魔法の壷

■シリーズシナリオ


担当:ゆうきつかさ

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:0 G 78 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:04月14日〜04月19日

リプレイ公開日:2005年04月19日

●オープニング

 ミンメイは華国からジャパンの勉強をしにやってきた女の子。
 記録用の上質な紙を買うため、歌を歌って稼ぐ日々。
 今までにも暴僧族やリーゼン党と言ったジャパンのキワモノ文化に接してきたが、本を作るためにはまだまだネタが必要だ。
 故郷に帰ってミンメイ書房を作るため‥‥。
 ミンメイの取材は続くのだ!

 大変アル、大変アル!
 ま、魔法の壷を手に入れたアルよ!
 この壷の中にはどんな願いでもみっつだけ叶えてくれる不思議な壷の精が棲んでおり、願いを叶えるために必要なご飯を食べさせる事によってどんな願いでも叶えてくれるらしいアル。
 壷の中にはでっぷりとしたお腹のおじさんが入っているアルが、壷の精なので失礼な事をしちゃ駄目アルよ。
 見た目はとっても怪しいアルが、物凄いパワーの持ち主アル!
 だからいっぱいご馳走して、ワタシの願いを叶えてもらうアルッ!
 でも、困った事がひとつだけアルよ。
 壷の精は大喰らいなので、なかなか満腹になってくれないアル。
 一体、どうしたらいいアルかね?

●今回の参加者

 ea0248 郭 梅花(32歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)
 ea0789 朝宮 連十郎(37歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea0946 ベル・ベル(25歳・♀・レンジャー・シフール・モンゴル王国)
 ea2724 嵯峨野 夕紀(30歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea3582 ゴルドワ・バルバリオン(41歳・♂・ウィザード・ジャイアント・イスパニア王国)
 ea3823 設楽 葵(30歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea5708 クリス・ウェルロッド(31歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea5897 柊 鴇輪(32歳・♀・忍者・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

●オヤジの壷
(「‥‥魔法の壺か。‥‥上手い事言ってミンメイちゃん家に入り込みやがって、羨ましい。‥‥じゃなくって純心なミンメイちゃんを騙すなんざ万死に値するぜ! 本来なら直々に黄金の右(バーストアタックEX)を食らわせてやる所だが‥‥。今回はミンメイちゃんの心を傷つけない為に一芝居打たねぇとな」)
 浮かない表情を浮かべながら、朝宮連十郎(ea0789)がミンメイの住む長屋にむかう。
 ミンメイの住む長屋は障子に穴が開いており、あちこちから隙間風が入ってくる。
「まさかミンメイ殿がこんな物に引っかかるとはなぁ‥‥」
 ミンメイが奥の部屋で漬物をつけている間、ゴルドワ・バルバリオン(ea3582)が魔法の壷を覗き込む。
 壷の中にはでっぷりとした漢が眠っており、太り過ぎて外から出れなくなっている。
「お世辞にも壷の精とは言えない容姿ですね。世間知らずな少女であるとは聞いていましたが、こんなモノに騙されてしまうとは‥‥」
 気まずい表情を浮かべながら、クリス・ウェルロッド(ea5708)が頭を抱えて溜息をつく。
 普通のオッサンが壷の中にいたため、呆れて言葉が出ないらしい。
「壷男‥‥血祭り‥‥晒し者‥‥」
 壷の中の男に囁くようにして、柊鴇輪(ea5897)がニコリと笑う。
「と、とにかくミンメイちゃんには悪いけど、壷の中にいる変なオヤヂには帰ってもらわないとね」
 まわりの声で壷の精を目覚めないようにするため、郭梅花(ea0248)が上から蓋をした後に漬物石で封印する。
「みんな、お待たせアル! 一体、何のようアルか?」
 不思議そうに首を傾げ、ミンメイがエプロン姿で現れた。
「おおっ! ミンメイちゃんのエプロン姿っ! くぅぅぅぅ〜、生きてて良かったぜぇ〜!」
 心臓を貫くほどの衝撃を受け、連十郎が胸を押さえて頬を染める。
「そ、そうアルか。照れるアルねぇ‥‥」
 よほど連十郎の言葉が嬉しかったのか、ミンメイがエプロンをヒラヒラさせて喜んだ。
「(‥‥こりゃあ、余計にあのオッサンが許せねえな。こんな可愛いミンメイちゃんと同じ屋根の下にいるなんて‥‥ゆ、許せねぇ!)」
 拳を激しく震わせながら、連十郎が納得のいかない様子で壷を睨む。
「(ミ、ミンメイ様に真実を教えたい‥‥。しかし、ここでミンメイ様の夢を壊す事は誰も望んでいない事‥‥。ここは我慢しなければ‥‥ううっ‥‥)」
 猛烈にツッコミたい衝動を抑え、嵯峨野夕紀(ea2724)が気まずく視線をそらす。
 壷の精は目を覚ましたのか、半分だけ顔を出し夕紀の顔を見つめている。
「そうだ、ミンメイちゃん! 一緒に買い物でも行かないか。壷の精に飯を食わしてやらなきゃ駄目なんだろ。少しぐらいなら奢ってやるぜ!」
 ミンメイの肩を抱き寄せ、連十郎が買い物に誘う。
「お、奢ってくれるのアルか☆ 実は最近マトモなものを食べていないアル。やっぱり連十郎ってイイオトコあるネ☆ 感謝感激アル〜♪」
 満面の笑みを浮かべながら、ミンメイが連十郎に抱きついた。
 彼らの本当の目的を知らぬまま‥‥。

