●リプレイ本文
●酒場
「‥‥妄想族に過激派か‥‥相変わらずミンメイの周りは変な奴らが多いな。まさか、それが作家としての宿命なのか‥‥それともジャパン全体が変なのか。一体、私がイギリスへ行っている間にジャパンで何があったのだ!?」
信じられない様子で表情を曇らせ、逢莉笛舞(ea6780)が青ざめた表情を浮かべて仲間達の顔を見る。
仲間達は苦笑いを浮かべるだけで、誰も舞の質問には答えない。
「まぁ、話せば長くなるアルよ。とにかく妄想族をどうにかしないとマズイある」
しばらくしてミンメイか口を開き、険しい表情を浮かべて答えを返す。
「‥‥なんでも陰謀と絡めようとする妄想族か。何処かで聞いたような話であるな! ‥‥そうアレは‥‥思い出した! フリーソーメンのキバヤシだ!! あの台詞、あの態度アレこそが妄想族に間違いはない!! おのれ! 我輩の一撃必殺山菜ソーメンをアレだけ食って、なおも復活してくるとは! 今度こそ決着をつけてくれる!!」
事件の裏でキバヤシが暗躍している事に気づき、ゴルドワ・バルバリオン(ea3582)が拳をギュッと握り締める。
残念ながらキバヤシの居場所は分からないが、ゴルドワ自慢の『気合と根性』センサーがあれば何とか見つける事が出来るかも知れない。
「そこまで分かっているなら話は早い。さっそくキバヤシの捜索じゃな。まぁ、奴らの事じゃ。適当に噂を流しておけば、すぐに顔を出すじゃろ」
のほほんとした表情を浮かべ、緋月柚那(ea6601)がのんびりとお茶をすする。
妄想族は後ろ向きな考え方しかしないため、誘き寄せるのはそれほど難しくなさそうだ。
「しかも今回はミンメイちゃんが乙女のピンチだからね! 偽者に一泡吹かせてやりましょう! それに許可なく、あたしより先にミンメイちゃんの真似をするなんて許せないわっ! あたしもミンメイちゃんになって対抗よ! 略して『ミンメイ・オフ・チョイトイ』!」
ミンメイと同じ格好で色気を振り撒き、如月あおい(ea0697)がクスリと笑う。
一応、ミンメイから許可を貰っているため、偽者とは違う扱いになっているらしい。
「‥‥何だか嫌な予感がするアル」
青ざめた表情を浮かべながら、ミンメイがダラリと汗を流す。
何か裏で取引があったのか、ミンメイは妙に浮かない様子である。
「確かミンメイちゃんの偽者って、夜のお仕事をしている胸の大きな女性よね? でも‥‥ミンメイちゃんの胸って‥‥そんなに大きくないわよね?」
ミンメイの胸元を覗き込み、郭梅花(ea0248)が苦笑いを浮かべて視線を逸らす。
「ショッ、ショックある!」
恥かしそうに胸を隠し、ミンメイが潤んだ瞳で梅花を睨む。
「巨乳で夜に仕事かぁ‥‥。かーなーりー、惹かれるモノがあるんだが、俺にとってミンメイちゃんは世界でたったひとつだけの華!」
危うく巨乳の誘惑に負けそうになりかけ、朝宮連十郎(ea0789)が慌てた様子で首を振る。
ミンメイが鋭く尖った刃物のような視線で睨んでいるため、これ以上迂闊な事を口にすれば命を落とす危険があるかも知れないようだ。
「と、とにかく、その偽者を何とかしないとマズイわね。このままだとミンメイちゃんの悪評は増えるばかりだし、そうなると結果的にあたしの立場も危ういから‥‥」
気まずい空気の漂う中、梅花がミンメイを宥めるようにして肩を叩く。
ミンメイは頬を膨らませて怒っていたが、梅花から団子を奢ってもらい何とか機嫌が良くなった。
「そんなに暗い顔をするなって! ミンメイちゃんの動向は全て調査済み! 夜の仕事なんざしてない事ァ明白よ! さぁ、ミンメイちゃん、怒りの鉄拳食らわしに行こうぜ!」
