ」
ウルルンと瞳を潤ませながら、ミンメイが連十郎の顔を見る。
「俺が変漢じゃないかって‥‥? 馬鹿な事を言うなよ。そんなわけ‥‥。ううっ、ミンメイちゃんの泣き顔ってのもいいなぁ‥‥。もう少し見ていたい気も‥‥じゃなかった! 俺は断じて変漢じゃない! 俺の瞳を見てみろ。綺麗なお花畑が見えるだろ?」
瞳をキラキラと輝かせ、連十郎が自分の瞳を指差した。
「‥‥綺麗アル。満点の夜空に‥‥あ、流れ星♪」
連十郎の瞳の奥で何か変わったものを見つけたのか、ミンメイが両手を合わせてお願いをし始める。
「‥‥流れ星。お花畑のはずなんだが‥‥。まだまだ俺も修行が足りないなぁ」
違う意味で落ち込みながら、連十郎が大きな溜息をつく。
まだまだミンメイワールドに到達するのは難しいため、連十郎も気合を入れて頑張らなくてはならないだろう。
「何だか胡散臭くないか。そんな事を言って本当はあんたが変漢なんだろ?」
疑惑の目を連十郎にむけながら、嵐天丸がボソリと呟いた。
「ば、馬鹿言え! 俺はミンメイちゃんとピュアな気持ちで接してるんだ。そんな破廉恥極まりない奴と一緒にするんじゃねぇ」
嵐天丸を睨みつけ、連十郎が気まずく咳をする。
「ふたりとも喧嘩するのは良くないアル。きっとこれも何者かの陰謀アルよ!」
黒ずくめの親父達をバックに浮かべ、ミンメイが険しい表情を浮かべて呟いた。
どうやらミンメイ達が戦っている相手は微妙に巨大な組織らしい。
その実態が明らかにされていないため、胡散臭い相手はみんな組織の一員である。
‥‥逆に言えば存在すら怪しい組織が敵らしい。
「みんな、聞いてくれ! 『変漢』という文字なのだが、『漢』というのは800年程前まで華国を統一していた国の名だ。ジャパンに及ぼした影響も大きく、漢字と言うのは漢の国の文字だというのが由来らしい‥‥」
胡散臭い資料を大量に抱え、デュラン・ハイアット(ea0042)が絶妙な間をとりながら語りだす。
それは時の権力者によって抹消された歴史のひとつ。
それが真実かどうかは別として、必要ないと判断されたものである。
普通に考えればおかしな点がいくつもあるのだが、デュランの語り方があまりに上手いため、誰もが真実であると信じ込んでいるらしい。
「私が調べた所によると、漢王朝末期に物語でも有名な戦乱の世になったと言う話だが、当時ジャパンに漢王家の亡命者が居た事はあまり知られていない。彼はジャパンに受け入れられないのを恨み、ある呪いを残した。ジャパンを滅ぼす為のな‥‥」
あまりの真剣さに一同がゴクリと唾を飲む。
「そう、『変漢』とは『漢ニ変ズ』と読める。つまり、『変漢』は後の世でジャパンを滅ぼし、漢を再興すると言う呪いだったんだよ!!」
『な‥‥、なんだってー!』
間髪入れずに一同が驚き、あまりの恐ろしさに大量の汗を流す。
「そう、変漢たちは女性に男性恐怖症を残し、結婚をさせず人口を減少させ、ジャパンを滅ぼすのだ!!」
デュラン達のまわりだけ妙に暑苦しい空気が漂っているためか、近所の住民達が慌てて子供を家の中へと連れて行く。
子供の中には興味を持ってデュランに話しかけようとした者もいたのだが、慌てて母親が駆けつけてきたため彼らと接触する事は出来なかったようである。
「ワタシ達はそんなとんでもないものを相手にしていたというワケでアルか‥‥」
納得した様子で頷きながら、ミンメイが身体をぶるりと震わせた。
だが、そう考える事で納得のいく事がいくつもある。
