●リプレイ本文
「諸君! 私がジャパン料理界征服を企む裏料理界の支配者、デュラン総統だ! 今日は『フリーソーメン』の諸君の為に裏料理界が誇る鉄人達を連れてきた。フフフ! どうだ! ビビったか? たじろいだか?」
いかにも偉そうな衣装に身を包み、デュラン・ハイアット(ea0042)がワイン片手に登場した。
「我等を倒すのか。‥‥面白い。その実力‥‥見せてもらおうか!」
高々と拳を振り上げ、フリーソーメンの面子が笑う。
よほど自信があるためか、デュラン達を見下しているようだ。
「フリーソーメンよりも何よりも‥‥俺のミンメイちゃんを付け狙う野郎が現れるたぁ、油断ならねぇ状態だな。ココはいち早くミンメイちゃんワールドに到達せねばっ! ミンメイちゃん、俺雨にも負けず風にも負けずに頑張るかんな!」
解説役としてミンメイに同行し、朝宮連十郎(ea0789)が密着度120パーセントでニヤリと笑う。
「そろそろ勝負を始めていいかな?」
鬱陶しそうに連十郎を睨みつけ、桑原爆山がわざとらしく咳をした。
「なんだと、この親父っ!」
不機嫌な様子で腕をまくり、連十郎が爆山の胸倉を掴む。
「桑原爆山。随分と偉そうにしている様だが、先日も『たかが料理人が!』と発言して問題になったそうだね。もう引退だな。冥途の土産に鉄人の料理を食べて逝くがいい」
高笑いを上げながら、デュランが挑発的な態度をとる。
「それほどウマイ物なのか。‥‥楽しみだな」
デュランの事をジロリと睨み、爆山が口元を歪ませ腕を組む。
「それじゃ、勝負を始めようぜ。あまりのうまさに腰を抜かすなよ!」
仲間達に合図を送り、連十郎が後ろに下がる。
「つーか、何で本を書いているだけで秘密結社がケンカ売ってくるんだ? 世の中は不思議な事だらけだな。そんなフザケた野郎共は思い切り締めてギュっと言わせなきゃな!」
調理場から爆山の事を睨みつけ、鷹波穂狼(ea4141)がかなり大きく深さのある鍋を使い、ドジョウをたくさん入れて煮始めた。
「オイラ、ジャパンの文化をもっと知りたいのだ! だから『和食』にチャレンジするのだ」
作る料理を決めるため、ユーリィ・アウスレーゼ(ea3547)が材料を手に取り考えた。
「そう言えばこの間食べたミソスープがとっても美味しかったのだ。ジャパンでは『味噌汁』と言う物だって、嵐天丸殿に教わったのだ!」
もわもわんと味噌汁を思い浮かべ、ユーリィがじゅるりと涎を流す。
「よし、決めたのだ! 今回はその『味噌汁』を作ってみるのだ★ でもジャパンの料理は全体的に薄味だと思うのだ。オイラ好みの味にすれば、絶対にもっと美味しくなると思うのだ! 爆山チャンもウットリしちゃうに違いないのだ★」
鍋の中に材料を放り込み、ユ−リィがランランと鼻歌を歌う。
「やっぱみそ汁っつうのはダシが基本なんだと思うぞ。つーワケで協力してもらうぜ。ご利益って言葉もあるからな」
爆山の事を捕まえ、緋邑嵐天丸(ea0861)が出汁をとろうと試みる。
「馬鹿者! 敵に協力を求めるとは、なんたる事! 本来ならば失格だぞ!」
地響きが起こるほどの大声で怒鳴り、爆山が見事な裏拳を放つ。
「ぐはっ‥‥、つ、つええ!」
大量の鼻血を噴きながら、嵐天丸が爆山を睨む。
「漢なら‥‥根性をみせい!」
全く視線を逸らさず、爆山が勝ち誇った様子で腕を組む。
「ああ、見せてやろうじゃねえか!」
自ら熱湯の中に飛び込み、嵐天丸が気合を見せる。