ミンメイの肩を抱き寄せ、連十郎が爽やかな笑みを浮かべる。
「それなら安心‥‥‥‥じゃないアルよ!}
そしてミンメイは連十郎にストーカー(ボディガード?)されていた事を知り、涙を浮かべてドツキ倒すのであった。
●疑惑の酒場
「どうやらここに偽者のミンメイちゃんがいるようだな」
ミンメイの鉄拳制裁によって腫れた頬を撫でながら、連十郎が桃色チラシ片手に如何わしい酒場を睨む。
桃色チラシが上質な紙で作られている事から、この店が何らかの理由でかなり儲けている事が分かる。
「しかし、偽者か。まさか‥‥あの計画が実行に移されているというのか!?」
事件の裏に隠された真相に気づき、デュラン・ハイアット(ea0042)がダラリと汗を流す。
「‥‥何か知っているアルか?」
驚いた様子でデュランを見つめ、ミンメイが胸をドキドキさせる。
「‥‥あの計画の全貌は正直な所よく分かっていない。しかし、私の推論からすると『あの計画』とは、ジャパンの裏社会に通じる人間の偽者を送り込み評判を下げ、その人物に取って代わる。そして、最終的にはジャパン裏社会を支配せんとする恐るべき計画! ミンメイは今までの取材で少々目立ち過ぎたようだな。実は以前には私の偽者も現れた事がある。今回の事件は妄想族の単独犯ではないな。恐らくバックにはもっと巨大な組織がいる筈だ」
胡散臭い空気をモクモクと漂わせ、デュランがビシィッと言い放つ。
「そんな事よりミンメイよ。そろそろ本の監修をしている私への報酬も出るのだろうな? そうすれば今まで勝手に人の仮説を流用した件は不問にしておいてやろう」
険しい表情を浮かべて腕を組み、デュランがジロリとミンメイを睨む。
「もちろんアル。売れればの話アルが‥‥」
自分の胸をポンと叩き、ミンメイが少しションボリする。
どうやら本の売れ行きが、予想以上に悪いらしい。
「楽しみにしているぞ。それにしても、まさかこの店だったとは‥‥。それじゃ、あの時の女が偽ミンメイだったというわけか。店内が薄暗くて判別する事が出来なかったが‥‥。いや、別に隠していたつもりじゃないぞ。‥‥本当に!」
気まずい様子で咳をしながら、デュランがミンメイを宥める。
気のせいかミンメイの両手が鋭く尖ったナイフに見えた。
「とにかく少し落ち着こうぜ、ミンメイちゃん! そりゃ、確かに胸の大きな女性は魅力的だけど‥‥。い、いや、そういう意味じゃないんだぜ!」
途中でミンメイが怒っている事に気がつき、連十郎が青ざめた表情を浮かべて首を振る。
「まぁ、巨乳っつーのにはちょっと惹かれるモンがあるけどな。‥‥悪いコトしてる事には変わりねーから、自分のやったコトに反省するよう懲らしめとかねーと」
爆発寸前のミンメイを大人しくさせ、リフィーティア・レリス(ea4927)が酒場を睨む。
偽ミンメイの働く酒場は如何わしい雰囲気のする店で、呼び込みの男が熱心に行き交う人々に声をかけている。
「ひさしぶりだね、お客さん! もちろん今日も寄るんだろ?」
やけにハイテンションなノリで、客引きの男がデュランの肩を掴んでニヤリと笑う。
「い、いや、俺は‥‥その‥‥」
しどろもどろになりながら、デュランが気まずい様子で視線を逸らす。
まさか常連客とは告白出来ず、視線が宙を泳いでいる。
「お客さん、妙に顔色が悪いなぁ‥‥。あ、そうか。女連れじゃ、入りにくいか」
呼び込みの男は全く空気が読めないのか、いやらしい笑みを浮かべて肘で小突く。
「デュランは調子が悪いんだよ。酒場の主人に歌姫を雇ってもらえるか交渉してくるからさ。駄目だったら、お互い気まずくなるだろ? それじゃ、また!」