そのためミンメイはデュランを尊敬の眼差しで見つめているようだ。
「まずは変漢の出没している場所をしらみつぶしに当たってみるか」
変漢をひとり残らず倒すため、穂狼が事件のあった場所を調べてまわる。
途中で変漢達に怪しまれないようにするため、穂狼達は町娘の格好をして村を歩く。
「なかなか変漢が現れないねぇ。結構、違和感なく着こなしていると思うんだけど‥‥」
村人達の視線が集まったため、穂狼が困った様子で汗を流す。
「穂狼がとても美人だから見とれているアルよ♪」
満面の笑みを浮かべながら、ミンメイが穂狼と一緒に腕を組む。
「‥‥そうなのかねぇ? まさか冒険者ってバレたわけじゃないよね?」
心配そうに辺りを見つめ、穂狼が小声で呟いた。
「それは問題ないアルよ。きっとカップルか何かと勘違いされているだけアル♪」
村人達に元気よく手を振りながら、ミンメイが冗談まじりに微笑んだ。
「いや、それもかなり問題があると思うんだが‥‥。いいのか、それで」
複雑な心境に陥りながら、穂狼が大粒の汗を流す。
「バッチリある! 男女のカップルだと変漢には襲われないアルから‥‥」
穂狼にきちんと理由を話し、ミンメイがパチンとウインクした。
「だったら女の子だけで固まって歩くですよー」
嬉しそうにミンメイと腕を組み、七瀬水穂(ea3744)がスキップする。
「これってお仕事なんだよね? 知り合いに見られたら勘違いされそうだな‥‥」
嫌な予感が脳裏を過ぎり、霧生壱加(ea4063)が困った様子で溜息をつく。
「じゅうぶん勘違いされているみたいよ。視線が妙に冷たいし‥‥」
村人達の視線に気づき、あおいがボソリと呟いた。
「多少の誤解は仕方のない事じゃ。これも変漢を退治するためじゃから‥‥」
割り切った様子で遠くを見つめ、柚那が怪しい人物を探す。
「多分、俺も勘違いされているんだろうな。本物の女だってさ。まさか女装しているとは誰も気づいていないと思うから‥‥」
野次馬の中に怪しい人物が増え始めたため、レリスが必要以上に警戒する。
あのうちの何人かは変漢である可能性が非常に高い。
「みんなは何をそんなに警戒しているの? ひょっとして知り合いでもいたとか?」
変漢の事などすっかり忘れ、壱加が首を傾げて呟いた。
「‥‥忘れたのか。俺達は変漢を誘き寄せる囮なんだぜ。いつ誰か服を脱いで襲い掛かってくるんも知れない状況だぞ。最悪の場合を考えて金的ができる準備をしておかないとな」
冗談まじりに微笑みながら、穂狼が壱加の耳元でニヤリと笑う。
「うぅ、そこらじゅうにいる男の人みんな怪しく見えるっ‥‥」
一気に恐怖心が増したため、壱加が心配そうに汗を流す。
変漢の恐ろしい噂ばかりを聞いている事もあり、頭の中で妄想ばかりが膨らんでいるらしい。
「あまり考えない方がいいと思うのじゃ。そんな表情をしていたら、変漢の思うツボじゃぞ」
辺りから妙な雰囲気が漂い始めてきたため、柚那が苦笑いを浮かべて呟いた。
「何だかハアハアと言っているですよー」
大粒の汗を浮かべながら、水穂が不安げに辺りを睨む。
壱加の不安が変漢を興奮させるスパイスになったのか、辺りからは次第に荒い息遣いが聞こえてくる。
「作戦成功ってところね。何だか危険な様子だけど‥‥。みんなが助けてくれるわよね?」
野次馬達から変漢を遠ざけるため、梅花が人通りの少ない道を選んでいく。
「‥‥当たり前だろ。これで誰も助けに来なかったら一生恨んでやるからな」
一瞬、嫌な予感が脳裏を過ぎり、レリスが拳を震わせる。