●壷オヤジ
「‥‥とりあえずミンメイ殿は出かけたな」
 ミンメイが出かけた事を確認し、ゴルドワが険しい表情を浮かべて壷を睨む。
 壷の精はゴルドワの視線に気づき、気まずい様子で顔を隠す。
「はやや? 壺の中になんか居るですよ〜? ちょっとくすぐってみるですよ〜☆」
 驚いた様子で壷の中に入って行き、ベル・ベル(ea0946)がケホケホと咳込みながら戻ってくる。
「はうう‥‥、何だか眩暈がするですよ‥‥」
 梅花の胸元に入り込み、ベルがグルグルと目を回す。
「だ、大丈夫? よほど臭かったのね」
 苦笑いを浮かべながら、梅花がベルの背中をポンポンと叩く。
「どう考えても、あれって人間よね。ほら、イメージ的に妖精とかって可愛いものじゃない? たまに違うのもいるけど、あれは酷すぎ。しばらくお風呂に入っていないようだし‥‥」
 鼻をつまんで壷を睨み、設楽葵(ea3823)が溜息をつく。
 壷の中からは生ごみの腐ったような臭いが漂っており、部屋にいるだけでも気分が悪くなってくる。
「それじゃ、ミンメイ嬢が帰ってくる前に、壷の中の男を何とかしておきましょうか」
 ジロリと壷を睨みつけ、クリスが漬物石を地面に置く。
 壷の中にいる男は大粒の汗を流し、両手で蓋を掴んで頭を隠す。
「とりあえず誘き出す為の餌が必要よね。このままじゃ、壷の中にいるオヤヂも出て来ないかも知れないし‥‥」
 持参した食材を調理場に運び、梅花が袖をまくって包丁を握る。
「私もお手伝いさせていただきます。ミンメイ様が帰ってくる前にすべてを終わらせなければなりませんしね」
 可愛らしいエプロンを纏い、夕紀がトコトコと調理場にむかう。
「それじゃ、私は壷の精‥‥らしきモノを監視しておこうかな。料理を作っている間に逃げられても困るから‥‥」
 壷の蓋を手に取り、葵が警告まじりに呟いた。
「ボクは‥‥壷の妖精なの‥‥」
 野太い声を出しながら、壷の精が瞳をきゅるるんとさせる。
「か、可愛くない‥‥って言うか、気持ち悪すぎて鳥肌が‥‥」
 青ざめた表情を浮かべて鍋の精を睨みつけ、葵がこめかみをピクピクとさせつつ壷の蓋を振り下ろす。
「ぐぼはっ!」
 大量の血反吐を吐き捨て、壷の精がグッタリと倒れた。
「これでしばらく時間が稼げますね。鍋の精には悪いですが‥‥」
 苦笑いを浮かべながら、クリスが梅花達の手伝いをし始める。
「もう大丈夫ですかぁ? はや? 何だかいい匂いがするですよ!?」
 クンクンと鼻をヒクつかせ、ベルがフラフラと調理場にむかう。
「ベルちゃんはイカの匂いに敏感ね♪」
 調理場では梅花がイカを焼いており、醤油を垂らして扇子で扇ぐ。
「おっ、壷の精も目を覚ましたようだな。さて‥‥どうする?」
 目を覚ました壷の精を見つめ、ゴルドワが豪快に笑って腕を組む。
 壷の精は器用に壷を回転させ、調理場にむかって転がっていく。
「このイカさん、最高ですぅ〜」
 幸せな表情を浮かべ、ベルがイカをムシャムシャと食べる。
「ボクも欲しいのぉ〜」
 きゅるるんとした表情を浮かべ、壷の精が溢れんばかりに涎を垂らす。
「そんなに食べたいのなら、壷の中から出て来なさい。その様子じゃ、お腹が引っかかって出る事が出来ないと思うけど‥‥」
 目の前で料理をチラつかせ、梅花が苦笑いを浮かべて呟いた。
「やはりコレを使うしかないようだな」
 そう言ってゴルドワが瞳をキラリと輝かせる。
「我輩の新たな鍋! 一撃必殺石焼鍋だ!」
 それと同時にゴルドワが鍋を高々と掲げ、壷の精を睨んでニヤリと笑う。
 