ミンメイと梅花の肩を叩き、レリスがニコリと微笑んだ。
ふたりともキョトンとした表情を浮かべていたが、レリスは気にせず店の中へと入っていく。
「あんな嘘ついちゃって大丈夫アルか? 知らないアルよ!」
心配そうに辺りを見つめ、ミンメイがボソリと呟いた。
「ああでもしなきゃ、店の中に入れなかっただろ? デュランが常連客なら、多少の嘘も通るだろうし‥‥。ミンメイだって実際に歌で稼いでいるんだから、バレたっていくらでも誤魔化しが効くさ。そんな事より早く偽者を探した方がいいんじゃないか?」
薄暗い店内を見回しながら、レリスが偽ミンメイの姿を探す。
後でミンメイに歌を教えてもらおうと思っているため、機会があれば店の中で歌ってもらうつもりでいるらしい。
「それにしても色っぽい姉ちゃんばかりだな。俺も気をつけなきゃ」
財布の紐をギュッと締め、連十郎がミンメイに近づく男を威嚇する。
「ひょっとしてアイツかな?」
ひとりだけ人気のある女性がいたため、レリスが人ごみをかきわけ覗き込む。
ミンメイの偽者はとても美しく、胸が驚くほどデカイ。
「髪結いの紐がミンメイの赤に対して、偽者は黄色だな」
偽者の顔を確認し、デュランがキッパリと断言した。
「見つけたわよ、偽者っ! ミンメイちゃんが、そんなに胸が大きいわけ無いじゃないのよ!」
ミンメイの胸をビシィッと指差し、梅花が偽者の顔を睨みつける。
「‥‥ミンメイ!? あたいはミン姐よ」
驚いた様子で目を丸くさせ、ミン姐がボソリと答えを返す。
「ミン姐だぁ!? まさかミンメイちゃん。‥‥勘違いしていたんじゃないのか?」
取り巻き達の殺気だった視線に気づき、連十郎が慌てた様子でミンメイを睨む。
「えっ、えっと‥‥。ごめんアル。調査不足だった‥‥みたいアル‥‥」
ミンメイは恥かしそうに頬を染め、自分に非があった事を素直に認める。
「ひょっとしてミンメイちゃんも妄想族? ね、ねぇ! ミンメイちゃん?」
そして梅花は泣きながら逃げ去るミンメイの後を追い、苦笑いを浮かべるのであった。
●妄想族
「貴方達が妄想族と呼ばれる人達ですね。一体、ミンメイ様の何を恐れているんですか?」
ようやく妄想族を発見し、嵯峨野夕紀(ea2724)が優しく声をかける。
妄想族は路地裏で身を寄せ合うようにして隠れており、夕紀達とは決して視線を合わそうとしない。
「ミ、ミンメイは人間じゃない。奴は華国からやって来た‥‥うわああああ!」
ガタガタの身体を震わせながら、妄想族が耳を塞いで目を閉じる。
「ミンメイ様は人間ですよ。殴られたら血も出ますし、締切に遅れて行方を眩ます事だってある程ほどです‥‥」
怯える妄想族の前に座り、夕紀がニコリと微笑んだ。
「まさかと思うがキミ達の仲間にキバヤシという男はいるか?」
精一杯の笑顔を作り、ゴルドワが親しげに話しかける。
「あ、ああ‥‥。キバヤシ様はオラ達の代表だ」
うっすらと目を開け、妄想族が小さくコクンと頷いた。
「‥‥やはりそうか」
キバヤシの顔を思い浮かべ、ゴルドワが納得した様子で腕を組む。
「いつぞやの復讐かも知れませんね」
ミンメイの書き記した本を読み進め、夕紀がキバヤシのページを見つけて溜息をつく。
キバヤシにとって、これは挑戦と取られてもおかしくない。
「それじゃ、悪いのは全てキバヤシじゃない。いいわ。あたしがミンメイちゃんに成り代わって、どれだけ彼女が可愛いのかを教えてあげる。ほら、見て♪」
そう言ってあおいがぺたんと地面に座り、妄想族の目の前で『悩殺!M開脚!』を披露する。