こんな格好のまま変漢達に襲われてしまったら、何をされるか分からない。
それどころか一生残るトラウマを植えつけられる可能性もあるのだから、ここで気楽に構えているわけにはいかないようだ。
「ミンメイちゃんって、意外といい尻をしているんだな‥‥ハァハァ」
変漢からミンメイ達を守るため、連十郎がコッソリと後をついていく。
「確かにいい尻をしているな。そんな事を言ったら他の奴も‥‥」
連十郎と熱いトークを交わしながら、嵐天丸が大量の鼻血を流す。
「意外と気が合うじゃねぇか。だが、ミンメイちゃんは俺のモンだからな。変なちょっかいでも出したら容赦しねえからな!」
警戒した様子で嵐天丸を睨みつけ、連十郎が拳をギュッと握り締める。
じっくりと話をすればいい奴なのかも知れないが、ミンメイを狙っているようなので決して油断は出来ないようだ。
「でもミンメイの彼氏ってわけじゃないんだろ? だったら俺にもチャンスがあるわけだ」
ジト目で連十郎を肘で突き、嵐天丸がニヤリと笑う。
「やめろ! ミンメイちゃんをそんな破廉恥な目で見るんじゃねえ。俺のミンメイちゃんを穢したら承知しねえからな」
ミンメイの恥ずかしい姿を想像し、連十郎が嵐天丸の胸倉をつかんで涙を流す。
どうやら連十郎のキャパシティを軽く突破してしたらしい。
「まだ何もしていないだろ。そんなに心配するなよ。俺だって本人が嫌がる事はしないから」
連十郎の肩をぽふぽふと叩き、嵐天丸が冗談まじりに呟いた。
「それなら安心だな‥‥って、オイ! 口説く気満々じゃねえか!」
軽くノリツッコミをしながら、連十郎が嵐天丸の頭をドツく。
「イテッ‥‥、勘違いするなよ。ちょっと仲良くなるだけさ」
含みのある笑みを浮かべ、嵐天丸が連十郎をなだめていく。
「お前とは戦う事を宿命付けられているようだな。結構イイ奴と思ったが、ミンメイちゃんのためなら仕方がねぇ‥‥」
しかし、連十郎は激しく首を横に振り、雄たけびを上げて嵐天丸を指差した。
「喧嘩するほど仲が良いというが、これもそういう事なのか。まぁ、漢なら一度くらいは拳と拳で語り合う必要があると思うがな」
冷静にふたりの戦いを見つめ、ゴルドワが豪快に笑って腕を組む。
それと同時に絹を裂くような悲鳴が響き、ゴルドワ達をハッとさせる。
「悲鳴! ミンメイちゃんか!?」
突然の悲鳴に驚き、連十郎がダッシュでシュタタッと走り出す。
「どうやらそのようだな! よっしゃ、助けに行くぜ!」
気合を入れて頬を叩き、嵐天丸が力強く頷いた。
‥‥あの悲鳴が本物なら彼女達が危険である。
「あ―――!!」
変漢達に囲まれ大声で叫ぶ、壱加が彼らの横を通り過ぎる。
「そういえばお菓子を買い忘れちゃった。あれって美味しいんだよね。すぐに売り切れちゃうから、買い占めておかなきゃ」
大袈裟にずっこける変漢達を完全に無視し、壱加が露天商のいる場所まで戻っていく。
「こら! 待ちやがれ! これが目に入らぬか!」
壱加の前で服を脱ぎ、変漢が物騒なモノをぷらんと揺らす。
「‥‥で?」
全く動揺する事もなく、梅花が冷たく言い放つ。
「き、貴様! だったらツインアタックだ!」
横に並んでプランと揺らし、変漢達が梅花を脅す。
まるで振り子時計のように揺れるソレは、ふたりの連係プレイによって奇妙な動きを繰り出している。
「せめて俺くらいに鍛えてから出直しな」
あまりにソレが小さいため、穂狼が呆れた表情を浮かべて鼻で笑う。
「‥‥ふ、情けないです。駄目駄目です。そんな事じゃ世界は狙えませんよ」