「ぐわっ!! 何かミョ〜なニオイなのだ!! 汗くさいとも何とも言えないニオイ‥‥。まるでマッチョなおにーさんが押しくら饅頭しているようなニオイなのだ。これってもしかして、噂の『漢汁』とかいうジャパンの名物なのだ!? きっとこれをお味噌汁に混ぜたらコクが出て美味しいと思うのだ! 混ぜてみるのだ〜〜」
険しい表情を浮かべて鍋を睨み、ユーリィが鍋の中身をかき混ぜた。
「‥‥なんだか物凄い臭いだな」
クラクラと眩暈を感じ、穂狼がフラつきながらも料理を作る。
「あ、嵐天丸殿に味見をしてみて欲しいのだ★」
毒々しい色をした味噌汁を完成させ、ユーリィが嵐天丸に味見を頼む。
「マズッ!」
ぶしゅーっと味噌汁を吐き捨て、嵐天丸がグッタリと倒れる。
「出来上がりなのだ! 『漢汁風味の味噌汁』がイッチョアガリだぜ〜、なのだ」
爆山の前に味噌汁をドンと置き、ユーリィがニコリと微笑んだ。
「これが俺の料理だ! 喰らいやがれ!」
豆腐の中で暴れるドジョウを爆山に突き出し、穂狼がえっへんと胸を張る。
「素材を生かした料理か。このドジョウは‥‥ウマイ! しかし、この味噌汁は‥‥イロモノ向きだっ! 提出する相手を間違えたな! よって0点!」
味噌汁を一気に飲み干し、爆山が立ったまま気絶した。
「まぁ、仕方ないか。何か、ヘンな料理ばっか炸裂してっけど、良かったら食べてくれッ」
念のため連十郎をドツキ倒し、嵐天丸がミンメイに和菓子をプレゼントする。
「ありがとアル! お金に余裕が出来たら、何かお返しするアルよ」
満面の笑みを浮かべながら、ミンメイが和菓子を受け取った。
ちなみにミンメイは貯金の大半を紙代に費やしているため、お金に余裕が出来るのは本が出てからの話らしい。
「噂ほどでもないようだネ!」
和食が合格点を得られなかったため、セニョール・セボンが鼻を鳴らす。
「ごきげんようセニョール。料理の邪魔をする君は、まるで、母親にかまって貰えない子供だな。ママンの手料理が恋しいなら鉄人の味を堪能するがいい」
リフィーティア・レリス(ea4927)を紹介し、デュランがマントをバサリッと翻す。
「そんな事を言ってもいいのかナ? 判定は僕の気持ち次第だヨ」
いやらしい笑みを浮かべ、セボンがデュランを言葉で脅す。
「‥‥それは楽しみだな」
含みのある表情を浮かべ、デュランがクスリと笑って背をむける。
「イテテッ‥‥。おっ、次の試合が始まっているのか」
タンコブの出来た頭を撫で、連十郎が辺りを睨む。
「お目覚めかい? まぁ、そこで見ていなよ。すぐに片付けちゃうからさ」
先手必勝とばかりにセボンを殴って気絶させ、レリスが面倒くさそうに料理を作る。
「ほら、完成したぞ。家畜の適当焼きだ」
セボンに冷水をぶっ掛け無理やり起こし、レリスが自分の料理を披露した。
「こんなモン喰えるわけ‥‥いえ、食べます」
レリスがジロッと睨んだたため、セボンが怯えた料理で料理を食べる。
「‥‥美味いだろ? まさかマズイなんて言わないよな?」
卵をグシャリと握りつぶし、レリスがセボンの肩を叩く。
「そ、そりゃモチロン! う、うまいです」
カタカタと身体を震わせながら、セボンが頷き涙を流す。
「苛められっ子の心理をついた見事な作戦だな」
そして連十郎は感心した様子でレリスを見つめ、グッと親指を立てるのだった。
「セボンに勝ったくらいでいい気になるな! わしは負けん!」
自分のデコをポンと叩き、デコポンが鼻息を荒くする。
セボンが惨めな負け方をしたため、かなり腹が立っているらしい。
「デコポン。自分のデコを叩くと良い音がするだろ? 中身が無い証拠だ。料理の批評ぐらいは中身のあるものにしてくれよ。内容が無い様では困る。‥‥おっと、失敬失敬。私とした事が駄洒落を言ってしまったよ」