「あわわわわっ‥‥、何だかとっても嫌な予感がしているの」
 いやいやと首を振りながら、壷の精が口を塞いで汗を流す。
「‥‥そこから出る事が出来ないんだろ。何も怯える事はない。怖いのは最初だけだ」
 鍋の精の口をむりやり開けさせ、ゴルドワがそのまま鍋の中身を流し込む。
「のおおおおおおおおおおおおおおおお‥‥」
 夕焼けの空に鍋の精の悲鳴が響く。
 まるで今までの罪を悔いるように‥‥。

●ミンメイ帰宅
「まったく今日は災難だったぜ。もう少しでミンメイちゃんとキス出来たのに‥‥。く、悔しい」
 心底落ち込んだ様子で、連十郎が肩を落として帰ってくる。
「自業自得‥‥エロは良くない‥‥」
 梅花から貰ったイカ焼きをかじりながら、鴇輪がクールなツッコミを入れた。
 どうやら鴇輪が清十郎の毒牙からミンメイを守るため、コッソリとふたりの後をつけ彼の邪魔をしていたらしい。
「‥‥あれ? 壷が何処にもないアル!」
 驚いた様子で飛び上がり、ミンメイが慌てて壷を探す。
 よほど焦っているのか、服の中まで調べている。
「‥‥ミンメイ嬢。先に謝罪させて頂きます。済みません。私が、願いを思ってしまった事で、壷の精は消えてしまったようなのです。‥‥私は貴方の報告書を読み今回のミンメイ嬢を見ていて、自分の夢に一切の迷いも無くただ真っ直ぐに頑張る健気な貴女の姿を見ていたら、貴女の夢の成功を、願わずにはいられなかったんだ‥‥。‥‥今回は完全に私のミスです。本当に済みませんでした」
 申し訳なさそうな表情を浮かべ、クリスがペコリと頭を下げた。
「あううっ‥‥、せっかく苦労して壷を手に入れたのに‥‥。は、破産アル‥‥」
 真っ白に妄尽きた様子で崩れ落ち、ミンメイの口から魂が抜ける。
 壷を手に入れるため借金まで下らしく、色々な意味でどん底まで落ちたらしい。
「そんなに落ち込む事はない。壷の精はミンメイ殿にお礼がしたいと言って、去り際にこんな物を置いていったからな。この金はすべてミンメイ殿のもの。‥‥好きに使うといい」
 壷の精からお金をミンメイに渡し、ゴルドワがコクンと頷いた。
「こ、こんなにたくさん、イイアルか? ‥‥あわわわわっ、何だか眩暈がして来たアルよ‥‥」
 あまりの金額に驚きながら、ミンメイが身体をフラフラさせる。
「これで念願のミンメイ書房が作れますね。‥‥大丈夫ですか?」
 気絶したミンメイを抱き上げ、夕紀がペタペタと顔を叩く。
「そりゃあ、あれだけ貰えば驚くか。私だって手にした事がないほどの大金だもの‥‥。せっかくだからお祝いしよ。ミンメイ書房が出来るんだから‥‥」
 大金を手に入れたミンメイを祝うため、葵がニコリと笑って花見に誘う。
「酔ったフリをして変な事をしないならいいわ」
 葵の肩をぽふりと叩き、梅花が冗談まじりに微笑んだ。
「な、何で分かったの!? 顔に書いてあるのかな」
 予想外の答えに驚き、葵が慌てて鏡を睨む。
「酔ったフリをしてミンメイちゃんと‥‥今度こそ!」
 新たな野望を胸に秘め、連十郎が拳をギュッと握り締める。
 ずっと失敗続きだが、そろそろ運命の神様が微笑む頃だ。
「連十郎‥‥息子‥‥悪いヤツ‥‥」
 そんな中、鴇輪が吹き矢を用意した。
 とある事に使うため‥‥。