拳を握り締めながら、水穂が熱く語りだす。
「仮にも『漢』の名を冠するなら、漢の象徴たる褌まで脱いでは駄目ですー。そんな情けない『ピー』を見せ付けられても嬉しくないです。褌越しにも悠然と存在感を醸し出し、見えそうで見えないチラリズムこそ『変漢』に必要なのです。水穂は失望しました。そんな変漢には粛清が必要ですー」
残念そうに変漢達の股間を見つめ、水穂が大きな溜息をつく。
「粛清‥‥だと!?」
変漢達も始めは熱心に話を聞いていたのだが、自分達が粛清されると知ったため、途端に感情を爆発させる。
「女の子がきゃーきゃー言っているのを楽しんでいる変態には、二度とそんな事が出来ないように『成敗』するしかないって事よ☆」
金属拳を両手に嵌め、梅花がニコリと微笑んだ。
「お前達‥‥冒険者だな。普通の女だったら、悲鳴を上げているはずだ。それとも痴女か。‥‥破廉恥な」
興奮気味に梅花を見つめ、変漢が鼻息を荒くする。
「はいはい、寝言は寝てから言ってね。本気でそんな事を言っているのなら、一生後悔する事になるわよ」
変漢があまりに失礼な事を言ったため、梅花が手加減しない事にした。
「いい度胸をしているな。その言葉‥‥忘れるなよ」
いやらしい笑みを浮かべながら、変漢達が梅花をグルリと囲んでいく。
「お前、時と場所をわきまえろってんだよ、この変態!」
ダッシュで変漢達に接近し、嵐天丸が飛び蹴りを放つ。
変漢は全く抵抗する事が出来ないまま、回転するようにして転がり血反吐を吐く。
「ミンメイちゃんの前でしょぼいモン晒してんじゃねぇよ、この×××野郎っ」
変漢の股間をグシャリと潰し、連十郎がミンメイを守る。
「た、助かったアル‥‥。大丈夫アルかね? とても痛がっているようアルが‥‥」
恍惚とした表情を浮かべる変漢を見つめ、ミンメイが大粒の汗を流す。
「少し手加減したのが間違いだったな。こりゃ、全く効いてないぜ。てりゃ!」
変漢の股間を踏みにじり、連十郎が豪快に笑う。
「遅かったじゃないか。待ちくたびれたぞ」
他の変漢達をドツき倒し、導仁が連十郎と握手をかわす。
「‥‥宿命のライバルがいたんでな。あそこで負けるわけにはいかなかったのさ」
何処か遠くを見つめながら、連十郎が拳をギュッと握り締める。
「何だか大変だったようだな。お互いに‥‥」
連十郎の肩をぽふりと叩き、導仁が何かを悟った様子で頷いた。
「てめーら馬鹿にしやがって! 俺達をコケにしたら、どうなるか分かってないな!」
一斉に服を脱ぎ捨て、変漢達が気合を入れる。
「我輩の様に芸術の如き美しい肉体を持っておれば兎も角、人前で脱いで何が嬉しいのか?」
芸術のごとく美しい肉体を曝け出し、ゴルドワが変漢達を説教した。
「お前だって裸じゃないか! ‥‥一緒だろ!」
変漢達もゴルドワの肉体美に対抗する事が出来ないと分かったため、気まずい様子で文句を言う。
「‥‥何? では我輩は脱ぐか、だと? この芸術品の如き肉体美を只で鑑賞する気か? 金を取るぞ!?」
変漢達の服を拾い上げ、ゴルドワが睨みを利かす。
残念ながら変漢達はお金を持っていなかったが、彼らを脅すには十分な気迫だったらしい。
「今よ! すにーくすたぁ、変身よ!」
あっという間に服を脱ぎ捨て、あおいがバックパックを被って華麗に変身する。
「ある時は普通の女の子、またある時は華麗な軽業師、またまたある時はスリルを追う冒険者、しかしてその実態は――如月・サック参上!」
(名前言っとるやーん!)