爽やかな笑みを浮かべながら、デュランがデコポンを挑発する。
「そんな事を言っているのも今のうちだっ!」
悔しそうにデュランを睨み、デコポンがギリギリと歯を鳴らす。
「そろそろ、あたしの出番だね!」
腕をまくって気合を入れ、郭梅花(ea0248)が料理を作る。
彼女の作る料理は『肉を使わない中華料理』と『本物を使わない中華料理』のふたつ。
見た目だけでは本物と見分けがつかないため、デコポンも食い入るようにして覗き込む。
「料理は食材が大事よね‥‥すにーくすたぁ♪ 君に決めたー!」
すにーくすたぁ(ロバ)の肩を叩き、如月あおい(ea0697)が指を鳴らす。
『マテーイ!』
不満そうにあおいを睨み、すにーくすたぁがブルブルと首を振る。
「鉄板の上で踊るロバ‥‥。シュールでいいと思うんだけど?」
シュールな映像を思い浮かべ、あおいがニコリと微笑んだ。
『‥‥』
「大丈夫、これはパフォーマンスだから。ツッコミ役がいなくなると困るし」
苦笑いを浮かべながら、あおいがすにーくすたぁを慰める。
『オイ!』
呆れた様子でツッコミをいれ、すにーくすたぁがジト目で睨む。
「‥‥ここ、なんだか熱いわね」
気まずい雰囲気になったため、あおいが服を脱ぎ始める。
『脱ぐナやぁ!』
突然あおいが脱いだため、すにーくすたぁが尻尾で隠す。
「わしを色仕掛けで落とす気か。そんな手には‥‥」
尻尾で胸が見えないため、デコポンが興奮気味に目を細める。
「合格点が出たら‥‥全部脱ぐわ」
色っぽい仕草で迫り、あおいが妖しく耳元で囁いた。
「ほ、本当か。どれどれ、こりゃウマイ」
完成したばかりの料理を奪い取り、デコポンが何度もデコを叩く。
「裸が見たいからって適当な事を言ってないよね? もしそうなら‥‥許さないんだから!」
コメントが適当だったため、梅花が拳を震わせる。
「本物の素材を使っているから、うまいのは当然だろ」
本当に料理が美味かったためか、デコポンが当然とばかりに答えを返す。
「‥‥残念アルね。この料理に本物の素材は使ってないアル!」
デコポンをビシィッと指差し、ミンメイがニヤリと笑う。
「全く見抜く事が出来ないなんて、単なるスケベだったようだね」
呆れた様子でデコポンを見つめ、梅花が大きな溜息をつく。
「だが、約束は約束だ!」
鼻息を荒くしながら、デコポンがあおいに迫る。
「何の事かしら? 約束って‥‥」
しかし、あおいは冷たい視線でデコポンを見つめ、そそくさと服を着始めた。
「いつも我々の陰謀に踊らされているキバヤシ君。君が動揺する様はいつも陰ながら拝見させてもらっているよ。いつもの調子で頼むよ。君には最高の鉄人を用意した!」
不敵な笑みを浮かべながら、デュランが指をパチンと鳴らす。
「変漢の次は堂々と名前をさらす秘密結社か。ジャパンの闇は果てしなく深いのだな! しかし、我輩の辞書に屈服の文字はない! その秘密結社が我輩の前に立ちはだかるとあらば、倒すのみ! 例え畑違いの料理対決でもな」
凄まじいオーラを身に纏い、ゴルドワ・バルバリオン(ea3582)がキバヤシ・ホクトに勝負を挑む。
「あれは‥‥まさか! <中略>という事なのか!」
話が意味もなく長いため、大半の台詞をカットされ、キバヤシが別の意味で陰謀に気づく。
「何をそんなに怯えているかはワカランが、我輩の作る料理だが野趣あふれる山菜ソーメンだ!」
くわっと表情を険しくさせ、ゴルドワがランニングコースで採取した山菜を材料として使う。