「のわわあああ、これはっ!」
今までに見た事もないほど衝撃的なものを見たため、妄想族が腰を抜かして慌てふためき両手を合わす。
「‥‥そんなに凄いものなのか」
あおいの背後に立ったまま大粒の汗を流し、ゴルドワが色々と危険な想像を巡らせる。
「また変な噂が立ちそうですね。その時は‥‥どうしましょうか?」
そして夕紀何故か崇められているあおいを見つめ、困った様子で溜息をつくのであった。
●過激派
「ミンメイも災難だな。とりあえずチャチャッと片付けるか」
琵琶法師の格好に扮し、南天輝(ea2557)が過激派を探す。
妄想族の過激派はあちこちで暴れているため、村人達の話からある程度の場所が特定出来た。
「どうせ与太者どもだろ。全員畳んじまおうゼ」
面倒臭そうな表情を浮かべ、正和が指の関節を鳴らしてクスリと笑う。
「そんな物騒な事を言うのはよくないのじゃ。きちんと話を聞いてから、ガツンといくのじゃ」
自慢のハリセンを取り出し、柚那が勢いよくブンスカと振り回す。
どちらにしても倒さなくてはならないため、今のうちから戦う準備をしているようだ。
「彼らと関わるのならマスカレードが必要だな」
イギリスで購入したアイマスクを装着し、舞がたえず周囲に気を配る。
「赤い、霧が‥‥」
破れた赤い着物を身に纏い、柊鴇輪(ea5897)がフラつきながら血を流す。
どうやら誰かにやられたらしく、全身傷だらけになっている。
「まさか近くに妄想族が!?」
すぐさま鴇輪を抱きかかえ、輝が警戒した様子で辺りを睨む。
それと同時に蹄の音が響き渡り、過激派達が馬に乗って現れた。
「‥‥雑魚がっ!」
過激派達が何か言う前に攻撃を仕掛け、舞が華麗に一回転して着地する。
「本当の過激派ってやつを教えてやる、与太者どもがっ!」
さすがに一般人を殺すわけには行かないため、正和が舌打ちしながらスタンアタックを叩き込む。
「柚那の頼もしき『ぼでぃがあど』ぽるしぇによる華麗なる蹴りをとくとご覧あれ‥‥なのじゃ★」
それと同時に柚那が指をパチンと鳴らし、街の外からぽるしぇが土煙を上げて現れ、過激派達を空の彼方に蹴り飛ばす。
「これで終わりだと思うなよっ!」
ぽるしぇに蹴飛ばされて落下した着た者達を狙い、正和が次々と必殺の一撃を放っていく。
「あんまり本気で戦うなよっ! 運が悪いとこっちが罪人扱いされるからな!」
気絶した過激派達を縄で縛り、輝が正和にむかって声をかける。
「ああ、分かっているさ」
正和は爽やかな笑みを浮かべると、手加減しながら過激派達を倒していく。
「いた‥‥いた‥‥い‥‥」
まるで死人憑きのようにしてムックリと起き上がり、鴇輪がフラフラとしながら過激派にむかって倒れこむ。
「うわっ、うわあああ‥‥」
男達は鴇輪が死んだものだと思ったため、パニックに陥り彼女を何度も殴りつける。
「たくさん‥‥出てる‥‥」
ドクドクと血を流しながら地面を這い、鴇輪が空ろな瞳でニタリと笑う。
それと同時に男達は悲鳴を上げ、白目を剥いて気絶する。
「‥‥残念だったな」
元気よく琵琶をかき鳴らし、輝がホッとした様子で溜息をつく。
「そもそもじゃな‥‥悪いのはおぬしらなのじゃぞ。分かっておるんか。‥‥ん? 気絶しておるのか?」
全く返事がなかったため、柚那が井戸から汲んできた水をぶっ掛ける。
過激派達は慌てて飛び起き、地面に頭をこすり付けて謝った。
「私の言いたい事はただひとつ。相手を見てからケンカは売れ」
大人しくなった男達の胸倉を掴み上げ、舞がクールな表情を浮かべて彼らを叱る。
二度と悪さが出来ないように‥‥。