ロバから鋭いツッコミを喰らい、あおいが変漢達に裸体をそらす。
「何だか妙に喜ばれているみたいアルね。‥‥ひょっとして逆効果じゃないアルか」
苦笑いを浮かべながら、ミンメイがあおいの身体を隠す。
「おい、ねーちゃん。そんな所にいたら邪魔だろ。そっちのオッサンもどいてくれねぇか」
あおいの裸がみえないため、変漢達が文句を言う。
「今なんて言ったんだ? もういっぺん言ってみるか?」
変漢の懐に潜り込み、穂狼が暗器を突きつける。
「い、いや、何でもねぇ」
気まずく首を横に振り、変漢が両手を挙げて汗を流す。
「‥‥この野郎! やっちまえ!」
仲間が人質に取られてしまったため、変漢達が全裸で穂狼に飛びかかる。
「やはりこういう結果になったな。ある程度の予想はしていたが‥‥」
オーラパワーを発動させ、導仁がダブルアタックを叩きこむ。
「とにかくミンメイに近づいてくる変態共をぶちのめすッ!」
フェイントアタックEXを放ち、レリスが変漢達を威嚇する。
変漢達はかなりのダメージを食らっていたため、険しい表情を浮かべてレリスを睨む。
「相手が全裸だから楽勝だな。でっかい的と同じだぜ」
なるべく殺さないようにするため、嵐天丸が刀の峰で変漢を倒す。
「いいか、ああいうヤツらからは逃げずに徹底的にやり返せ。逃げれば逃げるだけ追ってくるッ! 寄ってきたら急所狙い。それで喜ぶようなら喜べなくなるまで痛めつければいいだけだ」
女性と間違えられているため、レリスが妙に狙われる。
そのためレリスが少しキレ気味で、変漢達の股間を蹴り飛ばす。
「えっと‥‥こんな感じかな?」
見様見真似で金的を放ち、壱加がボソリと呟いた。
「それじゃ、ちょっと甘いのぉ。どうせならこうするのじゃ!」
変漢の股間めがけて金的を放ち、柚那がニコリと微笑んだ。
さすがにこの一撃は効いたのか、悲鳴を上げて気絶する。
「ミンメイさん、これがジャパンの女性に受け継がれる護身術、対変漢用究極絶対奥義『急所破壊』ですー」
目標の『ピー』をしっかり見据え、水穂が一切の迷いを捨てて拳を放つ。
「‥‥こうアルか」
ミンメイも水穂に続いて拳を放ち、変漢の股間を再起不能にしてしまう。
「あれはかなり効いたわね。あたしも見習わないと」
変漢の股間めがけて手裏剣を放ち、あおいが華麗に着地を決める。
「畜生! まだだ‥‥まだ負けん!」
ガタガタと身体を震わせながら、変漢達が最後の攻撃を放つ。
「そのような無様な裸体を晒して恥ずかしくないのか! どうしても晒したいと言うならば、まずは鑑賞に値する筋肉を身につける所から始めるのが筋であろうが! さぁ、腕立てだ兎跳びだ! あの仁王像の様な筋肉を手に入れるまで!」
悲しげな表情を浮かべ、ゴルドワが本気で変漢を殴る。
変漢達もゴルドワの熱い言葉に胸を打ち、あきらめた様子で地面に力なく両手をつく。
「ようやく大人しくなったようじゃな。それじゃ、みんな縛っておくか?」
人数分のロープを用意し、柚那が変漢達を睨みつける。
「いや、その前に根性を叩き直す方が先だろ? まずは流木を引きずりながら、砂浜をダッシュでは知らせる。それで心を入れ替えないなら、役所に突き出してやればいい」
オッサン呼ばわれされた事を思い出し、穂狼が冷たい視線で変漢を睨む。
「まぁ、それはそれとして倒した変漢の髪を剃って回収したいぞ。土俵仕様のちょん髷鬘入手の為にな! おぉ、ついでに眉も片方落としてやろう。理由は知らんがこうされると鍛え終わるまで、人前に出られなくなるそうだからな! いざ逝かん、美しき筋肉の世界へ!」
そう言ってゴルドワが変漢達を連れて砂浜にむかう。
「あれで大丈夫アルかね?」
「まぁ、相手が相手だし、大丈夫なんじゃない? それほど危険はなさそうだしね。ふたりから逃げる事は出来ないでしょ」
苦笑いを浮かべながら、梅花が今回の事件を纏めておく。
「そういやアイツら、普段はまともな仕事をしているらしい。お堅い仕事をしているからストレスでもたまっていたんだな。全く困った奴らだぜ」
身元を確認するため服を調べ、連十郎が小銭をミンメイに渡す。
それほど多くはなかったが、紙代くらいにはなるだろう。
「今回はこれで済んだが、新しい変漢が現れるとも限らん。それを防ぐ為にも私たちの力が必要なのだ。そうと決まれば、M(ミンメイ)M(妄想)R(リサーチ)出動だ!!」
特派員のひとりとして、デュランが拳を握り締める。
ジャパンにはまだまだ秘密が多いため、ここでのんびりしている暇はない。
「それにしてもミンメイ書房? う〜ん、どこかで聞いたことがあるような‥‥。ミンメイ書房、ミンメイ書房、みんめい書房、民‥‥書房!? いや、ま、まさかな‥‥」
そんな中、導仁は触れてはいけない秘密を知り、乾いた笑い声を響かせるのであった。