その中には毒々しい色のしたキノコや、妙な匂いのする草も混じっているが、ゴルドワは全く気にしていない。
「こりゃ、随分と豪快な料理だな」
手拭いで鼻と口を覆い隠し、連十郎が後ろに下がる。
「どれ、味見を‥‥うむ、ちと苦いがいけるではないか! よし、完成だ!」
ドクドクとしょうゆを流し込み、ゴルドワ画の麺味を確かめキバヤシに渡す。
「こ、これは醤油の味が人類の滅亡を意味し、麺が世界‥‥げふっ」
コメントの途中で血反吐を吐き、キバヤシがグッタリと倒れる。
「‥‥ん? 料理が残っているではないか。食べ残しはイカンぞ! よし、我輩が食べさせてやろう!」
そしてキバヤシは気絶したままゴルドワにソーメンを流し込まれ、意識が戻る事がないままアッチの世界に旅立った。
「キバヤシが判定出来なかったため、この勝負はなしだ。いまのところ2対1で俺達が有利。次の戦いで俺達の勝ちか、引き分けが決まる!」
青ざめた表情を浮かべるミンメイを支え、連十郎が気合を入れて大声を上げる。
「我が組織がここまで苦戦するとは‥‥。やはりお前達のバックには、あの御方が‥‥」
何かを悟った様子で頷きながら、村岡源一郎が連十郎を指差した。
「‥‥あの御方? 何を勘違いしてるんだ」
訳も分からず首を傾げ、連十郎が源一郎に問い返す。
「キバヤシ君の言っていた事は本当だったのか。まぁ、良い。勝負を続けよう」
勝手に連十郎の言葉を深読みし、源一郎がクスリと笑って座敷に座る。
「相変わらず喧しいね、村岡! 君のテンションにはついていけないよ。正に自分だけの世界。鉄人の料理で心ゆくまで語ってくれたまえ。一人でね‥‥」
畳を突き破った登場し、デュランが天井裏へと消えていく。
「あれが君達のリーダーか。いや、違う。そうか‥‥そういう事なのか!」
怯えた様子で天井を見つめ、源一郎の血管が切れる。
「なんだか妙な奴が相手じゃのう。まぁ、良い。審査員を唸らせるほどの究極料理を作ってやろう。出番じゃぞ『ぽるしぇ』! 華麗なる蹴り裁きを見せるのじゃ!」
ロバのぽるしぇに命令し、緋月柚那(ea6601)が連十郎を鍋に入れる。
「ぐはっ! 何で俺がっ!」
グツグツの鍋に放り込まれてしまったため、連十郎が悲鳴を上げで柚那を睨む。
「これも料理の一環なのじゃ」
クリエイトハンドで食料を作り出し、柚那が鍋の中へと入れていく。
(「あの娘‥‥。一体、何を考えているんだ。あれでは1回戦目と同じじゃないか」)
険しい表情を浮かべながら、源一郎が顎を擦る。
「‥‥甘いのう。これは和でも洋でも中華でもない、柚那オリジナルスペシャルを作るのじゃ!ただし今回限り。同じものは二度と味わえないものじゃ。残さず‥‥食え」
源一郎の考えを察し、柚那がニコリと微笑んだ。
「ふっ‥‥、こんなモノでワシを唸らせる事など出来るものか! 一気に喰らうてやるかい!」
オーバーアクションで箸を割り、源一郎が料理を喰らう。
「こ、これは‥‥!? も、もえ!」
それと同時に源一郎の表情が変わり、何も言わずにどんぶりを睨む。
「それはうちの手書きじゃぞ!」
満面の笑みを浮かべながら、柚那がどんぶりの底に書かれた文字をさす。
「‥‥萌え料理か。はははっ、わしの負けじゃ!」
豪快な笑い声を響かせ、源一郎が柚那の料理を絶賛する。
「今回は我々の勝利のようだな。場末の料理屋で寂しくソーメンでも啜っていたまえ。ごきげんようバッドラック!!」
そしてデュランは壁を突き破って登場し、爽やかな笑みを浮かべながら、フリーソーメンたちに別れを告げた。